実写
実写 (じっしゃ)とは、本来は実況や実景を文章や絵で表現、またフィルムなどに写しとること(たもの)であり、記録映画を指す言葉である。アニメーションやCGなどの映像に対して、実際に撮影された映像を指す言葉としても使われており、本記事ではその意味として解説する。
実写とアニメ
アニメ監督の押井守が監督した実写映画『アヴァロン』について、彼は「実写素材を使用して作ったアニメーションである」と主張している。実写で撮影しても、コマ抜きやスローモーションなどでタイミングを変えるとアニメーションとも呼べるという見解もあり、この言葉の定義は今後変わることも予想される。
ただし、アニメーション自体が元々特殊技術のひとつの形でしかない為、実写素材を使ったアニメーションは単に特撮=SFXではないかという意見もある。
押井の見解はアニメ及び実写という呼び方が技法というよりはジャンルとして差別化するかたちで実際に撮影した映像を「実写」と分ける傾向が日本では殊更に強いことに起因すると考えられる(アメリカなどでは、アニメーションで人気が出たら実写メディアで映像化する事はごく普通の事であり、そういった区別もさほど必要とされない模様)。
アニメと実写の両方を兼任する映画監督として、庵野秀明、押井守、大友克洋が代表的である。
日本の実写作品の問題
ItMedia「日本のドラマは論外 希薄なテレビ業界の意識」でタレントのデーブ・スペクターは「米国に比べると日本のドラマは論外。(中略)米ドラマは制作に潤沢な予算と時間をかけている。地上波放送やDVD化など先々の展開を考え、最高の脚本家とキャストを集め、完成度の高いドラマを作っている。当然おもしろくなるし、世界中で売れる」というコメントをしている。
『ウルトラマン』などで知られる脚本家、佐々木守により、日本のメディアの予算だけが進歩していないとの旨の発言を著書『戦後ヒーローの肖像 -- 『鐘のなる丘』から『ウルトラマン』へ』(岩波書店)でしているように、基本的に実写に限らず日本の映像作品全体が低予算で製作されている為、日本におけるアニメーションというメディアの隆盛もその根本には低予算で実写より「らしく見える」点に追うところが大きい。
ところで、デーブのいうように潤沢な予算で製作すれば世界中で売れるのかというと、事はそう単純にはならない。なぜならば、アジア人がメインに登場する作品は英語圏では好まれないからである。世界的にヒットした『パワーレンジャー』に東映のスーパー戦隊シリーズのヒーロー、怪人、ロボットなどのシーンだけしか使われないのはそういった事情による[1]。またアメリカにおいて『ウルトラセブン』よりもオーストラリアで撮影されたほぼ西洋人キャストによる『ウルトラマンG』の方が視聴率が高かったという事例もある。
反面、アニメーションやコミックでは、キャラクターの見た目で人種を特定出来ない点が世界的に売れている一因でもあり、世界的にヒットしたこれら作品をハリウッドなどで実写映画化するのは、膨大な予算をかけてストーリーを考えるよりも、それら作品の権利を買う方が予算の節約になるという利点があるとされている(ただし、日本のアニメやコミックはそのまま映像化すると莫大な予算がかかる為、邦画のJホラーのリメイクの方が製作され易いという話もある)。
参考資料
大塚英志、大澤信亮著『「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか』(角川書店[角川oneテーマ], 2005年)