野比のび助
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野比 のび助(のび のびすけ)は、藤子・F・不二雄の漫画作品「ドラえもん」に登場する架空の人物。36歳。副主人公野比のび太の父で、のび太と源静香の息子ノビスケの父方の祖父。
目次
趣味・特技・性格
一人称は「ぼく」、もしくは「パパ」(初期では「おれ」と言ったこともある)。玉子からは「あなた」、のび太からは「パパ」と呼ばれているが、初期には「とうさん」と呼ばれていた。真面目でのんびりとした性格。やや太った体型。趣味はもっぱら酒を飲むこと[1]。下手の横好きだがゴルフや釣りも嗜む。もっともゴルフに関しては腕そのものより、雨に降られやすい(いわゆる「雨男」)ことのほうが悩み[2]。ドラえもんの道具「雨男晴れ男メーター」での計測結果によると、マイナス8.5という数値(メーターの最大値はマイナス10)を記録したほど。
運動神経が鈍く、運転免許の技能試験に何度も落ちている。指導員から「あんたみたいなへたくそは運転しないほうがいい」とまで言われるが本人曰く、「僕は本当は運転がうまいんだ。先生が横でうるさいから悪いんだ」とのこと[3]。しかし「確かにぼくはへたくそだ。へたくそだから習いに行くんじゃないか!」と悔しがる場面もある。5巻の『宝くじ大当たり』では玉子から車の購入を強請られている。のび太が生まれた時には全力疾走で病院に向かう描写があり、いざというときに爆発する潜在能力は、のび太同様に目を見張るものがある(また同話で玉子に「あなたに似たら、運動ならなんでもこいのスポーツマン」と言われていた)[4]。上記の運転免許のエピソードではコース上ではかなりの高速でも上手く運転していたが、のび太たちの制止を聞かずに家の敷地外に出てすぐ子供のおもちゃのダンプと衝突する事故を起こした。また、のび太が生まれた時の全力疾走の最後には、生まれたばかりの赤ん坊と玉子を取り違えて笑われるというそそっかしい面が見られる。
不器用で、日曜大工仕事も苦手[5]。意思が弱く、ダイエットは3日も続かない[6]。癖は貧乏揺すり[7]。頻繁に喫煙しており、煙草の銘柄は「チェリー」[8]を中心に、両切りの「ピース」[9]、「セブンスター」[10]など、いずれも濃いめのたばこを吸っている(ただし、喫煙に対する規制が厳しくなっている現在の感覚では濃い部類だが、連載当時は一般的な銘柄であった)。アニメでは、「マイルドセブン」を吸うシーンもある[11]。今までに少なくとも32回の禁煙失敗歴を持ち、妻の玉子に「完全にニコチン中毒ね」と言われている[12]。だがテレビアニメ2期より吸わなくなった。
ギャンブルに興じる場面はない。ただし、原作の「ペコペコバッタ」ではドラえもんの道具の効力で会社の帰りに麻雀をしていたことを玉子に謝罪している。アニメ版ではのび助が財布を無くした時「煙草も吸えない、おでんも食べられない、それからパチンコも出来ない。ああ、生きていく楽しみが何にも無い」と嘆く場面はある[13]。近いものとして、一時期は宝くじに熱中したり[14]、知人達と共に麻雀をしたこともあった[15]。しかし、はずれくじを5万円分も買い続け、玉子にもう買うなと言われてしまう。しかしこの直前に、一等600万円の当たりくじを買うという強運も持ち合わせている(当選事実に喜び合うのび太、ドラえもん、玉子だったが、当ののび助は玉子との約束を思い出して、当たりくじを友人に売ってしまっていた。そのためドラえもんと玉子は激怒しのび太はうなだれていたがのび助は「なんで約束守ったのに怒られるんだ?」と嘆いていた)。その後玉子は宝くじを買うのを許したらしく、9巻『ごきげんメーター』で10万円、36巻『サカユメンでいい夢みよう』では100万円を当てている。
プロ野球・読売ジャイアンツファンである。巨人が負けていれば機嫌が悪くなり、勝てば機嫌を良くしてのび太とドラえもんにお小遣いをあげていた。[16]
戦時中だった子供の頃(原作では1945年6月10日)、疎開先である少女(実は女装したのび太)に一目ぼれする[17]。連載当初は終戦後24年目であり、のび太の親世代は皆戦争経験者であったことから、タイムマシンを使った戦時下エピソードも数本が描かれた[18]。しかし連載が長期化するにおよんで、次第に描かれなくなっていった[19]。
妻の玉子とは対照的に、基本的にのび太には甘い(生まれたてののび太の事を「ウヒョー! 玉のようなかわいい男の子!」とデレデレした表情で見ていた場面もある)が、時おり玉子から頼まれてのび太を叱ることもある。まれに彼自身の判断で自主的にのび太を叱ることもあるが、その場合には玉子のように感情にまかせて怒鳴り付けるのではなく、じっくりと諭すように説教している[20]。しかし、14巻『夢まくらのおじいさん』では急に態度を変えて極端に厳しくなったことがある。彼の父親は厳しい人物であったため、のび太も同じように厳しく育てなければならないと考えて、一時的ではあるが虐待に近い躾(のび太に対して厳しい玉子が止めるほど)を試みていた[21]。叱る内容としては、勉強の成績のことよりも、のび太が外で活発に遊ばず家の中でくすぶっている傾向について叱ることが多い。
画家の夢
学生の頃は画家になるのが夢で、その腕も確か。小学生時代には全国図画コンクールで金賞を受賞した経歴があり[22]、中学生時代には売れない貧乏画家の柿原(後に大画家として有名になった)に師事していた[23]。
父の反対で美術学校への進学をあきらめかけたところを、とある富豪家がパトロンとなり、海外留学の費用を出す(更に娘を嫁にやる)と申し出ていたが、他者の財力で夢を叶えることに疑問を抱き、自分の力で自分の人生を切り開くことを決意し、申し出を断った[24]。実際には夢を叶えることはできなかったが、これが玉子との出会いのきっかけになる(後述の妻・玉子との馴れ初めを参照)。
一方、現在でも時おり絵を描く姿が見られるが、玉子が「珍しい」と言っていることから、それほど頻繁には描いていないようである。また、描いた絵についてのび太に自由な感想を述べさせたところ、その答え(何と言ったかは不明)に怒り、のび太をひっぱたいたこともある[25]。
家族構成
妻は野比玉子。「ママ」または「きみ」と呼ぶ。玉子と交際していたころである結婚する前は「玉子さん」と呼んでいた。のび太としずかの息子であるノビスケにとっては父方の祖父。
ロボットであるドラえもんのことも家族の一人と認識しており、玉子から「うちは3人家族(のび助、玉子、のび太)だったわよね?」と聞かれた時には、「何言ってんだ、うちは4人家族(のび助、玉子、のび太、ドラえもん)じゃないか」と反論している[26]。
兄弟は、4男1女[27]だが、のび太が過去に行ってものび助しか登場しない(タイムマシンで過去の野比家へ行っても子供がのび助しかいない。ただし、34巻『一晩でカキの実がなった』にのみ過去の世界に弟(のび三郎)がいる。他に登場した兄弟は、のび助から小遣いをせびった妹[28]、現代人の生き方を教える弟[29]、売れない映画俳優をしているムナシ[30]など弟妹のみ)。一方、作中で兄または姉の存在が示唆されたことは1度もない。
妻・玉子との馴れ初め
前述の画家への道の援助者の申し出を断った直後、道端を偶然歩いていた片岡玉子と衝突。これが玉子との出会いである。不注意を謝った後にすぐ別れたものの、玉子が落としていった定期券をのび助が拾って追いかけていったことが、交際のきっかけとなる[24]。ちなみに大山版アニメでは、のび助の服の染みを、玉子が自分の持っていたジュースをこぼしたと勘違いしてハンカチで拭き取るエピソードが付加されており、のび助が玉子の優しさに惹かれる描写が成されている)。
正式なプロポーズは1959年11月3日の公園(アニメ版第1期[31]によると日比谷公園、第2期[32]では日の出公園の噴水前、5時きっかり)にて行われた[33]。当時ののび助と玉子は、些細な誤解から別れる寸前におちいる。ここでドラえもんが出した道具「ヒトマネロボット」が前後して2人に変身して相手にプロポーズ。結果、2人は仲直りする。しかし、これによって野比夫妻はどちらも「自分は求婚を受けた側」と認識してしまい、「12回目の結婚記念日」(すなわち1971年)でも当事者同士で「最初に求婚したのはどちらか」で意見が食い違い、のび太の目の前で一時、夫婦喧嘩となっている。道具「うそ発見器」による判定では「どちらも本当」とされ、ドラえもんとのび太がタイムマシンで1959年当時を訪れたのは「真相を確認するため」だった。
弟や妹
何度か弟(のび太にとって叔父)が登場するが、各話でキャラクターが違い、ほとんど一度の登場だけだった弟も含めて2人か3人いる。水田版アニメでは野比のび郎だけ。
初期設定では妹もいて「プロポーズ作戦」に登場し、テレビ朝日の初期アニメ版でも同じで、のび太にとって叔母になるが、作中のどの「おばさん」かはっきりしておらず、声優交代直前のリメイク版「13年目のプロポーズ」では、親類ではなく、その場に居合わせた少女の一人がのび助に写真撮影を頼む設定になった。また、水田版アニメ「プロポーズ作戦」(2009年5月22日)でも公園でぶつかった見ず知らずの女の子になっている。
役職や住居などについて
- 課長補佐を務める[34]。ただし原作やテレビ朝日版アニメでは直接の上司として部長が度々登場しており、彼が課長であることが暗示されている。[35]勤務会社名は当初「何度加(ナントカ)会社」だったが、「△○商事」[36]を経て、現在は「○○商事」[37]となっている。なお、1巻『未来の国からはるばると』の雑誌連載版では、のび太の未来のアルバムの1988年の所に「父の会社をつぐ」とあり、初期設定では会社経営者であったことが窺える。また、彼の経営する会社は札幌市に北海道支社を置いている[38]。
アニメに登場した履歴書
アニメ第2作1期「タイムマシンでお正月」(1980年1月1日放送、ビデオソフト未収録)に履歴書が登場した[39]ので、参考としてここに転載する。なお、この履歴書はのび助が書き初めとして書いたもので、内容が正確でない可能性がある(たとえば、履歴書の記述では世田谷区野毛から中練馬区へ転居したと読み取れるが、実際、野比家の位置はのび助が幼少のころから変わっていない)。
- 本名:野比 野比助
- 生年月日:昭和15年1月24日
- 本籍:東京都世田谷区野毛 1-0(以下不明)
- 現住所:東京都中練馬区 3-14-(以下不明)
- 学歴
- 昭和28年3月 東京都立世田谷野毛山帝都(以下不明)
- 昭和31年3月 東京世田谷野毛第四十中学(以下不明)
- 昭和34年3月 東京都立野毛山大附属(以下不明)
- 昭和40年3月 東京灯台大学院 卒(以下不明)
- 免許
- 全国珠算連盟九段
- 第三種電器技師 免(以下不明)
その他
- 休日は、初期では和服で過ごすことが多かったが、和服から洋服が一般化するのと共に洋服を着るようになっていった。
- 穴掘りなどの雑用なども任されているがのび太に押し付けている。
- 2巻『地下鉄をつくっちゃえ』では、のび太とドラえもんがのび助へ贈った定期券に「野比のび三」と書かれているが、それはセワシの父の名であるとの説がある[40]。ただし、現在の版では「野比のび助」へと改変されている。
- のび太の息子であるノビスケと同名にあたる。一時期区別を付ける為、ノビスケからノビオに変更した時期もある。
- 画家を希望していた若い頃に現在の姿のドラえもんとのび太を見ているが、覚えていないらしい[41]。彼の妻である玉子も幼い頃にドラえもんとのび太を目撃している[42]が、「あやしい二人」と認識しただけだった。のび太が生まれた直後、ドラえもんと一緒にやってきた小学生の「のび太」が「猿みたい」と発言して、若いのび助は激怒。彼は「親の顔が見たい」とコメントしている[43]。さらに玉子はのび太の幼少期(のび助の母親が存命の頃)にも目撃し、現在ののび太に自分の容姿や幼少ののび太をなじられ憤慨している。現在ののび太が必死に事情を説明しても、「おかしな子ね」「のび太はこの子よ」などとあしらっている[44]。というように、玉子は3回、のび助は2回現在のドラえもんとのび太を見ている。
- ドラえもんとのび太曰く、彼が作るカレーは世界一まずいらしい[45]。初期の頃は料理が上手という描写[46]もあるが、同じく初期の頃に風邪で寝込んだ玉子の代わりにご飯を作っているのを見たのび太が「父さんの料理なんて食べられない」と発言し、ドラえもんも横でそれに同意した顔をしている描写[47]もある。また、別の話で玉子不在の時に料理を作ろうとした際には、指を切る・砂糖と塩を間違える・ごはんを黒焦げにする・おかしな味付けにするなど[48]、その下手さが如実に現れている。以上のように、料理が上手なのか下手なのかは非常に曖昧になっている。
- エロ本らしき本をのび太が見つけている(が、その時はある用事のため時間がなく、ドラえもんにすぐにとられた。この本はのび助のへそくり1万円が挟まれていた[49])。
- のび太が結婚する頃にはすっかり禿げてしまい髪型がバーコードとなっている(アニメのみ)[50]。
- 『ドラえもん のび太とブリキの迷宮』ではのび太やドラえもんより早く冒頭で登場し、ブリキンホテルを予約している。
- 大長編ドラえもんにおいては、全作品に登場する玉子と比較すると登場しない作品も多く、登場作品においても出番は至って少ない。話の根幹にかかわった作品は、物語の導入を担った「のび太とブリキの迷宮」、間接的にピンチを救った「のび太と夢幻三剣士」ぐらいである。アニメが2期に入ってからの劇場作品には、『ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』を除き毎回登場している。
声優
- テレビアニメ第1作
- 村越伊知郎
- テレビアニメ第2作1期
- 加藤正之(1979年4月から1992年10月(病気のため降板))→中庸助(1992年10月から2005年3月)
- テレビアニメ第2作2期
- 松本保典、田原アルノ<代役>/小林由美子&優希比呂(少年期)、野沢雅子(劇場版少年期)
脚注
- 特記のない「x巻」は、てんとう虫コミックス「ドラえもん」の単行本の巻数を表す。
- ↑ 10巻『ようろうおつまみ』、36巻『酒の泳ぐ川』など
- ↑ 34巻『雨男はつらいよ』
- ↑ 14巻『ミニカー教習所』
- ↑ 2巻『ぼくの生まれた日』
- ↑ 5巻『重力ペンキ』
- ↑ テレビアニメ2期「強〜いイシ」(2008年1月25日放送、2011年1月14日再放送)
- ↑ 7巻『くせなおしガス』
- ↑ 11巻『自動販売タイムマシン』
- ↑ 9巻『無人島の作り方』
- ↑ 大山版アニメ『7万年前の日本へ行こう』(1990年10月5日放映)
- ↑ 大山版アニメ『強いイシ』(1996年12月31日放映)。当時は左端に青いラインの2代目デザインが販売されていたが、セブンスターに類似した星に7をあしらった初代デザインが描かれていた
- ↑ 24巻『ジャイアンリサイタルを楽しむ方法』
- ↑ 大山版アニメ『おくれカメラ』
- ↑ 5巻『宝くじ大当たり』
- ↑ 大山版アニメ『百鬼せんこう』
- ↑ 『ドラえもんプラス』3巻「一発逆転ばくだん」
- ↑ 3巻『白ゆりのような女の子』
- ↑ 5巻『ぞうとおじさん』など
- ↑ のび助が戦争経験者である設定が登場した最も遅い時期の作品としては31巻『あとからアルバム』(1983年発表)がある
- ↑ 8巻『くろうみそ』では、様々な格言や諺の知識を駆使して2ページに及ぶ説教を行っている。
- ↑ 実際には、のび助の父親は表面上は厳しくても、陰ではのび助を気遣っていた。そもそも彼の厳しい教育は、気の優しい妻(のび助の母親)の協力があってこそ成立し得るものであったが、のび助はその事に気付いていなかった。
- ↑ 31巻『あとからアルバム』
- ↑ 6巻『この絵600万円』
- ↑ 24.0 24.1 43巻『のび太が消えちゃう?』
- ↑ 1巻『おせじ口べに』
- ↑ 10巻『弟をつくろう』
- ↑ 雑誌『ぼく、ドラえもん』内の記事
- ↑ 1巻『プロポーズ作戦』
- ↑ 4巻『してない貯金を使う法』
- ↑ FFランド2巻『宝さがし』
- ↑ アニメ「プロポーズ作戦」(1979年5月14日放映)
- ↑ アニメ「プロポーズ作戦」(2009年5月22日放映)
- ↑ 1巻『プロポーズ作戦』
- ↑ 日本テレビ版アニメでの設定
- ↑ コミックス第16巻収録『パパもあまえんぼ』など
- ↑ 大山版アニメ『ドロロン忍者セット』(1993年11月5日放映)
- ↑ 大山版アニメ『お願い! ガマン大王』(2001年5月4日放映)
- ↑ てんコミ42巻『やりすぎ!望み実験機』
- ↑ 書籍「テレビ版ドラえもん 2」小学館〈コロコロコミックデラックス 4〉、1980年発行
- ↑ 日本ドラえもん党著「野比家の真実」
- ↑ 6巻『この絵600万円』
- ↑ 7巻『ママのダイヤを盗み出せ』
- ↑ 2巻『ぼくの生まれた日』
- ↑ 4巻『おばあちゃんのおもいで』
- ↑ アニメ「ほんものだゾウ」(2001年2月2日放映)など
- ↑ 2巻『テストにアンキパン』
- ↑ カラー作品集5巻『かぜぶくろ』
- ↑ プラス1巻『グルメテーブルかけ』
- ↑ 29巻『自動買い取り機』
- ↑ アニメ版第623話『のび太の結婚式?!』