ドラえもん のび太の宇宙漂流記
『ドラえもん のび太の宇宙漂流記』(ドラえもん のびたのうちゅうひょうりゅうき)は1999年3月6日に公開されたドラえもん映画作品の1つ。および、藤子・F・不二雄プロによって漫画化され、『月刊コロコロコミック』1998年10月号から1999年3月号に掲載された大長編ドラえもんシリーズの作品。
ドラえもん映画・テレビ20周年記念超大作。大長編シリーズ第19作(まんが版▷映画シリーズ2)。
原作は藤子・F・不二雄[1]、監督は芝山努、配給は東宝。配給収入20億円、観客動員数395万人。第17回ゴールデングロス賞優秀銀賞受賞作。同時上映は『ザ☆ドラえもんズ おかしなお菓子なオカシナナ?』と『のび太の結婚前夜』。
目次
解説
メカニックデザイナーの宮武一貴とスタジオぬえをスタッフに迎え、主題歌にはアイドルグループのSPEEDを起用。また、前作とは違い、ゲストキャラクターの声に芸能人を起用しておらず、声優で固めているのも特色となっている。
作品に登場するメカは、主に海の生物をモチーフにしたデザインとなっており、ゲストキャラクターの少年リアンの乗るスタークラブはカニ、戦闘艇のスターノーチラスは古代のオウムガイ、巨大都市宇宙船のマザーシップガイアはこいのぼり、独立軍基地はタコといった具合である。宮武は小学生のときに藤子不二雄の『海の王子』を読んでおり、作中に登場したはやぶさ号を独自で描き直したりしていたという。藤子への恩返しという意味合いもあって、自然とそうなってしまったという[2]。
エンドロールで監督の芝山努直筆の過去20作品(本作品を含む)のプレートが流れる。なお例年の映画では冒頭でのび太が「ドラえも〜ん!」と叫ぶが、今作では珍しくスネ夫とジャイアンが叫ぶ。また、しずかの入浴シーン、全裸描写が本作品で最後。また長年監修をしてきた楠部大吉郎の最後の作品となった。
今作ではジャイアンが「ここで終わるのは早すぎる」とメタフィクション発言をしている。
近年の作品は、ドラえもんが故障したり、ポケットを紛失したり、バリアなどによって道具の使用を制御されたりしていたが、この作品では、ひみつ道具がふんだんに使用されており、状況に応じたひみつ道具による機転が利いている。また、オリジナルに創作されたひみつ道具は、宇宙探検すごろくをアレンジした『スタークラッシュゲーム』のみである。
本作もまた、これまでの作品同様に映画と漫画版では割愛および変更されたシーンがある。このうち漫画でジャイアンやゴロゴロたちがリアンの宇宙船内で食事をするシーンが映画では描かれていないことについて、監督の芝山は「映画に食事シーンを入れられなかったのが残念だった」と語っている[3]。またラストシーンも異なり、映画ではのび太とドラえもんが先生にテストの答案を渡されるところでエンディングとなる。漫画もコロコロコミック掲載時は同様だが、単行本化の際は後日談が書き下ろされ、季節が流れて春になり、学校の裏山でのび太とドラえもんがリアン達のことを思い出すシーンが描かれて完結する。
あらすじ
スネ夫に宇宙旅行のチケットを自慢されたのび太たち。のび太はジャイアンとしずか、そしてスネ夫とともにドラえもんに宇宙旅行を頼みに行く。「本当に宇宙に行けるわけない」と言うドラえもん。かわりに「スタークラッシュゲーム」という最新版の宇宙探検ゲームで遊ぶことになる。
一方そのころ、UFOに乗ってやってきた謎の一行が地球に降り立つ。ジャイアンとスネ夫の2人が「スタークラッシュゲーム」の中で迷子になってしまい、やっとのことでゲームから脱出するとそこはUFOの中だった。既に「スタークラッシュゲーム」を終えていたドラえもん、のび太、しずかの3人はすぐに2人を探しに行くのだった。
舞台
- 地球から20光年以上離れた宇宙
- ドラえもん史上、類を見ないほどの遠方の舞台であり、どこでもドアも機能しない。ワープ航法無しでは地球に辿り着くまで1億年以上掛かるという。イオン嵐(恒星間にできた磁場断層)やブラックホール、怪物の巣食う惑星に、幸福な幻を見せて獲物を招き寄せる幻惑の星など、危険に満ち溢れており、本編中には人間の住める惑星は地球を除いて一つも登場しない。
- 銀河漂流船団母船・ガイア
- 元々はリアンの先祖達が、環境の悪化した母星・ラグナ星から脱出するために乗り込んだ移民船。何百年も宇宙を彷徨ううち、同じように星を失った人々が集まり、それらの宇宙船と結合して超巨大母船となった。内部には大都市が広がっており、人口は約1000万人。新たな故郷となる惑星を探して300年もの間、宇宙を漂流している。銀河漂流船団は「武力による移住は行わない」と言う教えの下、話し合いによる平和的移住を原則としている。その為、300年間一度も戦争を経験していない。
- ガイア内部には聖域と呼ばれる場所が存在し、そこには唯一自然が存在する。聖域にはユグドの木と言う不思議な力を持った大樹が聳え立っており、船団では神、或いは指導者として崇められている。この木は元々は生物の死に絶えたラグナ星に唯一残っていた苗木が成長したものである。実はコンペイトウのような形をしており、「神樹の実」と呼ばれる。これは持ち主を危険から守る力があり、宇宙少年騎士団に一つずつ授けられる。名前の由来はギリシャ神話の女神ガイアより。
- 独立軍
- 銀河漂流船団の軍隊の司令官であるリーベルトが、アンゴルモアに心の隙を突かれて操られた結果、同志達を集めて密かに結成した宇宙軍隊。無人で稼動する機動戦艦を大量に製造して地球への武力侵攻を目論む。
- しかし、銀河漂流船団の宇宙少年騎士団との戦闘の末、ドラえもんやのび太によって、無人機動戦艦を操るアンテナを機能不全に追い込まれた為に殆どの戦力を失い、リーベルトを操っていたアンゴルモアも倒された結果、事実上壊滅した。
ゲストキャラクター
宇宙少年騎士団
- リアン
- 声 - 白石冬美
- 銀河漂流船団から生物の住める星を探すために派遣された宇宙少年騎士団の1人。太陽系に派遣され、地球に降り立った。自然を愛しており、地球の自然に興味を示している。フレイヤ曰く、「リアンは植物の事になると目の色が変わる」。リーベルト司令官の息子でもある。当初はドラえもん達を勝手に船に乗った罪で逮捕するなど高圧的に接していたが、怪物の襲撃から助けられて以降は和解し、彼等を地球に送り返す為に尽力する。
- ログ
- 声 - 野沢雅子
- 宇宙少年騎士団所属のロボット。おもに宇宙船の操縦や修理を行う。ドラえもんの持つ道具に何かと興味を示していた(そのため、不用意に「はいどうたづな」に触れてリアンの乗った金属生物を暴走させてしまった)。同じロボット同士故かドラえもんとは気が合う。文末に必ず「――ビビ」と付ける。
- 野沢はテレビアニメ第1作で担当しており、新旧ドラえもん役声優の共演となった。
- フレイヤ
- 声 - 荘真由美
- 妖精を思わせる小さな生物。空を飛べる。リアンの事が好き(本人は「ただの友達」と言っている)で、彼の為なら何でもするという決意を語るシーンがある。調査材料と称してガラクタを集める癖があり、この行動が物語の発端となる。
- 実は独立軍に送り込まれたスパイで、道中、通信機を壊したり、宇宙船を誘導したりと工作を行っていた。一時はモアの命令で、独立軍の脅威と成り得るドラえもん達を始末しようとした事もあった。しかしこれらの行動は全てリアンの為を思っての事であり、彼女自身も良心の呵責に耐え切れず、幻惑の星では怪物に食べられそうになったしずかを助けた。最終的には前線基地から脱出する際に独立軍を裏切り、改めて「新しい仲間」としてリアン達に迎え入れられた。ドラえもん映画のゲストキャラクターで仲間だと思っていたメンバーがスパイであるというのはのび太のパラレル西遊記のリンレイ以来である(最終的にはドラえもん達に味方する点も同じ)。
- キャラクター・デザインは原作者である藤子・F・不二雄が生前、漫画作品用に描いていたとされるイラストを元に起こされた。
- ゴロゴロ
- 声 - 玄田哲章
- 体格が大きく、力持ちの岩石人間めいた生物。「ゴロゴロ」としかしゃべれない(彼の同胞と思われる人物も会議で登場しているがしゃべっている)。巨漢同士、ジャイアンとは気が合った。
他のキャラクター
- リーベルト司令官
- 声 - 有本欽隆
- 銀河漂流船団における独立軍司令官であり、リアンの父。アンゴルモアに心を操られた末「独立軍」を結成する。その高度な技術を背景に強力な宇宙艦隊を組織し、漂流船団と地球の征服を目論んでいた。
- 独立軍と銀河漂流船団の決戦の際、ドラえもんやリアン達が基地に乗り込んで来た為にモアからリアンを撃ち殺すように命令を受ける。しかしリアンの父を想う気持ちで洗脳を打ち破り、モアに引導を渡した。映画版ではその後、ドラえもんを「ドラちゃん」と呼んだ(恐らくフレイヤがそう紹介した為)。終盤近くまで敵役である、メインゲストキャラクターの肉親が悪役というのはのび太のパラレル西遊記の羅刹女以来である。
- リアンの母
- 声 - 伊藤美紀
- リーベルトの妻であり、リアンの母。故人。現在はユグドの木に宿っており、リアンにモアの超能力でリーベルトたちが操られていることを告げる。
- マズーラ
- 声 - 渡部猛
- 銀河漂流船団における評議員議長。ナマズのような外見。
- 管制官
- 声 - 中嶋聡彦
- 幹部
- 声 - 広瀬正志
- 評議員
- 声 - 菅原正志、茶風林、けーすけ
- 独立軍兵
- 声 - 大川透
- 少年
- 声 - 高戸靖広、遠近孝一
- アンゴルモア
- 声 - 内海賢二
- リーベルト司令官の側につき、暗躍する謎の人物。正体を隠すために全身を布で覆っている。全ての黒幕であり、リーベルトらを洗脳して独立軍を結成させた。
- ノストラダムスの予言に出て来る、1999年に地球を滅ぼす大王でもある。身体は機械だが、ロボットと呼ぶにはあまりにも粗末な作りである。それは本体が不定形の物体であり、周囲の物質を取り込んで活動する為。
- ロボットの身体を破壊された後も、フレイヤが集めたガラクタを取り込んでドラえもん達に襲い掛かるが、最期は本体を「カチンカチンライト」で固められ、ブラックホールに捨てられた。その正体は最後まで不明だが、ドラえもんが「皆の心の奥に潜む悪意の塊」と推測した。
登場するひみつ道具
- スタークラッシュゲーム
- ゲームに登場する戦闘機は、漫画版と映画でデザインが大きく異なる。
- お座敷宇宙船
- おくれカメラ
- 宇宙救命ボート
- 宇宙クリームスプレー型
- 酸素ボンベ(原作のみ)
- 映画には登場せず、ドラえもん達は宇宙クリームスプレータイプのみで宇宙に出ている。
- タイムふろしき
- 通りぬけフープ
- どこでもドア
- スペースイーター
- タケコプター
- ハメルンチャルメラ
- ビッグライト
- 材質変換機
- はいどうたづな
- 遠くの人おこし用目ざまし(映画では遠くの人目ざまし)
- 原子力潜水艦型ゼンマイ式潜地艦(映画では潜地艦)
- ネンドロン
- フエルミラー(セリフのみ)
- ひらりマント
- カチンカチンライト
- 空飛ぶ荷札(映画では宇宙用)
スタッフ
- 原作[1] - 藤子・F・不二雄
- 脚本 - 岸間信明
- 作画監督 - 富永貞義
- 原作[1]作画 - 萩原伸一
- 美術設定 - 沼井信朗
- 美術監督 - 森元茂
- 撮影監督 - 梅田俊之
- 編集 - 岡安肇
- 音楽 - 大江千里、堀井勝美
- 録音監督 - 浦上靖夫
- 効果 - 庄司雅弘
- プロデューサー - 山田俊秀、木村純一、梶淳
- 監督 - 芝山努
- 演出 - 善聡一郎、パクキョンスン
- メカニカルデザイン - 宮武一貴
- デザイン協力 - スタジオぬえ
- 作画監督補 - 若松孝思
- 色彩設計 - 松谷早苗、稲村智子
- 仕上担当 - 野中幸子
- 特殊効果 - 土井通明
- 基本設定 - 川本征平
- OPコンテ・演出・作画監督 - 藤森雅也
- OP原画 - 船越英之、高野登
- デジタル合成 - 堤規至、末弘孝史
- AMB映画部 - 福吉健、山川秀樹
- 文芸 - 滝原弥生
- 制作事務 - 杉野友紀、牧野智恵子
- 制作進行 - 広川浩司、吉田成彦、戸塚有紀、吉田有希、八田陽子、大橋永晴、村本克彦、上野弘泰
- 制作デスク - 馬渕吉喜、別紙直樹
- 制作担当 - 小倉久美、大澤正享
- 制作協力 - 藤子プロ、ASATSU-DK
- 制作 - シンエイ動画、小学館、テレビ朝日
- 原画
- 大橋隆哉 神村幸子 大武正枝 谷口七菜 橋本かつみ 柴田和子
- 飯山嘉昌 斉藤文康 北之原孝将 米谷光良 笹井昌治 高橋博行
- 上宇部辰夫 須貝恵美 河合静男 大久保修 小泉謙三 窪田正史
- 西村博之 篠原真紀子
- 協力
- オーディオ・プランニング・ユー アトリエ・ローク フィズサウンド クリエイション
- 旭プロダクション 岡安プロモーション トミ・プロダクション
- 京都アニメーション 夢弦館 スタジオタージ
- 菁画社 虫プロダクション マッドハウス
- 亜細亜堂 プロダクションIG スタジオ・ロード
- マキプロダクション スタジオメイツ ラジカルパーティ
- 上海フロンティア じゃんぐるじむ アニメフィルム
主題歌
- オープニングテーマ - 「ドラえもんのうた」
- 作詞 - 楠部工 / 編曲·作曲 - 菊池俊輔 / 歌 - 山野さと子(日本コロムビア)
- エンディングテーマ - 「季節がいく時」
- 作詞・作曲 - 伊秩弘将 / 編曲 - 水島康貴 / 歌 - SPEED(トイズファクトリー)
キャッチコピー
- 楽しさいっぱいつめこんで'99ドラえもん号、宇宙へ発進!
- 僕らの星・地球を守るため、銀河の大冒険がはじまった!!
- 地球はぼくが守る