屋台
屋台とは
- 祭で使用される山車の一形式のこと→山車を参照
- 小型簡易店舗(移動式が多い)のこと
この項目では、小型簡易店舗の屋台について説明する。
屋台(やたい)・屋台店(やたいみせ)は、屋根が付いた移動可能な店舗。飲食物や玩具などを売る。当初、蕎麦屋は「振り売り」形式の屋台が多く、寿司屋は「立ち売り」形式の屋台が多かった。
世界各地に様々な形態の屋台がある。初期の形態としては、天秤棒で担いで売り歩いた形態があったが商品を多く運べないのが欠点。リヤカーのように可動式の店舗部分を人力、自転車、オートバイで牽引するものや、テントのように組み立て型の骨組みをもとに店舗を設置する場合もある。またトラックの荷台の部分を改造したものもある。似た言葉として露店(ろてん)があるが、露店は移動式とは限らず、歩道上に物を並べて販売したり、建物の1階の店先で物を売る店も含まれる。
日本の屋台
日本では、江戸時代の享保年間に現れておりこの時代に発達し人気となり広がった。この江戸では、握り寿司や蕎麦切り、天ぷらといったすぐに提供できる食べ物が屋台で提供された[1]。その後に、おでん、焼き鳥店も出現し、軽食やおやつの外食が広がった[1]。
現代の屋台
第二次世界大戦後、闇市の屋台が広がっていった。 正月の寺社や縁日など大きな行事の場所にはたこ焼き、焼きそば、綿菓子、おもちゃなど様々な屋台が出店する。このような祭りの縁日等大きなイベントに出店する屋台は的屋と呼ばれる人たちによって営まれている場合が多かった。
移動式の屋台ではラーメン屋も商われておりチャルメラをならしながら夜の街を流す。これは江戸時代の夜鳴き(夜鷹)そばに起源を発しており、夜間に夜の街を流す屋台もある。
こうした移動販売は固定店の飲食店と比較して低投資で取得が可能で、客が多い日時にだけその場所に出店できるため、個人の起業スタイルの一つともなっている。またこうした起業自体を商売とする、移動販売のフランチャイズビジネスも現れた。
更なる発展形として、移動販売の欠点[衛生面での業態の制限][道路交通法の問題][電気や給排水設備の不足][車内作業効率の悪さ]を解決した半固定型のユニット厨房や牽引式厨房車両も姿を現し始めた。
常設の(「屋台」ではない)小さな店舗を集めた「屋台村」と呼ばれる施設や飲食店街がある。これらは屋台ではないものの、町おこしの為に観光名所、観光の目玉とされる。
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神社の屋台
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カステラ屋台
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今川焼の屋台
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まつりの屋台
行政による規制
食品衛生法(昭和23年1月)・消防法(昭和23年8月)・道路法(昭和27年12月)・道路交通法(昭和35年12月)などの法律によって規制が行われた。1964年東京オリンピックも機になり、非衛生的な屋台の一斉排除が行われた。また21世紀に入ってから暴力団排除条例によって、暴力団への用心棒代を渡す利益供与は禁止され、暴力団員などによる屋台営業の排除もすすんでいる。福岡市では、屋台を対象にした屋台基本条例が2013年に制定されている。
交通の便が悪くなることや、臭うという理由で住民から嫌われることがあり、工事やイベントで一時的に営業をやめた屋台が同じところで営業を再開しようとしたのを住民達から阻止されたケースがある。高知の屋台は不許可営業を行っている[2]。
法律に従わず違法営業をしたり、水道、排水、電気、トイレの確保やゴミ処理、深夜の騒音問題、衛生面での問題や道路を占拠し交通を妨害するなどの問題も発生している。
東アジアの屋台
台湾の屋台
台湾では、早朝から粥、麺類、魯肉飯、米加工品、サンドイッチ、フレンチトースト、おにぎりなどの軽食と豆乳、牛乳、コーヒーなどを売る屋台が、駅や市場の周辺、商店街などで営業を始め、朝食を取る人が訪れる。昼も同じような場所で、昼食に適した麺類などを売る屋台が出る。一般に都会では人々は朝食は家で取らず屋台で済ます場合が多い。それだけに屋台は人々の生活に密着した存在となっている。
主な都市では、特にホーロー人地区に夕方以降から深夜にかけて夜市(中国語:ye4shi4 イエスー)に屋台が登場する。台湾語では「路邊攤」(ローピータアー, lou7-piN7-taN3-a2)と呼ばれる。路面全体を歩行者天国にするか、あるいは両側の路肩だけを利用した道路の一定区画に屋台が並ぶ。これらの屋台の中には、麺類、揚げ物、炒め物、煮込み料理、スープ、菓子類、カットフルーツ、ジュース、日本起源のたこ焼き、おでん(黑輪と表記)、どら焼き、回転焼き、かき氷、刺身、寿司など多様な食品を提供するところもあれば、衣料品や雑貨を売る店もある。また、海老巻き、棺材板、阿給、カキ料理、カジキ料理、ハタスープ、アナジャコなど、地方独特または地方名物の食品を出す店もある。このため、地元民だけでなく、海外からの観光客にも人気が高い。 有名な夜市として、北台湾最大規模の台北市士林地区の「士林夜市」、大同区の「寧夏夜市」、萬華区の「華西街夜市」、松山区の「饒河街観光夜市」、台湾師範大学近くの「師大夜市」、台湾大学本部近くの「公館夜市」、新北市永和區の「楽華夜市」、中台湾最大規模の台中市の「逢甲夜市」、南台湾最大規模の台南市の「花園夜市」、高雄市の「六合夜市」などがある。小都市の夜市は土曜日だけなど限られた日に立つ。
中国の屋台
中国でも、台湾に似た形態の屋台が見られるが、売る食品は地域ごとに異なる。たとえば、北京でみかける食品では、天津煎餅、焼き芋、ゆでトウモロコシ、甘栗、シシケバブなどが多い。上海周辺ではちまきもよく売られている。
地域によっては、夕方以降、歩道や広場を使って衣料品、雑貨類を販売する大規模な市場が現れたり、歩行者天国状態にした、食品の屋台街が現れる場所もある。屋台街では、炒め物や揚げ物を中心とした本格的な中華料理を出す店も少なくない。サソリ、セミなどの揚げ物といった、他の国では見慣れない食品が扱われている場合もあり、地方独特の料理を出す店もある。また、台湾からアイデアを取り入れたソーセージの回転焼き、炒めアイスクリームなどを出す店はたまにあるが、台湾でよくみられる日本起源の食品はほとんど見られない。
しかしながら、衛生状態にはかなりの疑問があり、下水から再生された食用油である地溝油が使用されている危険性が指摘されている。
香港の屋台
香港では、「大牌檔(広東語 ダーイパーイドン)(中国語版の記事)」と呼ばれる屋台が、広東料理を中心に麺類、粥、炒め物などの中華料理を出すが、1980年代以降路上での営業は禁止される地域が増え、基本的に公園の一角のような定められた場所に集められて営業している。ほかに、自動車を利用した移動販売店舗も認められるが、許可取得に要する費用が高く、営業できる場所も制限を受けるため、日本のように一般的ではない。
これ以外に、プロパンガスコンロを仕込んだカートを使って、煮込み料理、揚げ物、鶏蛋仔という菓子などを売る業者が街角に現れることがあるが、基本的に無資格販売であり、警官がパトロールに現れると、クモの子を散らすようにカートを押して逃げる姿が見られる。
夜に道路を利用して店舗を出す例では、九龍半島の廟街(男人街)や西洋菜街(女人街)が有名であるが、衣料品や雑貨の販売に限られる。他に深水埗の鴨寮街では昼から電気製品や古物を売る屋台が出る。1980年代までは、香港島の上環大笪地に大規模な屋台群が出て、プアマンズナイトクラブ(平民夜總會)と呼ばれた。
韓国の屋台
韓国の屋台には、ノジョム(露店)とポジャンマチャ(「布張馬車」=幌馬車)がある。ノジョムはトッポッキ、キムパプ、トースト(ホットサンドのこと)などの軽食や、ホットク、プンオパン(たい焼きの模倣品)などのおやつ類を販売し、立ち食いが主となる。いっぽうポジャンマチャは可動式の飲み屋で、椅子を置き、周囲をビニール幕などで覆うことが多い。リヤカーを改造した程度の小規模なものが主流だが、周辺にテーブルセットをいくつか配して大型の店舗形態を成すものもある。メニューは酒肴となるモツや魚介の炒め物、スンデなどから、スープや麺類まで幅広い。
東南アジアの屋台
日本では屋台は祭りの軽食や、あるいは夜の簡易酒場といった位置づけになりがちなのに対し、東南アジアでは屋台は庶民の生活により密着した存在である。昼食から営業し、持ち帰り用、あるいはその場で簡単な椅子とテーブルを備え本格的な料理を供する場合が多い。お互いの店舗で厳しい競争にさらされていることが多いため、一般的に値段が安く、味も満足のいく場合が多い (en:Mamak stall)。
タイの屋台
タイには、本格的な食事を提供する屋台から、簡易屋台まで様々な種類がある。タイ料理としては、ガイヤーン(タイ風焼き鳥)、サテ(豚肉、牛肉)、トムヤンクン、空心菜炒めや、ご飯ものとしてはカオカムー(豚足煮込みご飯)、カオマンガイ、カオパット、カレー、麺類としてはパッタイ、バミー、クイティアオ、バミー(汁有、無し)、クイティアオ(太麺、細麺等)、サラダ類としてはソムタムやヤムウンセンがある。中華料理としては、肉まん、バクテー、揚げ餃子、点心(シュウマイなど)、炒飯。インド料理としてはカレー、ナン、タンドリーチキンがある。ケバブなどの中東料理もある。簡易屋台でも果物、ガイヤーン、生絞りジュースなど様々なものが売られているが、特徴的なもので食用の昆虫や焼きおにぎりのようなものなど、イーサーン料理を起源とするものもある。
マレーシアの屋台
ナシゴレン、ミーゴレン、ナシアヤム、アヤムゴレン、ソトアヤムなどのマレー料理、ラクサなどのニョニャ料理、カレー、ナン、ロティなどのインド料理、炒飯、点心、バクテーなどの中華料理などがあげられる。簡易な屋台ではスイカ、パイナップル、パパイヤなどの果物、オレンジ、ココナッツ、リュウガンなどのジュースや豆乳などの飲料、クルプックや焼き鳥、サテなど様々なものが売られている。
シンガポールの屋台
テンプレート:節stub 屋台を室内に集めたフードコートのようなホーカーセンターがある。
インドネシアの屋台
カキリマ (kaki lima)と呼ばれる屋台では麺料理、サテ(鶏肉のサテアヤム、山羊肉のサテカンビン、パダン風のサテパダンなど)、マルタバッ (martabak)、ソトアヤム、ピサンゴレン(pisang goreng、揚げバナナ)、ブブカチャン・ヒジャウ(bubur kacang hijau、緑豆粥)、魚介料理などを販売している。カキリマの本来の意味は「5フィート」で、歩道の幅を指し、食べ物やその他の物品を歩道で販売する事を表す言葉である。
屋台の営業時間は食べ物の種類によって異なる。早朝から営業する屋台はブブアヤム(bubur ayam、鶏粥)、緑豆粥など。正午から営業するのはラクサ、ゴレンガン(gorengan、揚げ物各種)、ソマイ(siomay、ピーナッツソースで食べる魚の焼売)、バタゴル (batagor)、トゲゴレン (toge goreng)、麺料理、ソトアヤム、かき氷の屋台である。午後4~5時からの営業はミーゴレン、ナシゴレン、サテ(サテアヤム、サテカンビン)、マルタバッ、ピサンゴレンの屋台などである。都会の夜を繁華街の歩道で営業するカキリマが街を賑やかにする。
移動式屋台は荷車、改造した自転車、オートバイに乗った物売りである。パンを始め、麺料理、ミー・パンシッ(mi pangsit、ワンタン麺)、バーワン、トゲゴレン、鶏粥、ソマイを売る。移動式屋台は独特の掛け声や鍋、椀、竹を叩いて、販売する料理を宣伝する。
ジョグジャカルタの繁華街マリオボロ通り (Jalan Malioboro)には地面の上にマットを広げたレセハン (lesehan)という屋台があり、主にグドゥッを商う。ジャワ語で「レセハン」とは床に座るという意味である。ストリートミュージシャンが必ず現れ、客から貰う小銭を期待して歌を歌う。
ジョグジャカルタの夕方から営業するワルン (warung)はアンクリンガン (angkringan)と言う。コーヒーなどの飲み物とスナックや、セゴクチン(segå kucing、ネコご飯の意)という数口分のご飯とおかずを販売する。アンクリンガンはジャワ語でリラックスして座るという意味で、ジョグジャカルタの薄暗いところで世間話をする場所である。
ベトナムの屋台
フォー、バインミー(サンドイッチ)、ホビロン(孵化前のアヒルの卵)、オクニョイ(タニシの詰め物)など、種類が豊富である。揚げ春巻きも人気があるが、生春巻きは屋台によっては衛生上の注意が必要である。
アメリカの屋台
アメリカ合衆国の屋台
スポーツの試合や移動式遊園地では、ホットドッグ、ハンバーガー、ポップコーン、プレッツェル、タコス、りんご飴等が代表的である。オフィス街や大きな大学のキャンパスでは、昼食時にサンドイッチやブリート、スープなどなどを売る移動販売車が見られる。ある程度の人口がある都市では、夏期に市内のレストランが市の中心部に屋台を出して数種の料理を提供するイベントが催される。子供の多い住宅地では、夏になるとアイスクリームの移動販売車が軽音楽を流しながら巡回する。
ブラジルの屋台
ブラジルではフェイラ(路上で開かれる露天市)において精肉、鮮魚、青果そしてパステウ(ブラジル風揚げパイ)とカウド・デ・カーナ(サトウキビの搾りたて果汁。好みによってレモンやパイナップル等の果汁を混ぜる)を販売する屋台が定着している。[3]他にもパモンニャ(トウモロコシを原材料にした料理)、茹でたトウモロコシ、ポップコーン、シュハスコ、サンドイッチ、ホットドッグが学生街、駅やバスターミナル付近の屋台で販売されている。
ブラジルの屋台の多くではクレジットカード及びデビットカードが使用できる。[4]
ヨーロッパの屋台
ドイツの屋台
ドイツではカレー・ヴルストなどソーセージを扱った屋台が街角や駅構内などに多く見られる。プレッツェルなども一緒に売られていることも多い。グリューワインと呼ばれるホットワインも売られている。トルコ料理の人気が高いため、ドネルケバブも売られている。
フランスの屋台
フランスの屋台はさまざまな軽食を扱うが、クレープ、ベルギーに端を発するゴーフル(ワッフル)、アイスクリームなど、甘味の軽食が多い。しかし中には本格的な食事を供す屋台もあり、ムールフリット(ムール貝の白ワイン蒸しのフライドポテト添え)などを扱っている店もある。そのほかレバノン料理のファラフェルなど中東のスナック、あるいは中華の点心などを扱う移民系の屋台も見られる。これらは朝市で八百屋や魚屋の屋台に混ざって総菜屋として機能していることも多い。冬季の焼き栗や焼きとうもろこしの屋台はモンマルトルやメニルモンタンなどパリ北東部の庶民的地区の風物詩でもある。
クレープの屋台は特に多い。ジャムなどの甘い味付けだけでなくハムやチーズといった塩味の軽食も扱っている。これらはノルマンディーやブルターニュ地方のガレット(そば粉のクレープ)に端を発するが、現在街角で見られるクレープの屋台が全てそば粉のガレットを扱っているとは限らない。むしろそのような地域の特徴を出したクレープはそれ専門の軽食レストランなどで供されるのが一般的である。
クリスマス期にはクリスマス市(フランス語:マルシェ・デュ・ノエル Marché du Noël)として町の中心広場などに木組みの仮設屋台が多く立ち、食べ物や小物などが売られる。小物としては木彫りの人形やクリスマスツリーの飾りなど、食べ物ではクリスマス用に特に飾りつけたパンケーキやホットワインなどが特に多く見られる。
ベルギーの屋台
ワッフルやクレープ、フライドポテトやチョコレートなどが売られている。
ギリシャの屋台
プレッツェルなどのパン類はよく売られている。
チェコの屋台
ホットワインやスマジェニー・シール(揚げチーズ)のサンドイッチなどがよく売られている。
アフリカの屋台
エジプトの屋台
焼き芋の屋台がある。
脚注
関連項目
業態
場所
参考文献
- 石丸紀興「7355 都市における屋台の分布と屋台政策に関する研究:その2 呉市と福岡市での政策比較」学術講演梗概集. F-1, 都市計画, 建築経済・住宅問題、709-710頁、社団法人日本建築学会、1996年。