ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団
テンプレート:Pathnav 『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』(ウルトラろくきょうだいたいかいじゅうぐんだん,タイ語原題:หนุมาน พบ 7 ยอดมนุษย์=Hanuman pob Jed Yodmanud)は、1974年に制作された円谷プロ、チャイヨー・プロダクション合作の劇場映画[1]。ただし、チャイヨーはこの作品の著作権を主張しており、円谷プロはそれを否定も肯定もしていないため、現在は「合作」と主張している当事者はいない[2]。
1979年3月17日(東京地方は4月28日[3])松竹洋画系公開。タイ王国では1974年11月29日に初公開された後テンプレート:Refnest、2001年には劇中音楽の差し替えや再アフレコを施し、リバイバル公開された。
目次
概要
仏像泥棒に殺害されたコチャン少年がウルトラの母の手によって、インドの神話に登場する神「白猿ハヌマーン」として甦り、ウルトラ兄弟(ゾフィーからウルトラマンタロウまでの6人)と共にタイ王国に出現した怪獣軍団と戦う作品。タイトルこそ「ウルトラ6兄弟」となっているものの、物語の主役はハヌマーンであり、ウルトラ兄弟が戦うのは終盤になってからである。
- 巨大化したハヌマーンが仏像を盗んだ強盗を追いかけ回し、「仏様を大切にしろ! 大切にしない奴は死ぬべきなんだ!」と握り潰す。
- 水不足を解決するために、ハヌマーンが接近する太陽の神に直談判して遠ざける。
- ハヌマーンが「卍」のポーズで飛行する。
など、タイの文化を下地にして作られている。
作品の成立
1970年代半ばは、タイにおいて日本の漫画、アニメ、ヒーローが非常に人気を得ていた。本作は、タイのチャイヨープロダクションの社長ソンポート=セーンドゥアンチャイ(ソンポート・センゲンチャイとする書籍テンプレート:Fullもある)が、テンプレート:要出典範囲原題は「ハヌマーンと7人のウルトラマン」で、ウルトラの母も含まれている。これはタイ語では「6」の発音が「転ぶ」という単語と同じであまり縁起のよい数字と考えられていないため、縁起をかついで「7人」としているためである。一方、『ファンタスティックコレクションNo.10 ウルトラマンII』(朝日ソノラマ・1978年発行)には、原題「白猿ハヌマーン&ウルトラ6兄弟」と記載されている[3]。
円谷プロとの合作は『ジャンボーグA&ジャイアント』に続く2作目[1]。また、本作の後、東映の『仮面ライダー』と競演した『ハヌマーンと5人の仮面ライダー』[4]や、『ジャンボーグA&ジャイアント』のフィルムを流用した『キンガー・ガイヤシッ』も製作された。
インドの神話に起源を発し、孫悟空のモデルともなった、怪力で忠孝なハヌマーンはタイの人気者である。芝居などでもオチに困ると脈絡なくハヌマーンが登場し、その度大喝采となる。いわゆるデウス・エクス・マキナ、または日本の講談などでの加藤清正、源義経のような扱いである。そのハヌマーンがウルトラマンと共闘する娯楽作品となった。
制作当時は日本での公開は未定となっていたが、1970年代後半の第三次ウルトラブームを受けて急遽タイからネガを取り寄せ公開された[1]。一部地域では『実相寺昭雄監督作品ウルトラマン』や『ウルトラマンレオ レオ兄弟対怪獣兄弟』と併映された[3]。
しかしその反面、本作の日本国内興業権の支払いに窮した円谷プロが、チャイヨープロに『ウルトラマンタロウ』以前のウルトラシリーズの海外使用権を譲渡する契約を交わす(ただし、チャイヨー側の主張)契機ともなった。そのため本契約を巡って裁判が起こり[5]、2014年現在、日本ではビデオやDVD、雑誌掲載が行われない状態にある。
登場人物
- コチャン
- ブッダを敬う、勇気ある少年。3人組の仏像泥棒に殺害されてしまったが、ウルトラの母によって白猿ハヌマーンの命を与えられて蘇った。
- アナン
- コチャンの親友。ハヌマーンが蘇ったコチャンであると確信し、一人追いかけるうちに熱射病で倒れてしまうが、コチャンに助けられる。その後、コチャンに別れを告げられるも、基地の戦いではハヌマーンを応援し続けた。
- 日本語クレジットではアナンダ。
- ヴィルッド博士
- ドーナ第7ロケット基地で人工降雨ロケットを開発し、タイの国を干ばつの危機から救おうとしている科学者。科学を過信しており、「科学こそ現代のハヌマーンだ」と考えている。頑固な性格でもあり、指揮官の「実験中止」という命令に平気で逆らった。ロケット施設を怪獣軍団に破壊された末に発狂。燃え盛る基地の中でハヌマーンに助けを求めた。
- 続編の『ハヌマーンと5人の仮面ライダー』では精神は回復しており、ハヌマーンと仮面ライダーに協力した。
- マリサー
- アナンの姉で、ヴィルット博士の助手。ヴィルット博士に「仏の力を忘れるな」と釘を刺す。アナンとともに基地から逃げる際、ゴモラに襲われたが、ウルトラ兄弟とハヌマーンに助けられた。
- シープアク、シースリヤー
- ドーナ第7ロケット基地の職員。『ウルトラマンタロウ』のZATの隊員服に似た制服を着ており、(ヘルメットは『ミラーマン』のSGMのものを流用)その下にはレオタードを着用している。日本語版では関西弁で会話する。テンションは高いが、怪獣軍団の出現に為す術もなくひたすら右往左往していた。ウルトラ兄弟に関しては全く知識がないらしく、どこから来たのかと首をかしげていた。
- 仏像泥棒
- 仏像の首をもいで盗んだ3人組の仏像泥棒たち。内の一人がそれを見咎め、追跡してきたコチャンを射殺した。巨大化したハヌマーンから追い掛け回される。散々いたぶられた挙句、一人は踏み潰され、一人は大木の下敷きになり、残った一人(コチャンを殺した張本人)は握り潰された。
- 続編の『ハヌマーンと5人の仮面ライダー』では3人の中の1人がキングダークによって復活し、仮面ライダーと戦っている。
- 太陽の精スーリヤ
- 太陽の動きを支配する精で、チャリオットに乗っている。太陽の火の勢いを強くしたうえ、地球に近づき過ぎたためにタイの国に水不足をもたらしてしまい、ハヌマーンに説得されて地球から離れていった。
- 風の女神サワハ
- タイの風の女神で、空から地上の平和を見守っている。体いっぱいに吸い込んだ風を吐き出した時に、風神の子ハヌマーンを生み出した。
- サングロテトリチャナーの花
- 『ラーマーヤナ』で語られる、ハヌマーンがラクサナを助けた話に登場する花。
- サッパーヤ山の頂点に咲いている赤い花で、花汁をかければどんな傷口もたちまち治ってしまうという強力な治癒力を持っているが、太陽が昇りきる前にしないと効き目はなくなる。『ラーマーヤナ』においては、鬼の矢に倒れたラクサナを救うために、ハヌマーンは太陽にしばらく動かないでいてもらうよう懇願してまでこの花を手に入れた。現代(今作中)では、熱射病に倒れたアナンの命を救うためにコチャンが再び手に入れ、彼の命を救った。
- 人間の女性のような人格を持っており、お茶目で人を馬鹿にしたような態度で、様々な場所に現れては消える。ハヌマーンでさえも、山の頂点で花を捕まえるのに苦労したほどだったが、最終的にはハヌマーンの尻尾で捕縛された。
- ウルトラ6兄弟(ゾフィー、ウルトラマン、ウルトラセブン、帰ってきたウルトラマン、ウルトラマンA、ウルトラマンタロウ)
- M78星雲でコチャンの復活を見届る。終盤では苦戦するハヌマーンを助けに現れ、ともに戦った。アナンからは「ウルトラマン兄弟」と呼ばれていた。
- ウルトラの母
- ウルトラ兄弟の母親的存在。コチャンの遺体をM78星雲へ運び、新たな命を与えた。本編中、ハヌマーンとの共演は無い。
白猿ハヌマーン
1万年以上前からタイの平和を守ってきた風神ラマヤーナの子で、風の女神サワハによって生み出された[6]。3人組の仏像泥棒に殺害された、勇気ある少年・コチャンにウルトラの母が白猿ハヌマーンの命を与えた。両手を胸の前で合わせて祈ると変身する。常に猿のように跳ねており、踊っているようにも見える。ウルトラ6兄弟とともに、ゴモラ率いる怪獣軍団と戦った。劇中ではタイ式ボクシングも披露している。身長、体重は共に不明。
叙事詩『ラーマーヤナ』においてハヌマーンは風神ヴァーユと、猿王ケーシャーリーの妻アンジャナーとの子となっている。また、友人ラックサナが矢に打たれた、という話も原典では叙事詩の主人公ラーマ王子(ラックサナはその弟)であり、時間稼ぎに諭した相手は太陽ではなく月だった。なお、タイに一般的に流布している『ラーマーヤナ』の伝本は、インドで一般的なヴァールミキ版ではなく、ラーマ1世による『欽定版ラーマキエン』と呼ばれる伝本やその流れを汲むもので、タイ独自の要素を多く含んでいる。尻尾の形状や体色の異なる兄弟が数人存在する。
能力
- 三叉槍(トライデント)
- 柄の短い三叉槍。剣に変化する。
- ハリケーンガン
- 三叉槍から発射する旋風風。ゴモラ以外の怪獣を4匹纏めて舞い上げて落下させ、ダメージを与えた。また、ドロボンの体の肉を吹き飛ばして骸骨にして倒した。
- ウィンドスラッシュ
- 三叉槍を変化させた3発の光輪。アストロモンスとダストパンの首を2匹まとめて切断して倒した。
- 三日月状カッター(名称不明)
- 三叉槍を変化させた剣を、三日月状カッターに変化させて投げつける。ゴモラを真っ二つにして倒した。
- 日本版パンフレットでは、上記の三日月状カッターとウィンドスラッシュは共に「ハヌマーンスラッシュ」と呼称されている。
- 飛行能力
- 卍型のポーズで飛行する。この他にも一時的にウルトラマンと同じポーズで飛行したこともある。
- 風化能力
- 風に変化して移動する。
- 投げ技
- 巴投げ、岩石落とし、ジャイアントスイングなどが得意。
登場怪獣
- 古代怪獣ゴモラ
- ドーナ第7ロケット基地での、人工雨ロケット発射実験の失敗による大爆発により地底から目覚めた。怪獣帝王の異名を取る軍団のリーダー格。地震や津波などを発生させる力を持つ。口からは火炎を吐き、角から敵を球体に閉じ込めるキャッチビームと破壊光線を発射、さらには敵に苦痛を与える念力をも使う。
- 地上を逃げ回るアナンを目ざとく見つけ、殺そうとしたが、ウルトラ戦士の光線によって倒された。が、実は生存しており、ドロボンを倒したウルトラマンとハヌマーンに不意打ちをかけ、怪獣念力で二人を苦しめた[7]。しかし、ウルトラ兄弟の必殺光線一斉射撃を受けて怯んだところを7人がかりで蹴り飛ばされ戦意喪失。逃亡を図るもウルトラマンAとウルトラマンタロウに両腕を押さえつけられ、ハヌマーンの剣で滅多打ちにされた果てに、ハヌマーンが剣を変形させた三日月形カッターによって真っ二つになった。
- テンプレート:要出典範囲
- 宇宙大怪獣アストロモンス
- 頭の角から怪光線を発射する。ダストパンと行動しているシーンが多い。ハヌマーンのウインドスラッシュによってダストパンとともに首と腕を切断され、爆散した。
- テンプレート:要出典範囲
- 妖怪怪獣ダストパン
- 両目から破壊光線を発射する。アストロモンスと行動している。ハヌマーンのウインドスラッシュによってアストロモンスとともに首と腕を切断され、爆散した。
- 初出はウルトラシリーズではなく、『ミラーマン』に登場した怪獣。『ミラーマン』登場時には緑色だった目が赤に変わっており、触角がなくなっている。羽は常に畳んだ状態になっている。
- テンプレート:要出典範囲
- 暴君怪獣タイラント
- 口からガスを放射して攻撃する[8]。TV本編のタイラントと比べて細身。ロケット基地の爆発で身体に火が燃え移り、そのまま力尽き爆死した。
- テンプレート:要出典範囲
- 泥棒怪獣ドロボン
- 口からガスを放射して攻撃する。『ウルトラマンタロウ』登場時と異なり金棒は持たず、胸の窪みが無くなっている。ウルトラマンとハヌマーンに頭と腕の肉を剥がれ、さらにハヌマーンのハリケーンガンで体の肉を吹き飛ばされ、骸骨にされて倒された。
- テンプレート:要出典範囲
キャスト
※括弧内は日本語吹き替え
- コチャン - コ・ガオデンディ(佐久間あい)
- アナン - アナン・プリーチャー(白川澄子)
- ヴィルッド博士 - ヨーチャイ・メクスワン(仲木隆司)
- マリサー - パワナー・チャナチット(栗葉子)
- シープアク - シープア(滝口順平)
- シースリヤー - シースリヤー (兼本新吾)
- 盗賊のリーダー - カン・ボンチョ(水鳥鉄夫[9])
- 盗賊 - チャン・ワンペン、ソムノーク (橋本茂雄)
- 太陽の精スーリヤ - 久須美護
- ナレーター - 木原正二郎
声の出演
スタッフ
- 企画・製作 - 円谷皐
- プロデューサー - ソムポート・センドゥアンチャイ、伊藤久夫
- 監督 - 東條昭平
- 脚本 - 若槻文三、淡豊明、ソムポート・セーンドゥアンチャイ
- 音楽 - 冬木透(円谷音楽出版・担当 / 玉川静)
- 助監督 - 中島俊彦
- 現像 - 東京現像所
- 特殊技術 - 佐川和夫
主題歌
- 「ぼくらのウルトラマン」
- 作詞・作曲 - 谷のぼる(円谷皐の変名) / 編曲 - 高田弘 / 歌 - 佐々木いさお、コロムビアゆりかご会
- 日本版の主題歌。タイ版では全く別の歌が流れ、内容はハヌマーンに関連したものになっており、その後のハヌマーンシリーズや2000年代の再編集公開版でもオリジナルの音源も使用された。こちらはタイ国初公開時にシングルリリースされた。大ヒットであった為、現在でもタイの中古レコード店に流通する事がある。
- 1999年発売の「ULTRAMAN COMPLETE SONG COLLECTION」に収録されて以降、「スーパーヒーロー・クロニクル」シリーズ(2003 - 2004年発売)にも収録されないなどという状態が続いたが、2013年発売の「円谷プロダクション 創立50周年記念 円谷プロの世界II★ULTRA ANTHOLOGY★1966~2013」に収録されることとなった。
映像ソフト化
円谷プロとチャイヨー・プロダクションは、ウルトラマンの権利を巡って国際裁判が行われる[5]など関係が悪化しており、日本国内における映像ソフト化は全て中止されている。関係悪化以前にはVHS、レーザーディスク版が存在した。VHS版は現在でも、レンタルビデオ店に置いてある場合もある。タイではビデオやDVDが2014年現在でも発売されているので、PAL規格を再生可能な機器で視聴できる(但し、2001年リバイバル公開版あるいはこれの再編集版)。
- オリジナル版
宇宙に帰るウルトラマンをハヌマーンが見送った後、コチャンが守った仏像の目が光り、コチャンはハヌマーンと分離してアナンら友達の下に帰るという筋になっている。そのため、続編となる『ハヌマーンと5人の仮面ライダー』では、変身シーンがない。
日本版にこのシークエンスはない。日本版の音楽などを後年の音源に差し替えたタイで発売されているVCDは、泥棒退治など一部に日本版より尺が長い部分があるが、容量の関係からか収録されていない。タイで発売されているDVDには存在する。
関連項目
脚注
- ↑ 1.0 1.1 1.2 テンプレート:Harvnb
- ↑ 安藤健二『封印作品の憂鬱』洋泉社より。
- ↑ 3.0 3.1 3.2 テンプレート:Harvnb
- ↑ ただし本作と異なり、東映は制作を許可していない(正確には『仮面ライダーX』劇場版のタイ国配給権を得ただけなのに、無断で新撮・編集を行なった)。
- ↑ 5.0 5.1 チャイヨー・プロダクションの「ウルトラマン訴訟」の節に詳述。
- ↑ 誕生シーンは『ファイヤーマン』の変身シーンを流用。
- ↑ このシーンは『帰ってきたウルトラマン』でのプリズ魔の念力のシーンの流用。
- ↑ ドロポンと共にウルトラ兄弟を攻撃する1カットだけなので、かなり分かりづらい。
- ↑ 白鳥鉄夫と誤クレジット。