高杉良
テンプレート:Infobox 作家 テンプレート:Portal 高杉 良(たかすぎ りょう、1939年1月25日 - )は、日本の小説家。ビジネスマン小説の巨匠として知られる。
経歴
東京府(現東京都)出身。子供の頃から病弱で、入退院を繰り返しながらグリム兄弟やアンデルセンの童話に没頭し、童話作家を志したこともある。
業界紙の『石油化学新聞』に入社後、編集長まで務める。業界紙に務めている時に急性肝炎で入院し、会社に対して負い目を感じたことに加え、小学校からの友人だった大竹堅固(当時日本経済新聞記者)から小説を書くことを薦められて、作家として身を立てることを決意した。
1975年に『虚構の城』で作家デビューする。余りにリアリティーのあるストーリー展開だったために、モデルとなった出光興産の社員による内部告発ではないかと噂されるほど反響が大きかった。その後もサラリーマンの立場に立って数々の経済小説を著す。
初期の作品は、大物ではないながらも逞しく生きるサラリーマン像(ミドル)を描いたものが多いが、時代が下るにつれて、よりダイナミックな起業家や経営者、組織の腐敗にスポットを当てるようになった。最近では告発めいた作品が多くなっている。また、竹中平蔵を「実体経済を知らない」と酷評し、竹中とその側近であった木村剛・岸博幸のトリオを、日本経済を誤った方向に導く悪人的存在として、小説中に仮名でたびたび登場させている。
日本経済新聞への批判
2004年に、高杉は『乱気流-小説・巨大経済新聞』(上・下)を上梓した。これは、当時日本経済新聞社の子会社の不正経理を巡るスキャンダルを描いた小説だったが、鶴田卓彦元社長は「自分たちをモデルにした事実無根の内容で名誉を棄損された」として、単行本出版などの差止めと損害賠償・謝罪広告掲載を求めて東京地方裁判所に提訴した(2007年4月11日の判決で、一部につき名誉毀損を認め、470万円の支払を命じられている[1])。この提訴の後、日経ではインサイダー取引などスキャンダルが続出し、高杉は「日経の企業体質が生んだ事件」と批判した。
2006年7月4日に、日経を退職していた大竹から譲り受ける形で日経株を取得し、高杉は株主総会に出席しようとするが、日経側は大竹の社友資格を取り消す[2]などして、7月13日に株式売買が無効と通告した。これに対し、8月14日に高杉が一連の日経株取引を有効として、株主の地位確認を求める訴訟を提起した[3]。更に、株主代表訴訟を起こして、日経の経営陣への批判の姿勢を強めた。
作品
- 虚構の城(講談社、1976年、のち講談社文庫、1981年、新潮文庫、2000年、新装版として講談社文庫、2010年)
- 大家族主義を掲げる出光興産をモデルに、左遷された男の戦いを描く
- 明日はわが身(日本経済新聞社、1977年、のち徳間文庫、1995年、新潮文庫、2007年)
- 製薬会社のプロパーの営業活動を描写。「創作ノート」で自らの急性肝炎の入院経験を執筆の動機であると記している。
- 自らの定年(日本経済新聞社、1979年)
- 人事異動(集英社文庫、1982年、新潮文庫、2011年) ※改題
- あざやかな退任(プレジデント社、1979年、のち集英社文庫、1981年、角川文庫、1988年、新潮文庫、2001年、徳間文庫、2010年)
- 冒頭の社長死去の場面のみ、日本触媒化学工業(現:日本触媒)の八谷泰造社長がモデル。その後はフィクション。
- 社長解任(グリーンアロー出版、1979年、のち集英社文庫、1985年、徳間文庫、1993年)
- 大逆転!(日本経済新聞社、1980年、のち講談社文庫、1983年、新装版として講談社文庫、2010年)
- バンダルの塔 小説・イラン石油化学プロジェクト(講談社、1981年、講談社文庫、1984年、集英社文庫、1994年、「勇者たちの撤退-バンダルの塔」と改題して徳間文庫、2005年、「新装版 バンダルの塔」として講談社文庫、2010年)
- エリートの反乱(1981年)
- 懲戒解雇(徳間文庫、1998年、講談社文庫、2000年、「新装版」として徳間文庫、2008年、「新装版」として講談社文庫、2009年) ※改題
- 三菱油化(現:三菱化学)がモデル。
- 対決(立風書房、1982年/徳間文庫、1995年)
- セントラル硝子がモデル。
- 生命燃ゆ(日本経済新聞社、1983年)
- 昭和電工の大分石油コンビナート建設がモデル。渡哲也主演でドラマ化された。
- 大脱走(スピンアウト)(1983年)
- 覇権への疾走 ドキュメント・ノベル日産自動車(講談社、1984年)
- 労働貴族(講談社文庫、1986年/徳間文庫 2005年) ※改題
- 王国の崩壊(光文社、1984年/徳間文庫、2000年)
- 広報室沈黙す(講談社、1984年/講談社文庫(上・下)、1987年)
- 安田火災海上保険(現:損害保険ジャパン)がモデル。
- 銀行人事部(集英社、1984年/徳間文庫、1992年)
- 逆襲するエリート銀行家(徳間書店、1984年)
- 欲望産業(徳間文庫、1987年) ※改題
- 武富士がモデル。
- 太陽を、つかむ男-小説坪内寿夫(角川書店、1985年)
- 小説会社再建-太陽を、つかむ男(集英社文庫、1991年) ※改題
- 佐世保重工業がモデル。
- いのちの風 小説・日本生命(集英社、1985年/集英社文庫、1987年)
- 小説 日本興業銀行(第一部~第四部、角川書店、1986年-1988年)
- 管理職降格(講談社、1986年)
- 銀座にある大手デパートで働く主人公の話。ビジネス面だけでなく、家庭面を多く描いているのが特徴。
- 炎の経営者(サンケイ出版、1986年/講談社文庫、1989年/文春文庫、2009年)
- 会社蘇生(講談社、1987年)
- 闘う経営者(講談社、1988年)
- 『社長の器』(講談社文庫、1992年) ※改題
- 辞令(集英社、1988年)
- 祖国へ、熱き心を-フレッド・和田勇物語(上・下)(世界文化社、1990年)
- 祖国へ、熱き心を(講談社文庫、1992年/新潮文庫、2001年) ※改題
- 巨大証券シリーズ
- 燃ゆるとき(実業之日本社、1990年/新潮文庫、1993年)
- ザ エクセレント カンパニー(毎日新聞社、2003年/角川文庫、2005年)
- その人事に異議あり(集英社、1991年/講談社文庫、1993年)
- 副題は『女性広報主任のジレンマ』。その後、舞台を現在に置き換えて2005年に『新・その人事に異議あり』(講談社)を上梓した。
- 男の決断(立花書房、1992年/新潮文庫、1995年)
- 濁流-組織悪に抗した男たち(朝日新聞社、1993年、講談社文庫で上下2巻、1996年、「濁流-企業社会・悪の連鎖」と改題して徳間文庫で上下2巻、2008年)
- 首魁の宴(講談社、1998年)
- 烈風-小説通産省(講談社 1995年)
- 挑戦つきることなし(徳間書店、1995年/講談社文庫、2000年)
- 組織に埋れず(講談社、1996年)
- 辞表撤回 ※改題
- 金融腐蝕列島シリーズ
- 勇気凛々(角川書店、1998年/角川文庫、2000年/講談社文庫、2005年)
- 自転車の開発・輸入・販売業のホダカ物産が実名で描かれる。『高杉良経済小説全集』の月報に連載された小説。
- 青年社長シリーズ
- 銀行大統合-ドキュメント・ノベル「みずほフィナンシャルグループ」(講談社、2001年/講談社文庫、2004年)
- 小説・ザ・外資(光文社、2002年)
- 不撓不屈(新潮社、2002年)
- 小説ザ・ゼネコン(ダイヤモンド社、2003年)
- 青木建設(現:青木あすなろ建設)がモデル。
- 乱気流-小説・巨大経済新聞(上・下)(講談社、2004年)
- 腐食生保(新潮社、2006年)
- 挑戦 巨大外資(上・下)(小学館、2007年)
- 亡国から再生へ(光文社、2007年)
出典・脚注
テンプレート:Reflist- ↑ 名誉棄損で高杉良さんに賠償命令 日経元社長が一部勝訴 asahi.com・2007年4月11日
- ↑ 日本経済新聞社の定款で、株式譲渡について、譲受人を会社の事業に関係のある者に限っているため。日本では日刊新聞法で当該株式会社の事業に関係する者に制限する旨の定款上の規定をすることを認めている。
- ↑ 高杉良氏、日経新聞を提訴 asahi.com・2006年8月14日