子会社
子会社(こがいしゃ、英:subsidiary)は、会計学・会社法の用語の一つ。財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他)を、他の企業によって支配されている企業である。
定義
定義は、形式基準が排除された。実質基準で行う。
親会社とは、他の企業の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう。以下「意思決定機関」という。)を支配している企業である。
そして「子会社」とは、当該他の企業をいう。つまり他の企業によって、意思決定機関を支配されている企業である。これを支配力基準という。なお、分類には「子会社」と「完全子会社」の2種類があるが、子会社の場合は、親会社とそれぞれ株式が独立しているため、親子上場も可能である。一方、完全子会社は、完全親会社と株式が一致している(つまり、B社がA社の完全子会社になると、B社の株式が株式交換によって、全てA社の株式に置き換わる)。そのため、企業が他の企業に完全子会社化されると、上場廃止となる。
「他の企業の意思決定機関を支配している企業」とは、次の企業をいう。
- (1) 他の企業(更生会社、破産会社その他これらに準ずる企業であって、かつ、有効な支配従属関係が存在しないと認められる企業を除く。下記 (2) 及び (3) においても同じ。)の議決権の過半数を自己の計算において所有している企業
- (2) 他の企業の議決権の 100 分の40 以上、100 分の50 以下を自己の計算において所有している企業であって、かつ、次のいずれかの要件に該当する企業
- [1] 自己の計算において所有している議決権と、自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者及び自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権とを合わせて、他の企業の議決権の過半数を占めていること
- [2] 役員若しくは使用人である者、又はこれらであった者で自己が他の企業の財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与えることができる者が、当該他の企業の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の過半数を占めていること
- [3] 他の企業の重要な財務及び営業又は事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること
- [4] 他の企業の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているもの)の総額の過半について融資(債務の保証及び担保の提供を含む。以下同じ。)を行っていること(自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係のある者が行う融資の額を合わせて資金調達額の総額の過半となる場合を含む。)
- [5] その他他の企業の意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在すること
- (3) 自己の計算において所有している議決権(当該議決権を所有していない場合を含む。)と、自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者及び自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権とを合わせて、他の企業の議決権の過半数を占めている企業であって、かつ、上記 (2) の [2] から [5] までのいずれかの要件に該当する企業
ただし、財務上又は営業上若しくは事業上の関係からみて他の企業の意思決定機関を支配していないことが明らかであると認められる企業は、この限りでない。
なお、親会社及び子会社又は子会社が、他の企業の意思決定機関を支配している場合における当該他の企業(いわゆる孫会社)も、その親会社の子会社とみなす。また上記において「企業」とは、会社及び会社に準ずる事業体をいい、会社、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。)を指す。
親子会社関係の規律
会社法において、親子会社について特に適用される主な規定には以下のものがある。
- 子会社の計算で行う利益供与の禁止(120条1項)、利益供与罪(970条)
- 子会社の親会社株式の取得禁止(135条1項)
- 子会社による親会社の株主総会での議決権行使の禁止(308条)
- 監査役の子会社取締役等との兼任禁止(335条2項)
- 親会社の監査役等の子会社調査権(381条3項など)
- 監査役は、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる(381条3項)。
- 親会社の株主等による子会社に対する会計帳簿等閲覧請求権(433条3項)
- 会計監査人設置会社の連結計算書類の作成(444条)
租税法における子会社
労働法と子会社
2007年6月25日、宮城県労働委員会は、親会社に対し、親会社の経営方針により解散した子会社の従業員で組織する労働組合との団体交渉に応じるよう命じた[1]。親会社が子会社を全面的に支配し、子会社が親会社の意思決定に反することができない構造であり、実質的な影響力などを行使していた場合には、直接の雇用関係のない親会社に使用者性と雇用責任を認めた。団体交渉とは、雇用関係がある使用者と労働組合との間で行われるものであり、直接の雇用関係のない親会社にその義務があるかが争われた。
脚注
- ↑ 住友電装・協立ハイパーツ事件(宮城県労委 平19.6.12命令)-労働判例・通巻 940・発行年月日2007年10月1日