屍姦

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テンプレート:性的 テンプレート:暴力的 屍姦(しかん)は、死体を姦する(性的に犯す)ことを言う。広義には死体に欲情する性的嗜好をも指し、死体性愛屍体性愛、したいせいあい)、死体愛好屍体愛好、したいあいこう)、ネクロフィリア(necrophilia)[1]とも呼ばれる。性的倒錯の一つでもある。「屍(しかばね)を姦する」に語源を持つため「屍姦」の表記が本来的であるが、(Microsoft IME等では容易に変換しがたいためか)ネットでは「死姦」の表記が散見される。

歴史的な事例

  • 屍体性愛は、他の性的倒錯と同様に、非常に古くから人類の内にあったと考えられるが、異常である故の秘匿な行為であった為に、実例を見つけるのは難しい。ヘロドトスの『歴史』の第二巻には、古代エジプトでは、位の高い男の妻や、美しい女が死んだ場合、ミイラ職人に屍姦されることのないよう、死から3、4日たった後に死体を引き渡した、という記述がある (ただし、仮にヘロドトスの記述が本当であるとすれば、屍姦の事例の極めて古い証言となるが、このミイラ職人達が一般に屍姦の嗜好を持っていたとは断言出来ない) 。古代には、死者との性交が魔術的な意味を持っていたと考えられる場合もある。モチェ文化のものとして、廃墟で生者と交わる骸骨の死者が描かれた陶器が出土しているという。
  • 18世紀フランス売春宿では、棺桶の中で死体のふりをし、男性修道士の姿になり交わるという屍姦的なサービスを行っている所もあり、一部の人間にはかなりの人気があったようである。また、サラ・ベルナールが普段から棺桶で眠っていたという話はよく知られている。
  • 近代以降になると、巷の事件として屍姦の例を多く見ることが出来る。歌舞伎の演目「心謎解色糸(こころのなぞとけたいろいと)」は、実際の屍姦事件を基にして書かれた(この中では、お房が生き返る)。

屍姦にあたる行為

主に以下の行為が当てはまる。

  • 死体を姦淫する行為自体に興奮を覚えること。
  • 死体を姦淫する行為を見ることに興奮を覚えること。

以下の行為は分けて扱われる場合もある(淫楽殺人、猟奇殺人など)。

  • 強姦して相手を殺害してしまう行為そのものに興奮を覚えること。
  • 男性が女性に対して強姦し、また絞殺することによって相手が死ぬ直前に窒息状態になることから穴が縮小し男性の性器を強く刺激することによる強度の刺激から来る快感と、相手を死に至らしめる達成感に興奮を覚えること。

現在における屍姦

テンプレート:独自研究 現在、日本では屍姦そのものについて罪に問われることは無い[2]。日本では火葬が主なので、家族以外の個人が人気のないところで遺体に接することの出来る機会は、霊安室や宗教施設、検視室などに限られている。あえて不心得者(外部からの侵入者の場合も、夜間や人気のないところで遺体に触れることの出来るそれらの施設の特権的地位にあるものである場合も考えられる)から家族を守るためには家族が火葬まで常に監視し第三者が付け入る隙を見せないことにある。着衣の乱れなどから疑わしい場合は警察に届ける必要がある[3]。現在DNA鑑定技術が発達しており犯人の特定は十分可能である。上記の植物状態の患者に対する性的暴行も常に患者の家族が監視することで防ぐことが可能である。

いずれにしても、殺人死体損壊に繋がる行為であり、社会的に許容されることはまずあり得ない(屍姦を行った著名な日本人としては小平義雄栗田源蔵佐川一政などが挙げられる)。逆に言えばそれゆえに研究が遅れている分野でもある。このような性的嗜好が顕在化する要因として、フロイト派では、幼少時に見た「眠っている母親の姿」に愛情を感じ、それが欲情へと変化する為であると主張している。また、眠っている相手との性行為を体験したことがきっかけで顕在化することもあるという。これとは関係ない説として自尊心の弱さが逆らえない相手に対する欲望を生むという説もある。

米国では2004年カリフォルニア州アーノルド・シュワルツェネッガー知事が屍姦を禁止する法案を承認した。これまで法的に罰することが出来なかった死体との姦淫が公式に不法なものとなった(テンプレート:要出典範囲)。

山口県光市母子殺害事件では、加害者が被害者を殺害した後、辱めたとされている。裁判では生き返らせるための儀式だと供述。また、あまり知られていないが1993年に発生した埼玉愛犬家連続殺人事件の加害者も被害者を殺害後に辱めた事があると言う[4]

姦淫までは明らかになっていないが、2011年ロシアニジニ・ノヴゴロド市で、高名なケルト語学者で墓地研究家のAnatoly Moskvinが、人形の格好をさせた若い女性のミイラ化した遺体29体を自宅に隠し持っていた事件が発覚した。遺体は墓場から盗んだとみられ、人形のような服を着せ、顔と手は布で覆っていた。部屋には遺体のほかに、人形製作の本や本物の人形、ぬいぐるみ、仮面なども散乱していた。逮捕される以前のインタビューで、死体や墓地に興味を持ったきっかけとして、12歳のときにたまたま出会った葬儀で、11歳で亡くなった少女の額にキスをさせられたことだと答えている[5]

屍姦を題材にした作品

脚注

  1. フォン・クラフト=エビングの造語で、『性的精神病理』が初出か。
  2. 「刑法第一九〇条に規定する死体損壊罪は、死体を物理的に損傷・毀壊する場合を云うのであつて、これを姦するが如き行為を包含しないと解すべきものである」 昭和23年(れ)584号 昭和23年11月16日最高裁判例(集刑第12号1535頁)
  3. 法的に罰することは出来なくとも免職や資格や免許を剥奪するなど社会的制裁は可能である。
  4. ただし、共犯者による証言のみで、遺体は加害者に解体・処分された事から物的証拠はない。
  5. Grisly discovery: 29 mummies found in historian's apartment

関連項目