ベテルギウス
テンプレート:天体 基本 テンプレート:天体 位置 テンプレート:天体 物理 テンプレート:天体 別名称 テンプレート:天体 終了
ベテルギウス(Betelgeuse)は、オリオン座α星、オリオン座の恒星で全天21の1等星の1つ。おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンともに、冬の大三角を形成している。
目次
概要
M型の赤色超巨星。また、変光星でもあり、星自体の形状が変化する脈動変光星、中でも半規則的に変光するSRC型に分類されている。これらの特徴から主系列星を終えた進化段階にあると考えられている。 星座中最も明るいとされるバイエル符号αが付けられているが、極大期を除いてβ星のリゲルより暗いテンプレート:Refnest。
特徴
距離
2008年になり、定説となっていた約427光年という推定距離が大幅に改められ約642光年となった[1]。
変光
ベテルギウスの変光は、1836年にジョン・ハーシェルによって発見され、現在の変光範囲は0.0等 - 1.3等となっている[2]。
肉眼で観測できる数少ない変光星の一つであり、冬の脈動型半規則変光星の中では、最もはっきりとした変光を示す。冬に見える半規則変光星には、他にオリオン座W星[注 1]やうさぎ座RX星[注 2]などがあるが、どちらもベテルギウスほどはっきりした光度変化は見られない。
直径
ベテルギウスは、地球からの見かけの大きさ(視直径)が太陽を除けば全天で最も大きい恒星である。
1920年にアルバート・マイケルソンとフランシス・ピーズはウィルソン山天文台の2.5m反射望遠鏡に干渉計を取り付け、その視直径が約0.047秒であることを見出した。これは、400km離れた所に置いた野球ボールと同程度である。
ベテルギウスを太陽系の中心に置いたとすると、火星軌道を大きく超え、木星軌道の近くまで達する[3]。以上はまだ、干渉パターンから得られる間接的な情報であった。
1970年代にアントニー・ラベイリはスペックル干渉法によって、ベテルギウスの実際の星像を得ることに成功している。
また、1995年にはハッブル宇宙望遠鏡により、太陽以外の恒星では初めて(干渉法を用いないという意味で)直接その姿が撮影された[4]。
超新星爆発の予兆観測
ベテルギウスが主系列星の段階に入ったのは約1000万年前と推定されているが、質量の大きな恒星ほど典型的には核融合反応が激しく進行するので短命な一生となる(太陽及び太陽とほぼ同じ質量の恒星の場合、主系列星段階は約100億年続くと推定されている)。
ベテルギウスの質量は太陽の約20倍もあり、かつ脈動変光するほど赤色超巨星として不安定であることから、地球周辺でII型超新星爆発を起こすであろう赤色超巨星の一つに挙げられている。
2009年の観測では、15年前の測定時と比べて15%も小さくなっており、しかも加速的に収縮しているらしいことがわかった[5]。
また2010年1月のNASAの観測で、ベテルギウスが変形している事が示された。これは、ガスが恒星表面から流出し表面温度が不均一になるなど、星自体が不安定な状態にあることを意味し[6][7]、さらに近年の観測や研究により、その形状は球形ではなく、大きな瘤状のものをもった形状であるとされている。
しかしながら、これらの観測結果がベテルギウスの超新星爆発の前兆現象を捉えているのかどうかは定かではない。近い将来の爆発は予測されているものの、それがいつか(明日なのか100万年後なのか)を示したとする観測データや解析結果は発表されていない。
超新星爆発の地球への影響の予測
ベテルギウスが超新星爆発をする際には地球にも何らかの影響を及ぼすであろうと言われていた。これは、ガンマ線により、オゾン層が傷つき穴が空くか消滅し、地球および生命体へ有害な宇宙線が多量に降り注ぐとされているからである(過去の地球における生物大量絶滅の説の一つに、ガンマ線バーストの直撃が原因ではないかというものがある)。
しかし近年の研究により、超新星爆発の際のガンマ線放出については、恒星の自転軸から2°の範囲で指向性があることがわかっている。実際、NASAのハッブル宇宙望遠鏡でベテルギウスの自転が観測され、その結果ベテルギウスの自転軸は地球から20°ずれており、ガンマ線バーストが直撃する心配は無いとされた。ただし、超新星爆発時のかなり大きな質量変動とそれに伴う自転軸の変化が予想できないこと、ガンマ線放出指向性の理論的・実験的な根拠がはっきりしないことから、直撃の可能性について確実なことは知られていない。
超新星爆発した際の明るさについては、SN 1054と同規模の爆発と仮定すると、地球からベテルギウスまでの距離は、かに星雲までの距離のほぼテンプレート:Fracであるため明るさは100倍程度と概算できる。SN 1054は-6等級以上の明るさだったと推定されるので、100倍だと-11等級を超える明るさとなる。これは半月よりも明るく、数日間は昼でも小さい点として輝いて見える。ある予測では、4か月ほど明るさを維持したまま青白色から赤色へ色が変化し、その後急速に減光して4年後には肉眼でも見えなくなるであろうという。爆発後はブラックホールにはならず、中性子星となると考えられている[8]テンプレート:リンク切れ。
名称
固有名
- ベテルギウス
- 綴り
- 原綴りの Betelgeuse は英語の文献によく見られる綴りで、[ビートルジュース][9]のほか、様々に発音される。これはフランス語綴りの Bételgeuse から来ている[10]。Betelgeux とも綴る[10][11]。
- ドイツ語では Beteigeuze と綴るのが一般的で、[ベタイゴイュツェ(ー)] というように発音される[12]。それ以前のラテン語の文献では Betelgeuze と綴られた。他にもさまざまな異綴りがある。
- 仮名表記
- 現在では、ほぼ「ベテルギウス」で定着している。野尻抱影は著書や時期によって「ベテルゲウズ」[11][13]、「ベテルヂュース」[14][15][16]、「ベテルギュース」などと表記している。天文書以外では、しばしば「ペテルギウス」と誤記されることもある。他にも「ベデルギウス」、「ベテルギウズ」といった表記も見られる。
- 語源
- ベテルギウスの語源は、日本では「巨人の腋(わき)の下」の意味のアラビア語 Ibṭ al Jauzah [イブト・アル=ジャウザー] から来ているとされている[13][17]ことが多いが、この説は日本国外では有力ではない。それは、アラビアにおいてこの星に「巨人の腋の下」という意味の名前がつけられていない - 実証がない - からである。そもそも、アル=ジャウザーに「巨人」という意味はない。アル=ジャウザーは、アラビアの古い伝承に登場する女人名で固有名詞であり、どのような意味合い持っていたのか失伝していてわからない[18][19][20]。アラビア語の語根 j-w-z に「中央」という意味がある[21]ことから、アレンは「中央のもの」と解釈し[22]、またこれとは別に、G・A・デーヴィス Jr は「白い帯をした羊」と解釈している[17]。
- 実証的な見地からは、「ジャウザーの手」を意味するこの星のアラビア名の一つ、Yad al-Jawzā' [ヤド・アル=ジャウザー] に由来するとする説が有力視されている。この査閲は、ドイツでは20世紀の中頃には既に知られていた[23]が、1980年代になると英米でも知られるところとなり[24][25]、日本でも2010年代になってようやく知られるところとなった[20][26]。アラビア文字の"ﻴ" (y) と"ﺒ" (b) はドットが1つか2つかの違いだけなので、写本の段階でか、ラテン語に翻訳する段階で誤写されたのではないかと考えられている[20][21]。
- 他にも、アラビア語の Bayt al-Jawzā' ([バイト・アル=ジャウザー]、直訳すれば「双子の家」だが、ここでは黄道十二宮の1つ「双児宮」のこと)とするなどの説[27]もある。
- Menkab
- ベテルギウスの別名としては、この星のもう1つのアラビア名 Mankib al-Jawzā' ([マンキブ・アル=ジャウザー]、「ジャウザーの肩」の意)から来た Menkab [メンカブ] がある[28]。この星の位置と混同されて、ベテルギウスの意味とされることもある[29]。
中国名
中国では参宿第四星(參宿四)。
和名
ベテルギウスの和名は「平家星」(へいけぼし)とされている[30][31][32][33][34][35]。
岐阜県において、平家星・源氏星という方言が見つかっている[34][36][37]。これは1950年に野尻抱影に報告された方言でありテンプレート:Refnest、ベテルギウスの赤色を平家の赤旗、リゲルの白色を源氏の白旗になぞらえたと解釈されている。野尻は農民の星の色を見分けた目の良さに感心し、それ以後は天文博物館五島プラネタリウムで解説する際には、平家星・源氏星という名称を使用するようになった[36][37]。
天文誌、図鑑、野尻抱影や藤井旭の著書をはじめ、多くの本で、ベテルギウスの和名を「平家星」と特定した上で、岐阜の方言であるとしている[34][36][37][38][39](ただし、岐阜県の揖斐郡横蔵村(現揖斐川町)においてベテルギウスを源氏星とする村の古老が一名いたことが野尻抱影によって紹介されており [36][37]、民俗学の見地から異論を唱える研究者もいる[注 3])。
増田正之は1985年に、富山県高岡市の市立伏木小学校において、ベテルギウスを平家星とした方言を見つけている[40]。
また、滋賀の虎姫(現・長浜市)でベテルギウスを金脇(きんわき)とする方言が発見されている。これは、オリオン座の三つ星の脇にある関係とベテルギウスの金色とリゲルの白色とを見分けた表現から来ている。このように星を色で見分けた表現は、世界的に類を見ないと言われている[36]。
その他、ベテルギウスが含まれたアステリズムの方言はベテルギウス関係の方言を参照。
- 北尾浩一の見解
- 北尾浩一は、著書の中で揖斐地方で発見された源氏星(げんじぼし)をベテルギウスとして分類している[41][42][注 3]。
- 多くの書籍で、平家星がベテルギウスを示す岐阜の方言とされている事について、野尻抱影の著書における村の古老の証言と逆であると指摘している。北尾は再調査を行い、発見地とされる揖斐地方では一般的に認識されている源平の旗印の色とは逆であったことを確認している[43]。この見解が最初に発表されたのは2005年であり、野尻は既に亡くなっていた。野尻は平家星をベテルギウスと特定したが、香田より第一報を受けた後、1000回を超えるやり取りの後、初めて信用したと証言されている[43]。
脚注
注釈
- ↑ W Ori:212日周期で5.9等 - 7.7等の間を変光、スペクトル型はC5,4(ハーバード方式ではN5)。
- ↑ RX Lep:60日周期で5.0等 - 7.4等の間を変光、スペクトル型はM6.2III。
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出典
- ↑ Harper, Graham M.; Brown, Alexander; Guinan, Edward F., A New VLA-Hipparcos Distance to Betelgeuse and its Implications, The Astronomical Journal, Volume 135, Issue 4, pp. 1430-1440 (2008). 論文概要
- ↑ 天文観測年表編集委員会 編 『2008年 天文観測年表』 地人書館、2007年11月20日初版第1刷発行、ISBN 978-4-8052-0789-5、175頁。
- ↑ 太陽の半径と惑星の軌道半径の関係
- ↑ Hubble Space Telescope Captures First Direct Image of a Star - ハッブル宇宙望遠鏡サイト
- ↑ テンプレート:Cite news
- ↑ テンプレート:Cite news
- ↑ “The Spotty Surface of Betelgeuse”. NASA, 2010年1月6日
- ↑ 日経新聞電子版 「ベテルギウス 爆発近づく?」2013年1月2日 東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構 野本憲一特任教授 インタビュー
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- ↑ テンプレート:仮リンク 著、小平桂一 監修 『カラー天文百科』 平凡社、1976年3月25日初版第1刷発行、245頁。
- ↑ 三省堂『大辞林』2327項
- ↑ 『日本大百科全書』21巻p53ベテルギウス項
- ↑ 野尻抱影 著 『新星座巡礼』 19項
- ↑ 野尻抱影 著 『星三百六十五夜』 上巻(1978年)38項
- ↑ 34.0 34.1 34.2 藤井旭 「藤井 旭の新・星座めぐり:8 オリオン座」『月刊天文ガイド』 第43巻2号(2007年2月号)、誠文堂新光社、2007年、134頁。
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- ↑ 36.0 36.1 36.2 36.3 36.4 野尻抱影 『日本星名辞典』 東京堂出版、1973年、154-155頁
- ↑ 37.0 37.1 37.2 37.3 野尻抱影 『星の方言集 - 日本の星』 中央公論社、1957年、265-269頁
- ↑ 藤井旭著 『宇宙大全』441項 / 同著『全天星座百科』150項 / 同著『星座大全』35-36項
- ↑ 講談社、林完次著『21世紀星空早見ガイド』50項
- ↑ 増田正之『ふるさとの星 続越中の星ものがたり』15項および、巻末 富山県星の一覧表3項
- ↑ 北尾浩一 「表6 暮らしと星空を重ね合わせる過程に於いて形成された星名: (1) イメージに関連するもの」 『天文民俗学序説 - 星・人・暮らし』 〈学術叢書〉 学術出版会、2006年、39頁
- ↑ 北尾浩一 「天文民俗学試論 (102) :35 星・人・暮らしの事典 (1) オリオン座2」 『天界』 第87巻第976号(2006年9月号)、東亜天文学会、568頁
- ↑ 43.0 43.1 北尾浩一 「『源氏星』と『平家星』」 『天界』 第86巻第966号(2005年11月号)、東亜天文学会、648頁。
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関連項目
外部リンク
- ベテルギウスの行く手をはばむ?謎の壁
- Alpha Orionis (Betelgeuse) - アメリカ変光星観測者協会 (AAVSO)
- G. Perrin, S.T. Ridgway, V. Coudé du Foresto, B. Mennesson, W.A. Traub, M.G. Lacasse, "Interferometric observations of the supergiant stars α Orionis and α Herculis with FLUOR at IOTA", Astronomy & Astrophysics, 418 (2004) 675-685.