ドラえもん のび太とアニマル惑星

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ドラえもん のび太とアニマル惑星』(ドラえもん のびたとアニマルプラネット)は、藤子・F・不二雄によって執筆され、月刊コロコロコミック1989年10月号から1990年3月号に掲載された大長編ドラえもんシリーズの作品。および、この作品を元に1990年3月10日に公開されたアニメ映画。大長編シリーズ第10作、映画シリーズ第11作。

映画監督は芝山努配給収入19億円、観客動員数380万人。第8回ゴールデングロス賞優秀銀賞受賞。同時上映は『チンプイ エリさま活動大写真』。2008年夏に鴻上尚史演出で舞台化された。

解説

平穏に暮らす動物たちの惑星「アニマル星」を侵略しにやってきた地球人型宇宙人「ニムゲ」による秘密犯罪結社「ニムゲ同盟」と、ドラえもん、のび太ら5人の戦いを描いた作品。「ニムゲ」は人間そのものであり、自然環境を破壊し野生動物の生態を脅かす人間社会を痛烈に批判している。本作の敵組織「ニムゲ同盟」は映画版では「秘密結社コックローチ団(Cockroach =ゴキブリを意味する英単語)」と呼ばれており、強い否定的イメージが暗に植えつけられている。これに対し、舞台となるアニマル星は自然破壊の反面教師として徹底的な環境保護が実現されており、エコロジーの面では理想的な世界として描かれている。各種の動物が擬人化した世界観を生かし、「迷子の仔猫を助ける犬のおまわりさん」や「黒ヤギさんからの手紙を読まずに食べてしまった白ヤギさん」といった有名な童謡になぞらえた場面が登場する。

映画シリーズの中では、シリアスなテーマ性、およびメッセージ性(特に環境問題など人類文明への警鐘)を抱えた作品であり、冒頭、裏山のゴルフ場建設計画に反対する町内会の一員、のび太のママが環境問題についてのび太とドラえもんに説教する場面などが随所に挿入されている。ゴルフ場建設に関しては、当時のバブル景気の世相を反映している。このように環境問題へのメッセージ性が強い作品であり、作者自身もフィルムコミックスのあとがきで「(環境問題の扱いが)少し露骨だったかもしれない」と述べている。

原作ではドラえもんたち5人はアニマル星の住民にとっては地球から来た異星人でいう位置づけである。彼らが異星人であることはアニマル星の皆が知っており、戦いのあとに5人に感謝して国民の祝日に定め、その盛大な祝賀会も行われ、別れもそこで行われ完全に英雄扱いだった。それに対し、映画では5人の正体は犬の少年チッポしか知っておらず、また別れも辛くなるからとこっそり行い、チッポだけが自転車で見送りに来るという形で、5人はあくまで一市民という扱いだった。また、出木杉の登場場面はすべてカットされた。終盤での展開も原作ではあっさりと流されたのに対して映画では大幅に追加され、かなり深く踏み込んだものとなり、ゴルフ場建設計画も中止となっている。

あらすじ

ある夜、のび太はピンクのもやをくぐって見知らぬ森に迷い込む。そこでは動物たちが人間の言葉で話していた。翌日、のび太はその体験を皆に話すが「幼稚園児並みの夢だ」と馬鹿にされるだけ。しかし、動物たちが持っていたホタルを入れていた花(ホタルブクロに似ている)が部屋の前に落ちていたのを知り、昨夜のことは本当にあったのではないか…とのび太は考える。そんな中、ママの話からのび太たちの学校の裏山がゴルフ場建設のために切り崩されてしまうという計画があることを知る。

その夜、寝ぼけたのび太は、再び部屋の前に現れたあのもやの中に入り込んだことに気付き、あの世界は夢ではなかったと確信。後を追ってきたドラえもんと共にもやの向こう側を探検する中で、2人はチッポという犬の少年に出会い、友達になる。

翌日、裏山を開発しようとする業者らが下見に訪れた。ドラえもんがひみつ道具で追い払ったものの、これくらいであきらめるとは思えず、安心はできない。悩んでいた時、2人はまたあのピンクのもやを見つけた。しずかも誘い、再びアニマル星へ遊びに行くことに。だが、こっそりついてきたジャイアンスネ夫は、もやの中をさ迷ううち、見渡す限り荒れ果てた世界に辿り着いてしまう。ジャイアンはその中で「恐ろしい何か」を感じると語るのだった。

舞台

アニマル星
様々な種類の動物たちが平和に暮らす星。先祖達を生み出した人間の科学者の発明によって、太陽光や風力などのクリーンエネルギーによる発電技術や、光、水、空気から合成食物を製造する技術、高度な汚水処理装置など、自然環境に徹底的配慮した地球よりもはるかに発展した科学文明が栄えている。
環境技術に関してはドラえもんに「22世紀の地球以上」と言われる程だが、その反面、完全平和主義で戦争を体験した事が無い為に、軍隊や兵器の技術は一切存在せず、宇宙船も持っていない為、宇宙進出も果たしていない。また国という概念も存在しない。
科学者が先祖を進化させてこの星へ移住させた事実は神話として語り継がれている。住民の信仰心は強く、この神話を真実と信じており、この星が平和主義で環境保護が徹底されているのはその影響が大きい。正月には全市民が必ず参加する行事(神事)が執り行われている。
地獄星
アニマル星との二連星で、アニマル星のすぐそばにある星。動物たちはこの星を「月」と呼んでいる。
かつて地球人型宇宙人「ニムゲ」による文明世界が栄えていたが、環境問題核戦争自然災害などですっかり荒廃しきってしまい、星の地下にてわずかに生き残った者達は、石器時代の生活水準にまで衰退している。宇宙船を始めとする機械の部品すらも自分達で造れなくなってしまったために、古代のスクラップ置き場のガラクタから、リサイクルする形で日用品武器宇宙船を製作している。過去の過ちを省み、1000年の時を経て現在では文明再建の目処が立っているが、「宇宙は人間のために存在する」と考える一部の過激派達が秘密犯罪結社「ニムゲ同盟」を結成した。
水や空気が汚染されているため、ここで暮らす者は常に防護服をまとっているが、防護服はショックガンによる攻撃を無力化する等、電気耐性に優れている。
「ニムゲ同盟」の他に、政府機関直轄と思われる治安維持組織の「連邦警察」も存在する。

用語

光の階段 と 星の船
アニマル星の創世神話に登場する二つの道具。1000年前、動物たちを悪魔から救うため、星の船に乗ってこの星を訪れた神がその環境を動物たちが住みやすいように造り変え、二つの星の間に光の階段をかけ、悪魔たちを眠らせて動物たちを避難させた。そして神は二つの道具を禁断の森の奥深く埋めたとされる。チッポは古文書を手がかりにそれらを探そうとしている。
実は、のび太たちがアニマル星を訪れるために使った、ピンクのもやを発生させた装置こそが光の階段の正体だった。星の船は文字通り☆の形をした小型宇宙船で、のび太が地獄星に行くために発掘、使用した。
ニムゲ
地球人型宇宙人。地獄星に住む。アニマル星を侵略しようとするニムゲの一団は、他のニムゲから「ニムゲ同盟」と呼ばれている。なお原作では、「ニムゲ」はアニマル星を侵略しようとする地球人型宇宙人のみを指している。
映画では「ニムゲ同盟」の呼称が「秘密結社コックローチ団」となっているほか、ニムゲの防護服のデザインと色も相違がある。(口の部分にガスマスクのようなものがつけられているなど)

ゲストキャラクター

アニマル星

チッポ
- 田中真弓
好奇心あふれる犬の少年。アニマル星に伝わる神話に興味を持ち、真偽を探るために無鉄砲な行動を起こしては、たびたび父親に叱られる。そして、その無茶な行動の中でのび太やドラえもんと知り合う事になる。苗字はワンゲルだが、コロコロコミック連載時には「犬山」となっていた(コミックス版で修正)。
チッポのパパ
声 - キートン山田
町内唯一の警察官。無茶なことばかりする息子に気苦労が絶えない。二ムゲの襲撃の際、左手を負傷する。
チッポのママ
声 - 佐々木るん
チッポの母。専業主婦。
ロミ
声 - 西原久美子
チッポの従姉妹。コックローチ団に連れ去られ、人質に捕られるが、のび太に救出される。
ウータン
声 - 川久保潔
町長であるオランウータン。敬虔なアニマル星の神の教徒で、ニムゲとの決戦前夜に神への祈りを続けた。
ゴリ郎の父
声 - 広瀬正志
船長。近眼のためか、ジャイアンのことを何度も自分の息子と間違えていた。原作では太っていたが、映画ではガッシリとした体格になっている。
ゴリ郎
声 - 峰あつ子
上記のゴリラの息子。ジャイアンによく似た顔をしている。
ペリカン
声 - 茶風林
郵便配達員。
白ヤギ
声 - 依田英助
アニマル惑星の住人。黒ヤギから来た手紙を読まずに食べ、「さっきの手紙の用事は何か」と手紙で聞くはめになった(童謡「山羊さんゆうびん」を元にしたもの)。
ブタの少年
声 - 松岡洋子
チッポの学友。チッポの探検隊のメンバーだったが、禁断の森でチッポの父に見つかったことで怖気づいてしまい、探検隊を抜ける。
医者
声 - 田中亮一
カラス
声 - 龍田直樹
ウマ
声 - 菅原正志

ニムゲ

連邦警察

スパイ
声 - 平野正人
連邦警察の職員。コックローチ団の団員に変装し、潜入捜査をしていた。偶然、同じく潜入していたのび太と知り合い、後にアニマル星でコックローチ団の逮捕に向かった際に、連邦警察の一員として再会する。
警察隊長
声 - 加藤正之
連邦警察の隊長。スパイからの報告を受けた事で、コックローチ団がアニマル星への侵略を目論んでいる事を知り、後にアニマル星で戦いが起こった際に、大部隊を率いてコックローチ団の逮捕の指揮を執った。

コックローチ団

ニムゲ総長
声 - 森功至
ニムゲの一団、秘密結社「ニムゲ同盟」の指導者。各組長を配下に置く。原作で顔は明かされないが、映画に登場した素顔は若い美青年。
ニムゲ組長
声 - 小杉十郎太
ニムゲ同盟の一グループを率いる組長。平の団員と違いマントをしているのが特徴。
ニムゲ団員
声 - 西尾徳
のび太が地獄星で最初に接触したニムゲ。月のツキの効果によって転んで気絶してしまい、その隙にのび太に防護服を奪われるが、後に目を覚ましてスパイが潜入している事を組長に報告した。

その他

住民
声 - 松原雅子坂東尚樹
学校の裏山近くに住む住民。のび太のママと共に、裏山へのゴルフ場開発に異議を示していた。
不動産屋
声 - 渡部猛
社長
声 - 加藤治
裏山をゴルフ場にしようと考える社長。毛虫が苦手。

登場するひみつ道具

  • どこでもガス
  • タケコプター
  • ノビールハンド
  • 台風の目玉(映画では「台風のおめめ」、原作では「台風の複眼」)
  • 目印
  • ジェットモグラ
  • ドラ鈴小型カメラ(原作のみ)
  • 植物操り機
  • 動物ごっこ帽子
  • 探検セット
    • みの虫式寝袋
    • 圧縮非常食30食ぶん詰め合わせ(映画では「カツ丼入り圧縮非常食」)
    • 泥水でも飲める浄水器(映画では「どろ水浄水器」)
    • 糸なし糸電話型トランシーバー(映画では「糸なし糸電話」)
    • 警報用打ち上げ花火
    • ミニカラオケセット歌詞カード付き(映画のみ)
  • タイム虫めがね
  • タイムマシン(原作のみ)
  • 宇宙救命ボート
  • キャンピングカプセル
  • ツキの月
    • 映画では原作より若干効き目が切れるのが遅い(例:会議終了時点での残り時間が原作では30分が映画では1時間)
  • ドラ時計(映画のみ)
  • フエルミラー(原作のみ)
  • 空気砲
  • ショックガン
  • 雨雲製造機(映画のみ)

スタッフ

  • 制作総指揮 / 原作・脚本 - 藤子・F・不二雄
  • 作画監督 - 富永貞義
  • 作画監督補佐 - 渡辺歩
  • 美術設定 - 川本征平
  • 美術監督 - 高野正道
  • 録音監督 - 浦上靖夫
  • 音楽 - 菊池俊輔
  • 効果 - 柏原満
  • 撮影監督 - 斎藤秋男
  • 特殊撮影 - 渡辺由利夫
  • 監修 - 楠部大吉郎
  • プロデューサー - 別紙壮一、山田俊秀、小泉美明、加藤守啓
  • 監督 - 芝山努
  • 演出助手 - 塚田庄英平井峰太郎
  • 動画チェック - 内藤真一、間々田益男、原鐵夫
  • 色設計 - 野中幸子
  • 仕上監査 - 代田千秋、枝光敦子
  • 特殊効果 - 土井通明
  • コンピューターグラフィック - 亀谷久、水端聡、渡辺三千成
  • エリ合成 - 古林一太、末弘孝史
  • 編集 -井上和夫、渡瀬祐子 / 小原明子、薩川昭夫、植竹正幸、井上潔、前田恵
  • 文芸 - 滝原弥生
  • 制作事務 - 古井俊和、大福田富美
  • 制作進行 - 中村守、和田泰、星野匡章
  • 制作デスク - 市川芳彦
  • 制作協力 - 藤子プロASATSU
  • 制作 - シンエイ動画小学館テレビ朝日
原画
飯山嘉昌 神村幸子 斉藤文康 杉野左秩子 木上益治 東海林真一
小泉謙三 池ノ谷安夫 窪田正史 木村陽子 西村博之 海谷敏久
柳田義明 湯浅政明 飯口悦子
協力
オーディオ・プランニング・ユー アトリエ・ローク 旭プロダクション
トミ・プロダクション 亜細亜堂 あにまる屋
スタディオ・メイツ スタジオ古留美 スタジオ九魔
スタジオ・ディーン スタジオ・ヴィクトリー スタジオ・えっぐ
スタジオ・タージ 京都アニメーション 井上編集室

主題歌

オープニングテーマ - 「ドラえもんのうた
作詞 - 楠部工 / 作曲 - 菊池俊輔 / 唄 - 山野さと子コロムビアレコード
エンディングテーマ - 「天までとどけ」
作詞 - 武田鉄矢 / 作曲 - 堀内孝雄 / 編曲 - 原田末秋 / 唄 - 武田鉄矢(ポリドールレコード

舞台版

2008年7月-9月公演。

キャスト

ほか

関連項目

外部リンク

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