プロレススーパースター列伝

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テンプレート:Sidebar with collapsible listsプロレススーパースター列伝』(プロレススーパースターれつでん)は、梶原一騎原作、原田久仁信画の漫画作品。週刊少年サンデー1980年23号から1983年26号まで連載。少年サンデー・コミックスとして全17巻で刊行され、その後も何度か復刻された。

概要

実在のプロレスラーから、当時日本で人気のあった選手を題材に選んで描かれた漫画作品。一回約20ページ連載で、最短はカール・ゴッチの5回、最長は初代タイガーマスクの27回を費やして描かれた。

コミックス版は小学館から発売されたが、ワイド版・文庫版は講談社からの発売となった。なお、カール・ゴッチ篇は文庫版ではじめて収録された。この文庫版を含め何度か復刊されているが、後期の刊で出版社が異なる場合は、劇中に出てくる「少年サンデー」という言葉は訂正されている。また、現在では問題視される差別用語などは、多くの場合は差し替えられている。

内容

体裁としては「事実に基づくもの」とされていたが、実際にはかなりの虚構、漫画的な誇張が多く、それゆえ下記に列挙されるように事実と異なるエピソードや、スタン・ハンセンの学歴のように同一人物であっても別のレスラーの一編に登場した際に整合しなくなるエピソードも存在する。また、新日本プロレス全日本プロレスの競合関係がもっとも苛烈であった時期に新日本プロレスの協力を得た作品であるためニック・ボックウィンクルブルーノ・サンマルチノザ・デストロイヤーら、主に全日本によって招聘されたレスラーは比較的軽く扱われている。その一方で、新日本のタイガーマスクブーム、全日本によるハンセン引き抜きなどは劇的に描かれている。また、当時の第三団体であった国際プロレスアンドレ・ザ・ジャイアント編の一部の他は登場しない。

  • タイガーマスクにリング上で制裁されるエル・ソラールの件(実際はアクシデントによる脱臼)や、佐山がメキシコのリングで白覆面のタイガーマスク(ティグレ・エンマスカラード)をやっていたとする件。また、同じく佐山がメキシコとイギリスで、「ミスター・カンフー」のリングネームを名乗っていたとする件(実際は、メキシコでは「サトル・サヤマ」、イギリスでは「サミー・リー」と名乗っている)。
  • ハンセンがサンマルチノの首を負傷させた技がラリアットとされているが、実際はハンセンのボディスラムのミス。(ただし、連載当時はそのことはほとんど知られていなかった)。
  • ハルク・ホーガンアックスボンバー誕生秘話。ホーガンとハンセン、アンドレが互いに激しい嫉妬心を抱く。
  • シンガポールにガマ・オテナなる空手家が大道場を構える。ブッチャー編とカブキ編で二度にわたりガマの詳細が語られるが、ガマは実在しない。
  • ルー・テーズにも度々スポットが当たっており、宿敵(ザ・ファンクス編)、恩師(マスカラス編)、猪木の師匠のカール・ゴッチのタッグパートナー(馬場と猪木編)、タイトルマッチのレフェリー(ハンセン編)と重要な役割を果たす事も多い。但しテーズ自身は確かにメキシコの団体に所属した事はあるが団体のオーナーに成った事は一度もなくマスカラスとの接点も少ない。実際のメインは選手兼コーチ業であった。
  • ボックウィンクルやハーリー・レイスなど、主人公に立ちはだかるヒール・チャンプやその周辺の人物が非常に卑劣に描かれている。
  • 梶原は他作品同様アメリカのプロレス団体のチャンピオンの反則防衛(反則負けならタイトルは移動しない)を痛烈に批判している。日本プロレス界の主流である「反則負け、リングアウト負けなどあらゆる負けでもタイトル移動」を最初に導入したのは馬場(PWF)なのだが、その点については触れられていない。
  • 「アントニオ猪木・談」という小コラムが、毎回ごとに猪木の語っているように登場するが、現在では8割方は創作だとされる。

ただし、本作が虚実交えて描かれた事が法的問題となった例は確認されていない(プロレスのギミックを参照)。

また、劇中で度々「ホゲエ~ッ!」という独特の悲鳴が出る事で知られている。梶原自身もこの悲鳴を特に重要視していたらしく、原稿用紙もここだけで1行を使い、かつ太字で書いて強調していたという[1]

各エピソード

  • 父の執念! ザ・ファンクス(週刊少年サンデー・1980年23号 - 29号)
    タイトル通り、半分以上が二人の父親であるドリー・ファンク・シニアのエピソードである。
    ドリー・ファンク・Jrは本作を気に入っていたようで、コミックの一部を自分のホームページで紹介していた。作中にもあるように最初からレスラー志望だったテリーと違い、ドリーが大学2年までは弁護士や会計士などになりたがっていたのは本当である[2]
  • 首折り魔!スタン・ハンセン(週刊少年サンデー・1980年30号 - 35号)
    • 主役レスラー=スタン・ハンセン
    <本エピソードで語られた内容>
    高卒でプロレスラーになったことになっている。しかしブロディ編では大卒に訂正されている。現実ではアメリカマット界を干された原因になったブルーノ・サンマルチノ頸椎損傷事件も、あくまでハンセンの暴走で起こしたことになっている。ブロディとは学生時代からの友人であるが、この回ではブロディ編でも詳細に描かれる初対決で知り合い、友人関係を結んだことになっている。
    プロモーターに自分を売り込む際、ドラム缶ベアハッグで潰している。
    必殺技のウエスタン・ラリアットはファンク道場時代の鶴田との会話がきっかけで編み出した。実際は、ハンセンの自伝によるとアメリカンフットボールのディフェンス技「クローズド・ライン」を応用したもの。
※その他のシリーズでもハンセンはキー的なレスラーとして扱われホーガン編、ブロディ編でも重要な人物として登場している。
  • 地獄突きがいく! A・ザ・ブッチャー(週刊少年サンデー・1980年36号 - 47号)
    無名の前座レスラーだった若き日のブッチャーが、拳法家との試合で敗れたことをきっかけに東南アジアへ遠征。シンガポールの空手の達人ガマ・オテナ門下となり、地獄突きを初めとする空手技を習得、帰国後は一躍実力派のヒールとしてスターダムを駆け上がるというストーリー。物語の端々にザ・シークが登場しており、お人好しなところがあるブッチャーを騙しギャラをピンはねする、罠にはめバトルロイヤルで公然と潰そうとするなど狡猾な小人物として描かれている。
    いくつかのシーンは、アニメ『タイガーマスク二世』で、すでにブッチャーが移籍していたため、馬場を猪木に、全日本プロレスを新日本プロレスにそのまま入れ替えて流用されていた。
  • 世紀の巨人! A・ザ・ジャイアント(週刊少年サンデー・1980年48号 - 1981年1号)
    • 主役レスラー=アンドレ・ザ・ジャイアント
    当時の公式プロフィール通りに、木こりをしていたところをスカウトされたことになっている。また、実際にはリングネームの一つであるジーン・フェレが本名とされている。
  • 千の顔をもつ男! ミル・マスカラス(週刊少年サンデー・1981年2 / 3号 - 1981年17号)
    馬場の招きで初来日したとされているが、実際の初来日は1971年2月、日本プロレスの「ダイナミック・シリーズ」であり、馬場が日プロを脱退して全日本プロレスを興す以前の話である。
  • インドの狂虎! タイガー・J・シン(週刊少年サンデー・1981年18号 - 1981年24号)
    冒頭で山本小鉄をいたぶる悪役レスラーは、スティーブ・リッカードというシンの友人のはずが「初対面の卑屈なチンピラレスラー」として描かれており、名前すら呼称されない。
  • なつかしのB・I砲! G馬場とA猪木(週刊少年サンデー・1981年25号 - 1981年42号)
    解説が猪木だけあって、猪木に重点が置かれた構成になっている。しかし、後年の馬場・猪木の確執以前の、友人同士としての二人を描いている数少ない作品のひとつとして貴重な面もある。
    力道山の死因が「手術のあと水を飲むのも禁止されていたのに自分の肉体を過信し寿司サイダーを平らげたため」となっている。劇中では「…との説もある」となっているが、しっかり絵に描かれており、それに対する猪木のリアクションも描かれていた。
    猪木の海外修業のエピソードで、テキサスでのタッグ・パートナー、デューク・ケオムカの名が「デューク・ケムオカ」となっていた。この誤表記はコミックス版から文庫版に至るまで、一切訂正されていない。
  • プロレスの神様! カール・ゴッチ(週刊少年サンデー・1981年43号 - 1981年47号)
    レスラーとして第一線を退いた後のゴッチが、通称「蛇の穴」ビリー・ライレージムへ入門した若き日のことを回想するというストーリー。他エピソードに登場する「プロレスの神様」然とした冷静沈着なゴッチとは違い、非常に血気盛んで喧嘩っ早い。なお冒頭でビリー・ライレージムの異名について「オーッ、スネーク・ホール!」とゴッチが声を上げるシーンがあるが、正確にはスネーク・ピット(Snake pit)である。
    のちのPWF会長ロード・ブレアースとの日本での対戦シーンが描かれているが、一貫してブレアースの肩書きが「現BWA会長」と誤植されている。そもそも、ゴッチとブレアースが現役として同時に来日したことはない。前述の通りコミックス版未収録。
  • 狂乱の貴公子! リック・フレアー(週刊少年サンデー・1981年48号 - 1982年3 / 4号)
    ハンサムな外見が売りのフレアーであるが、小柄な体格で苦労したレスラー生活を描いた根性ストーリー。巨漢の敵として登場したブッチャーが、その根性に惚れ込み味方につくという展開。その他ブロディやキラー・コワルスキーと対戦。リッキー・スティムボートとのライバル関係も描かれているほか、テリーや鶴田との防衛戦を通じて「負けないレスリングをしっかり身につけている王者」というフレアー像が描写されている。
    フレアーのスタイルは元祖ネイチャー・ボーイのバディ・ロジャースを真似たものだが、フレアーがそのロジャースを「人気だけで実力がなかったため控室でゴッチにKOされ男として最悪の恥をかかされた」と罵倒するシーンがある。そのシーンはゴッチ編において実際描かれ、本作では一貫してロジャースは見た目だけで実力のないレスラーという描写であった。
  • 夢の英雄! タイガーマスク(週刊少年サンデー・1982年5号 - 1982年31号)
    当時の現役人気レスラーであり、生みの親が原作の梶原一騎自身ということもあって、シリーズで最大の長編になっている。
    梶原本人もたびたび登場し、当時のリアルタイムでタイガーの正体の謎解きをしている描写があるが、佐山サトルのエピソードが描かれるなど、正体が佐山である事を明かしていると言っていい内容である(あくまで「タイガーの正体が仮に佐山サトルだとすれば…」という形であり、異説も紹介している)。ライバルとしてダイナマイト・キッドブラックタイガーマーク・ロコ)が登場。
  • 超人一番! ハルク・ホーガン(週刊少年サンデー・1982年32号 - 1982年49号)
    アントニオ猪木対モハメド・アリを見て打倒猪木を誓いプロレスに入った、という設定になっている。ちなみに、これについてホーガンがレスラーになる前にバンドをやっていたこと(これは事実)を踏まえ「ホーガンにギターを捨てさせた」と表現されているが、実際にはホーガンはバンドではベーシストをしていた。ハンセン、アンドレと日本リングで外人レスラーNo1をかけて戦った。
    アックスボンバーはハンセンが新日を去る際「俺のラリアットをハルク、君がそのまま使ってくれたら嬉しいよ」とハンセンが「授けた」もの[3]だが、ホーガンが独自に考えたことになっている。
  • 文明のキングコング! ブルーザー・ブロディ(週刊少年サンデー・1982年50号 - 1983年17号)
    ハンセンとは大学の同級生だったことになっているが(実際はブロディが3つ年上)、シリーズの中では一番リアルに近いと言われている。ブロディが元新聞記者という設定もコラム記事を書いていた時期があり、あながち間違ってはいない。ブロディの理解者がハンセンやフリッツ・フォン・エリックなどという限られた人物であった事もハンセンの自著などで明らかにされており、ジャンボ鶴田が強敵であった事も語っていたという。他に駐車場で最初にブロディに全日本移籍をハンセンが告げるが、現実ではホテルであるが、これも事実でタッグ復活の打ち合わせをしたのも確かである。「単なる怪物じゃない扱いをしてくれる」とブロディが日本を気に入っていたのも事実である。
  • 東洋の神秘! カブキ(週刊少年サンデー・1983年18号 - 1983年26号)
    日本のプロレス界で巻き起こる様々な軋轢に辟易し、プロレスそのものに失望しかけていた高千穂明久が、東南アジアでのある試合をきっかけに心機一転。本格的に拳法を学び、実力派の怪人ヒール、ザ・グレート・カブキへと変身するというストーリー。
    カブキの師となる拳法家のウォン・チュン・キムは、ブッチャー編のガマ・オテナの一番弟子という設定であるが、実際にカブキに空手流の突き、トラースキック、ソバットを教えたのは空手の有段者でもある上田馬之助である[4]
    日本プロレスの内紛についても多くのページが割かれており、「文責・梶原一騎」として日本プロレス社長の芳の里が会社の金で豪遊していたと断定する記載がある。

梶原一騎の逮捕により打ち切りとなったが、連載が続いていれば、続きとしてジャンボ鶴田編を執筆する予定があった。

備考

  • 斉藤由貴主演のドラマ『吾輩は主婦である』(第38回:『おうち』2006年07月12日放送)の中で吾輩(注:夏目漱石が乗り移ったみどり《演:斉藤由貴》)になりたての頃に本作を夢中になって読んでいる場面が描かれている。
  • 2008年、DDTプロレスリング所属の男色ディーノと原田久仁信による「DDTスーパースター列伝」を製作。
    • 毎回、DDT所属レスラーをピックアップした内容で、本家スーパースター列伝の脚色・演出がちりばめられている。
    • 同人誌として販売。現在までに全8冊発行。

脚注

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関連項目


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  1. テンプレート:Cite book
  2. 月刊ビッグレスラー 1982年11月号P130-135 『テリー・ファンク インタビュー』(立風書房
  3. 月刊ビッグレスラー 1982年11月号P123 『ホーガン時代の幕開け 最終回』(立風書房
  4. 月刊ビッグレスラー 1982年10月号P155 『海外マットニュース』(立風書房