中性子星

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中性子星 右上方向にジェットを放出するほ座のベラ・パルサー。中性子星自体は内部に存在し、ガスに遮蔽されて見えない

中性子星(ちゅうせいしせい、neutron star)とは、質量の大きな恒星が進化した最晩年の天体の一種である。中性子星は質量が太陽程度、半径10km程度、大気の厚さは1m程度で、中性子が主な成分の天体である。密度は太陽の密度の1014倍以上もあるとされている。具体的な数値で表すと1cm³当たりで10億tとその桁外れに大きい密度のため、中性子星表面での重力は地球の重力の2×1011倍もの大きさがあり、脱出速度光速の1/3に達する。中性子星は大質量の恒星の超新星爆発によってその中心核から作られるが、中性子星として存在できる質量にはトルマン・オッペンハイマー・ヴォルコフ限界と呼ばれる上限値があり、それを超えるとブラックホールとなる。上限の質量は、太陽質量の1.5倍から2.5倍の範囲にあると考えられている[1]。下限は太陽質量の0.1倍から0.2倍程度[2]

重力崩壊によって非常にコンパクトに圧縮された結果として、角運動量保存の法則によって元の恒星よりも遥かに高速に回転しており、典型的な自転周期は30秒から1/100秒である。中性子星に強い磁気がある場合、その磁極から電磁波を出しているが、2つの磁極(地球でいう地磁気上の北極と南極)を結ぶ線が自転軸と一致していない場合、中性子星の自転により電磁波が放出する方向を変えながら放たれるパルサーとなる。中性子星自身は可視光線を発していないため、パルサーとして実在が確認された。

中性子星は、中性子から成る大きな原子核のような物である。原子核では、陽子と中性子がだいぶ自由に動ける状態のため、液体といってもそれほど間違いはないような状態である。したがって中性子星では、その兆大な密度のため液体状態を超えた超流動状態になっていると考えられている。

中性子星の形成

中性子星は恒星超新星爆発によって形成される。恒星が進化の後に中性子星を残すかどうかは恒星の質量によって決まる。(詳しくは恒星進化論を参照のこと。)

太陽質量の約0.46倍までの恒星は赤色矮星とも呼ばれ、温度が低いためヘリウムの核融合は発生せず、水素を使い尽くした後はそのままヘリウム型の白色矮星になる。

太陽質量の約0.46倍から約8倍までの恒星では、中心核で水素を使い果たした後でヘリウムの核融合が始まり炭素酸素窒素が作られるが、それ以上の核融合反応は進まず、赤色巨星の段階を経て白色矮星となる。

太陽質量の8~10倍の質量を持つ恒星では炭素・酸素からなる中心核でさらに核融合反応が起こり、酸素やネオンマグネシウムからなる核が作られる。この段階で核は縮退するため、電子の縮退圧で重力を支えるようになり、この核の周囲の球殻状の部分で炭素の核融合が進むという構造になる。核を取り巻く部分で起こる核反応生成物によって次第に核の質量が増えていくが、やがて中心核を構成する原子内で、陽子が電子を捕獲して中性子に変わった方がエネルギー的に安定になるようになる。これによって中心核は中性子が過剰な原子核で埋め尽くされるようになり、一方で電子捕獲によって電子の縮退圧が弱まるため、重力を支えられなくなって星全体が急激な収縮を始める。中心核の収縮は、密度が十分大きくなって中性子の縮退圧で重力を支えるようになると停止する。これより上の層は核によって激しく跳ね返されて衝撃波が発生し、一気に吹き飛ばされる。この段階を超新星爆発と呼ぶ。爆発の後には中性子からなる高密度の核が残り、これが中性子星となる。

太陽質量の10倍以上の大質量星ではもともと密度が大きくないために、中心核が途中で縮退することなく、次々に元素が核融合反応してはさらに重い元素が作られ、最終的にの中心核が作られる段階まで核反応が進む。鉄原子は原子核結合エネルギーが最も大きいためにこれ以上の核融合は起こらず、熱源がなくなるために鉄の中心核は重力収縮しながら温度を上げていく。温度が約100億度に達すると鉄が光子を吸収し、ヘリウムと中性子に分解する鉄の光分解という吸熱反応が起きて急激に圧力を失う。これによって重力を支えられなくなり、星全体が重力崩壊で潰れて超新星爆発を起こす。爆発の後には爆縮された芯が残る。残った芯の質量が太陽の2-3倍程度なら中性子星として残るが、それ以上ならば重力崩壊が止まることなくブラックホールになる。超新星爆発の前段階でどういった条件ならばどのくらいの芯の質量が残り、その結果中性子星になるか、あるいはブラックホールになるかといった精密な条件は現在ではあまりはっきりしないが、太陽質量の30倍以上の恒星はほぼブラックホールになると考えられている。

白色矮星同士からなる連星が衝突合体することによってチャンドラセカール限界を上回り、最終的に中性子星が作られるという過程についても議論されている。

さらに最近では、中性子星より密度の高い、クォークで出来たクォーク星が提案され、その候補となる星(みなみのかんむり座の星)も見つかっている。

中性子星の構造・性質

中性子星の表面は通常の原子核や電子からなる。この中性子星の大気は厚さが約1mほどで、その下には固体の「地殻」がある。さらに内部には中性子過剰核と呼ばれる非常に中性子の多い原子核でできた層がある。このような原子核は地球上では非常に短時間で崩壊してしまうが、中性子星内部では非常に圧力が高いために安定して存在できる。さらに内部へ進むと、原子核から中性子が外へ漏れ出す「中性子ドリップ」と呼ばれる現象が見られるようになる。この領域には原子核と自由電子と自由中性子が存在する。さらに内部に進むにつれて原子核が融けて一様な物質(中性子と少量の陽子、電子からなる)の超流動相となる。中心部のコアと呼ばれる高密度の領域の構造はよく分かっていないが、核子と電子だけでなくπ中間子K中間子といった中間子の凝縮や、核子以外のバリオンであるハイペロンが現れ、最も中心部の超高密度領域ではクォークからなる超流動体で構成されているという説もある。

内核(inner core)

数kmほどの厚さで、構成するものに対してはそれぞれの仮説により異なる。[3]

  • ハイペロン
  • パイオン縮退
  • K中間子縮退
  • クォーク物質への相転移

<math>\rho_0 = 2.8 \times 10^{17} \mbox{kg} \cdot m^{-3}</math>を標準原子核密度とすると密度は2<math>\rho_0</math>より大きく、中心部は10~15<math>\rho_0</math>の密度に達する。

外核(outer core)

密度はおよそ0.5~2<math>\rho_0</math>であり数Kmの厚さである。ほとんどが中性子で数パーセントの陽子、電子、ミューオンが含まれている。これらは強く縮退している。

地殻(inner crust)

およそ1kmの厚さ。密度は0.5<math>\rho_0</math>より小さい。電子と自由中性子、中性子過剰な原子核からなる。

表面(outer crust)

大気の下にある層でおよそ数百メートルの厚さである。イオンと電子からなる。

大気

薄いプラズマ層である。厚さは1m程である。

中性子星の発見

1933年フリッツ・ツビッキーウォルター・バーデが中性子星のモデルを初めて提唱した。1967年アントニー・ヒューイッシュジョスリン・ベル・バーネルが、パルサーとして中性子星を発見した。

中性子星を扱ったSF作品

脚注・出典

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関連項目

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  • 岩波基礎物理シリーズ9 相対性理論(佐藤勝彦著 岩波書店
  • [1]公益社団法人 日本天文学会
  • Neutron Stars 1: Equation of State And Structure P. Haensel, A. Y. Potekhin, D. G. Yakovlev著 Springer-Verlag