渚カヲル

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テンプレート:物語世界内の観点 テンプレート:Pathnav 渚カヲル(なぎさ カヲル)は、『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する架空の人物であり、使徒。使徒としての名前はタブリス(TABRIS)であり、由来はユダヤ・キリスト教伝承の「自由意志」を司る天使タブリスから。声優石田彰

プロフィール

  • 生年月日:2000年9月13日(15歳)
  • 血液型:不明
  • 所属:NERV(フィフスチルドレン

人物

アスカの代わりのフィフスチルドレンとして、人類補完委員会(≒ゼーレ)により直接NERVに送り込まれた少年。アッシュグレイの髪と赤い瞳、極端に白い肌を持つ美少年で、過去の経歴は生年月日を除き綾波レイと同じく全て抹消済みである。プラグスーツの色は黒色。

傷心の碇シンジベートーヴェン交響曲第9番[1]の鼻歌を歌いながら近づき魅了する。正体は使徒であり、弐拾四話と劇場版のみと登場自体は少ないものの、シンジに大きな影響を与えた人物の一人である。また作中世界の核心を知る数少ない存在でもあり、彼の謎めいた言葉の数々は、その後の展開を示唆するものが多い。

性格

常に微笑みを浮かべ、柔和な印象を与える一方で、年齢を感じさせない超然とした性質も持ち合わせている。社交性に富みながらも話す言葉は難解なものも多く、思考を読み解くことは難しい。人類に対して人なるざる者としての達観した態度や憂いを含んだ眼差しを向けることもあり、シンジに対してはその繊細さに惹かれ、特別に好意を寄せ、「君に会うために生まれてきたのかもしれない」とまで述べている。

歌(音楽)に対して特別な思いがあるらしく、「リリンの生み出した文化の極み」と表現している。「生と死は等価値」であり「自らの死こそが唯一の絶対的自由」など、独自の死生観を持ち、自殺願望も抱えていた様子。ゲーム「新世紀エヴァンゲリオン2」では、自身の正体や存在意義について苦悩する様も描かれている。

真相

正体は第17使徒タブリスとされるが、その魂は第1使徒アダム本人のものであり、アダムの復活を目指すアダム計画の一環として、ゼーレによりサルベージされたアダムの魂に人型の肉体が与えられ、それが渚カヲルとなる[2]。なお、その肉体はセカンドインパクトの際にアダムにダイブされた人の遺伝情報を基に、アダムにより生み出された肉体だと考えられる。

自身は攻撃能力を持たないが、極めて強力なA.T.フィールドを展開し、空中を自在に浮遊できる。またアダムの魂を持つがゆえ、魂さえ無ければアダムベースのEVAならば自在に操り、同化することができる[2]。劇場版でゼーレが投入した量産機に使用されたダミープラグは、この渚カヲルのパーソナルを用いたものである。

ゲーム「新世紀エヴァンゲリオン2」によれば、アダムやリリスはサードインパクトを起こし補完計画を発動する際、魂の道標(ナビゲーター)としての役割もあると示唆され、ゲンドウにとってリリスの魂を持つ綾波レイがそうであるように、ゼーレにとってはアダムの魂を持つ渚カヲルこそが、切り札となりえる存在だった模様。また、アダム・タブリス・渚カヲルなどという名称は、どれも人間が勝手にそう呼んでいるだけであり、僕は僕だとモノローグで語っている。また、アダムの時の記憶は一部欠落している。

ゲンドウの裏切りを感知したゼーレにより、彼らの願いを託される形で送り込まれ、EVA弐号機を遠隔操作してターミナルドグマへ侵入し、アダムとの接触を試みるも、それがリリスであると看破すると、何かを悟ったかのように接触を中止し、自ら望んでEVA初号機によって握殺される。なお、脚本や作中のゼーレの台詞から、ゼーレは実際はカヲルによるサードインパクトは望んではおらず、端から殺されることを望んでいたとわかる台詞が存在する。しかしカヲルがリリスを前にどこまで悟ったのかは定かではない。

また、アダム系の使徒には情報の受け継ぎや共有があり、かつ使徒は自身にない知恵の実を持つ人類に興味があったとされ[2]、カヲルはこの連なりの到達者としての存在意義もあったとされる。人以上に人の言葉を完璧に使いこなし[3]、人の姿なのは人という種の理解を望んだからではないかともされ、実際に人に理解を示し、自らの死により未来を人(シンジ)に譲った[2]

劇場版では、リリスとして巨大化したレイからカヲルの姿が現れる場面が存在するが、胎児状のアダムをリリスが取り込んだ影響だとされる[2]。人類の補完が行われる最中、レイとともにシンジと対話を行い、道を示しつつシンジを見送る。綾波レイに対しては、互いに同じ存在であることを一目で見抜き、「君は僕と同じだね」と繋がりを示唆している。

庵野らによれば「不完全な自分(シンジ)と完璧な自分(カヲル)という2人のキャラクターを出す」というアイデアの下、「完璧なもう一人の碇シンジ」として設定されている。

キャラクター造型

モデルは庵野秀明の友人であるアニメ監督の幾原邦彦(ただし外見上なのか性格上のモデルなのかは不明[4])。キャラクターデザインの貞本義行はシンジを意識しながら耽美的にデザインしたと語っており、最後の使徒という設定のもと、使徒と接触した全ての人間の特徴を入れるのがコンセプトだという。たとえば首の細さはシンジ、赤い眼はレイ、口の不敵な感じはアスカが元になっている[5]

「渚カヲル」のネーミングは脚本を務めた薩川昭夫による[6]。由来は、映画監督の大島渚からで、「渚」は綾波レイの「波」と対になっている[7]。または姓は偏と旁を分けると「シ者」[6]、すなわち使者(→使徒)であり死者、名前は「オワリ」を五十音順で1字後にずらしたものから「カヲル」、姓と合わせると「シ者オワリ」→「渚カヲル」となる言葉遊び。つまりは「最後の使徒」であり「最後のシ者」であるとの隠喩である。これは弐拾四話のタイトルにも掛かっている。

貞本自身は「子供っぽいキャラクター」としてデザインした経緯があったため(漫画版の項で後述)、石田彰のキャスティングが好評を博したことを認めながらも「もっとかわいい声をイメージしていた」とイメージの相違に言及していた[8]。だが2008年には「結果的には、石田さんの声にもってかれるというか、そのアンバランスさがカヲルの魅力になった」と語った[9]

漫画版

使徒アラエル戦の前から登場し、読者には当初からゼーレが用意した最後の使徒・タブリスであることが示されている。超然としつつも社交性に長けた存在であったアニメ版とは大きく異なり、登場当初は親とはぐれた野良猫の子を「このまま生かしておいても苦しんで死ぬだけ」との歪んだ善意から絞め殺し、他者のために激昂するシンジを奇妙と評するなど、ヒトの心を理解できない存在として描かれている。シンジとの交流はアニメより多かったものの、互いの性格がともにアニメとは異なることからか上手くいくことはなく、シンジには拒まれ続けていく。

アラエル戦後にアスカのリタイアにより弐号機パイロットに正式に任命され、使徒アルミサエル戦に出撃する。その際にアルミサエルの侵食を受け、レイのシンジを想う気持ちがカヲルに流れ込んだことで、涙を流し、ヒトがヒトを想う心に触れ、以降は好きという感情にこだわりそれを露にするようになる。貞本によれば、異性としてシンジを想うレイの気持ちを感受してしまったことで、シンジへの好意に興味を持ちつつも、自分の体は男として生まれてしまったがゆえに、この気持ちはどうなるんだろう、という自分なりの『せつない構造』をつくってみたつもりだと述べている[10]

最後はゼーレの望みを受け、ターミナルドグマへ侵入しアダム(リリス)の元へたどり着くが、それがリリスであることを悟ると、シンジに自分の運命とサードインパクトについて語った後、初号機の掌で扼殺される。その際に、僕を少しでも好きなら殺して欲しいと伝え、そうすることでシンジの記憶に永遠に残ることを望む。なお、漫画版のゼーレはアニメ版とは違い、実際にカヲルによるサードンインパクトからの補完を望み送り出している。

またアニメ版では「完璧なもう一人の碇シンジ」としてのプロットだったのに対し、貞本は「当初の構想から子供っぽいキャラクターとしてデザインし、無邪気なカヲルのイメージがずっと自分の中に強く残っていた」とし、漫画版における人物像はこうしたイメージが反映されたものになっている。

パラレル作品

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新劇場版

主に「ゼーレの少年」と呼称されている。

『序』の段階から、庵野秀明により新劇場版の設定やカヲルの役割などについてのレクチャーをキャスト陣で唯一受けているという石田彰は、『Q』収録後のインタビューでカヲルについて「前のサイクルとは違う筈なのに、何度やってもやはり同じ轍を踏んでしまう。それでも線路のポイントを違うところに切り替えてみたい。大きなものの流れに対して、なんとかあがいてみたいという想いがあって、生き残るべきシンジの身代わりになっていくんでしょうね」と語っている。

新劇場版:序

短時間ながら、ラストにおいて月面(静かの海)にある複数の棺のうちの1つから裸身で目覚める。宙に浮かぶモノリスの立体映像(旧作におけるキール・ローレンツ)と会話することから、ゼーレとは旧作と同じくつながっていることが窺えるが、この時点で面識の無かったシンジの名を既に知っており、「また3番目とはね。変わらないな君は」と呟くなど、彼に興味を抱いている様子を窺わせる。

新劇場版:破

3シーン1分程度の登場であるものの、事態が動こうとする局面においてその姿を見せる。

月面では建造中のエヴァンゲリオンMark.06の指先に上半身裸で座っており、その姿を目撃したゲンドウと冬月へ振り返って「はじめまして、お父さん」と呟く。また、終盤ではMark.06に乗ってNERV本部上空へ現れ、初号機へカシウスの槍を投擲してサードインパクトを阻止すると共に「今度こそ君だけは幸せにしてみせるよ」とシンジへの決意を呟く。

新劇場版:Q

初号機の覚醒(ニア・サードインパクト)から14年後、EVA第13号機のパイロットとしてNERVに所属。肉体はシンジやアスカ、マリと同様、15歳のまま(生まれつきかエヴァの呪縛によるものかは不明)となっている。ピアノを愛好しており、14年の眠りを経て友人も知人もいなくなり孤独になってしまったシンジをピアノの連弾に誘い、次第に友情を深めていく。

14年の間に何があったか知りたいというシンジに対し、シンジにしてみれば綾波レイを救おうとした行動が、世界を荒廃させる大惨事に繋がったという現実を直視させる。さらにレイも救えていなかったことに絶望し心を閉ざすシンジに対し、彼の首に付いていたDSSチョーカーを外して自らの首に付け、カシウスとロンギヌス、そして第13号機があれば世界を修復できると告げ、「2人でリリンの希望となろう」と励ます。

シンジと共に搭乗した第13号機でセントラルドグマを降下し、改2号機と8号機の妨害をかいくぐりながら、リリスの骸に刺さっていた槍を手に取ろうとするが、そこにあるはずの槍がカシウスとロンギヌスではなく、ともにロンギヌスであることを悟り動揺する。シンジを制止するが、彼は強引に槍を手に取ってしまい、結果Mark.06の中から現れた第12の使徒の侵食を受け、第1使徒から「第13の使徒」へと堕とされてしまう。そして第13号機は覚醒し、新たな惨劇「フォースインパクト」のトリガーとなってしまう。

世界の修復どころか新たな破壊を誘発したこと、さらにエヴァの覚醒に伴うDSSチョーカーの作動によってカヲルが死んでしまうということに愕然として涙するシンジを慰め、「そんな顔をしないで。また会えるよ、シンジ君」という最期の言葉を遺し、第13号機のコアに2本の槍を突き刺しつつ、首を吹き飛ばされて死亡する。第13号機の覚醒はやや治まるものの、それでもガフの扉が閉じることはなかったが、マリによりゼーレの保険とされていたシンジがエントリープラグごと緊急脱出されたことで、フォースインパクトは初期段階で抑えられた。

ゲーム版

新世紀エヴァンゲリオン2』では、説得に成功すると人類との共存を望み、パイロットとして参入する。その際、消失したはずのEVA4号機をどこからともなく呼び出し、自らの乗機としてNERV本部にもたらす。

名探偵エヴァンゲリオン』ではEVA乙型、『新世紀エヴァンゲリオン バトルオーケストラ』ではEVA乙号機に、パチンコパチスロでは『CR新世紀エヴァンゲリオン 〜使徒、再び〜』以降EVA四号機に搭乗する。基本的にパチンコ・パチスロではプレミアムキャラクターとしての扱いであり、液晶画面に何らかの形でカヲルもしくは四号機が登場した時点で、パチンコであれば出玉アリの確変大当たり、パチスロであればボーナス確定となることが恒例となっている(例外としてチャンスボタン予告の無言は初代ではガセ、セカンドインパクトではスーパーリーチ、奇跡の価値は・使徒、再びでは高期待度、最後のシ者以降では必ず喋る。セカンドインパクトでのシンクロリーチでは暴走モードアリ。他にはパチスロ『新世紀エヴァンゲリオン 〜魂の軌跡〜』の「カヲル覚醒モード」があるが、これは次回ボーナスまで続くリプレイタイムなので、プレミアムであることは変わらない)。ただし、パチンコ5作目の『CR新世紀エヴァンゲリオン 〜最後のシ者〜』にはカヲル登場時でもハズレの場合もある予告が1つだけ存在する。それはチルドレンモード(時短中)、パソコン画面に碇シンジ惣流・アスカ・ラングレー、ペンペンと共に登場する予告で30.7%の期待度である。

スーパーロボット大戦シリーズでは、ストーリーの真意に絡むことが多く、他作品のキャラクターとも意味深な会話することがある。基本的にスポット登場で、プレイヤーキャラクターとして使えるケースは少ない[11]

その他

栗山千明沢尻エリカは「理想の男性」として名を挙げるなど有名人のファンも多い。 ファンブック『ALL ABOUT 渚カヲル A CHILD OF THE EVANGELION』が2008年に発売された。内容は貞本義行へのロングインタビュー、漫画版のダイジェストなどである。

ちなみに声を担当している石田彰は、パチンコやパチスロ、エヴァショップの店内アナウンスなどで「カヲルがおよそ言わないであろう台詞を言わなければならないのが難しい」と語っている。

脚注

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  1. TV版第24話で流れたことからこの曲が彼を象徴するテーマ曲とされており、パチンコ版やパチスロ版では彼が関連するプレミアム演出でこの曲が流れることが多い。
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 エヴァンゲリオン・クロニクルより
  3. 新世紀エヴァンゲリオン絵コンテ集5より
  4. 「EVA友の会」第拾弐号
  5. 『少年エース7月号増刊 新世紀エヴァンゲリオンコミック総集編』754ページ。
  6. 6.0 6.1 庵野秀明旧公式ホームページ
  7. WEBアニメスタイル小黒祐一郎第57回より[1]
  8. SFオンライン35号(2000年1月24日発行)インタビューより[2]
  9. 『ALL ABOUT 渚カヲル A CHILD OF THE EVANGELION』インタビューより
  10. 「月刊ニュータイプ」3月号別冊付録「新世紀エヴァンゲリオンDECADE」より
  11. 現時点で使用できたのは『第3次スーパーロボット大戦α 終焉の銀河へ』のみで、EVA零号機・改に乗ってのスポット参加である。