めんこ
めんこ(面子)とは、日本の子供の遊びで使われる玩具の一つ。めんこの語源は「小さな面」、つまり面子の意味である。めんこは、日本の昭和30年代においては、めんち、ぱんす、ぱっちんとも呼ばれていた。[1]
概要
もっともよく知られた形態のめんこは紙製のいわゆる紙めんこであり、厚紙製の手の平大のカード型や円形で、片面に写真や図柄が施されている例が多い。また、その遊びそのものをも指す。カード自体がコレクションの対象にもなっている。駄菓子屋などで販売されているが、牛乳瓶のフタなどの適当な素材で代用することもある。昭和時代の日本では、子供の遊びとして広く流行した。
屋外屋内を問わず、遊ぶことが出来る。体力、技術の伝承は、兄弟の間や地域の遊び仲間の間でなされることが多い。近年、カード自体の強弱を争うなど、体力技術にかかわらず遊ぶことが増えてくる中、衰退する遊び道具であり、遊び方であるといえるが、流行もののキャラクター等を取り入れて21世紀に入っても細々と受け継がれている[2]。但し、『改造メンコバトル BANG!(バング)[3]』の様な独自の進化[4]をしたメンコも存在し、又、『めんこスタジアム[5]』の様にルールやシステムに時代に合わせた改変を加える[6]等の改良も行われている。
世界的に見ると、「めんこ」に非常によく似たものとして、PogsやTazosなどというゲームがある。
尚、本遊戯を題材にしたショートアニメ『超爆裂異次元メンコバトル ギガントシューター つかさ』がEテレやニコニコ動画等で配信されている。
ルール
もっとも典型的な遊び方である「起こし」のルールは以下の通りである。
- 地面にめんこを置く
- 別の者が別のめんこを叩き付ける
多くの場合、以上の競技手順は同じだが、あらかじめ地面に置かれた方の所有権の移転に関わる勝敗の決め方が、地方や集団によって異なる。所有権の移転がなされる場合の代表例を以下に列挙する。
地面に置くめんこの枚数は1枚の場合もあるが、複数の参加者が1人1枚、または、参加者1人2枚など、様々である。
また、めんこの大きさに大小があり、子供にとって欲しい図柄が異なるので、自分の欲に任せて明らかに不当なルールを適宜つける例が横行する。取り上げられためんこは返してもらえない(所有権が移転する)ので、真剣に遊ぶ要素がある。
雨に濡れると柔らかくなるので、蝋を塗りつけるという「強度保持」をする一方、裏返りにくくするためぐにゃぐにゃにするなど、めんこの性能を変化させたりする。
この他にも他のカードゲームと類似した遊び方である「積み」や「抜き」、「落とし」、また物理的な遊び方として「壁当て」や「滑り」などがある。
めんこ遊びの起源としては、銭を使った遊戯である意銭(ぜにうち)が挙げられている。全国に普及する過程で、木の実や貝(ぜぜ貝)で代用した子供達の遊びが生まれ、流行し、子供達をターゲットにした商品として泥めんこが上方において発生したと推測されている。ただし、それを裏付ける文献資料は乏しく、考古学的調査による傍証により推測するしかないのが現状である。
めんこの素材
かつては泥製の泥めんこや鉛製の鉛めんこも存在した。最初に登場したのは泥めんこであり、江戸時代の享保年間に遡る。粘土を抜型により型取りし、乾燥させ、素焼きにすることにより完成したと考えられている。当時は面模、面打などと呼ばれており、めんこ(面子)の呼称の定着時期は確定されていない。泥めんこの流行時代は明治初期まで続いたが、鉛めんこの登場により衰退し、一部の地域における郷土玩具や寺社の土産物に残存するにとどまった。
明治維新を迎えると、泥めんこに取って代わって、鉛めんこの流行が始まった。これは、西洋式の印刷機が普及するに伴い、材料の鉛の生産量が激増し、他の製品への鉛の利用が急速に進展したからである。1870年代末期に登場し、1879年(明治12年)頃には量産化され爆発的に普及していった。鉛めんこにはその後の紙めんこには見られない独特の遊び方が存在したことが伝わっている(「トーケン遊び」「起こし遊び」)。鉛めんこを「起こし遊び」により何度も使用すると変形が起こり、図柄も歪む。不細工な顔を意味するおかちめんこはこの歪んだめんこの図柄に由来する言葉である。
しかし、鉛の日用品の普及は鉛中毒事件を引き起こすことになり、1900年(明治33年)には鉛の玩具への使用が規制され、鉛めんこも発売禁止とされ、既存の製品も市場から回収された。鉛めんこはこうして姿を消し、紙製の紙めんこが登場し、以降これが主流となる。
紙めんこの登場は鉛禁止令の他にボール紙の生産量が増大したことが大きな理由であり、材質の安価さはめんこの爆発的普及とめんこ産業への新規参入ブームを巻き起こした。めんこの材質の変遷には当時の板紙業界の事情も色濃く反映している。
紙めんこの図柄
表面
表面には、その時代の人気のあるものが図柄として用いられる。力士、野球選手などのスポーツ選手が描かれた時代もあり、一種のブロマイドのようなものであった。その後は怪獣、怪人、ロボット、ヒーローが多色で印刷されていることが多い。但し、著作権等の許諾を得ていないためか、オリジナルを一部変えた偽物のものも多かった。
2000年(平成12年)以降は『ポケットモンスター』(ポケモン)を題材にして、ボードゲームやトレーディングカードゲームの要素も取り入れた『ポケモンパッチン』シリーズが代表的な商品である。
裏面
裏面は紙の素地か、単色で印刷されていることが多い。裏面には、じゃんけん、トランプのカード、武器などが描かれており、工夫によってその図柄を用いて遊ぶことも出来るようになっている。
名称
地域・時代によって「めんこ」の名称は異なる(太字は高アクセント)。
- 札幌市では「パッチ」
- 津軽弁では「びだ」
- 仙台弁では「パッタ」(仙台)、「パッツ」(松島)、「パンチョ」[9]
- いわき市では「ペッタ」
- 酒田市では「ペッチ」
- 名古屋弁では「ショーヤ」
- 関西弁では「べったん」
- 鳥取市では「げんじい」
- 浜田市では「ぱっちん」
- 広島県三原市では「パッチン」(昭和30年代:現在の呼称は未確認)
- 大分県では「パッチン」(大分県大分市で行われる祭りである府内戦紙(ふないぱっちん)は、山車がこのパッチンの図柄に似ているため名づけられた。)
- 日田弁では「おちょこし」
- 鹿児島弁では「カッタ」(「カルタ(Carta)」からか)
- 沖縄弁では「パッチー」
その他
- めんこは江戸時代はバクチ遊びの一種と見なされ、たびたび規制の対象とされた。明治時代以降にもめんこ遊びをアングラ視する風潮が続いた。
脚注
関連書籍
- 『メンカー』いしかわじゅん 立風書房
- 鷹家春文(編)『めんこグラフィティ-甦る時代のヒーローたち』(光琳社出版、1991年)
- 『メンぱっちん』小林よしのり 講談社 - めんこが劇中では競技として扱われ、スポ根漫画のパロディとなっている点が特徴。
関連項目
http://www.sportsfukiya.net/参照
- 超爆裂異次元メンコバトル ギガントシューター つかさ - 本遊戯を題材にした9分間のショートタイプアニメ。立体(ソリッド)主体デザインの凡そ"ヘタウマ"的なキャラが熱くバカバカしい戦いを繰り広げる。
- ↑ 進藤 進 「メンコの歴史、思い出」『多摩のあゆみ』101号、たましん地域文化財団、2001年2月、55-63頁、ISBN なし
- ↑ 『妖怪ウォッチ マルメンコレクション』(エンスカイ)の様に別の作品から類似のシステムを流用する場合が多い。
- ↑ 爆転シュート ベイブレードとのタイアップ商品。
- ↑ 同じ販売元タカラトミーの爆転シュート ベイブレード同様に、パーツを組み合わせて強化改造を可能としたもの。その為に本体はプラスチック製となっている。
- ↑ TBS系列の番組『筋肉番付』とのタイアップ商品。イメージキャラクタにケイン・コスギを採用している。
- ↑ 専用のプロテクタ等を装備する等、番組の仕様に合わせてルール改変がなされている。
- ↑ "煽(あふ)る"と云う表現がある。
- ↑ 若しくは下に潜り込んで突き刺さる場合も同じく数えられる。
- ↑ 宮城県「パッツ」(東北7県ブロックネット『週刊ことばマガジン』2005年12月24日)