香港上海銀行
香港上海銀行(ほんこんしゃんはいぎんこう、 The Hongkong and Shanghai Banking Corporation Limited、香港上海滙豐銀行有限公司。略称は英語でHSBC、中国語で滙豐銀行)はイギリスの金融グループHSBCホールディングス傘下の銀行である。香港に本店を置き、香港ドル発券銀行の一つである。
1991年に香港上海銀行グループの持株会社としてHSBCホールディングスがロンドンで設立された。それに伴い、香港上海銀行は、同グループのアジア太平洋における中核子会社となった。
目次
沿革
設立
1865年3月にスコットランド人のトーマス・サザーランド(en)によって、アヘン戦争後にイギリス(大英帝国)の植民地の香港で創設された。一ヵ月後にはイギリスの共同租界が置かれていた清の上海で営業を開始した。
当時は香港に本社を置き、主に在華外国企業(サッスーン洋行、ジャーディン・マセソン商会、デント商会などのアヘン貿易商社)のインドなどの他の大英帝国の植民地との間における(アヘン貿易の利益のイギリス本国への送金を含む)貿易金融を扱ったほか、通貨の発行も行っていた。
日本政府への協力
設立翌年の1866年には日本支店を横浜に設立し、その後大阪や神戸、長崎にも次々に支店を開設した。日本政府の貿易金融政策の顧問業務や造幣への協力を行った他、日本最初の近代的銀行で、東京銀行(現在の三菱東京UFJ銀行)の前身である横浜正金銀行がその体制を作る際には、香港上海銀行をそのモデルにし、香港上海銀行も多くの協力を行なった。
香港ドル発券銀行
20世紀初頭には極東地区最大の銀行となり、その後の辛亥革命後の清朝滅亡や、その後の中華民国と日本との間に勃発した日中戦争、第二次世界大戦時の日本による香港や上海、シンガポールの占領や、国共内戦後の中華人民共和国建国による上海からの撤退などの波乱の時代を経て事業を拡大した。
また、商業銀行であるが、1997年の香港のイギリスから中華人民共和国への返還、移譲に伴う1993年の香港金融管理局成立以前は、香港において中央銀行が行うべき役割も果たしてきた。なお、現在もスタンダード・チャータード銀行、中国銀行 (香港)とともに、香港ドルの発券銀行の1つとして機能している。
その後1965年には、香港で最大の華人系銀行であった恒生(ハンセン)銀行が破綻したため、その過半数株式を取得し、現在もグループ傘下に収めている。
拡大
1980年代に大掛かりな買収戦略による拡大を開始してアメリカでマリンミッドランド銀行(現:HSBC USA)を買収するなどイギリス連邦(カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど)の地域の有力銀行を次々に傘下に収め、ほぼ同時期に中南米(ブラジル、メキシコ、アルゼンチンなど)、中東(エジプト、サウジアラビア、レバノン、UAEなど)、東南アジア(タイ、マレーシア、フィリピンなど)、南アジア(インド、パキスタン、スリランカ、バングラデシュなど)、トルコなど高成長が見込まれる地域の有力現地銀行多数を傘下におさめて「ほぼ全世界」を活動地域としてカバーする世界で唯一の銀行になった(国際的に活動する銀行はスタンダード・チャータード銀行やシティバンク、バンク・オブ・アメリカなど多数あるが「ほぼ全世界」をカバーしている銀行は他に類を見ない)。
2007年現在も中華人民共和国、ベトナム、東欧各国、ロシア、中米(メキシコ・パナマなど)、南アフリカなどで拠点網を拡大、強化しつづけている。
HSBCホールディングスの設立とロンドンへの移転
こうした大掛かりな国際展開の背景には、1997年7月の中華人民共和国への香港返還、移譲があった。他のイギリス植民地資本(ジャーディン・マセソンやスワイヤー・パシフィックなど)と同様、香港上海銀行もイギリスが香港の宗主国でなくなり、中華人民共和国に返還されることを政治的リスクだと考えていた。
また、1992年のイギリス最大のミッドランド銀行(現:HSBC Bank plc)の買収にあたり、登記上の本部をイギリス本国に移転することをイギリス政府から要請されていた。そうした事情から、前年の1991年ロンドンにHSBCホールディングス(HSBC Holdings plc)を設立し、登記上の本拠地をロンドンに移動、イギリス法人となった。ロンドン本社はドックランズのカナリー・ワーフにある「HSBCタワー」(香港本部と同じくノーマン・フォスター卿の設計)である。
総資産世界最大
その後1999年にはアメリカのリパブリック・ナショナル・バンク・オブ・ニューヨーク(現:HSBC Bank USA NA)、2000年フランス商業信用銀行(CCF、現:HSBC SA)など世界各地の金融機関を積極的に買収した。この様な動きを受けて2001年にはキャッチフレーズを「The world's local bank(全世界の地元銀行)」に変更し、併せて全世界で高い人気を誇るF1のジャガー・レーシングチームのスポンサーになるなど、名実ともに全世界をカバーする展開を行いつつ、拠点数と収益を伸ばし続けている。
現在、HSBCグループは、ロンドン、香港、ニューヨーク、パリ、バミューダの証券取引所に上場する。時価総額規模では、アメリカのシティグループ、バンク・オブ・アメリカに次ぎ世界第3位(ヨーロッパでは第1位)。2006年半ばの業績発表で総資産ではシティグループを抜いて世界最大になった。 2009年11月におこったドバイ金融危機(ドバイ・ショック)でも、ドバイに最大の投資をしていたといわれている。
世界各国での営業
上記のようにヨーロッパとアジア太平洋地域、アメリカを中心に世界76ヶ国に約10,000の支店網を持ち、世界でも例のない、ほぼ全世界でリテールおよび法人向け営業を行う銀行として君臨している。
イギリス
イギリスの植民地であった香港が1997年に中華人民共和国に移譲、返還されることに先駆け、1991年にロンドンに金融持ち株会社であるHSBCホールディングスを設立しイギリス法人となった。またこれをきっかけにロンドン本社を「HSBCタワー」に移し、現在は1992年に傘下におさめたミドランド銀行のネットワークを生かし広く営業を行う。
香港
香港セントラル地区にノーマン・フォスターが設計した香港本部ビル(香港上海銀行・香港本店ビルを参照)を有し、恒生銀行を傘下に持ち約130の支店やミニ店舗を展開する香港最大の銀行である。また、1993年までは香港の中央銀行としての役目を持っていた他、現在も中国銀行 (香港)及びスタンダード・チャータード銀行とともに香港ドルを発券する発券銀行としての地位を持つ。
中華人民共和国
テンプレート:Main 清国、その後の中華民国の上海を発祥地とする香港上海銀行は第二次世界大戦前、上海のバンド地区を中国大陸の本拠としていたが、1949年の中華人民共和国政府成立後の1955年にこのビル(旧香港上海銀行上海支店ビル)を中国共産党政権に引き渡した。(このビルは現在、上海浦東発展銀行本社となっている)。その後中国大陸各地にあった支店は次々に閉鎖されたが、上海支店だけは貿易金融や国内送金などの営業を続けていた。現在はアジア本部を上海の浦東新区陸家嘴(りくかし)金融貿易区にある香港上海銀行ビルに置く。
2001年には上海銀行の株式を6%取得、2004年には中華人民共和国の中国交通銀行の株式19.9%を取得し近年では中国大陸での営業に注力している。上海、広州、北京、天津、大連、青島、蘇州、武漢、アモイ、深圳に支店、成都、重慶に代表事務所を展開する。
最近では中華人民共和国に対する見方も徐々に変化し、税金が安い香港へ本拠地を戻す可能性についても取りざたされている。ただし、香港が一国二制度を維持しているものの、中華人民共和国本土と同様に中国共産党による一党独裁体制下であるという高いリスクを背負っている現時点では将来の検討事項の一つに過ぎず、近いうちに実現するわけではない。
中華民国(台湾)
テンプレート:Main 1984年に第一号店として台北支店が開設された。その後は8店舗体制にて業務を行ってきたが、2008年3月29日に中華商業銀行を吸収合併し、同国内では44店舗となった。新体制発足後、旧中華銀行とのシステムを併用していた結果、既存の8店舗との預金取引等ができなかったが、2008年11月中旬よりシステム統廃合を完了した。尚、基隆支店等、旧中華銀行の不採算店舗の統廃合も同時に行い、現在は33店舗となっている。
日本
140年を超える歴史
日本国内では1866年に横浜で営業を開始し、大阪や神戸、長崎に次々に支店を開設した。急成長を続ける日本政府の貿易金融政策の顧問業務や、大阪造幣局における金銀通貨の造幣への協力を行うなど、国際社会へ門戸を開き始めたばかりの日本において幅広い業務を行った。また、横浜正金銀行(後の東京銀行→東京三菱銀行→三菱東京UFJ銀行)の設立にも協力している。
なお、第二次世界大戦前まで営業していた旧長崎支店は重厚な石造りの建築で有名であり、長崎に現存する洋館としては最大規模で、現在では「旧香港上海銀行長崎支店記念館」として公開されている。
事業拡大と縮小
2000年代に入り、一時は日本国内でも個人金融業務サービスの「HSBCプレミア」(金融資産1,000万円以上の顧客が対象)を提供していたが、2012年2月22日に日本国内における同サービスの事業中止を発表、さらに6月11日をもってクレディ・スイス銀行とクレディ・スイス証券にプライベートバンク事業を譲渡、日本国内での個人向けの金融業務から完全に撤退することとなった。
また地方銀行・第二地方銀行などを窓口として(直接申し込みも可能)外貨宅配サービス「Moneyport」を行っていたが、2010年までに順次提携を打ち切った上で終了し、提携していた地方銀行/第二地方銀行は、主に三井住友銀行の外貨宅配サービスに順次切り替え、埼玉りそな銀行では、系列のりそな銀行に合わせる形で、りそなコミュニケーションダイヤルを利用したトラベレックスジャパンの外貨宅配サービスに切り替えている。
最盛期の2008年には、国内の事業拠点は東京都内3ヵ所と神奈川県横浜市に支店を、大阪府大阪市北区に出張所を設置(支店から移行)した。
- 赤坂支店(港区赤坂:2008年1月31日開設)
- 広尾支店(渋谷区広尾:2008年1月31日開設)
- 横浜支店(横浜市中区:2008年4月14日開設)
- 丸の内支店(千代田区丸の内:2008年4月21日開設)
2008年に開設された銀座・池袋・神戸の支店3ヶ店が2010年10月30日の営業をもって廃止し、開設わずか2年での閉鎖となった。[1]
- 銀座支店(中央区銀座:2008年7月9日開設→2010年10月30日をもって廃止(丸の内支店へ事業継承))
- 池袋支店(豊島区東池袋:2008年10月8日開設→2010年10月30日をもって廃止(赤坂支店へ事業継承))
- 神戸支店(神戸市中央区御幸通:2008年10月24日開設→2010年10月30日をもって廃止(丸の内支店大阪新出張所へ事業継承))
現在
現在においては一般向けの銀行業務は行っておらず、投資銀行業務や法人向け業務などが中心となっている。関連会社のHSBC証券やHSBC投信なども営業を行っている。
アメリカ
アメリカにもニューヨーク市を中心に広く営業網を持つ。既に20世紀初頭には、アメリカでの貸出高は本店を含めると、全体の3割を占めており、そのシェアは年を追うごとに漸増していった。[1] 現在は、HSBCホールディングス傘下の米国HSBC銀行が業務を行っている。
関連項目
脚注
外部リンク
- 香港上海銀行のサイト(英語・中国語)
- HSBC Japanのサイト(日本語)
- 香港上海銀行・台湾公式サイト(繁体字中国語・英語)
- HSBCグループのサイト(英語版)
- Moneyportテンプレート:Bank-stub