樽見鉄道
テンプレート:Infobox 樽見鉄道株式会社(たるみてつどう)は、岐阜県で旧国鉄特定地方交通線転換線及び旧日本鉄道建設公団建設線から成る鉄道路線(樽見線)を運営している、西濃鉄道・住友大阪セメントおよび沿線自治体などが出資する第三セクター方式の鉄道会社である。本社は岐阜県本巣市に所在する。
目次
概要
第三セクター会社ではあるが、住友大阪セメント岐阜工場の製品輸送を行っていたことから、西濃鉄道・住友大阪セメントが2社あわせて出資比率7割を超える大株主となっている。収入もかつては貨物輸送が大きなウェイトを占めていたことから、初代の林社長は株式会社としての矜持を保つ意味で、いずれは配当を出すことを社是としていた。
しかし2004年に住友大阪セメントは鉄道利用を2005年度末で打ち切ることを表明し[1]、2006年3月28日限りでセメント輸送列車の運行を終了した[1]。終了後の経営は非常に厳しく、2005年度より沿線5市町から年間1億円前後の財政支援を受け、収支改善計画に取り組んでいるが最終赤字が続き、財政支援の打ち切りも検討されているなど、路線の廃止が危惧される状況であったが[2][3]、その後は経常赤字の縮小、最終損益の黒字化が評価され、2013年時点では支援が継続されている。
その一方で「薬草列車」や「しし鍋列車」などのイベント列車を運行したり、ショッピングセンターの最寄駅となるモレラ岐阜駅を開設するなど、収入増を図っている。
歴史
- 1984年(昭和59年)2月1日 - 設立。
- 1989年(平成元年)3月25日 - 神海 - 樽見間延長開業。
- 2002年(平成14年)8月1日 - JR東海との連絡運輸を連絡定期券のみに。
- 2006年(平成18年)3月4日 - 定期客車普通列車がこの日限りで運転終了。翌日からレールバスのみの運行形態となる。
- 2009年(平成21年)2月26日 - 岐阜県、本巣市、住友大阪セメント岐阜工場など地元民間事業所(10団体)と樽見鉄道を活用した二酸化炭素排出削減事業を締結。県内初の鉄道利用促進と環境保全を目的とした事業となる。
- 2010年(平成22年) - 8年ぶりの黒字決算(単年度黒字)
- 2011年(平成23年) - 2期連続黒字決算
路線
運行形態等は以下の項目を参照のこと。
車両
本鉄道の特徴は、ワンマン運転のレールバスを主体にしながら、朝ラッシュ時用および淡墨桜花見列車用の客車を保有していたことがあげられる。客車は国鉄やJRからの払い下げで、貨物用として保有するディーゼル機関車によって牽引されていた。機関車を必要とするなど運用に手間がかかる客車を、イベント用や観光用ではなく定期列車、それも運賃以外を必要としない普通列車で運用するのは旧国鉄の特定地方交通線を転換した第三セクター鉄道としてはきわめて異例であった[4]。その後貨物が廃止された影響で、2006年に客車列車は廃止されている。
気動車形式の「ハイモ」とは、ハイスピードモーターカーを意味し、これに機関出力値を組み合わせている。
現有車両
2012年2月現在、気動車3形式6両、除雪用モーターカー1形式1両の計7両が在籍する。開業時に用意された車両は2006年までにすべて運用を終えた。
気動車
- ハイモ230-310形(313,314)
- 313は1988年に、314は1992年に増備された富士重工業製の車両(LE-Car II)で、312と比べると、汽笛の位置が逆になり、両側面右側の扉に小型の戸袋窓が設けられるなど部分的に異なる。313は2007年2月に本巣市のPR広告車両となった。314は2006年3月に大型ショッピングモール「モレラ岐阜」の全面広告車両となった。全車両ATS-S形搭載。313、314ともにハイモ330-701の営業運転開始に伴って、定期運用から外れ予備車となっている。
- Tarumi-Himo230-313.jpg
ハイモ230-313本巣市のPR広告車両
- Tarumi Himo230-314.JPG
ハイモ230-314モレラ岐阜の全面広告
- ハイモ295-310形(315)
- 1999年にハイモ180形の置き換え用として富士重工業で新製されたもので、明知鉄道アケチ10形、長良川鉄道ナガラ300形など同時期に製造されたLE-DC形車両の同系車である。車体は、バスベースの従来車とは異なり、より鉄道車両に近いものとなった。全長は16.5mで、機関は日産ディーゼルPF6HT03で出力は295PSに増大されている。外板塗装は、ハイモ230-312と同様の池田満寿夫デザインによるものである。ATS-ST形搭載。
- ハイモ295-510形(516)
- 2005年にハイモ180-202の置換え用として新潟トランシスで新製されたものである。形式は315と同じハイモ295を名乗っているが、車体の長さが18mと2m長くなったため、500番台を名乗っている。機関は315と同じ日産ディーゼルPF6HT03(295PS)。この車両ではボルスタレス台車 (FU56D/T) の採用、デジタル式運賃表示器の設置、行き先表示のLED(発光ダイオード)式への変更、側面部への行き先表示器の設置、車椅子固定スペースの設置、出入り口の段差の一部を2段にするなど、従来車との変更点が数多くある。ATS-ST形搭載。
- ハイモ295-610形(617)
- 2002年、富士重工業製の元三木鉄道ミキ300-105。三木鉄道が廃止後に競売に掛けていたミキ300形2両のうち、樽見鉄道が老朽化したハイモ230-301を置き換える目的で105を落札した[5]。2008年12月11日に本巣機関区に移送され[6]、エンジン整備や行き先表示、運賃表示板などの変更を受けた後、2009年3月1日よりハイモ295形に編入し運行を開始している[7]。なお、当面は三木鉄道時代の塗装のまま運行される予定(ただし広告車両となる)。客車廃止後に導入されたセミクロスシート車でもある(他の現行車両はすべてロングシート車)。ATS-ST形搭載。
- ハイモ330-700形(701)[8]
- 2010年、新潟トランシス製のNDCで、車体は18m級。側窓は安全上の理由からすべて固定式となった。老朽化したハイモ230-312置き換えのために導入されたものである。2010年12月に入線して、25日に公式試運転を行い、2011年2月から営業運転を開始した。なお、ブレーキ方式が他車と異なる電気指令式のため、車両を増結しての運転は行えず、必ず単独で運用されている。
除雪用モーターカー
- DB1形
- 2006年12月1日に廃止された同県の第三セクター鉄道である神岡鉄道から無償貸出されたもの。2005年の大雪による長期運休の反省から、国土交通省に提出した2007年度からの再生計画で除雪車を購入することとなり、それに先立って2006年11月に神岡鉄道から無償貸出され、2007年に正式に購入した。普段は本巣駅の留置線に留置されている。
過去の車両
気動車
- ハイモ180-100形(101)
- ハイモ180-200形(201, 202)
- 1984年の樽見鉄道発足時に用意された車両で、富士重工業がローカル線向けの軽快気動車として開発したLE-CarIIの初の実用車である。1985年(第25回)鉄道友の会ローレル賞受賞。バスを基本とした車体で、前面は曲面の1枚ガラス、側面は車体肩部にかかる曲面ガラスで、下半分は引き違い式のサッシとなっている。全長12.5mで、台車は1軸台車(FU30D/T)を履いている。機関は、バス用直噴式の日産ディーゼル(当時、現「UDトラックス」)PE6H(180PS)である。
- 開業時には、クロスシートを装備したハイモ180-100形1両(101)とオールロングシートのハイモ180-200形2両(201,202)が用意された。旅客需要が予測を上回ったため、翌年には総括制御化改造を実施し、旅客需要に応えたが、根本的に輸送力の小さい本形式ではまかないきれなくなり、1993年に101が廃車され有田鉄道に譲渡、1999年に201が廃車され、202も2006年1月29日に定期運用を終了し、同年4月に廃車となった。202は2007年12月5日にNPO法人「樽見鉄道を守る会」に引き取られ、保存地に移送された。全車ATS-S形搭載。有田鉄道に譲渡された101についても、2010年に開園した有田川町鉄道公園で動態保存されている。
- ハイモ230-300形(301, 302→312)
- 301は、1985年に新製された増備車で、ハイモ180が小さすぎたことから、全長15.5mのボギー台車型車両となっている。機関は、ハイモ180の日産ディーゼル(当時、現「UDトラックス」)PE6Hに過給器を付加して出力増強を図った日産ディーゼルPE6HT03(230PS)である。側面窓は下半分が引き違い式サッシであるのは同様であるが、上半分は平面ガラスとなり、前面には貫通路が設けられた。2004年夏に「樽見鉄道を守る会」の手によって沿線のこども達が描いた絵を貼り付けたラッピング仕様になった。ハイモ295-617の営業運転開始に伴い2009年4月末に除籍され、2011年3月まで本巣駅構内の側線に留置されていた。
- 302は、1987年に新製された増備車でである。301では客ドアが折戸であったものが引戸に変更され、それに伴いドア脇の側窓は各1区分のみ固定式となった。このため313の竣工時に折戸車と区別する目的で312へと改番されている。また乗務員室ドアが廃止されており、前面も丸形の前照灯・後部標識灯であった301に対し、角形のケーシングに収められた形状となった。1995年より池田満寿夫デザインのカラーリングへ変更され運転されていたが、2012年2月より新型のハイモ330-701が営業運転を開始したのと入れ替わりで、同年1月末にて除籍となった。
この他に、2010年2月から10月までの間、踏切事故で故障したハイモ295−315の代替として、長良川鉄道のナガラ1形ナガラ10が運用に就いたことがある[9][10]。
機関車
- D100形(101, 102)
- 住友大阪セメント岐阜工場内の入換や、同工場と樽見鉄道本巣駅を結ぶセメント貨物列車の牽引に充当されていたスイッチャー。101号機は1962年日立製作所製の45t機で、全長は11,250mm、機関はDMH17S(250ps/1500rpm)を2基搭載する[11]。102号機は同じく1962年日立製作所製の35t機で、全長10,750mm、機関はDMH17C(180ps/1500rpm)を2基搭載する[11]。当専用線へ新製配置され、樽見鉄道発足時に車籍編入された。
- TDE10形(101,102,103,105)
- TDE11形(113)
- 樽見鉄道開業時に、朝ラッシュ時の客車列車とセメント輸送用の貨物列車牽引のため、3両が用意されたもので、国鉄DE10形0番台・500番台・1500番台の同系車。全車ATS-S形を搭載。101は日本車輌製造の新製車、102、103は衣浦臨海鉄道からの譲受け車(KE652、KE655)。1988年に観桜列車運転のため国鉄清算事業団から105を購入。1992年に西濃鉄道から113を譲り受け、103は高崎運輸[12]に譲渡され、倉賀野駅貨物基地のDE10 108(2代)に改番された。なお、101はセメント輸送貨物列車終了の2006年3月28日以前に除籍、102は終了数週間前に除籍された。最後まで残った105と113も、路線を廃止した神岡鉄道から無償貸出された除雪車の正式購入後、2007年11月までに廃車となった。
客車
- オハフ500形(501 - 504)
- 旧日本国有鉄道のオハフ33形で、1984年の開業時に2両、1989年に2両が入線した。朝ラッシュ時の輸送力列車用客車の初代で、当初は気動車に準じた青色に赤白の帯を巻いた姿であったが、1988年に茶色に赤帯のレトロカラーに塗り替えられた。1990年にオハフ800形、オハ1000形、スハフ1100形が入線すると、入れ替わりに3両(501 - 503)が廃車、1992年に504も廃車された。2008年現在、谷汲口駅に502が保存されている。
- オハフ33 354,1527,110,112 → オハフ501 - 504
- オハフ800形(801,802,803)
- JR四国のオハフ50形で、1990年に入線した。入線時からうすずみ1形と編成を組み、「うすずみファンタジア号」として使用されたが、冷房装置がなく、ベンチレーター部分の腐食が激しいことも災いし、1994年に14系客車が入線すると入れ替わる形で廃車となった。
- オハフ50 100,267,269 → オハフ801,802,803
- オハ1000形(1001,1002,1003)、スハフ1100形(1101,1102)
- 1990年に4両、1992年に1両、JR東海12系客車を譲受けたもの。2代目の輸送力列車用客車であったが、14系入線にともない、1993年および1994年に各1両(1001,1003)が廃車され、残った1002,1101,1102はうすずみ1形と組み、2代目「うすずみファンタジア号」となった。観桜シーズン以外は、北方真桑駅構内に留置されていたが、2005年に廃車になり、後に全車両解体された。
- オハ12 84,102,142 → オハ1001,1002,1003
- スハフ12 42,56 → スハフ1101,1102
- うすずみ1形(1,2)
- 1989年の樽見全通時に、観桜シーズンの旅客輸送・イベント列車用として、トキ25000形無蓋貨車を改造したトロッコタイプの展望車両である。座席部分の床面は20cm嵩上げされ、テーブル付きのボックスシートが並んでいる。以前は、北方真桑駅構内にオハ1000形、スハフ1100形とともに留置されていたが、こちらも2005年に廃車となり、2007年8月の時点で本巣駅の解体線にオハ1000形・スハフ1100形と共に留置されている。
- トキ29102,29107 → うすずみ1,2
- オハ14形(5,8,13)・スハフ14形(2,4)
- 1994年にJR東海14系客車を譲り受けたもの。書類上の形式は、オハ2000形、スハフ2200形であるが、車体標記は変更されなかった。通常は3両編成(末期は2両編成)で大垣 - 本巣間の朝の輸送力列車に運用されたほか、観桜シーズンには全線で「うすずみブルーライン号」として運行された。2006年3月末日で除籍され、5両すべての車両が本巣駅側線に留置されていたが、2010年10月20・21日に解体された。
イベント列車
運賃
大人普通旅客運賃(小児半額・10円未満切り上げ)。2014年4月1日改定[13]。
※単位円
大垣 | ||||||||||||||||||
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190 | 東大垣 | |||||||||||||||||
260 | 190 | 横屋 | ||||||||||||||||
260 | 190 | 190 | 十九条 | |||||||||||||||
310 | 260 | 190 | 190 | 美江寺 | ||||||||||||||
380 | 310 | 310 | 260 | 260 | 北方真桑 | |||||||||||||
450 | 380 | 310 | 310 | 260 | 190 | モレラ岐阜 | ||||||||||||
450 | 380 | 310 | 310 | 260 | 190 | 190 | 糸貫 | |||||||||||
520 | 450 | 380 | 380 | 310 | 260 | 260 | 190 | 本巣 | ||||||||||
520 | 450 | 450 | 380 | 380 | 310 | 260 | 260 | 190 | 織部 | |||||||||
590 | 520 | 520 | 450 | 450 | 380 | 310 | 310 | 260 | 190 | 木知原 | ||||||||
670 | 590 | 520 | 520 | 450 | 380 | 380 | 310 | 260 | 260 | 190 | 谷汲口 | |||||||
670 | 590 | 590 | 590 | 520 | 450 | 380 | 380 | 310 | 310 | 260 | 190 | 神海 | ||||||
740 | 670 | 590 | 590 | 520 | 450 | 450 | 380 | 310 | 310 | 260 | 260 | 190 | 高科 | |||||
740 | 670 | 670 | 590 | 590 | 520 | 450 | 450 | 380 | 310 | 310 | 260 | 190 | 190 | 鍋原 | ||||
810 | 740 | 670 | 670 | 590 | 520 | 520 | 450 | 450 | 380 | 310 | 310 | 260 | 260 | 190 | 日当 | |||
890 | 810 | 740 | 740 | 670 | 590 | 520 | 520 | 450 | 450 | 380 | 310 | 310 | 260 | 260 | 190 | 高尾 | ||
890 | 810 | 810 | 740 | 740 | 670 | 590 | 590 | 520 | 450 | 450 | 380 | 310 | 310 | 310 | 260 | 190 | 水鳥 | |
920 | 890 | 810 | 810 | 740 | 670 | 670 | 670 | 590 | 520 | 450 | 450 | 380 | 380 | 310 | 310 | 260 | 190 | 樽見 |
- 2002年以降、JR東海との連絡運輸は定期券のみになっている。また、定期券は自社では大垣駅事務室、北方真桑駅、本巣駅にて発売しているが非磁気券のため大垣駅の自動改札機を通れない。そのため、JR大垣駅発着の定期券ならびにJR東海との連絡定期券はJR東海大垣駅のみどりの窓口にて購入するようホームページ上で呼びかけが行われている。