釣り

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釣り(つり)あるいは魚釣り(さかなつり)とは、釣り針釣り糸釣り竿などの道具を使って、魚介類などの生物を採捕する行為、方法のことである。

英語ではAnglingアングリング)あるいはPole fishing ポール・フィッシングなどと言われる。[1]

概要

釣りを動物の捕獲法として考えると、移動性の高い動物をおびき出したり、待ち伏せしたりして捕まえるの一種を用いた方法といえる。

釣りの主な対象は、湖沼などの水圏に生息する魚類である。この場合、釣りは漁撈)の一種として、陸上動物を捕獲すると区別される。

「釣り」という名前の由来は対象を糸で釣るから釣りと呼ばれる。そのため網などを使う漁は釣りと呼ばれない、また釣り上げる対象を魚に限定する時は魚釣りの呼称も使われる。(魚以外ではザリガニ釣り、タコ釣りなどがある。)

釣りをおこなう場所によってそれを細分化して、海釣り・川釣り・磯釣りなどの呼称もある。など場所ごと、そして狙う魚介類の種類などによって、様々な釣り方があるが、魚釣りにおける最も典型的な手順は、以下のようなものと言えるだろう。

  1. 釣り針やそれに類した疑似餌ルアー毛針など)をつけ、釣り針には釣り糸をつないでおく。釣り糸は釣り竿の先端に結びつけられる。
  2. 魚の通りかかる場所に釣り針を垂らし、食いつくのを待つ。あるいは、集魚餌で魚を釣り針の付近におびき寄せる。
  3. 魚が食いつくと針が口やえらに引っかかる。
  4. このとき、釣り糸の反対側につながれた釣り竿をうまく使って魚を手元に引き寄せ捕獲する。

ただし、上記はあくまでひとつの典型例であって、実際の魚釣りの手法には、上記以外にも、対象とする魚類の種類や生態によって、実に豊富なバリエーションがある。例えば、釣り竿を使わない手釣り(ワカサギ釣り、カッタクリ釣りなど)や、釣り針を使わない釣り(ザリガニ釣りなど)もある。そして、餌やそれにあたるものを使わず、直接に対象を引っ掛けて吊り上げる方法もある。

「釣り」という用語・概念は、(広義には)釣り針や釣竿を用いて魚介類を採る方法に対して与えられた名称・概念であり、生業として(職業として)行われる漁業上の手法も指しうるし、また、また非職業的に、楽しみとして行われるそれも、どちらも指しうる。例えば、マグロ漁業で行われる一本釣りも釣りの一種であり、またはえなわ漁も釣りの一種とされるし、娯楽や趣味として行われる行為も指しうる。一般人の使用頻度から言えば、「釣り」と言えばもっぱら娯楽のそれを指していることが多いことになる。(→#漁業と遊漁)。

歴史

釣りの起源は少なくとも約4万年前の旧石器時代まで遡ることができる。日本でも、石器時代の遺跡から骨角器の釣針が見つかる。

釣りは、江戸時代ごろから趣味としても行われるようになった。

パリオリンピックでは釣りが競技種目の一つとして採用され、釣果が競われた。

漁業と遊漁

英語のFishingは魚介類をとること全般を指しうるが、その中で生業としての産業商業としてのFishing、つまり漁業従事者(いわゆる漁師)によるFishingをコマーシャルフィッシング (Commercial fishing) という。また漁業は英語圏では Fishery と総称される、それとは対照的に、漁師以外の一般人によって行われる漁は、一般に財を得ることを目的とするものではなく、娯楽趣味、あるいはスポーツとして理解されている。こういった娯楽性の釣りを遊漁といい、英語圏ではRecreational fishingリクリエーショナルフィッシング)やSport fishingスポーツフィッシング) と呼ばれている。広義の「釣り」には商業的なそれと、趣味的なそれが含まれている。

遊漁を行う者のことを遊漁者と呼ぶ。一般に、乱獲の防止や漁場保全のために漁網の使用などが制限されているため、遊漁者が行える漁法は、ほとんど釣り漁に限られている。

このように魚釣りを娯楽・趣味とする歴史が江戸期以来続いていることから、今日においても「釣り」という言葉を遊漁の意味で用いることが多いが、バスフィッシングブームで世間の耳目を集めたように、好事家の趣味であった遊漁としての釣りも、現在では一大産業となっている。釣具メーカーはトッププロ(フィールド・テスターと呼ばれる)と提携し、マスコミを通しての商品のPRにつとめているテンプレート:要出典。尚、日本メーカーの釣具は釣り人の利便性、機能性の要請に答えた世界トップクラスの水準であるテンプレート:要出典

遊漁の対象魚

食用になる魚を対象魚とする場合もあれば、魚釣りの過程を楽しむための遊漁もあり、後者の場合には、その場で釣った魚を再放流すること(キャッチ・アンド・リリース)が行われる場合もある。バスフィッシングヘラブナ釣りがそれである。

種類

釣りを行う場所や、対象魚によって分類されている。
また、釣りの対象とされる魚は少なくないため、餌釣り・ルアー釣り合わせると多種多様な釣り方が存在する。しかし、目的とする魚の生態に適した釣り方を行っていることは同じである。

主な釣り場

淡水

釣具

釣り道具は「釣具」や「タックル」と呼ばれている。

釣り針

テンプレート:Main 実際に魚がかかる部分である。釣り針にを付けて釣る餌釣りや疑似餌ルアーフライ)による釣りがある。

釣り糸

テンプレート:Main 「ライン」とも呼ぶ[2]。竿から仕掛けまでを道糸、釣り針を直接結ぶ部分の糸をハリス(鉤素)という[2]

釣り竿

テンプレート:Main 「ロッド」とも呼ばれる[2]。先端側を「竿先」といい手元側を「竿尻」という[2]。道糸が竿の内部を通る種類の竿を「中通し竿」という[2]。糸を巻いておく道具としてリールがある[2]

浮き

釣り糸の途中に取り付け、釣り針を一定の水深に保つとともに、魚が釣り針の餌を食べていること、魚が釣り針に掛かったことを知るために用いる。また、釣り針の餌を含む仕掛けを遠投する役割を持つことがある。浮きは用途によりさまざまな形状がある。平常時の浮きの姿勢を保つために、釣り糸の途中に錘(オモリ)を取り付けることがある。

棒浮き
(右図左)
アタリに対して敏感。流れの速い河川などでは、逆にアタリがわかりにくくなるため適さない。主に流れのゆるい釣り場で用いる。ヘラブナ釣りで高価なものが用いられる場合もある。
玉浮き
(右図中央上)
流れの速い釣り場でも使いやすくなっている。浮力が比較的大きいものが多い。セル玉と呼ばれることがある。
唐辛子浮き
(右図中央)
棒浮きと玉浮きの中間の性能。見た目が唐辛子に似ている。製ものが多い。
水中浮き
名前の通り水中で使う浮き。上の潮は止まっているのに下の潮は動いている時等によく用いられる。また仕掛けの重さが少し増えるため若干遠くへ飛ばしやすくなる。

この他に、メジナ(グレ、クロ)釣りで使用される円錐ウキなどがある。この円錐ウキに代表される道糸を浮きの中を通すしくみのものを総称して中通しウキと呼ぶことがある。他にも、大物を釣るときに使うチヌウキや、ヘラブナを釣るときに使うヘラウキや、タナゴなどの小さい魚の食いつきまで分かるタナゴウキ、感度の高い発泡ウキなどがある。中通しウキの一種でシモリウキがあり、渓流で釣るときなどに使われる。

電気ウキ
上記のような形状による区別ではなく、浮きに発光機能が搭載されたもの。浮き用途に開発された細長いリチウム一次電池を使用し、豆電球やLED等で浮きが発光する仕掛けになっている。夜間の釣りにおいて暗闇でも浮きの動きが確認できる。

浮きの日本での歴史

現在、釣りの主流になっている『立ち浮き』は江戸時代末期から明治時代にかけて始まったもので、それまでは『寝かせ浮き』が使われていた。『立ち浮き』を広めた人物の一人が初代馬井助こと菅原寅次郎で、彼は京都床屋新内節の師匠の傍ら、小間商いとして浮きを作っていた。彼は生涯、浮き作りを本職にはしなかったが、彼の次男、菅原与一は高等小学校を卒業後職を転々とした後、父が亡くなった昭和6年に26歳で浮き職人となった。二代目馬井助と呼ばれる彼の作品は個性豊かな形状と研ぎ出し仕上げなど本格的な美しい塗りで関西だけではなく関東でも注目され、中には、蒔絵などを施した作品や干支を題材にした揃いのものなど、芸術品とも呼べる浮きを作った。そのため、二代目馬井助の浮きは、現在、高値で取引される事が多い。

オモリ

テンプレート:Main 仕掛けを沈めるための道具がオモリである[2]。小さい球状のオモリとしてガン玉がある[2]。また、割れ目があるオモリとして割りビシがある[2]

その他

遊漁に対する規制

遊漁者に対する規制は各都道府県の漁業調整規則により規定されている。また、内水面(湖沼・河川)で第五種共同漁業権が設定されている場合、遊漁規則が設定されている場合がある。また、海区漁業調整委員会および内水面漁場管理委員会による委員会指示が発動されている場合もある。遊漁者が使える漁具は、一般に一本釣りの釣り道具、小型のたも網のみである。

問題

遊漁人口の増加と産業化によって様々な問題も発生している。

立ち入り禁止区域への侵入

進入禁止とされている場所での釣りが問題となっている。鹿島港では立ち入り禁止とされている防波堤に釣り人が無断侵入しては高波に攫われるなどして、2013年までに通算63人が亡くなっているが、現在も高さ3mのフェンスを破壊したり乗り越えたりして侵入を繰り返す釣り人が絶えない[3]

釣りにより発生するゴミ

河川湖沼など淡水魚の生息する地域は野鳥にとって重要な食糧供給地域でもある。これらの場所において放置されたテグスや針付きのテグスなどは野鳥の生命を脅かす状況にあり、定期的にゴミとして大量に回収されている。また、疑似餌(特にワームと呼ばれるもの)による化学的な汚染や、撒き餌などによる水質汚濁も懸念されている。釣りのでも同様で、波止釣り埠頭でのゴミ放置も問題化している。

外来種の繁殖

オオクチバスコクチバスブルーギルなどの日本国内に天然では存在しない魚類が、釣り人による意図的な放流により、全国的に内水面で繁殖している事例があり、在来種、特に日本の固有種や希少種に対する影響が懸念されている。これらは特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律により放流を禁止されているが、同法は釣り上げたその場で再放流する態様のキャッチ・アンド・リリースについては規制をしていない。このため、秋田県新潟県滋賀県琵琶湖などでは条例で禁止している。

なお、釣りの対象とされる外来種であり、在来種に影響を与える魚種でありながら、在来種と誤解されているものとして、ニジマス、輸入種の鯉、一部の湖におけるワカサギなどがある。また、外来種ではないがの放流、移動により生態系の破壊や 輸入種の鯉と在来種の鯉の交配により在来種への影響もあり、外来種のみの問題とは考えられなくなっている。

関連する逸話

太公望

の文王が太公望を見出したとき、太公望は渭水のほとりで釣りをしていた。もっとも、太公望は文王の目にとまるために釣りをしているふりをしていただけで、実は餌も釣り針もつけておらず(釣り針が直針だったという話もある)、更に水面から三寸上に離れていたという。しかしこの故事から、日本では釣り人のことを太公望とも言うようになった(中国では釣りが下手な人を指すとのこと)。

海幸彦と山幸彦

古事記』には、海幸彦(火照命)と山幸彦(火遠理命)の話が載っている(山幸彦と海幸彦)。海幸彦と山幸彦の兄弟は、ある日自分たちの道具を交換し、海幸彦が山に狩に行き、山幸彦が海に釣りに出かけることにした。ところが山幸彦は何も釣れなかったばかりか釣り針までなくしてしまう。海幸彦は怒り、山幸彦が佩刀の十拳剣をつぶして五百の釣針を作ってあげても、許しをあたえようとはしなかった。

比喩的な用法

漁法における釣りの語義から、目的とする対象を待ち受けることによって、または何らかの誘因となる物を仕掛けて誘導することによって、対象との接触を成功させようとする方法のことを、「釣り」という俗用がある。

  • 陸釣り(おかづり)
    • 陸上の水域での釣りの意味で用いられることも多いが、比喩用法としての用語(くるわことば)でもある。ナンパの意味でも使われる。
  • フィッシング詐欺
  • 釣り(電子掲示板)
    • インターネット掲示板で議論を盛り上げるために他人が憤りそうな話題をわざと出すのを「釣り」という例もある。逆に、発言自体は釣りではないのに、「釣り」のレッテルを貼って、その発言を無効化させる用法もある。議論以外でも、架空の出来事や作品を捏造するなどの巧妙な嘘をついてほかのユーザーを騙す場合にも用いられる。いずれの場合も「釣る」(釣られる)相手は個人とは限らない。
  • 釣り (出会い系)
    • 出会い系サイト等で、あたかも出会えるかの様に誤認させ、待合せ場所等に誘導する行為を釣りと呼ぶ場合がある。
  • 釣り師
    • アイドルなどがイベントなどを行う際に、「ファンの心をわし掴みにする」者を指す。類義として、AKB48の場合は、神のように天に昇った気持ちにさせられるような対応を「神対応」と呼ぶため、同グループのメンバーで「釣り師」という場合には、通常は、NMB48渡辺美優紀を指す。
  • 釣り餌法
    • 試料にある餌を入れることで、それを好む特定の微生物だけを釣り出す分離法。
  • 釣り野伏せ
    • 戦国時代に考案され使われたと言われる戦術の一つ。戦う部隊の真ん中に当たる部分を餌とし、逃げると見せかけて敵をおびき寄せ左右に置いておいた兵で挟み撃ちにし、逃げていた部隊も反転して攻撃する高度な戦法。

参考画像

脚注・出典

  1. 注 - 英語の「fishing」は、どんな方法であれ、ともかく魚介類をとること全般を指す。針だけでなく、魚網をつかって魚介類を採ることも指すし、を用いてそれをついてとることも指す。
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 2.7 2.8 テンプレート:Cite web
  3. 「釣り穴場」鹿島港南防波堤 後を絶たぬ侵入者 茨城 産経新聞 5月29日(水)7時55分配信

関連項目

外部リンク

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