タラバガニ

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ファイル:KingCrab-reverse.JPG
タラバガニの腹側(メス)。カニ類と違って、腹部に左右対称性は見られない。
ファイル:Redkingcrab.jpg
タラバガニ
(ヒトとの大きさ比較を兼ねる)

タラバガニ(鱈場蟹、学名Paralithodes camtschaticus英語Red king crab)は、十脚目(エビ目)- 異尾下目(ヤドカリ下目)- タラバガニ科 (en) - タラバガニ属 (en) に分類される甲殻類の一種(1)である。タラバガニ属はタラバガニを含む5種からなる。和名に「カニ」の名があるが、生物学上はヤドカリの仲間である。

食用に珍重され、分布域の沿岸では重要な水産資源の一つとなっている。

呼称

学名

種小名 camtschaticus は分布域内にあるカムチャツカ半島に由来する。種小名は女性形 camtschatica が用いられることもあるが、属名Paralithodes は男性形なので、同じく男性形の camtschaticus を使用するのが望ましい。

諸言語名

和名は生息域がタラ漁場(鱈場[たらば])と重なることに由来し、古来、「鱈場蟹」と呼ばれてきたものを、本草学および、博物学とその後継である生物学が、学術名として引き継いだものである。「カニ」の名称は学術的には問題があるが、広く普及している通俗名を重視する姿勢をもって、改められることなく採用された。

英語では king crab という大グループのうちの一種との認識で、red king crab仮名転写:レッドキングクラブ)と呼ばれる。

一方で、同じ英名 King Crab と呼ばれる海産動物ではカブトガニがいるが、こちらも、カニではなく、クモに近い動物なので、どちらも本物のカニではない妙なところが共通している。

生物的特徴

分類

タラバガニ属とその下位分類5種(タラバガニとその近縁種)をここに示す。

近縁種として、北日本沿岸に分布するタラバガニ属(学名:genus Paralithodes)として、タラバガニ(学名:P. camtschaticus、英語名:red king crab)のほかに、アブラガニ(学名:P. platypus、英語名:blue king crab)と ハナサキガニ(学名:P. brevipes、英語名:未確認)、北太平洋東岸の P. californiensis (英語名:California king crab)、および、P. rathbuni (英語名:未確認)の4種類がある。前3者はどれもタラバガニ同様重要な食用種となっている。

そのほか、チリ・アルゼンチン付近に分布するな南タラバガニ(学名:”Lithodes Santolla”、英語名:Southern king crab)、”Lithodes Turkayi”(英語名:South Atlantic king crab、和名:未確認)や南極イバラガニ(学名:”Paralomis Spinosissima”、英語名:Antarctic stone crab)も近年テンプレート:いつ食用種として捕獲されている。

形態、ほか

ファイル:The Childrens Museum of Indianapolis - Alaskan red king crab.jpg
インディアナポリス子供博物館のコレクションのタラバガニ。

幅は25cmほどで、を広げると1mを超える大型甲殻類である。全身が短い状突起で覆われている。 食用として流通する際は茹でられて赤橙色になったもの(外骨格に含まれる成分であるアスタキサンチンが加熱によって可視化したもの)が多いが、生体は背中側が暗紫色、腹側が淡黄色をしている。

甲は丸みがあり、やや前方に尖った五角形をしている。両脇が盛りあがり、複眼の間に尖った額角、中央に"H"型の溝がある。なお、心域(H字の中央下の区画)に6つの突起があり、ここで近縁種のアブラガニ(突起が4つだけ)と区別できるが、稀に5本の個体(アブラガニ)も見つかる[1]

5対の歩脚のうち、第1歩脚は鋏脚で、右の鋏が左より大きい。太くて長い歩脚の中では第3脚が特に長い。第5歩脚は小さくて鰓室(さいしつ)に差し込まれており、(えら)の掃除をする役割がある。このため外見はほぼ「カニ」であるが、脚が3対しかないように見える。他にもメスの腹部の左右が異なり、腹肢が左側のみにあることなど、ヤドカリ類の特徴がある。また、横方向に移動するのが一般的であるカニに対して、タラバガニは縦方向にも移動ができる。顔立ちもよく見ると、カニ類よりは、ヤドカリ類に近い特徴を備えている事が判る。

分布・生態

日本海オホーツク海ベーリング海を含む北太平洋北極海アラスカ沿岸、ガラパゴス諸島チリアルゼンチン付近に分布する。日本の太平洋沿岸では、駿河湾徳島県沖の水深約850- 約1,100mの海域での捕獲も記録されている。

食性肉食多毛類貝類など様々な小動物を捕食する。一方、天敵としては、人間以外にもオオカミウオミズダコなどがいる。

なお、ロシアノルウェー国境沖のバレンツ海には分布していなかったが、1960年代に旧・ソビエト連邦の科学者がバレンツ海に放流し、繁殖させることに成功した。1980年代後半からノルウェー沖でも生息が観察されるようになり、現在テンプレート:いつでも分布域を広げつつある。この個体群はロシア・ノルウェー両国で漁業資源として利用されているが、天敵がいない環境で爆発的繁殖を遂げ、外来種として既存の生態系を脅かす存在ともなっている。このため、現地では旧・ソビエト連邦時代の国家元首の名にちなんで Stalin crabスターリンクラブ)とも別称されている。

4月から6月に浅場で産卵し、成体は水深30- 350m程度の砂泥底に生息するが、若い個体は浅海にも生息する。水温の低い高緯度海域ほど浅い場所に生息する。オス・メス共に孵化後、4年程度で成熟した後に繁殖を行い、15年程度生存する。メス1匹あたりの孵化数は、高齢個体ほど多いと考えられる。種苗稚ガニ生産用に育成した個体では、16,000粒から80,000粒程度を抱卵した。

人間との関わり

漁獲

日本

日本における主な漁場オホーツク海で、沖合底引き網刺し網で漁獲される。かつては蟹工船があり、漁獲したものを海上で缶詰にまで加工していた。かつては、マダラの延縄漁でも混獲されていた。近年テンプレート:いつ、乱獲によって生息数が減少している。

日本では「農林水産省令・『タラバ』蟹類採捕取締規則」という法令により、メスの採捕が禁止されているが、販売についての規制は特になく、ロシアからの輸入品が「子持ちタラバ」として流通している。

景品表示法違反事件

アブラガニはタラバガニとよく似ており、しばしば混同されることもあるが、アブラガニを「タラバガニ」と表示して販売することは、日本では禁止されている。

2004年3月21日の毎日放送系ローカル『Voice』、同年4月25日のTBS系『報道特集』にて、偽装販売問題が放映され、北海道札幌市二条市場への取材により、一部の店舗で偽装を認めたコメントが放映された。

2004年、公正取引委員会の調査により、4月27日付そごう広島店の「初夏の北海道物産展」の折り込みチラシに、「日替わりご奉仕品」があたかもタラバガニであるかのように表示していたが,実際にはアブラガニであった事実等が認められ、6月30日、景品表示法の規定に基づき、株式会社そごうほか3社に排除命令を行った。これらの一連の報道をきっかけに、アブラガニの存在が広く知られるところとなった。

また、アブラガニのほかにもイバラガニ(学名:Lithodes turritus)など多くの近縁種を抱えているので、こちらも偽装に使われるのではないかと指摘する関係者も存在する。

流通・食用

塩茹で蒸し蟹として流通することが多く、そのまま食べる以外にも様々な料理に使われる。日本では半透明の生身を刺身で賞味することもあるが、加熱したものより繊維質が強靭で、旨みも薄い。

脚注・出典

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参考文献

関連項目

外部リンク

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