幾原邦彦

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幾原 邦彦いくはら くにひこ、男性、1964年12月21日 - )は、アニメ監督、音楽プロデューサー小説家漫画原作者日本映画監督協会会員。血液型はA型。

作風

独特の止め絵、バンクのトリッキーな使い方・ギャグ演出・演劇の手法を模した映像表現に定評がある[1]

職業監督としては「セル画の枚数・作画の力に頼らずに面白い物を作る」ことをポリシーとしている[2]佐藤順一は「シナリオが直せないなら直せないなりの、作画が期待できないなら期待できないなりの、制作現場に対応した絵コンテを描ける人」と評価している[3]

構成作家としてはハッタリ・ケレン・メタファーメタフィクションを多用し、現実世界における物理法則や外的必然性ではなく、作品世界における内的必然性に従って描こうとする傾向がある。それ故、意図の読み難い演出・現実と時系列順にはありえない不自然な展開が多い。これは、「リアリズムよりも抽象化された画面の方がテーマが伝わる」[4]、「シリアスな出来事を、ありのままに描くのはつまらない」[5]という方向性に基づくものである。

難解な作風は意識的ではなく、「自分が見ていて良いと思うものにカメラを向け、ピュアでいようとしたら自然にそうなった」「描写の対象には、普段みんながわかっているのに語らない部分、見て見ぬふりをするものを選んでいる」と語る[6]

作品の登場人物の名前に、ある程度の縛りを設ける事が多い[7]

略歴

人物像

  • 母子家庭で育った。学校では同級生を軽蔑しており、「早く大人になって、早くそこから抜け出たかった」と述べている[10]。自身の作品は母も鑑賞しておりウテナは「わけわからん」と言われているが、ピングドラムは評価されている[4]
  • プラモを作るのが好きだった。絵を描くのが得意だった。女の子にもてていた。女の子と「チュー」するよりプラモや絵を貯めることを好んだ[10]。学生時代は剣道部であったが、とにかく暗かったと語っている[11]
  • グラフィックデザイナーに憧れていたが、バイトで仕事をすると個性のぶつかり合いで、その怖さにびびってしまい断念する[11]
  • アニメ業界に入った理由は「楽そうだったから」[10]実写映画監督も兼任しようと思った時期もあったが、「助監督になれるまで20年かかる」と聞き、断念した[11]
  • 東映動画の研修生試験を遊び半分で受けたら受かった。論文のための原稿用紙に絵を描いたりした[10]。アニメを仕事にしたいとは、それほど思っていなかったという[11]
  • メディアに出る際は前髪を金髪のメッシュに染め、原色を生かした服装で出演する場合が多い。これは、「作品に興味を持ってもらう為に制作する側に注目されるようにするのは不必要な方法ではない」という考えから来ている[12]。その派手なルックスから、メディアでは“アニメ界のヴィジュアル系”という冠で紹介されることがある(さいとうちほ曰く「アニメ界の小室哲哉[13]佐藤順一曰く「どうすれば目立つかということを色々考えていた人」[3])。
  • 学生時代に寺山修司の演劇実験室◎天井桟敷に傾倒していたことから、演劇への造詣は深い。幾原は、天井桟敷で音楽を担当していたJ・A・シーザーと親交があり、そのことがシーザーの『少女革命ウテナ』への起用に繋がった。
  • 影響を受けたアニメーション監督として、出崎統[14]押井守[15]の名を挙げている。
  • 学生時代に、テレビ放送されていた『哀しみのベラドンナ』を偶然観て、アニメーションを意識するようになった[16]。従って、アニメーションは元から好きだった[11]
  • 新世紀エヴァンゲリオン』の登場人物、渚カヲルのモデルだという説がある[17]
  • 庵野秀明が『エヴァンゲリオン』以降、突然演劇に目覚めたのは幾原の助言によるものである[18]
  • 細田守[2]大河内一楼[19]長濱博史[20]など多くのアニメ業界人が幾原からの影響を発言している。
  • 幾原によって見いだされた業界人は多い。榎戸洋司は幾原の紹介によりアマチュアから脚本家への道を開いた[21]。また、大河内一楼はアニメへの関わりを持った最初が幾原との仕事である[19]。アニメーターの中村豊は、キャリアの初期に幾原の演出で印象深い仕事[22]をしている。
  • 榎戸洋司とは、高校時代からの友人。
  • ファンからは「イクニ」と呼ばれ、自身のホームページやブログ、ツイッターでも用いられる。
  • 自身を「褒められて伸びるタイプ」と語る。

参加作品

テレビアニメ

劇場版アニメ

OVA

舞台

CD

  • 1997年 少女革命ウテナ『絶対進化革命前夜』(ボーカル)
  • 1997年 少女革命ウテナ『バーチャルスター発生学』(ボーカル)
  • 1998年 少女革命ウテナ『体内時計都市オルロイ』(ボーカル)
  • 1999年 少女革命ウテナ『麗人ニルヴァーナ来駕 ボクのアンドロギュヌス』(ボーカル)
  • 1999年 川上とも子ファーストアルバム『ADOLESCENCE DOLL』(プロデュース
  • 2000年 Schell:Bullet『サナフス68』(プロデュース、ボイスナレーション)
  • 2008年 少女革命ウテナ『少女革命ウテナ コンプリートCD-BOX』(スーパーバイザー
  • 2012年 輪るピングドラム vol.8 特典ドラマCD(貝国人)

出版物

関連人物・交友関係

脚注

  1. アニマックス系列『創ったヒト2010年2月13日放送分より。
  2. 2.0 2.1 『「フリースタイル」(vol.7、フリースタイル社) - 特集・細田守』より。
  3. 3.0 3.1 洋泉社オトナアニメ」 Vol.32より。
  4. 4.0 4.1 飛鳥新社季刊エス2011年10月号より。
  5. 角川書店Newtype」 2011年10月号より。
  6. MAG・ネット』(2011年12月3日分)の監督インタビューより
  7. 美少女戦士セーラームーンシリーズ』では太陽系の惑星、鉱物、自然、『少女革命ウテナ』では植物、『ノケモノと花嫁』では動物に関連した名前を付けている(ただし、『美少女戦士セーラームーン』に関しては大半が偶然によるものであり、オリジナルの敵に向けた場合が多い)。
  8. 同作の制作終了後に「第一期ビーパパス解散」という形で分散するも、実際には「Schell Bullet」「SとMの世界」にクレジットされていた。
  9. ヒーローは殺人鬼?」より。
  10. 10.0 10.1 10.2 10.3 「Newtype」 マークII 1997年
  11. 11.0 11.1 11.2 11.3 11.4 徳間書店Voice ANIMAGE」 vol.27より。
  12. 「Newtype」 2000年8月号より。
  13. ちゃおコミックス版『少女革命ウテナ』 第3巻より。
  14. 洋泉社オトナアニメ」 Vol.21より。
  15. キネマ旬報社「押井守全仕事―『うる星やつら』から『アヴァロン』まで」より。
  16. 「月刊「アニメージュ」インタビュー、月刊「Newtype」のクリエーターの好きなアニメランキングよりコメント。
  17. ALL ABOUT 渚カヲル(角川書店)にて、この件について本人がインタビューを受けている。
  18. 庵野秀明の対談集『フタリシバイ』(徳間書店)の中での発言。
  19. 19.0 19.1 「Newtype」 2008年8月号 『コードギアス 反逆のルルーシュ』オフィシャルブログより。
  20. 「Newtype」 2005年5月号より。
  21. 「アニメージュ」インタビューより。
  22. アニメスタイルのインタビューより。
  23. 「イクニのメルとも蔵」 2008年3月10日分より。クレジット未表記。

外部リンク