カルト映画
カルト映画(カルトえいが)またはカルトフィルムは、熱狂的ファンによる小グループによって支持される映画のことである。
目次
概要
ある種のジャンル・テーマ・モチーフ・演出方法等による分類方法ではなく、その作品が“特定の観客にどのように受け入れられているか”、という現象面によって分類されるべき映画である。当然、厳密な分類は期待できず、また、定義自体が変わらなくても時代や社会によって、その外延は変化する。
ある映画がカルト映画として成立していく条件は、特定の観客がその映画をどう受け止めるか、その映画に対しどのような関係を築いていくかに依っている(商業的な成績は関係ないが、一般に「狭く深い熱烈なファンをもつ作品」であることから、あまり成功してはいないことが多い)。
例えば、1975年製作のイギリス映画『ロッキー・ホラー・ショー』(原題:The Rocky Horror Show)は、公開当時は商業的大失敗に終わったが、翌年のニューヨークでの深夜上映会を皮切りに、パーティのような気分で劇場に通い詰める観客が急増していき、ある種の社会現象となっていった。この映画を「最初のカルト映画(として認識されたもの)」として推す声は現在でも多い。それ以前の作品で現在カルト映画と認められているものは、後世の評価としてカルト映画と認識された作品、ということになる。
また、1970年代以降「ミッドナイトムービー」と呼ばれて深夜上映されたアート系映画と、「グラインドハウス映画」と呼ばれる老朽した映画館で二本立て・三本立てで上映されたエクスプロテーション系のB級映画の二つが、アメリカにおける「カルト映画」の大きな潮流となっている[1]。
『スター・ウォーズ』のように、今ではカルトというよりメインストリーム映画の扱いを受けているものもある。
カルト映画一覧
以下に、カルト映画と呼ばれる作品を公開年順に列挙する。()内は特筆ない限り監督。
1930年代
- 全米からサーカス等で活躍する奇形の人物を集めて撮影された。試写会では途中で逃げ出す観客が続出し、試写を観たせいで流産したとメトロ・ゴールドウィン・メイヤーを訴える女性も現れたため、メトロ・ゴールドウィン・メイヤーは特に過激と思われるシーンをカットしたが、それでも各地で上映禁止となり、興行的には制作費の約半分程度しか回収できないという惨敗に終わった。監督のブラウニングはこの作品で事実上引退に追い込まれ、映画は1960年代に再評価されるまで顧みられる事はなかった[3]。
- マルクス兄弟主演の過激なコメディ映画。ヨーロッパの架空の国を舞台にして、「愛国心」や「戦争」などを、とことん笑い飛ばす。あまりに過激な内容であったため、当時は批評も興行収入も悪く、マルクス兄弟はパラマウントからメトロ・ゴールドウィン・メイヤーに移籍を余儀なくされた。のち、1960年代の学生反乱の時代に「アナーキーな映画」として熱狂的な評価を得た。
- リーファー・マッドネス[4](ドゥエイン・エスパー)
- 麻薬撲滅のPR映画として製作されたが、殺人や自殺などの過激な内容から若者や麻薬中毒者の支持を得た作品。
1950年代
- 遊星よりの物体X(クリスティアン・ナイビイ)
- 本国アメリカでは公開当時評価が芳しくなく、日本でも日の目を見ることが無かった。しかしホラー作家の大御所スティーブン・キングがこの作品を高く評価し注目され、製作から36年目の1990年に日本で初公開された。
- 宇宙人が、地球人の爆弾開発をやめさせるために地球の死者を甦らせるというSFホラー。あまりのつまらなさに上映権の買い手がつかずテンプレート:要出典、結局テレビ局に権利を安く買いたたかれた結果、深夜テレビで繰り返し放送された。ティム・バートンやクエンティン・タランティーノに影響を与えた。1976年に「ゴールデン・ターキー・アワード」という本の中で「史上最低の映画」として紹介され、伝記映画『エド・ウッド』で注目を浴びた。
1960年代
- 無人島へ漂流した7人の男女が脱出を試みるも、飢餓と絶望から互いにエゴをむき出し始め、ついに島に自生していた謎のキノコ・マタンゴを食してしまったことから彼らの崩壊が始まる、というSFスリラー映画。
- 昭和初期を舞台にして、日々喧嘩に明け暮れる少年たちを描いた作品。高橋英樹が演じる破天荒な性格で生命力に溢れた主人公は、当時の世相を鋭く反映していると言われ、それに共感した観客からは熱狂的に支持されている。後年の作品で花開くことになる、鈴木清順独特の演出法を垣間見ることができるシーンも存在している。
- 第一次世界大戦を舞台にしたコメディタッチの戦争映画。狂気と正気の境目を描く。ブロカ監督のチームの意欲作でもある。日本語版DVDのジャケットには、堂々と「カルト・ムービーの傑作!」と記されている。
- まともに宣伝されずに、しかも客入りの少ない2月に公開されたこともあって、興行成績は東宝の作品の中でも最低を記録した。1980年代のリバイバル上映でようやく評価された不遇な作品である。なお、劇中にとある放送禁止用語が連発されるためにテレビ放映されることは少ない。
- 複数の映画監督によって撮影された作品。デヴィッド・ニーヴン、オーソン・ウェルズ、ウディ・アレン、ピーター・セラーズなどの当時すでに著名で実力派という評価を得ていた俳優を多数起用し、脚本にはテリー・サザーンなどが名を連ね、音楽はバート・バカラックが担当したという実に豪華な陣営の力作として作られたはずだったのだが、諸般の事情から内容の理解が困難なほどストーリーが破綻してしまい、イアン・フレミングの原作の原型を留めていない。後の『オースティン・パワーズ』シリーズにも大いに影響を与えている。2006年に改めて映画化された。
- 宍戸錠の演じる花田五郎や鈴木清順の演出、「殺し屋ランク」などの設定が独特の雰囲気を醸し出している。また、海外での知名度も高い。
- 江戸川乱歩の数編の小説を組み合わせてストーリーが作られた怪奇映画。土方巽らによって繰り広げられる暗黒舞踏のシーンや終盤の唐突な展開、驚愕に値するラストシーンなどによって、チープかつ異様な雰囲気を漂わせる怪作。デリケートなテーマや、奇抜なタイトルなどが災いして未だに正規のソフト化はされていないにも関わらず、名画座などで何度もリバイバル上映される。
1970年代
- 黒ずくめの孤高のガンマン・「エル・トポ(スペイン語でモグラの意)」を主人公にした、低予算の西部劇。しかし、実際は神話的に描かれた前衛映画といった色合いが強い。あらゆる宗教を混在させたような、他に類を見ない強烈な世界観を有しており、それが熱狂的なファンを生むことになった。特にジョン・レノンや寺山修司は本作の熱烈なファンとして有名で、特にレノンは配給権を獲得するほどだった。
- アナキストである大杉栄とその周囲の人間たちのドラマを描く。空間と時間の交錯、モノクロを活かした映像美、難解かつ膨大な量のセリフ、その他様々な前衛的手法が印象的に用いられている。名誉毀損などを理由に訴訟を起こされたという逸話もある。
- 小さな悪の華(ジョエル・セリア)
- 公開当時、反宗教的かつ淫靡な内容のため、本国フランスを始めとする各国で上映禁止となった作品。日本とアメリカの一部のみだけで上映された。主演の少女二人の裸体及び性的シーンなどの描写が問題点として挙げられる。日本ではこれまでVHS、LD、DVDともに発売されていなかったため幻の作品となっていたが、2008年2月に初めてDVD化される事になった。
- 寺山修司監督による長編第一作。冒頭のメタ演出に始まり、当時の佐藤政権への風刺、まるで雑誌広告の如くコラージュされるイメージ映像、繁華街でのゲリラ・パフォーマンス、そして映画そのものに対する愛憎に満ちたメッセージ。それを受け取るなり反発するなり観客次第といわんばかりのノーフィアーな作風が却って清々しい。美輪明宏(当時・丸山明宏)と、若かりし頃の平泉成(当時・平泉征)も出ている。
- わずか1万ドルの製作費で作られ、「史上最低の悪趣味映画」といわれた伝説的な作品。メリーランド州ボルチモアを舞台に、エキセントリックな登場人物たちが「世界で一番下品な人間」の座を争うという内容であり、特にラストで主演のディヴァインが「実際に」犬の糞を食べるシーンは衝撃的である。
- 16世紀、黄金郷を求め、アマゾンのジャングルに入ったコンキスタドールたちの悲劇を描いた作品。大いなる野望を抱きつつ、破滅に向かう主人公をクラウス・キンスキーが演じた。実際にアマゾンの奥地で半ば命懸けにロケが行われ、劣悪な環境下でキンスキーが現場を混乱させ、撮影は困難を極めた。『地獄の黙示録』(フランシス・フォード・コッポラ監督)に影響を与えた。
- 狂言自殺を趣味としている19歳の少年と、天衣無縫な79歳の老女との恋愛物語。ジャン・ルイ・バローが舞台劇にし、日本でも1977年に公演された。
- 宗教団体創価学会のプロパガンダ映画と見られがちだが、現在では考えられないほどの豪華キャスト、スタッフで制作されており、DVDで復刻されるまで、封印された幻の作品であった。
- ドラゴンVS不死身の妖婆(ジミー・ウォング)
- 戦時中日本軍人に父親を自殺に追いやられ復讐に燃える台湾人家族と日本軍人の子供の戦いを描いた異色カンフーアクション映画。車で3回轢かれても死なない不死身の妖婆が登場するカルト作品。妖婆の孫の一人の役で和製ドラゴンこと倉田保昭が出演している。
- 武芸道場間の争いで片腕を失う重傷を負った武道家の青年が厳しい修行の末、道場の門弟たちを葬った悪徳道場の異様な武道家集団に鮮血の復讐を遂げるまでを描いたカンフーアクション映画。奇声を上げる牙の生えた日本武道家や逆立ち歩きで闘う怪しいインド人、体の膨張するラマ僧など風貌の異様なカルトテイストあふれるキャラクターが多数登場する。日本では1973年12月に劇場公開された「燃えよドラゴン」に続いて1974年1月に劇場公開され、我が国にかつてないカンフー映画ブームを起こした。
- 日本では予想ほどヒットしなかったが、特にフランスではカルト的な人気がある。その背景には、大戦後の鉄道の高速化競争において、最先端をかつてはフランスが独占していたにも関わらず、この当時には新幹線の後塵を拝する状況になっていたという事情がある(本作品はTGV開業前の製作である)。
- 前作「片腕ドラゴン」で倒したラマ僧の師匠である殺人兵器「空飛ぶギロチン(血滴子)」使いの怪僧に生命を狙われる武道家の青年の活躍を描いたカンフーアクション映画第2作。驚異の殺人兵器「空飛ぶギロチン」や腕の異常に伸びるヨガインド人など前作に引き続きカルトチックな武器や人物が多数登場し、ギロチンによって人物が首を狩られる残酷描写が登場する。映画監督のクエンティン・タランティーノがこよなく愛するカルト香港映画。
- 全編の至る所にパロディやギャグが散りばめられたナンセンスなコメディ映画。当時の風俗を反映している面もあり、社会に対する痛烈な皮肉も多く込められている。デヴィッド・ザッカーが脚本や出演を行っており、後の『裸の銃』シリーズなどにも影響を与えている。
- 思春の森(ピエル・ジョゼッペ・ムルジア)
- 思春期の男女3人の禁断の性と劇末を描いたソフトコアポルノ。出演者が14~15歳程の少年齢にもかかわらず裸体や性的シーン及び、性器が映し出されるなどして公開当時波紋を呼んだ。日本でも一時期ソフト化されたが、児童ポルノ法によりすぐに回収騒ぎが起きた。著名な女流写真家イリナ・イオネスコの娘エヴァ・イオネスコが出演している事でも知られている。
- 一介の教師である主人公が一人で原子爆弾を作り上げるという破天荒なストーリーを持つ。逮捕覚悟で皇居をゲリラ撮影したり、勝手に高速道路を封鎖したりと逸話が多い。監督本人にも逸話が多い上に、この作品以降に監督作品がないため、伝説的作品になっている。
1980年代
- 暴走族同士の壮絶な抗争を描いた作品。当時大学生だった石井が監督をしているが、学生映画とは思えないほどの高い完成度を有している。山田辰夫演じる暴力的な主人公や、大勢の暴走族を巻き込んで派手な戦闘が起こる終盤のシーン、小林稔侍が演じた武装組織をまとめるホモの男などが印象的な一作。
- 商業的には振るわなかったがファンクラブが設立され、公開から30年以上経った現在も熱狂的ファンの手で公式サイトが運営されるタイムトラベルSF映画。脚本も手がけた原作者自身が、自分が生まれる以前に活躍した女優のポスターを一目見て感銘を受けた経験から原作を書き上げた。主演したクリストファー・リーヴのその後の事故と後遺症での車椅子生活と逝去も、この映画に関心が向くキッカケとなった。
- 松田優作が原案・主演のみならず、歌まで歌ったハードボイルド・アクション。ロバート・アルトマン監督『ロング・グッドバイ』に酷似した内容ながら、光と影のコントラストの利いた工藤栄一監督の演出とアヤしい風貌の優作がみられる。
- B級エンターティンメント作品の名手によるシチュエーション・ホラー。荒廃の結果、閉鎖され自治が認められた牢獄となったマンハッタンにエアフォース・ワンが墜落し、大統領の救出作戦が行われる。低予算であるにもかかわらず極めて完成度が高く注目を集めた。また、主人公のスネーク・プリスキンはテレビゲーム「メタルギアシリーズ」の主人公ソリッド・スネークのモチーフとなった。
- イザベル・アジャーニの、本当に取り憑かれたようなエグい演技。北斎のタコの浮世絵を思わせるシーンやピンクの靴下など、ストーリーに謎が多い。
- 狼男に襲われたために、自身も徐々に狼男と化していく男の物語。リアルなメイクが施された狼男への変身シーンは有名。しかし、緊迫したシーンに不釣合いと思われるような軽妙な音楽を流すことによって、奇妙な雰囲気を出すことに成功している。シリアスなシーンを軽いタッチで描く、ホラーコメディの異色作となっている。
- 1970年の東京を舞台とした、僕と彼女と鼠の物語。当時の実際の事件などを盛り込んでいて、その独特の映像表現などから、現在ではカルト映画扱いされている。
- ハリソン・フォード主演。原作はフィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』。2019年のLAを舞台に、人造人間レプリカントとそれを追う刑事の物語。その難解な内容のため、日本での劇場公開はふるわなかったものの、根強いファンをもつカルト映画となる[12]。その後のビデオの普及によってSF映画の金字塔と絶賛された[12]。
- トロン(スティーブン・リスバーガー)
- 世界初の「CG映画」というふれこみで製作された。物語は陳腐なものだったが、画像の新規性が注目を集めた。実際には大半がアニメーションと合成によるものだったが、CG利用の先駆的作品となった。
- 『砂の器』の脚本を手がけた橋本忍の監督による、東宝創立50周年記念超大作。愛犬を殺されたソープ嬢が、犯人の作曲家と琵琶湖のほとりでマラソン対決をし、それに戦国大名の怨念やスペースシャトル計画などが絡むという、意味深とも意味不明ともとれる内容が観客に理解されず、封切り後わずか1週間で打ち切り。21世紀まで封印されていた、文字通り「幻の」映画。
- クローネンバーグ監督の代表作ともいわれる怪作。セックスと暴力を売りにするケーブルTV局の社長が、あるSMビデオの映像を見た日を境に、虚構と現実の境界線をさまようになる。難解な作風のため、興業的には惨敗した。特殊メイクによるリアルでグロテスクな描写が満載の一作。
- アトミック・カフェ(ケヴィン・ラファティ)
- かつてアメリカで上映されていたニュース映画や、政府が保管していたプロパガンダ映画などをつなぎ合わせて一本のドキュメンタリー映画に仕上げた作品。戦中のアメリカ政府による民衆への思想誘導や、核兵器に対する甘い認識を痛烈に皮肉っている。実在したアメリカ賛歌なども随所に使われ、重いテーマとは裏腹に、軽妙なテンポで当時のアメリカをこき下ろすアンチプロパガンダ映画となっている。
- アル・カポネを描いた『暗黒街の顔役』のリメイク。残虐な暴力描写や過激な表現により公開当時は酷評され興行成績も振るわず、失敗作とされていたが、レンタル開始とともに人気が広がり、さらに本国アメリカでは黒人層などからの熱狂的支持を受け、再評価された。破滅へとひた走るアル・パチーノの狂気に満ちた演技と物議を醸した冒頭のチェーンソーによる殺戮シーン、特に残虐な暴力性を爆発させたラストでの機関銃で蜂の巣にされ、背後からショットガンで撃ち込まれて噴水に落ちるパチーノの死に様は、映画史に残る名シーンとなった。
- コヤニスカッツィ(ゴッドフリー・レッジョ)
- 人間と自然の関わりを、セリフやナレーションを一切用いずに風景描写だけで表現した不思議な雰囲気の作品。
- 新居に引っ越してきたちょっとユニークな家族が、ひょんなことから家の中で殺し合いを始めてしまうという奇想天外な作品。部屋が足りないからと家の床を破壊して自前の地下室を作ろうとする父親、東大に合格するために部屋に引きこもって怪しげな勉強を行う息子など、ユニークどころか非常に奇天烈な登場人物が特徴である。
- 暴走族に誘拐された、昔の恋人である女性ロックシンガーを助けるべく立ち上がった流れ者の孤独な戦いを描くバイオレンスアクション。
- 架空のロックバンド、「スパイナル・タップ」を密着取材したという設定のモキュメンタリー映画(擬似ドキュメンタリー映画)。あくまで架空のバンドであるにも関わらず細かい設定まで作りこまれており、またロック史上の有名な逸話がそれとなく織り込まれていたりもする。映画がカルト的な人気を得たことから、スピン・オフとしてアルバムが作成されたり、実際にイベントなどでライブを行ったりもした。
- ローンを滞納した車を回収するレポマンの仕事に就いた青年の姿を描く。
- 鬼才デヴィッド・リンチの名を世に広めたサスペンス。後のツインピークスで知られるカイル・マクラクラン主演。とあるのどかな田舎町を舞台に、その裏に潜む倒錯した世界を描いた傑作。アヴォリアッツ国際ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞するなど、様々な賞に輝いた。難解な作品が多いとされるリンチ作品の中では馴染みやすいとされ、麻薬中毒から克服したばかりのデニス・ホッパーによる狂気に満ちた演技や、全体に漂う50年代風のイメージなど、彼独自のスタイルが確立されている。
- 香港ノワールの火付け役となったバイオレンスアクション。それまで「香港アクション=カンフー」と言う固定観念を覆し、任侠映画のような内容やガンアクション、爆発シーンにより大ヒット。香港はもちろん、アジア各国でも一大センセーションを巻き起こした。続編も製作。
- 不思議な惑星にやってきた2人の男の苦悩を描いた風刺色の強いSF映画。舞台となる惑星の独特な文化や風習から、ロシアを始めとしてカルト的な人気を誇る。
- トマス・ハリスのハンニバル・レクター3部作の第1作、「レッド・ドラゴン」の初映画化作品。FBI捜査官ウィル・グレアムと連続殺人鬼フランシス・ダラハイドの攻防を描く。レクター博士役はブライアン・コックス。公開当時はヒットせず、批評面でも振るわなかったが、のちのアンソニー・ホプキンス主演の映画化シリーズのヒットや、監督のマイケル・マンが評価されるようになったことでアメリカで再注目される。現在ではグレアム役のウィリアム・ピーターセンやダラハイド役のトム・ヌーナンら俳優陣による熱演や、マン監督によるスタイリッシュな演出・映像表現が高く評価されている。日本では現在「レッド・ドラゴン/レクター博士の沈黙」というタイトルでDVDが発売されているのみで、ホプキンス主演のシリーズと比べるといまだに知名度は低いままである。アメリカでは未公開シーンを含めた完全版のブルーレイディスクが発売されている。
- バーホーベン監督がアメリカで成功させた初めての作品。一人の刑事が犯罪グループに射殺され、ハイテク技術でロボコップとして甦り、悪と対決するというSFバイオレンス。生々しく暴力的なシーンも多いが、主人公が人間とロボットの間で苦悩するという、人間ドラマ的な部分も垣間見える。続編が製作されるなど人気と知名度は非常に高い。
- 過激な言動と行動で知られるアナーキスト奥崎謙三の姿を描いた異色のドキュメンタリー映画。奥崎のアナーキーな言動としばしば暴力をも辞さない行動が生々しく描かれている。ベルリン映画祭などで賛否両論を呼びつつさまざまな賞を受賞し、マイケル・ムーアが最も評価しているドキュメンタリー映画でもある。
- 屍姦を描いた異色作。主人公は死体収集に傾注し、死体と交わり、果てに自殺と、物語は悪趣味を極めている。非常にグロテスクで残酷な表現が多いため、各国でも上映禁止となり、製作国であるドイツではフィルムの廃棄が命じられた。監督のブットゲライトはその後もいくつかの残虐な映画を撮り、現在はドイツ当局から監視されており、新作の発表ができないでいるという。
- キューブリックによるベトナム戦争映画。おまかに二部に分けられ、前半では海兵隊訓練所における人間性の剥奪、後半ではそれによる戦場での狂気が描かれる。直接的な反戦メッセージを盛り込む傾向にある戦争を扱った映画の中にあって極めて異色な作品。冒頭から、リー・アーメイ演じるハートマン軍曹が訓練生たちに容赦ない罵言雑言を浴びせる。
- 裸の銃を持つ男(デヴィッド・ザッカー)
- 寄宿制の学校。帰るところがない4人だけが残る夏休み。少年どうしの恋愛が自殺を引き起こす。耽美主義的な世界を丁寧に構築した小品。原案は、クレジットされていないが萩尾望都の少女漫画、『トーマの心臓』である。撮影当時14歳だった深津絵里が水原里絵という名義で出演している。
- 10億円もの費用をかけて製作されたアニメーション作品。日本のアニメーションが本格的に海外進出する足がかりになった作品である。
- 追悼のざわめき(松井良彦)
- 一体のマネキン人形に引き寄せられ、数奇な運命を辿る人々を描く。異常にマネキンを愛する青年や近親相姦をする兄妹たちの性愛と偏愛の様子が大胆に描写されている。
- 塚本晋也が監督・脚本・撮影・編集・美術・特撮・出演などを一人でこなした非常に低予算で製作された作品。ごく平凡なサラリーマンの全身が徐々に金属化するというシュールなSFホラー。モノクロの映像、大量の金属を組み合わせて作られた美術、田口トモロヲや塚本自身の叫ぶような演技による怪作で、タランティーノなど世界中に熱狂的なファンを生み出した。
1990年代
- BGMを一切用いず、台詞も少ないため、非常に静かな印象を受けるバイオレンス映画。
- 銀行強盗を題材として防犯訓練が行われたが、犯人役をまかされた警察官が融通のきかない堅物で、大真面目にプランを立案し、逮捕役の警官を見破り、銀行に立てこもってしまう。いったい誰がどのように幕を引くのか。羽目を外したコメディ作品。
- シェークスピアのテンペスト(邦題「嵐」)をモチーフとした作品。技巧的にはハイビジョンによる合成を世界で初めて映画制作に用いたことで注目されるが、ヨーロッパ神秘主義を基調とする耽美的演出と多数の裸体の乱舞などで物議を醸す。
- 裸のランチ(デイヴィッド・クロネンバーグ)
- ウィリアム・バロウズ原作の、同名小説を映画化したもの。殺虫剤を売る男が自らドラッグ代わりに殺虫剤を乱用したことで見る幻覚を描く。非常に難解かつシュールなストーリーと映像で、原作小説とは大きく異なる。
- 少女椿(絵津久秋)
- 丸尾末広原作のコミックを映画化したアニメーション作品。作品中に畸形の描写であるとか差別用語、サーカス団体への偏見助長などがあるとされ、海外での映画祭公開後に日本に持ち帰ったフィルムが1999年に日本の税関で没収されてしまう。上映時には場面にあわせて劇場内にスモークを炊くなど独特の演出を要求していた事も特筆に値する。音楽をJ・A・シーザーが担当している。
- ストリートダンスのコミュニティーに注目したダンスアクション映画。当時の様々なストリートダンスが織り込まれ、ダンスバトルなどのヒップポップ・カルチャーの生の姿が撮影されている。国内では大ヒットには到らなかったものの、ストリートダンス界でカルト映画化し、アジアのアンダーグランドで熱い支持を受ける。音楽はm.c.A・Tが担当し、テーマソングとして使用された『Bomb A Head!』は、1993年にアレンジを施したものがm.c.A・Tのデビュー曲として発売された。
- 沖縄に追放された落ち目のヤクザの無軌道な人生と繰り返される暴力、殺人。人生の終焉を感じ取る主人公を淡々と描いた、北野武監督の代表作。沖縄の紺碧とした海、輝く太陽のもとに繰り返される静謐とした狂気、殺戮を写実的に描いた。日本映画でありながら、当時日本での人気が著しく低く(公開一週間で打ち切られた映画館もあったという)、海外から『世界で日本人が一番観ていない』と評された。
- 「クライムハンター」シリーズ等といったVシネマ作品を黎明期から手がけ続けてきた脚本家出身・大川俊道監督の劇場用第一作。大川監督が一貫して拘るガンアクションもさることながら、日本の治安に対する不安と恐怖をスリラー仕立てで描いていて、加藤雅也、竹内力、中野英雄扮するエリートサラリーマン達を謎の男役の遠藤憲一が追い詰めて行く。
- ゴッド・アーミー/悪の天使(グレゴリー・ワイデン)
- 「神が人間を愛することに嫉妬した天使達が天国で再び戦争を起こす」という斬新な設定で描かれるオカルトホラー。クリストファー・ウォーケンやヴィゴ・モーテンセンらが出演。
- JM(ロバート・ロンゴ)
- 主演はキアヌ・リーブスで共演者がビートたけし。ビジュアルデザインはシド・ミード、原作はウィリアム・ギブスンの短編小説で脚本もギブスンが担当した近未来SF作品。サイバースペースを巧みに操るキアヌなど、上述のGHOST IN THE SHELLと同様に後のマトリックスの布石とも見られる作品となっている。
- 身近なものから自慰機械を作ることに熱中する関連性のない6人の男女を描いた「性交のないエロティック映画」。前編台詞がなく、ひたすら悦楽を求める男女を音楽のみで表現した、実験的で哲学的な作品。監督の得意とするシュルレアリスム的な生々しいオブジェが異様さに拍車をかけている。
- パソコン通信を舞台とした恋愛映画。この当時、パソコン通信は、まだかなり特殊な世界と思われていた。
- 極道戦国志 不動(三池崇史)
- 高校生にしてヤクザ幹部の不動(谷原章介)を主人公にしたヤクザ映画。小学生ヒットマンが登場したり、毒を盛られた敵の組長がダム決壊の如く大量の血を噴射させたり、ヤクザの生首でサッカーしたりといった残酷だが極端過ぎて笑えてしまう演出で、三池崇史監督が一躍脚光を浴びた。
- 演出や水野本人の演技が低い評価を受けるB級映画だが、その独特のノリがカルト的な人気を生み、後にシリーズ化され全5作が制作された(第6作の構想もあったが水野の死去により実現せず)。また、低予算映画であったにもかかわらず、配役が非常に豪華でもあった(水野のコネにより出演を取り付けたと言われている)。
- ゲーム ( デヴィッド・フィンチャー)
- 大富豪だった父の財産を引き継いだ実業家・ニコラスは、父親が自殺した年齢である48歳の誕生日を迎える。久しぶりに会った弟は誕生日プレゼントとして、「凄い体験ができる」とCRS(Consumer Recreation Services)という会社の紹介状を渡す。その後、たまたまCRS社のオフィスを見つけたニコラスは軽い気持ちでCRSの提供するゲームに参加することとなる。ドンデン返しなクライマックスで騙された人が続出したスリラー映画。特にサスペンス、ミステリー映画ファンに人気が高い[16]
- 幼少の頃からお金を貯めたり見せびらかす事が大好きだった主人公が、樹海の池に沈んだ大金入りスーツケースを手に入れるためにひたすら前進するスラップスティック・コメディ。
- 鋼鉄の立方体の空間に閉じ込められた6人の男女が脱出を試みるが、部屋には殺人トラップが仕掛けられており、次第に人間の深層心理が露にされる。低予算で製作されているにもかかわらず、斬新な設定で後に大量に製作されるハード・シチュエーション・ホラーの礎となった。
- 異星から来た巨大な昆虫と戦う軍隊をCGを駆使して描いたSF映画。グロテスクな映像、やたらご都合主義的なストーリーなどが特徴で、B級映画の雰囲気を漂わせる。昆虫たちとの大規模な戦闘シーンは、銃弾が貫通する描写や死体の生々しさ、それにくわえて大軍VS大軍の構図がはっきりとわかる迫力満点の戦争シーンなど、ファシズム的とも取れる内容から酷評があったが、それらはバーホーベン監督一流の皮肉であることはあきらかである。
- 映画監督、黒沢清の名を世界に轟かせた作品。首から胸にかけてX字型に切り刻まれるという異様な連続殺人事件と、それを追う刑事の葛藤を描く。
- 数字に翻弄され、徐々に狂気と妄想を増幅させていく男の深層心理をモノクロの映像とテクノを用いて描いた斬新な作品。超低予算で製作されており、難解なストーリーに象徴的なイメージを散りばめたヴィジュアルの作品。
- アニメーション作品。ストーカーやインターネットなど、この時代には珍しかった要素を取り入れた意欲作。アイドルから女優へと転身した主人公が、ストーカーや周囲で起こる殺人事件によって精神的に追い詰められていく姿を、スリラータッチで不気味に描いた作品。
- イディオッツ(ラース・フォン・トリアー)
- 精神障害者のふりをして楽しむ人々を通して、人間が持つ偽善性を暴く。
- ミュージシャン出身である俳優・ヴィンセント・ギャロが、監督、脚本、音楽、主演を執った初監督作品。出所した男が行きずりの少女を拉致し、久しぶりに訪ねる両親の前で妻を演じるよう強要するが、やがて惹かれていく。写真用フィルムを使用した独特のスタイリッシュな映像がみられるラブストーリー。
- とあるビルにある小さな穴が、ジョン・マルコヴィッチの頭に通じているという非常にシュールで奇想天外な内容の映画。脚本が高く評価されており、アカデミー賞にノミネートもされた。
- ギャラクシー・クエスト(ディーン・パリソット)
2000年代
- ザ・セル(ターセム・シン)
- 異常犯罪者の深層心理に潜り込むことになった女性の物語。ミュージック・ビデオなどで知られている監督が作り出す摩訶不思議な映像が、観客を奇妙な世界へ引きずりこむ。異常な殺人の描写や、幻想的かつ悪趣味な映像、非常に独特な世界観がかなりの異彩を放っている。作中、主人公が見ている映画は『ファンタスティック・プラネット』である。
- 現実とネット世界をリンクさせた構成と、現代の少年問題を描いた内容が大きな話題を呼んだ作品。現代社会の中学生達の残虐性を生々しく描いている。
- ゴジラシリーズの中で最も殺戮描写が多いとされる作品。歴代のゴジラの中で最も凶悪なイメージを持つ白眼のゴジラ、完全な善玉のキングギドラ、前述の殺戮描写のリアルさに賛否両論があった。また、監督が『平成ガメラシリーズ』を撮った人物ということも話題となった。
- 1997年にオフ・ブロードウェイで上演された、同タイトルのミュージカルを映画化したもの。東ドイツで生まれた性転換手術を受けるも、股間に一インチのふくらみが残ってしまったドラァグクイーンのロッカーがバンドを組み、アメリカで自分探しの旅をするロードムービー。愛に関する哲学的な問いをアニメーションなども織り交ぜながらロック的に描いたミュージカル。
- 実写の映像に、ペイントで色を塗って制作したアニメーション。夢をテーマにしており、ひたすら哲学的な会話の連続や、不安定で酩酊感を誘う映像の動きが、観客を作品の世界に引き込む。さまざまな著名人が出演している。
- リベリオン(カート・ウィマー)
- 劇場公開時は1ヶ月で打ち切りなど興業的に振るわなかったものの、DVD化の際に口コミにより評判を呼んだ。「ガン=カタ」という斬新で他に類を見ないアクション。
- フランスの鬼才・オリヴィエ・アサヤス監督が日本のアニメ会社との契約を巡り暗躍する女産業スパイがアングラサイトの世界へと堕ちて行く様を描いた、シュールで悪夢的なビザール映像が爆発する異色の企業サスペンス。アメリカからクロエ・セヴィニーとジーナ・ガーション、日本から大森南朋が出演している。