スイッチヒッター
野球におけるスイッチヒッター (switch hitter) は左右両方の打席でバッティングを行う選手を指す。
ボクシングで右構えと左構えの両方で自在に戦える選手(例えばマービン・ハグラーやナジーム・ハメドなど)もスイッチヒッターと呼ばれることがある。
目次
概説
野球では、投手の利き腕に対し逆の打席の方が、一般に打者に有利とされる。このためスイッチヒッターは、投手が右投げの場合は左打席に、左投げの場合は右打席に立つことが多い。また、ルール上は途中で打席を変えることもできる(例えば、はじめ右打席に立った後、相手投手が1球投げてから、その後左打席に変える等)。日本プロ野球では柿本実(中日)が1963年8月28日の対阪神戦の第1打席(投手は村山実)で1球ごとに打席を替え、6球目に三振したという例がある[注釈 1]。
日本では、足が速く長打力の無い右打ちの選手が、一塁に近いなどの理由で出塁に有利とされる左打ちをするためスイッチヒッターに転向するケースが多い。元々左打者であった選手が左投手に苦しんだために右打席も練習して、スイッチヒッターに転向するパターンもあるが、左打ちの方が得が多いために少なく、特に左投げのスイッチヒッターは希少である。一方、米国ではマーク・テシェイラやランス・バークマンのような長距離砲のスイッチヒッターも珍しくない。
日本では、近年は俊足の選手が右打ちから左打ちに転向する際には一度スイッチを経て、右打ちを捨てて左打者専門になるケースが多くなってきており、スイッチヒッターは減少傾向であるテンプレート:要出典。米国ではいろいろなことが出来る、いわゆる便利屋型の選手の方がチャンスをたくさん与えてもらえるため、メジャーでの出場機会増加のため、スイッチヒッターに転向するケースも多い。
スイッチヒッターは左右両方で打撃を行うため、バットスイングによる体のゆがみが悪化しにくくスポーツ障害を起こしにくいと言われている。そのため最近では本来の打席と反対の打席で打撃練習をすることがよく行われるようになっている。
最初のスイッチヒッターは1871年から1874年にかけてニューヨーク・ミューチュアルズなどでプレーしたボブ・ファーガソンに遡る。両打席で打率と長打率を併せ持った成績を挙げる選手はミッキー・マントル(1951年 - 1968年にプレー)まで現れなかった。[1]
主なスイッチヒッター
MLB
現役選手
- エリック・アイバー
- アルフレッド・アメザガ
- シーザー・イズトゥリス
- マイサー・イズトゥリス
- ジェマイル・ウィークス
- マット・ウィータース
- レジー・ウィリッツ
- エドゥアルド・エスコバー
- アダム・オッタビーノ
- レイ・オルメド(en)
- ルーク・カーリン(en)
- アズドルバル・カブレラ
- エバース・カブレラ
- メルキー・カブレラ※左投げ
- ヤスマニ・グランダル
- ココ・クリスプ
- ケビン・グレッグ
- マット・ケイタ(en)
- カルロス・コーポラン
- ルーベン・ゴタイ
- ハンク・コンガー
- マーティン・ゴンザレス
- カルロス・サンタナ
- ヘクター・サンチェス
- ラモン・サンティアゴ
- パブロ・サンドバル
- カルロス・ザンブラーノ
- エリオット・ジョンソン
- ニック・スウィッシャー※左投げ
- ジャスティン・スモーク※左投げ
- ベン・ゾブリスト
- チャド・ダービン
- マーク・テシェイラ
- ライアン・ドゥーミット
- アンドレス・トーレス
- ダニエル・ナバ※左投げ
- ディオナー・ナバーロ
- ランス・バークマン※左投げ
- アンヘル・パガン
- トロイ・パットン※左投げ
- オーランド・ハドソン
- ビリー・ハミルトン
- ルーカス・ハレル
- シェーン・ビクトリーノ
- ラファエル・ファーカル
- アービング・ファルー
- デクスター・ファウラー
- ショーン・フィギンズ
- アンドレス・ブランコ(en)
- ニック・プント
- チェイス・ヘッドリー
- ウィルソン・ベテミー
- クリフ・ペニントン
- カルロス・ベルトラン
- エミリオ・ボニファシオ
- デレク・ホランド※左投げ
- マイク・マクドゥーガル※左投げ
- ビクター・マルティネス
- クリス・メドレン
- ケンドリス・モラレス
- エリック・ヤング・ジュニア
- ジェド・ラウリー
- ホセ・レイエス
- ワンディ・ロドリゲス※左投げ
- ブライアン・ロバーツ
- ホセ・ロバトン
- フェリペ・ロペス
- J・C・ロメロ※左投げ
- ジミー・ロリンズ
- スティーブ・ロンバードージー・ジュニア
引退選手
- ロベルト・アロマー
- サンディー・アロマー・シニア
- ジョン・アンダーソン
- バーニー・ウィリアムス
- モーリー・ウィルス
- ウィリー・ウィルソン
- ムーキー・ウィルソン
- ランディ・ウィン
- カール・エバレット
- ホセ・オファーマン(en)
- ルイス・カスティーヨ
- ケン・カミニティ
- カルロス・ギーエン
- オージー・ギャラン(en)
- マックス・キャリー
- ジム・ギリアム(en)
- トニー・クラーク
- キッド・グリーソン(en)
- アルフレード・グリフィン(en)
- ホセ・クルーズ・ジュニア
- ドン・ケッシンジャー(en)
- ビンス・コールマン
- リッパー・コリンズ(en)
- グレッグ・ジェフリーズ
- ルーベン・シエラ
- テッド・シモンズ
- ウォリー・シャング(en)
- レッド・ショーエンディーンスト
- チッパー・ジョーンズ
- ハワード・ジョンソン
- ケン・シングルトン
- オジー・スミス
- レジー・スミス
- ロイ・スモーリー(en)
- デビッド・セギー(en)※左投げ
- グレッグ・ゾーン
- レイ・ダーラム
- タック・ターナー- スイッチヒッター史上初の4割打者※左投げ
- トミー・タッカー(en)
- ジョージ・デイヴィス
- チリ・デービス
- トム・デーリー(en)
- ミッキー・テトルトン
- ギャリー・テンプルトン(en)
- ボブ・ファーガソン - 史上初のスイッチヒッター
- ウェス・パーカー
- カルロス・バイエガ
- ケビン・バス(en)
- トニー・バナザード
- スタン・ハビアー(en)
- ジェイソン・バリテック
- ホセ・バレンティン
- デイブ・バンクロフト
- ホセ・ビスカイーノ(en)
- オマー・ビスケル
- ホセ・ビドロ
- ドン・ビュフォード
- デューク・ファレル(en)
- デーブ・フィリー(en)
- トニー・フィリップス(en)
- トニー・フェルナンデス
- ドニー・ブッシュ
- フランキー・フリッシュ
- ルー・ブルー(en)
- ネイフィ・ペレス
- テリー・ペンドルトン
- ラリー・ボーワ
- ホルヘ・ポサーダ
- ボビー・ボニーヤ
- デボン・ホワイト
- ロイ・ホワイト
- ウィリー・マギー
- マーク・マクレモア
- ゲイリー・マシューズ・ジュニア
- エディ・マレー
- ミッキー・マントル - スイッチヒッター史上初の三冠王獲得
- ビル・ミラー
- ドミトリー・ヤング
- ジム・ラフィーバー
- クロード・リッチー(en)
- ジョニー・レイ
- ハロルド・レイノルズ
- ティム・レインズ
- ピート・ローズ
スイッチヒッターのシーズン最高記録
- スイッチヒッターのシーズン最高打率(.418)
- タック・ターナー(en)(フィラデルフィア・フィリーズ)(1894年)
- スイッチヒッターのシーズン最多本塁打(54本塁打)
- ミッキー・マントル(ニューヨーク・ヤンキース)(1961年)
- スイッチヒッターのシーズン最多打点(144打点)
- マーク・テシェイラ(テキサス・レンジャーズ)(2005年)
- スイッチヒッターのシーズン最多安打数(230安打)
- ピート・ローズ(シンシナティ・レッズ)(1973年)
- ウィリー・ウィルソン(カンザスシティ・ロイヤルズ)(1980年)
スイッチヒッターのタイトル獲得者
- トミー・タッカー(en)(1889年)
- ミッキー・マントル(1956年)
- ピート・ローズ(1968年、1969年、1973年)
- ウィリー・ウィルソン(1982年)
- ウィリー・マギー(1985年、1990年)
- ティム・レインズ(1986年)
- テリー・ペンドルトン(1991年)
- バーニー・ウィリアムズ(1998年)
- ビル・ミラー(2003年)
- チッパー・ジョーンズ(2008年)
- ミッキー・マントル(1955年、1956年、1958年、1960年)
- エディ・マレー(1981年)
- ハワード・ジョンソン(1991年)
- マーク・テシェイラ(2009年)
日本プロ野球
現役選手
- 赤田将吾
- 内村賢介
- アンダーソン・エルナンデス
- 加藤翔平
- 金子圭輔
- 金子侑司
- 金城龍彦
- 杉谷拳士
- 鈴木尚広
- フレデリク・セペダ
- 立岡宗一郎
- 徳山武陽
- 西岡剛
- 西村弥
- 西森将司
- 橋爪大佑
- 早坂圭介
- 藤井淳志
- 松井稼頭央 - スイッチヒッターでは唯一のトリプルスリー、日本人スイッチヒッターでは唯一のシーズン30本塁打を記録。
- 三嶋一輝
- 嶺井博希
- 吉川大幾
スイッチヒッター経験のある選手
引退選手
- ロイ・ホワイト
- 大島公一
- 木村拓也
- 柴田勲 - NPBにおけるスイッチヒッターの草分け的存在。スイッチヒッターでは唯一のNPBのみでの通算2000安打を記録。
- 正田耕三
- 白井一幸
- スティーブ・オンティベロス
- フェルナンド・セギノール - 左右打席本塁打通算9回のNPB記録を持つ。
- 高橋慶彦
- 高木豊
- オレステス・デストラーデ
- 西村徳文
- 平野謙
- ドゥエイン・ホージー
- 松永浩美 - 日本人選手では初めての左右打席本塁打、スイッチヒッターでは唯一のNPBのみでの通算200本塁打を記録。
- 松本匡史
- 屋鋪要
- 山崎隆造
スイッチヒッターのシーズン最高記録
- スイッチヒッターのシーズン最高打率(.34606)
- 金城龍彦(横浜)(2000年)
- スイッチヒッターのシーズン最多本塁打(44本塁打)
- フェルナンド・セギノール(日本ハム)(2004年)
- スイッチヒッターのシーズン最多打点(108打点)
- フェルナンド・セギノール(日本ハム)(2004年)
- スイッチヒッターのシーズン最多安打数(206安打)
- 西岡剛(ロッテ)(2010年)
スイッチヒッターのタイトル獲得者
- 正田耕三(広島)(1987年、1988年)
- 西村徳文(ロッテ)(1990年)
- 金城龍彦(横浜)(2000年)
- 西岡剛(ロッテ)(2010年)
- オレステス・デストラーデ(西武)(1990年、1991年)
- 松井稼頭央(西武)(1999年、2002年)
- 西岡剛(ロッテ)(2010年)
- スティーブ・オンティベロス(西武)(1983年、1984年)
- 松永浩美(阪急)(1989年)
- 高橋慶彦(広島)(1979年、1980年、1985年)
- 松本匡史(巨人)(1982年、1983年セリーグ記録)
- 松井稼頭央(西武)(1997年、1998年、1999年)
韓国プロ野球
引退選手
フィクション
- ジョー・ギブソンJr. - 『MAJOR』
- 田村達郎 - 『名門!第三野球部』
- 友沢亮 - 『実況パワフルプロ野球』
- 泉孝介 - 『おおきく振りかぶって』
- アントニオ・アルバレス-『雷神〜RISING〜』
- 木村準 - 『鳳ボンバー』
- 今岡忍- 『ROOKIES』
- 倉持洋一- 『ダイヤのA』
注釈
- ↑ ただし、柿本は通常は右打の選手であり、スイッチヒッターではない。
脚注
- ↑ 雑誌「週刊ベースボール」(ベースボールマガジン社刊)2008年7月28日号68ページ「ベースボール雑学トリニティ アメリカ野球雑学概論」