野比玉子

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野比 玉子(のびたまこ)は、藤子・F・不二雄の漫画作品「ドラえもん」に登場する架空の人物であり、副主人公野比のび太の母。初期の作中(旧版)では「野比のぶ子」となっている話があるが[1]、後に「玉子」に固定された。

概要

夫は野比のび助。38歳[2]。旧姓が「片岡」。怠けた印象があるのび太にはやや厳しい専業主婦。のび太たち家族からは基本的に「ママ」、のび助からは「きみ」とも呼ばれる。また外部の人間からは「のび太君のお母さん」、「野比さん家の奥さん」と呼ばれ、本名の「玉子」と呼ばれることはほとんどない(公式HPおよびスタッフロールでも「ママ」とのみ表記されている)。 癖は舌で唇をなめること[3]。また、のび太が使っていた(部屋に置いていた)ドラえもんの道具を、それが何かもわからず勝手に使ってしまった結果のび太やドラえもんたちが被害を受けたりと、作品中のトラブルメーカー的な役回りも持っている。ニッと笑うと、女優の池内淳子に似ていると自称[4]

家族は母親と兄(いずれも名前は不明)と弟の玉夫がいるが、父親は原作では一度も登場していない(のちにアニメで登場している)。 のび太と源静香の息子であるノビスケにとっては父方の祖母。しずかとは嫁姑の関係となる。

過去の出来事

夫であるのび助との馴れ初めは学生時代に、玉子の落とした定期券をのび助が拾い、返そうとして追いかけたこと(のび助が画家の道への援助者の申し出を断った直後[5])。1959年11月3日に婚約[6]、OL時代に結婚。現在の姿ののび太と実は子供時代に一度会っているが覚えていないらしい[7]。この頃はまだメガネをかけておらず、近眼になったのはのび助と交際し始めたあたりである。この頃から気が強い性格で、物を出しっ放しにしたりドアを開けっ放しにするなどややずぼらな面も見せている(なお、このずぼらな面はのび太に受け継がれている)。

趣味・性格

連載当初は一人息子ののび太に対し非常に甘く、のび太を「のびちゃん」と呼んだり[8]、怖い思いをしたのび太に膝枕をして慰めたり[9]、宿題を忘れたため学校を休むと言って部屋に閉じこもったのび太に対し、おやつや小遣いをあげると言って行かせようとしており[10]、小学館の学習雑誌での連載開始時の人物紹介では、のび助ともども「あまくてぜったいにのび太をおこらない[11]」とされている。また作中でものび太の「猫を飼いたい」との希望に笑顔で同意するなど[12]動物嫌いの部分も見せていない。

しかし、すぐに厳しい母親像が確立。のび太がダメな子供であることに激しい危機感をいだいており、加えて、「ダメな子供でなくなるためには、勉強せねばならない」という固定観念に捕らわれてもいる。それゆえ、「のび太を勉強させねばならない」という強迫観念があるらしく、そのことに対し、時として狂気じみた執着を見せる。同じ理由で、のび太が勉強しないと簡単にキレてしまい、勉強の妨げになる漫画や玩具を、次々に捨てたり壊したりしてしまうほど(しかもそのことに、まったく罪悪感を感じていない)。

玉子がそうなったのは、のび太自身のあまりの学業成績のひどさと、あまりの勉強嫌いゆえであり、ある意味のび太の自業自得である。しかし玉子の側も、自身の行動がますますのび太を勉強嫌いにしていることに、気づいていないか気づこうとしておらず、公平に見てどっちもどっちと言える。

また、時にはドラえもんの秘密道具やスネ夫から借りた漫画も燃やす、廃品回収に出す、時には2階ののび太の部屋の窓から外に向かって投げ捨てるという乱暴な手段に訴えることも[13]。どんなに珍しいものでも捨てることに躊躇しない[14]。故に漫画を捨てられたり、燃やされて怒ったのび太の仕返しを受けることがある[15]。なかには、自分で勝手につまづいて転んだものを窓から外に放り投げ、その後再びそれにつまづいて転び、最終的には物置にしまい込み、それがうるさい音を出すと箒で滅多打ちにしたこともあるなど、ヒステリックな面が目立つ[16]

のび太への説教は長く、平均で1時間[17]、明記されている中での最高記録は2時間15分59秒[18]というものになっている。のび助のような具体的なアドバイスは皆無で、ただガミガミ言うだけの理不尽なケースがほとんどであり、中期からは理由もなくのび太を叱るパターンが多くなっている[19]。また、のび太がジャイアンやスネ夫にいじめられているのを知ってか知らずか、ジャイアンやスネ夫が家の前で待ち構えているのにも関わらず有無を言わさずお使いに行かせようとしていた[20]。 のび太が目の前にいる時はそうでもないが普段はおっちょこちょいでやや抜けていたり、のび助を呆れさせたり、何もない所で転んだりすることもあった[21]

のび太の失敗に対しては、ジャイアンのいじめや不可抗力がある場合でも事情や理由も聞かず頭ごなしに叱ることが多く、基本的に息子に対する信頼は乏しく[22]、のび太よりもスネ夫のおべっかを信用する場面も見られる[23]。もっとものび太を信用しなくなったのは、のび太が普段から嘘をついてばかりいるのが原因ではある[24]。 道具を容赦なく捨てることや動物嫌いも含め、徹底した聞き分けの無さも特徴である。夏休みに遊びに行くことすら許さず、夏休みの期間中ずっと宿題や勉強をするようにのび太に言ったこともある(その際、のび太に対して「机の前から離れたらしょうちしないから」と脅してもいる。なお、この時点で既にのび太は宿題を終えていたのだが、玉子はそれを頭から信じなかった)[25]。のび助と会話がこじれ、のび太に八つ当たりすることも少なくない[26]。のび太も諦めているのか、玉子によって理不尽な目にあっても反論したり第三者に弁明することはまれである。

のび太にとって、玉子の怒りは何よりも恐怖である。のび太は「ぼくのこわいもの」と題した作文で、「おおかみ男」がこわいが、「でも、もっとこわいものがあるのです。それは、うちのママのおこった顔です。」と書き、玉子に見られて怒られてしまった[27]。また、あの手この手で人に開けさせようとするが、開けると怖いお化けが出てくる道具「パンドラボックス」を(道具の力もあって)無理矢理のび太に開けさせたが、出てきたお化けさえのび太は「ママよりましだ」と評した[28]。ちなみにお化けを見た玉子の反応は描写されておらず不明。また、その恐ろしさをのび太は「[29]または「(童話に出てくるような)恐ろしい魔女[30]と比喩したことがある。

ただし、厳しいだけの母親ではなく、行方不明だったのび太が帰宅した際は号泣しながらのび太を抱き締め[31]、その他にものび太が何か悪いことをして悩んでいた時にはそれを察して優しくたしなめたり[32]、のび太がテストで30点を取ってきたときは褒める[33]など無理に高望みをしたりしないなど、常にヒステリックというわけではないが、これらは特殊な場合でのみ発動する条件付きの愛である。またのび太が100点をテストで取った時には号泣し額縁に入れて飾ると喜んでいた。

生け花を習っており、家元から褒められたこともある[34]。近所の主婦たちとコーラスグループを作っており、玉子の歌唱力もなかなかのもの[35]。のび太が産まれた際にのび助が「君に似たら成績優秀」と言っていることから、学業は優秀だったようだ[36]。しかしアニメ版では、小学校5年の彼女はテストで35点をとるというあまり良くない描写がある。のび助とは対照的にビールは好きではないようだが、上等なウィスキーは美味しいと感じる。また、一回酒を飲んでしまうと止まらなくなり、挙句には屋根に上って踊り狂うほど酒癖が悪い[37]タバコを快く思っていないようだがドラえもんの道具の影響でタバコを吸ったことがあった[38]。また、暇なときには週刊誌を読むが[39]、普段はめったに本を読まないという[40]。旅行は好きでは無く、「お金をかけてくたびれにいく」と形容したこともある。その一方でのび助に旅行に行くよういったこともありのび助が同じように形容した際には「たまにはそんな疲れ方をしてみたい」と嫌味を言ったこともあり前述の形容は単なる逃げ口上ともいえる。

活動的であり、学校の裏山がゴルフ場として開発されようとした際は地球環境に関する本を熟読し、先陣に立って反対活動を行った[40]

のび助と同様に原作の初期設定で戦争中やその後の食糧事情の厳しさを経験しているため、食べ物を粗末にすることに対して快く思っていない[41]。しかし自分が太りすぎであると思った際には食事を抜くダイエットをしている[42]。ただ、その際は腹が減っているためとてもイライラしており、とばっちりでドラえもん・のび太・のび助に当たり散らすことがある。なお、のび助と玉子が戦争を経験していたと思われるのは作者存命中の設定で、死去後の2007年に放映された「ママのダイヤを盗み出せ」では玉子が7歳の時に松田聖子のサイン会があった設定であるなど、戦後生まれに変更されている。

性質上「のび太が鬱になる気分/辛くなる原因」として描写されることが多いため「非常にうっとうしい、ときには抹消したくなる母」のイメージが強い。だがのび太は玉子を母として非常に慕っている。ドラえもんのことも居候あるいはのび太のペット的存在という認識で、ドラえもんを「家族としてカウントしない」こと[43]もあったが、家族同様の愛情を持っている[44]。小学生の頃やのび太が乳幼児の時に、タイムマシンで過去にやってきたのび太とドラえもんには何度も出会っているが、その時々のことを現在はすっかり忘れてしまっている[45]

また、自宅のテレビが映らなくなったとき、テレビの角をチョップで叩いて直したこともある[46]。このことから自分で直しきれないとき以外は壊れても物を捨てない性格であることがうかがえる。未来デパートから自転車が来る話では、パパのゴルフセット買い替えを反対したり、自分の持ち物は新しくしたいと主張してケンカしていたことも。またのび助とは、互いの買い替えをめぐって口論になることが多い[47]

動物嫌い

しずか、スネ夫、ジャイアン、出木杉が皆ペットを飼っているのとは対照的に、玉子は動物嫌い。のび太の「ペットを飼いたい」という願いを断った回数は100回に達する[48]。ペットを飼うことに憧れるのび太が、玉子に隠れて犬やネコを一時的に保護したり、あるいは恐竜を飼ったり[49]、ハンドバッグを見つけてくれたペコをのび太が飼うことを許したことがあるが[50]、基本的には捨て犬や捨てネコを拾ったのび太に「捨ててらっしゃい!」という場面が多い。このように、動物に対しては冷酷ともとれる一面がある。一方、「台風のたまご」で生まれたフー子[51]や宇宙から来た宇宙人[52]や生物にした掃除機[53]まで追い出そうとするなど、後のことまでは考えない。女性の例に漏れず、ゴキブリは苦手[54]。また、ドラえもん並にネズミが苦手で、一緒に悲鳴を挙げてゴーゴーダンスを踊ったことも[55]

ところが一方で、根っからの動物嫌いではないと思わせる逸話もある。一度情の移った子ネコを飼おうとしたこともあるし[56]、のび助の会社の上司から預かったハムスターを可愛がる(そのせいで、ドラえもんまでもが家出してしまうのだが)場面もある[57]。またのび太が怪我をしたスズメの雛を拾って巣立ちのときまで内緒で育てていたことを既に承知してその様子を影で見守っていたり、他にもドラえもんの道具で生まれたキー坊を飼う事を認めたりしていること[58]から全て一辺倒に駄目という訳でもない。嫌う理由については「動物の可愛さを知らないから」とのび太は分析している[56]

ちなみに、そうした玉子の性格から、野比家にはペットがいないと思われがちだが、金魚や亀を飼っている場面が何度かある[59]。そのためのび太が自分で世話をできる範囲でのペットの飼育は特に禁じていないと思われる。ただ、金魚に関しては作中で「また死んだ」と言っていることから、飼ってもすぐ死んでしまうらしい[60]。野良猫のクロに獲られたこともある[61]

親族

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声優

小原乃梨子(1973年、アニメ第1作)→千々松幸子(1979年4月から2005年3月まで、アニメ第2作1期)→三石琴乃(2005年4月以降、アニメ第2作2期)。少女時代は2000年は川上とも子[62]、2005年4月以降は三石琴乃が演じている。

テレビ朝日系アニメでは初回より登場。

俳優

舞台版『ドラえもん のび太とアニマル惑星』 - 澤田育子

脚注・出典

  1. ただしこれは外伝作品『ドラミちゃん』を『ドラえもん』のエピソードに統合する時に修正し忘れたものであり、「のぶ子」はドラミが世話をしていた「のび太郎」の母である。なお、現在の版では「玉子」に修正済みである。
  2. 44巻収録「恐竜の足あと発見」
  3. 7巻収録「くせなおしガス」
  4. 15巻収録「こっそりカメラ」
  5. 43巻収録『のび太が消えちゃう?』
  6. 1巻収録『プロポーズ作戦』
  7. 7巻収録『ママのダイヤを盗み出せ』
  8. 1巻収録「未来の国からはるばると」、藤子・F・不二雄大全集1巻収録「机からとび出したドラえもん」など初期の数話
  9. 1巻収録「未来の国からはるばると」
  10. 藤子・F・不二雄大全集1巻収録「のび太が強くなる」
  11. 藤子・F・不二雄大全集1巻収録「特別資料室」770頁より引用
  12. 藤子・F・不二雄大全集1巻収録「未来から来たドラえもん」
  13. 5巻収録「地球製造法」、18巻収録「テレパしい」、40巻収録「恐怖のたたりチンキ」、41巻収録「落としものカムバックスプレー」など
  14. 「地球製造法」では浮いているミニ地球を投げ捨て、危うく中にいるのび太達は死ぬところだった。のび太達が脱出後、ミニ地球は爆発した
  15. 40巻収録「恐怖のたたりチンキ」ではのび太が燃やされた漫画にたたりチンキをかけ、漫画のオバケに襲われたり(その後二度と漫画を燃やさないと周囲の人に話していた)、41巻収録「落としものカムバックスプレー」ではお使いに行くようのび太に頼むも断固拒否され、説教も通用しなかった。
  16. のび太と鉄人兵団
  17. 8巻収録「マッド・ウォッチ」
  18. 32巻収録「のび太も天才になれる?」
  19. 16巻収録「のび太のひみつトンネル」、24巻収録「地平線テープ」、38巻収録「無人境ドリンク」など
  20. 9巻収録「わすれろ草」
  21. 20巻収録「チッポケット二次元カメラ」
  22. 15巻収録「ふみきりセット」など
  23. 12巻収録「ウラオモテックス」
  24. ドラえもん談。また26巻収録の「『真実の旗印』はつねに正しい」では実際に嘘を付いている場面がある
  25. 28巻収録「百丈島の原寸大プラモ」
  26. 3巻収録「きせかえカメラ」、6巻収録「流行性ネコシャクシビールス」など
  27. 11巻収録「おおかみ男クリーム」
  28. 19巻収録「パンドラのお化け」
  29. 27巻収録「カッコータマゴ」
  30. 39巻収録「メルヘンランド入場券」
  31. 25巻収録「のび太のながーい家出」
  32. 16巻収録「パパもあまえんぼ」
  33. 20巻収録「アヤカリンで幸運を」
  34. 28巻収録「家元かんばん」
  35. 10巻収録「おそだアメ」
  36. 2巻収録「ぼくの生まれた日」
  37. 10巻収録「ようろうおつまみ」
  38. 8巻収録「オトコンナを飲めば?」
  39. てんとう虫コミックススペシャル「ドラえもん カラー作品集」2巻収録「シャシンシャベール」
  40. 40.0 40.1 のび太とアニマル惑星
  41. 2巻収録「タタミのたんぼ」、19巻収録「ありがたみわかり機」。
  42. 26巻収録「おもかるとう」、41巻収録「ふんわりズッシリメーター」
  43. 10巻収録「弟をつくろう」
  44. のび太とロボット王国』ラストで、母親のいるのび太達を羨むドラえもんに「ドラちゃんも私の子よ」と言っている。
  45. 2巻収録「ぼくの生まれた日」、4巻収録「おばあちゃんのおもいで」、7巻収録「ママのダイヤを盗み出せ」
  46. 連載当時の日本ではごく普通に行われていた。都市伝説一覧#技術「電化製品は叩けば直る」参照。
  47. 1巻収録「ペコペコバッタ」、2巻収録「タイムふろしき」、7巻収録「未来からの買いもの」、16巻収録「デラックスライト」など。
  48. プラス2巻収録「ペットペン」
  49. 22巻収録「のら犬「イチ」の国」、『のび太のワンニャン時空伝
  50. のび太の大魔境
  51. 6巻収録「台風のフー子」
  52. 17巻「未知とのそうぐう機」。ただし玉子はそれを宇宙人ではなくアザラシと誤認した。
  53. プラス3巻収録「ペッター」
  54. 9巻収録「ウラシマキャンデー」、17巻収録「モアよドードーよ永遠に」
  55. 1巻収録「○○が××と△△する」
  56. 56.0 56.1 43巻収録『ネコののび太いりませんか』
  57. のび太の日本誕生
  58. 33巻収録「さらばキー坊」
  59. 4巻収録『ソノウソホント』、31巻収録『海坊主がつれた!』、大山のぶ代ら声優陣シリーズのアニメ作品『あの頃に戻りたい!』(13巻収録『タマシイム・マシン』のアニメ化作品。1987年10月30日放送、ビデオソフト未収録)、プラス3巻『スピード増感ゴーグル』ほか
  60. てんとう虫コミックススペシャル「ドラえもん カラー作品集」2巻収録『ペットペンキ』
  61. 12巻収録『ミサイルが追ってくる』
  62. 『おひなさまを探そう!』(2000年3月3日放送、ビデオソフト未収録)

関連項目

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