大須

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門前町通(本町通)の大須交差点から北を望む(2005年11月26日)

大須(おおす)とは、愛知県名古屋市中区中心部の地名。名古屋の代表的な商店街の1つである。

歴史

起源

1610年慶長15年)の名古屋開府による名古屋城築城及び城下町の整備(いわゆる清洲越し)に伴い、旧那古野城の南側(現在の中区錦及び丸の内二、三丁目付近)にあった萬松寺織田信秀が開基)が現在地に移転。1612年(慶長17年)には美濃国中島郡[1]長岡庄大須郷(現在の岐阜県羽島市桑原町大須)にあった真福寺寶生院(大須観音)が徳川家康の命により現在地に移転され、当地は門前町として発展した。

歓楽街の時代

幕末1858年安政5年)に、玉屋町(現在の中区錦)の宿屋・笹野屋庄兵衛の上願により、大須観音の北にあたる北野新地(現在の北野神社付近)に役者芸人の宿が置かれ、後に遊女を置く私娼も現れた。明治維新後の1874年明治7年)10月、北野新地が公認の遊廓に指定されたが、敷地が狭く拡張も出来ないため、1875年(明治8年)に西大須に移転した。新しい遊郭は北野新地があった日之出町に因んで「旭廊(旭遊廓)」と名付けられたが、1923年大正12年)に現在の中村区大門地区に移転して中村遊廓となった。

1912年(大正元年)に萬松寺が寺領の山林を一般の商業用地として開放。名古屋市内随一の歓楽街として栄えた。劇場演芸場映画館などが数多く作られた。

しかし、第二次世界大戦末期のアメリカ軍戦略爆撃によって大須は壊滅的な被害を受けた。

電気街・電脳街として

第二次世界大戦後は客足がに流れ、さらに1972年に名古屋劇場が火災で焼失したことも重なって一時寂れた時期もあったが、1970年代後半に入り、集客を狙って大須大道町人祭を開催し、これと前後して第1・第2アメ横ビルや商店街などに家電店パソコンショップが集まり、秋葉原(東京)、日本橋(大阪)に次ぐ電気街2006年7月の調査によると、電器店、パソコンショップ等の数は秋葉原、日本橋、大須の順で多い)として発展し、日本三大電気街の1つとして数えられるようになった。しかし秋葉原、日本橋とは異なり、この地方では主力時計・カメラ系量販店(ウォッチマンアサヒドーカメラトップカメラ)が家電・パソコンなどを販売していたほか[2]、大須自体がアーケード商店街がメインだったため、名古屋駅前の大型店進出(ビックカメラ名古屋駅西店、ヤマダ電機LABI名古屋店)により、秋葉原、日本橋の例と同様に電気街としては縮小傾向にある[3]。また、電脳街としてもグッドウィル九十九電機などが店舗統廃合するなど、名古屋駅近辺に進出したビックカメラグループ(ビックカメラ・ソフマップ)やヤマダ電機などの影響や業界再編の波で縮小傾向にある。なお、前述のグッドウィルや中京マイコン、アプライド(旧コムロード)では美少女ゲームに店舗独自特典を付けて販売する事でも知られる。

年表

現状

テンプレート:独自研究

中部地方のオタク街

他の電気街と同様オタク街としても発展しており、その歴史も長く、古くは同人ショップが全国化する10年以上前からDカルトが存在していた。メイド喫茶もあり、「お帰りなさいませ、ご主人様」のあいさつは大須のM's Melodyが発祥とされる。秋葉原や大阪日本橋でメイド産業が発展していた2000年代のうちは大須のメイド喫茶はその店のみもしくはその店を含めて2~3店舗のみであった。しかし2010年を過ぎたあたりから萌えりぃグループの店舗などが複数オープンし、急激に店舗数が増加。男装喫茶や妹喫茶、ガンダムバーなどメイド以外のコンセプトカフェ、バーリフレ店もあり、2013年春の時点で15店舗前後ある。店舗が少なかった時期はスタッフの卒業(退店)=業界引退である事が多かったが、増えてからは秋葉原や大阪日本橋ではあったものの中部地方ではあまり見られなかった卒業→他店舗に移籍というケースも増えている。2013年3月には秋葉原や大阪日本橋など広域に渡り展開しているメイドカフェ めいどりーみんが大須の招き猫前に名古屋地区で初めてオープンした。ライブアイドルが多数在籍するアイドルカフェもある。なお、秋葉原や大阪日本橋とは異なり、カフェでもチャージ料がかかる店舗が大半である(1時間500円程度の店が多い)。

名駅地区コミックとらのあな(2013年4月に久屋大通から移転)・メロンブックスアニメイトらしんばんなど、東京資本の店は大須以外に立地している。しかし2005年には、ゲーマーズ名古屋店が栄地区から大須に移転し、2007年末にはまんだらけも名古屋店を大須に移転、2008年8月にWonderGOOが進出している。2008年9月にはK-BOOKSが出店したが、2010年5月に撤退した。地元資本の三洋堂書店も、上前津店は他店舗とは全く違う品揃えで、特に3階はワンフロア全てがライトノベルをはじめとしたオタク向け商品となっている。また、仁王門通でSKE48のPV撮影が行われた。

なお、秋葉原名物となったおでん缶の元祖とも言える天狗缶詰は名古屋の企業であるが、秋葉原で名が知られるようになった頃は、まだ大須には置かれていなかった[14]

様々な施設がある街

コメ兵矢場とん大須ういろの本店・本社も大須にある。このため中古品売買店、名物の飲食店や通常の飲食店、おみやげ物の店舗も多数ある。かつてはスガキコシステムズ(スガキヤ)の本社も大須にあったが、2010年に中区丸の内に移転している。逆にバッファローは一時大須から移転していたが、2010年に新社屋が完成したために大須へ再移転している。

萬松寺大須観音といったお年寄りも多く訪れるスポットもある。また、大須の再生には若年者の自営業開始が相次いでいる事も寄与している[13]

古くには衣料品の問屋が多かっただけあって、現在でも衣料品の店舗が多く、若者向けの衣料品店も多く出店する。また、昨今の韓流ブームの流れに乗り、多くの韓流ショップも出店している。

そのほかに郵便局、銀行があり、大須演芸場、古着屋、各国料理店、飲み屋、家具屋、仏壇屋、ゲームセンターパチンコパチスロ店、射撃場、銭湯ライブハウスなどがある。ただし、名駅・栄地区で盛んな百貨店、高級ブランド品販売、ビジネスホテルはほとんどない。

オタク系趣味の者の隣に若いカップルやお年寄りが歩き、家族連れや外国人が店頭の商品を見ているという、「人類みな兄弟」とも言える光景を目にすることのできる街である。

アーケード街

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大須新天地通商店街

広大なアーケード商店街が広がり、平日・休日を問わず人通りが絶えない。老若男女・国籍人種も様々で県外から買い物に訪れる人も多い。また、アーケードを外れた裏道や入り組んだ路地にも様々な店舗がある。この大須のカオス的な良さは、小規模店舗を積極的に開いたこともあるが、隣接する地区の企業の本店・支店や百貨店、ブランドショップが建ち並ぶ「高級感」に対して作り上げられた面もあるといえるテンプレート:要出典

主な通りごとに万松寺通商店街、大須新天地通商店街、名古屋大須東仁王門通商店街、大須仁王門通商店街、大須観音通商店街、大須門前町商店街、大須本通商店街、赤門通商店街、赤門明王商店街が形成され、9つの商店街で約400店舗、地区全体では約1100店舗が集積し、全体で「大須商店街」を構成する[13][15]

近年、全国各地の商店街が衰退・縮小する中で、再生し更なる発展を遂げた稀な例である[16]。そのためか、日本各地の商店会組合や連合などの団体が年間を通して多く視察に訪れている。

なお、電子マネーEdyiDのシステム導入に積極的であり、約半数の店がEdyやiDでの支払いが可能である。

キャッチセールス・詐欺まがい行為

 大須では、名古屋駅地区、秋葉原と同様に(業者はそれぞれ別会社である)、絵画商法デート商法恋愛商法と言われる悪質商法キャッチセールスが近年非常に多く報告されている。特に平日は比較的人が少ないこともあって、若い男性が一人で歩いていてカモにされやすい外見・行動であると、かなりの確率で声をかけられることがある。一部のゲームセンターなどでは「声をかけてくる人はみんなキャッチセールスですので注意してください」という張り紙をしている程である。 

地理

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商店街を外れた所にある、珍しい自動車・歩行者用一体型信号機(裏門前町通と赤門通の交点に設置)
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自動車・歩行者用一体型信号機(LED式信号へ更新する前のもの)
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街頭に設置された巨大招き猫(2006年7月)
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大須の新名所「大須301ビル」

範囲

地域概念としての「大須」は、大須通(南側)、大津通(東側)、伏見通(西側:国道19号)、若宮大通(北側)の4つの道路に囲まれたエリアを指すことが多く、この範囲は「大須商店街」として知られる[17]。地名としての「大須」は、東西を堀川新堀川、南北を大須通と若宮大通に囲まれた地域であり、大須一丁目、大須二丁目、大須三丁目、大須四丁目が存在する。

大須の主な通り名

南北の通り

  • 大須表参道通
  • 大須弁天通
  • 文長通
  • 大須本通
  • 門前町通
  • 大須横丁通
  • 裏門前町通
  • 文殊通
  • 北新天地通
  • 新天地通

東西の通り

  • 赤門明王通
  • 赤門通
  • 大須観音通
  • 万松寺通
  • 仁王門通
  • 東仁王門通

アクセス

主な施設

祭り・イベント

出身有名人

脚注

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関連項目

外部リンク

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テンプレート:名古屋市の地域 テンプレート:名古屋市中区の町名 テンプレート:日本の家電量販店 テンプレート:Pref-stub

テンプレート:Coord
  1. かつては尾張国中島郡だったが、1586年天正4年)6月の木曽川氾濫による流路変更により、木曽川右岸となった地域が美濃国に編入された。
  2. ただし、ウォッチマンは2006年に倒産し、アサヒドーカメラも家電・パソコンの販売を取り止めている。
  3. <家電激戦区を歩く 〜ライバル激突で何が起きているのか~>【愛知・名古屋市】vol.1 街の全体像 ~名古屋駅前が家電の街に 再開発で新たな軸が生まれるBCN Bizline、2013年4月11日
  4. 4.0 4.1 4.2 荒俣宏監修 名古屋開府400年記念事業実行委員会『尾張名古屋大百科』114-115頁、ISBN 978-4835617619
  5. 愛知県図書館 郷土資料展
  6. 龍影閣(旧名古屋博物館品評所)(文化財ナビ愛知)
  7. 7.0 7.1 1. 東山前史|東山動植物園
  8. テンプレート:PDFLink名古屋大学博物館報告 No. 22、267–276頁、2006年
  9. テンプレート:PDFLink、名古屋大学博物館報告 No. 21、173–182頁、2005年
  10. 愛知縣商品陳列館の開館 - 名古屋商工会議所のあゆみ名古屋商工会議所
  11. 明治時代の名古屋「商品陳列館」(Network2010.org)
  12. テンプレート:PDFLink清水建設二百年作品集
  13. 13.0 13.1 13.2 がんばる商店街77選:大須商店街連盟中小企業庁
  14. 真実のおでん缶(前編)、ASCII.jp、2000年11月24日
  15. 大須商店街連盟、大須商店街公式ホームページ「アット大須」
  16. 商店街活性化への取り組み 大須商店街(名古屋市中区)、B STYLE26月号(2007年9月11日発行)
  17. 大須商店街のエリア紹介、大須商店街公式ホームページ「アット大須」