ドラえもん のび太とロボット王国
『ドラえもん のび太とロボット王国』(ドラえもん のびたとロボットキングダム)は、2002年3月9日に公開されたドラえもん映画作品の1つ。および、岡田康則(藤子・F・不二雄プロ)によって漫画化され、『月刊コロコロコミック』2002年2月号から3月号にかけて連載された大長編ドラえもんシリーズの一作品。映画シリーズ第23作、大長編シリーズ第22作(まんが版▷映画シリーズ5)。
映画シリーズにおける最後のセル画制作作品である。翌年の『ドラえもん のび太とふしぎ風使い』以降はデジタルアニメ制作へ変更している。
監督は芝山努、配給は東宝。興行収入23億1000万円。同時上映は『ザ☆ドラえもんズ ゴール!ゴール!ゴール!!』と『ぼくの生まれた日』。
目次
解説
人とロボットの関係をテーマにした劇場版作品は、『のび太と鉄人兵団』、『のび太とブリキの迷宮』に続き三作目である。しかし、前二作はロボットが人類の敵として登場しているのに対して、今作はロボットと人との共存がテーマであり、ロボットの立場になって話が描かれている。したがって、ドラえもんがロボットであることにもスポットを当てており、終始ドラえもんが話の主役となっている。そのためかのび太の活躍があまりなく騒動を起こしたり、足手まといになるなど歴代の劇場版では珍しくTVシリーズに近い設定である。ドラえもんが話の主役となる話は、『のび太の日本誕生』以来である。なお今作でラスボスのデスターを演じる森山周一郎は同じロボットが登場する『のび太とブリキの迷宮』でもラスボスのナポギストラーを演じている(デスターはロボットの抹殺を企んだ人間で、ナポギストラーは人間の絶滅を企んだロボットという正反対の存在である)。
2001年秋のアニメスペシャルで放送した告知映像のみ、タイトルが『のび太とロボット帝国』(「帝国」の読みは「キングダム」)となっていた。
あらすじ
スネ夫に新型のペットロボットを自慢されたのび太は、「ペットロボットが欲しい」とドラえもんに懇願する。ところがドラえもんは「君には僕と言うネコ型ロボットがいるじゃないか」とのび太を叱りつける。怒ったのび太は、腹いせに未来デパートにペットロボットを大量注文するが、送られてきたロボット達はのび太の言うことを聞かず暴れ出してしまう。
町中で騒動を巻き起こしたロボットたちは、ドラえもんによって全て返品されたものの、最後に少年型のロボット『ポコ』が残った。どうやら、そのロボットは地球の技術で作られたものではなく、現代に送られてくる途中で超空間内で紛れ込んでしまったものだという。ポコを元の世界に返してあげるため、ドラえもん達の冒険が再び始まった。
タイムマシンで時空の迷宮へと旅立ち、何とか目的の場所…『王国(キングダム)』に辿り着くドラえもん一行。その世界では、ロボットから感情を抜き取り人間の忠実な下僕へと変えてしまう「ロボット改造命令」が下されていた。少年ロボットであるポコは、ちょうど母親と共に追っ手のドロイド兵から逃げる途中だったのだ。捕まった母親を助けようと飛び出して行ったポコをのび太たちは追いかけるが、ドロイド兵達に見つかり、ドラえもんが拉致されてしまうのだった。
舞台
- 王国(キングダム)
- 地球より遠く離れた星にある王国。無人の星を開拓するために別の星から人間とロボットが移住、国体は王家による君主制を採用している(元の星から王家を継承した可能性が高い)。本星との交流は不明。
- 服装は中世ヨーロッパ風だが、ロボット関連のテクノロジーは非常に発達しており、移民時からロボットは現在と同様の姿で今に至る。しかし、開拓の中心だった人間がロボットを友人として心を通わすうちに、ロボット達の感情回路が発達。人間と大差ない心を持つに至り、同じ星の住民として認め合いながら対等の存在として共に暮らすこととなる。
- しかしジャンヌ女王の代より「ロボット改造計画」が進められ、ロボットの感情が抜き取られていく。国民達は表面上、その政策を受け入れているが、反発する人々も少なくはなく、ある場所に「虹の谷」というロボットの隠れ里を築いている。
- 公的機関としては軍隊と議会が存在する。しかし、後述する「ロボット改造計画」が国民からの反発必至にも関わらずにまかり通るあたり、議会が有する国王への抵抗力は弱いものらしい。また軍隊の力も強いらしく、軍の司令官であるデスターが王位継承権を持っている。
ゲストキャラクター
ロボット王国側
- ポコ
- 声 - 桑島法子
- 少年のロボット。ドロイド兵に追われていたとき、チャペック先生の電送マシンで地球へと送られた。ジャンヌとは遊び相手として共に育っており、弟同然の存在である。
- ジャンヌ女王
- 声 - 新山千春
- ロボット王国の女王。ロボットから感情を抜き取る「ロボット改造命令」を下している。
- 過去の事故で父親(前国王)を亡くしており、その原因が「感情を持つロボットによるミスだ」とデスターに吹き込まれ、ロボットから感情を抜き取る命令を下す。だがポコとの交流によって非情に徹しきれずにおり、二律背反的な精神状態にある。
- ドラえもん一行追跡に同行した際、デスターに裏切られて崖から落とされる。そこから「虹の谷」に匿われ、ポコと向き合うことで己の非を理解する。
- デスター捕縛後は国民に対し「ロボット改造計画」の廃止を宣言し、没収していた感情(正確には、感情を司る回路)を返還する。
- 漫画版では「非情に徹する決意の現われ」として父の死後、髪を短く切っていた。映画版ではセミロングヘアーのままで、頭身も低く改められている。
- モチーフはジャンヌ・ダルク。
- マリア
- 声 - 藤田淑子
- ポコの母親ロボット。早くに母親を亡くしたジャンヌの養育係も務めていた。
- チャペック先生
- 声 - 穂積隆信
- ロボット専門の医者。ロボットの修理の他、物体を瞬間移動させることのできる電送マシンなども発明している。デスターとは双子の兄弟であり、浅からぬ因縁があった。
- クルリンパ
- 声 - 野沢雅子
- チャペック先生と共に住んでいるオコジョ型のロボットの助手。身体を丸めながら跳ねて移動することもできる。語尾に「ッパ」をつけて話す。なお、クルリンパ役の野沢は『のび太の宇宙漂流記』にも出演しており、2度目の新旧ドラえもんの共演となった。
- オナベ
- 声 - 愛河里花子
- チャペック先生の家のお手伝いロボット。食材を口から入れ、腹から完成した料理を出す(漫画版のみ)。元は『21エモン』のキャラクター。
- ロビー
- 声 - 銀河万丈
- アリスの家で働く農作業ロボット。型番号はX-01。「ロボット改造計画」により感情を抜き取られてしまうが、デスター捕縛後に感情を返還された。
- アリス
- 声 - 南央美
- ロビーが働く家の少女。感情を抜き取られ、アリスのボールを踏みつけた後(漫画版のみ)に「何でもお申し付けください」としか喋れなくなった(映画のみ)ロビーを見て、泣き出してしまう。
- コングファイター
- 声 - 郷里大輔
- 鋼鉄バトルに出場しているゴリラ型の大きい格闘ロボット。斧や鉄球を使用する豪傑で、300戦無敗という経歴を持つ。ドラえもんと戦うが、使い物にならないひみつ道具で敗北した。敗北後はドラえもん一行の脱出を手助けした。
- トロイ
- 声 - 飛田展男
- 「ロボット改造命令」に反対し、「虹の谷」でコニックたちと共に村を開拓し暮らしている。
- コニック
- 声 - KONISHIKI
- トロイのパートナーであるロボット。
- エイトム王
- ジャンヌの父親。前ロボット王国国王。人間とロボットが共に暮らせる豊かな国を目指しており自ら開拓工事の指揮を執っていた。しかし、工事の最中ダンプロボ(映画版はパワーショベルロボ)の横転し逃げ遅れたロボットを救ったが横転に巻き込まれジャンヌの眼前で死亡した。
- デスター
- 声 - 森山周一郎
- ロボット王国の軍司令官。厳つい容貌をしており、常にジャンヌ女王に付き従っている。エイトム王の死を「感情を持ったロボットのミス」だとジャンヌに吹き込み、ロボット改造命令を下させた張本人。
- 実はジャンヌ女王に取り入って王国の実権を握ろうと画策する悪人で、ドラえもん一行追跡の際に、ドロイド兵をわざとけしかけてジャンヌ女王を谷底に落としてしまう。その後、軍司令官が王位継承権を持つという法律に基づいて王宮を掌握、国王となる。だが、改造命令に反対するロボット達の協力を得たドラえもん一行により野望は阻止される。
- その正体は金属製の強化服に身を包んだチャペック先生の双子の弟だった(仮面の下の素顔は、チャペック先生と瓜二つ。ゲストキャラクターの肉親が敵役という設定はのび太の宇宙漂流記のリーベルト司令官以来である。)。
- ドロイド兵
- 声 - 小杉十郎太、中嶋聡彦
- デスターが尖兵として用いる、感情を持たないロボット兵士。屈強で、他のロボット達を圧倒する戦闘力を持つが、人間には危害を加えられないという弱点を持っており、これを利用したドラえもん一行に無力化された。
地球側
- タイムマシンナビ
- 声 - 杉山佳寿子
- ゴンスケ
- 声 - 島田敏
- 芋掘りロボット。のび太が未来デパートから間違えて購入したロボットのうちの1体。一人称は「オラ」。空き地を勝手に芋畑にしていた。元は『21エモン』のキャラクター。
- この作品で島田は2000年にケツアル、2001年にグースケの父役で3年連続出演となった。
- 未来デパート店員
- 声 - まるたまり
このほか、漫画版では『キテレツ大百科』のコロ助や、『パーマン』のPマン(魔土災炎のお手伝いロボット)、『オバケのQ太郎』のQ太郎とO次郎に似たロボットが登場している。
登場するひみつ道具
- スペアポケット
- 未来デパート通販マシン
- ころばし屋
- モグラロボ(漫画版のみ)
- ロボポリス(漫画版のみ)
- 評論ロボット
- ムード盛り上げ楽団
- ばっきん箱
- 取り寄せバッグ(映画のみ)
- 壁紙ハウス
- レントゲンスコープ(漫画版のみ)
- CTスキャンのようなマシン(映画のみ)
- タイムマシン
- ナビゲーターシステム
- ペタンコアイロン(漫画版のみ)
- タイムテレビ
- タケコプター
- ノビールハンド
- 時限バカ弾
- 竜巻ストロー(漫画版のみ)
- ほんものコピー機(映画のみ)
- くすぐりノミ
- 何でも操縦機
- 空気ピストル(漫画版のみ)
- チータローション(漫画版のみ)
以下の道具は、超空間で落としてしまった道具。
- スーパー手袋
- スモールライト
- ショックガン
- 空気砲
- お医者さん鞄
※ このほかにのび太が注文した道具として芋ほりロボット、もちつきロボット、お掃除ロボット、注射器を持ったロボット、ベル頭のロボット、オバQに似たロボットなどが登場する
スタッフ
- 原作[1] - 藤子・F・不二雄
- 脚本 - 岸間信明
- 作画監督 - 富永貞義
- 美術設定 - 沼井信朗
- 美術監督 - 川口正明
- 撮影監督 - 梅田俊之
- 編集 - 岡安肇
- 音楽 - 堀井勝美
- 録音監督 - 浦上靖夫
- チーフプロデューサー - 山田俊秀、木村純一
- 監督 - 芝山努
- 絵コンテ - 芝山努、藤森雅也
- 演出 - パクキョンスン
- 作画監督補 - 若松孝思
- 動画検査 - 原鐵夫、江野沢柚美、中峰ちとせ
- 色彩設計 - 松谷早苗、稲村智子
- 仕上検査 - 下浦亜弓、中島淑子
- 仕上担当 - 野中幸子
- 特殊効果 - 橋爪朋二
- 基本設定 - 川本征平
- オープニングコンテ・演出 - 石原達也
- オープニング作画監督 - 米田光良
- デジタル合成 - つつみのりゆき、楠部工
- デジタル撮影 - 中上竜太、田村和広、山本裕司、佐々木和宏、中村紀
- 文芸 - 滝原弥生
- 制作事務 - 杉野友紀
- 制作進行 - 吉田成彦、外崎真、吉田有希、澁谷いずみ、大橋永晴、村元克彦、上野弘泰、矢尾板克之
- 制作デスク - 馬渕吉喜、大金修一
- プロデューサー - 小倉久美、大澤正享、岩本太郎、梶淳
- 制作協力 - 藤子プロ、ASATSU-DK
- 制作 - シンエイ動画、小学館、テレビ朝日
- 原画
- 神村幸子 小柳信行 杉野左秩子 柴田和子 飯山嘉昌 斉藤文康
- 北之原孝将 高橋博行 武本康弘 米田光良 池田和美 荒谷朋恵
- 鈴木大司 篠原真紀子 大久保修 尾鷲英俊 藤田靖弘 原勝徳
- 高倉佳彦 柳田義明 船越英之 関根昌之 浅野文彰 木村文代
- 川口博史 六崎光幸 吉原幸之助 小林哲也 福本勝 飯口悦子
- 山沢実 本山浩司
- 協力
- オーディオ・プランニング・ユー フィズサウンドクリエイション アトリエ・ローク
- アニメフィルム 岡安プロモーション トミ・プロダクション
- 京都アニメーション アニメーションDo 夢弦館
- スタジオ・タージ 亜細亜堂 マキ・プロダクション
- アニメTORO TORO 手塚プロダクション オフィス フウ
- エムアイ プロジェクトチーム・サラ 菁画舎
- スタジオキャッツ 無錫馬良動画有限公司 常州新生美術制作有限公司
主題歌
- オープニングテーマ - 「ドラえもんのうた」
- 作詞 - 楠部工 / 作曲・編曲 - 菊池俊輔 / 歌 - 山野さと子(日本コロムビア)
- エンディングテーマ - 「いっしょに歩こう ~Walking Into Sunshine~」
- 作詞・作曲・編曲 - BANANA ICE(下町兄弟) / 編曲 - 沢田完 / 歌 - KONISHIKI(avex mode)
- 挿入歌 - 「ひとりじゃない ~I'll Be There~」
- 作詞・作曲 - BANANA ICE(下町兄弟) / 編曲 - 沢田完 / 歌 - KONISHIKI with 新山千春(avex mode)
- 主題歌が2曲制作されたのは、『のび太と夢幻三剣士』に次いで2度目。
キャッチコピー
- いっしょが、いちばん強い。
脚注
- ↑ 「原作」としてクレジットされている藤子・F・不二雄は「キャラクター原作」程度の意味で用いられており、この映画作品の原作者ではない。