西武10000系電車
テンプレート:鉄道車両 西武10000系電車(せいぶ10000けいでんしゃ)は、1993年(平成5年)から製造された西武鉄道の電車。
「ニューレッドアロー」(New Red Arrow略称:NRA)の愛称を持つ7両編成12本計84両の特急形車両で通商産業省グッドデザイン商品に選定された。
目次
概要
老朽化した西武鉄道初代特急車両5000系「レッドアロー」の置換え、また新宿線の土休日特急[1]での運行実績から新たに同線で運行することになった定期特急列車に使用することを目的に設計・開発が行われた。
1993年12月に新宿線特急「小江戸」で営業運転を開始。1994年(平成6年)からは池袋線系統で運用されていた5000系の置換えに投入が開始され、1995年(平成7年)までに7両編成11本計77両がすべて日立製作所笠戸事業所[2]で製造された。
2003年(平成15年)に引続き日立製作所で追加製造された10112編成は仕様が変更(詳細は後述)されたほか、営業開始以来設定されていた4号車の喫煙車(サハ10400形)も2006年(平成18年)10月1日より設定が取り消され全車禁煙となった[3]。
主要機器
製造・保守面での合理化・平準化・走行の安定化を目的に101系・新501系・5000系の機器類が流用された。
MT比は4:3とし、電動カム軸多段抵抗制御による主制御器を搭載する。
- 定格出力150kWの主電動機[4](直流直巻電動機)2両分8基を制御するMM'ユニット方式でブレーキは発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキ(HSC-D)と西武秩父線の勾配区間走行に対応するため抑速ブレーキを採用する。
台車は住友金属工業製空気バネ台車で軸箱支持方式をFS372系のペデスタル式から緩衝ゴム式に改造したFS542(電動台車)・FS042(付随台車)[5]が採用された。
静止形インバータ 補助電源装置(SIV) ・低騒音形交流電動機駆動空気圧縮機(CP)を採用し、屋根上には冷凍能力36,000kcal/hの集中式冷房装置を搭載する。
外観
軽量形鋼を多用した20m級全鋼製車体で「ゆとりとやすらぎの空間」をコンセプトに5000系と同じ裾絞り車体が採用された。
塗装はグレー系3色をベースとし、客室窓下部に「レッドアロー」の愛称を表現した赤色の帯を配する。
側面窓はシートピッチに合わせた広幅固定窓とし、客用扉は5000系での折戸に対し本系列では引戸を採用。クハ10100形と中間車では片側2か所、クハ10700形では片側1か所配置とした。両先頭車の車体後部には「NRA」ロゴが配された。
運転台は高運転台構造を採用。前照灯はシールドビームを採用するが、10101編成は試験的にHIDランプの搭載実績がある。
内装
座席はグレー系の濃淡色モケットを用い、枕部分に盛り上がった独特な形状のフリーストップ式リクライニングシートを横2+2列の4アブレストで配置。背面にはテーブル、座席下にはバー式のフットレストを設置する。シートピッチは5000系の930mmから1,070mmに拡大された。
清涼飲料水自動販売機・テレホンカード式公衆電話・トイレは両端制御車デッキ部に設置されるが、以下の仕様となる。
またクハ10100形には車椅子利用を考慮して対応座席と客用扉・デッキ客室間仕切扉を他車両より広く取るなどの差異がある。
客用扉は「全車」「1・3・5・7号車」「1・7号車」とする3種類の開閉方法を選択可能である。
10112編成の設計変更
10112編成では以下の設計変更が行われた。
- 制御装置を20000系に準じたIGBT素子によるVVVFインバータ制御へ変更。
- 制動システムも発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキから回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキに変更、抑速ブレーキは未装備。
- パンタグラフを菱形3基搭載からシングルアーム2基搭載に変更しモハ10600形が未搭載となった
- 台車は廃車発生品のFS-372(電動台車)・FS-072(付随台車)を流用
- 主電動機を20000系と同じ出力135kWのかご形三相誘導電動機に変更しメンテナンス軽減が図られ客室内の主電動機点検蓋(トラップドア)を省略
- 窓ガラスを若干緑色を帯びた熱線吸収ガラスに変更
- 座席は形状とカラーをグレー系から濃いブルー系に変更しドリンクホルダーを装備
- 行先表示器を字幕式からLED式に変更
更新工事
2003年(平成15年)度から2008年度(平成20年)にかけて内装を10112編成に合わせた以下の更新工事が施工された。
- 座席の交換[11]
- 交換された旧座席は伊豆急行8000系電車や秩父鉄道6000系電車[12]に再利用されたほかイベントでの一般向け販売も行われた
- 喫煙車両であるサハ10400形への大型換気装置設置[13]
- 出入り台付近の内装材を取り替え
- 1号車車椅子対応洋式トイレのボタン操作式自動開閉化・トイレ前のスペース拡幅
- ドアチャイム設置[14]
- パンタグラフをシングルアーム式へ換装[15]
- カーテンを従来の巻き上げ式から横引き式へ変更
6000系で施工されたモニタ装置のディスプレイ換装や2008年に一般車両の多くで実施された行先表示器字幕交換は未施工。 テンプレート:-
ラッピング車両
「☆(ほし)のある町 秩父 長瀞」号 - 10107編成
- 先頭車にヘッドマークシール・車両の側面に緑色ライン・ドア横に長瀞の観光地を紹介したイメージ画像で2011年(平成23年)7月19日より運転開始
レッドアロークラシック - 10105編成
- 初代レッドアロー5000系のクリーム色を地色に窓下に赤帯を配し、先頭車前面窓下にステンレス製飾り板を模した車体塗装再現ラッピング
運用
定期列車
臨時列車
ドーム
スタジアムエクスプレス[20]
- 途中停車駅は所沢。試合開始時間に合わせて3パターンのダイヤが組まれているが、運行は1往復。
ローズエクスプレス
西武電車フェスタ
- 2003年 - 2010年、毎年6月に武蔵丘車両検修場で「西武電車フェスタ・検修場まつり」が開催される際に池袋から運行。
拝島線臨時特急
- 西武鉄道創立100周年を記念して2011年12月12日 - 18日と2012年8月24日 - 30日.12月10-16日.2013年12月12.13.19.20日に拝島線直通臨時特急を西武新宿→拝島で下りのみ1日1本運転[23]。
団体専用列車
小さな旅
『水樹奈々 スマイル・ギャング』(文化放送制作)リスナー向け団体専用列車
メイドトレイン[24]
- 2010年12月11日に池袋 - 西武秩父間を往復するツアーチケットを発売して運行された団体専用列車。車内をメイド喫茶に見立てた。
- 企画・運営はひたちなか海浜鉄道と鹿島臨海鉄道でも同様な形態の列車を運行したBSビジュアル。
- 車内ではメイドによる車内販売・ドリンクサービスや車内放送、目的地の秩父ではミニ撮影会やビンゴゲーム大会などが実施された。
- 2012年1月14日にもBSビジュアルが企画し近畿日本ツーリスト主催で、池袋 - 西武秩父間を前述のレッドアロークラシックで往復運行[25]。
過去に運転された列車
おくちちぶ
- 1993年から当初は5000系で池袋 - 西武秩父間で休日のみ運転された列車[26]。後に本系列を使用して運転を引き継いでいるが、2005年3月12日のダイヤ改正で廃止された。「ちちぶ」との差異は停車駅のみである。
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凡例
備考
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MISATO TRAIN
- 渡辺美里の西武ライオンズ球場でのコンサート開催時に、1995年に5000系から引き継ぎ運行されていた臨時列車。毎年特製ヘッドマークが制作・掲出されたが、2001年 - 2003年のみ表示は「臨時」。渡辺美里が特別車掌を担当した年次もあったが2005年を最後に渡辺美里が「西武球場ライブ」を終了したために運転も終了。
KIRINドーム
- 現行の「ドーム」登場前の1999年8月29日に1日限定・往路のみ池袋 → 西武球場前間をノンストップで運転した臨時列車。
- 西武ライオンズ球団創設20年記念のイベント列車で西武観光での応募制企画旅行であったため通常の運賃設定と異なり当日の福岡ダイエーホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)戦1塁側内野指定席B券に往復乗車券運賃・往路の特急料金+保険代・諸税が含まれ大人3,200円・小人2,900円の代金とした[27]。
- 専用の特製ヘッドマークを掲出し、車内では西武ライオンズのマスコットキャラクター「レオ」と「ライナ」の乗車、ライオンズ選手からのメッセージを放送、協賛の麒麟麦酒より無料で生ビール・ソフトドリンクが提供されたほか、乗車した全員にライオンズ選手カードのプレゼント(非売品)、抽選で選手の直筆サイン色紙・サインボールのプレゼントのイベントが行われた。
ALFEE EXPRESS
- 2002年8月24日・25日に西武ドームで開催されたTHE ALFEEのコンサート『Legend Of The Stadium V Silver legend/Gold Legend』開場時間前までに下り2本のみ池袋→西武球場前間で運行された臨時列車。
- ステッカーによる特製ヘッドマークを掲出。
- 事前募集によって購入した乗客のみ乗車することが可能。
- 車内ではTHE ALFEEメンバーの録音テープによるアナウンスを放送。
NHK連続テレビ小説『つばさ』ラッピング車両就役記念臨時列車
- 2009年3月20日に前述のラッピング編成の運行開始による西武新宿駅での出発式の後、本川越まで下り1本のみ運行。
お召し列車
2007年3月28日に天皇・皇后と来日中のスウェーデン国王・王妃一行が、埼玉県川越市を視察するために西武新宿 - 本川越間を往復でお召し列車が運転された。
- いずれの編成も種別・行先表示器は「臨時」表示、カーテンは全て閉められた状態。
臨時停車駅
池袋線系統
編成
テンプレート:TrainDirection テンプレート:TrainDirection | |||||||
号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
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形式 | クハ10100 | モハ10200 | モハ10300 | サハ10400 | モハ10500 | モハ10600 | クハ10700 |
車両番号 | 10101 10102 10103 10104 10105 10106 10107 10108 10109 10110 10111 10112 |
10201 10202 10203 10204 10205 10206 10207 10208 10209 10210 10211 10212 |
10301 10302 10303 10304 10305 10306 10307 10308 10309 10310 10311 10312 |
10401 10402 10403 10404 10405 10406 10407 10408 10409 10410 10411 10412 |
10501 10502 10503 10504 10505 10506 10507 10508 10509 10510 10511 10512 |
10601 10602 10603 10604 10605 10606 10607 10608 10609 10610 10611 10612 |
10701 10702 10703 10704 10705 10706 10707 10708 10709 10710 10711 10712 |
※ 西武池袋線飯能駅で方向転換をするため、このようになっている。
- 電動車搭載機器
- モハ10200形・モハ10500形:主制御器・パンタグラフ
- モハ10600形:SIV・CP・パンタグラフ(モハ10612を除く)
配置
基本となる配置を記す。
小手指車両基地配置編成(池袋線・西武秩父線系統運用)
- 10102・10103・10105・10107・10109・10110・10111
南入曽車両基地配置編成(新宿線系統運用)
- 10101・10104・10106・10108・10112
上記配置は交友社『鉄道ファン』2011年9月号(通巻605号)付録「大手私鉄車両ファイル」によるものであるが、その後以下の車両転配が確認されている。
- 2011年4月:10112編成と10104編成を転配。
- 2011年6月:10102編成と10105編成を転配。
検査時は相互に車両が貸し出されることがある。秩父夜祭開催時の臨時特急運行時は、小手指所属の全編成の他に南入曽所属の予備1編成を合わせた8編成を活用して運用するテンプレート:要検証。
脚注
テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist テンプレート:-
外部リンク
- 10000系 ニューレッドアロー - 西武鉄道公式サイト
- ↑ 西武新宿 - 西武秩父間の「おくちちぶ」および西武新宿 - 本川越間の「むさし」。
- ↑ 5000系以来の発注となったが後に通勤形電車の発注も行った。
- ↑ 全面禁煙化実施時に脱臭作業を行ったが、編成で唯一の喫煙車だったこともあり内装未更新車はタバコのヤニで座席や内装が黄色く変色していた。
- ↑ 日立製作所製HS-836-Nrb・Prbもしくは東洋電機製造製TDK-8010-A。
- ↑ 2000系で試用ののち、乗り心地の改善が認められたため本格採用に至った。
- ↑ 5000系6両編成は定員400人(1・6号車56人・2 - 5号車72人)。10000系7両編成は定員406人(1号車38人・2 - 6号車64人・7号車48人)。
- ↑ 自動放送に起用されている声優は石毛美奈子(日本語)とクリステル・チアリ(英語)で、6000系などの通勤形電車でも採用。
- ↑ JR東日本E351系電車などのような座席1列ごとではなく、国鉄キハ181系気動車のように2列分まとめて上げ下げする構造。
- ↑ 事実上池袋線飯能 - 西武秩父線西武秩父間となる。
- ↑ 『鉄道ダイヤ情報』2011年10月号、交通新聞社
- ↑ JR東日本E257系電車普通車と類似した形状の座席だが、座面のスライド機構はない。
- ↑ シートピッチの関係から回転せず固定して設置。なお伊豆急行8000系では海側の車端部以外のみの配置とした。
- ↑ 2006年10月1日から全車両禁煙となったため、これ以降に施工のサハ10400形には未施工。
- ↑ ドアが開いているとき約3秒おきに「ポーン」とチャイムが鳴動するが、これは視覚障害者にドアの位置を知らせるもので同様のものが2000系の更新車の一部とリニューアル車、新101系の更新車(ワンマン仕様)などに設置されている。
- ↑ 10102編成から順次施工。10101編成は更新工事時には未施工であったが、後の検査時に換装。未更新車の10107編成・10111編成も検査時に換装。
- ↑ 「レッドアロークラシック」運転開始 - 交友社『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース 2011年11月28日
- ↑ テンプレート:PDFlink 西武鉄道ニュースリリース 2011年10月27日
- ↑ "レッドアロークラシック"報道公開。 - 鉄道ホビダス「編集長啓白」 2011年12月14日
- ↑ 実際の運転開始は3月24日。
- ↑ テンプレート:PDFlinkテンプレート:リンク切れ - 西武鉄道ニュースリリース
- ↑ 池袋 - 練馬間・練馬 - 所沢間のみの利用は不可.ただし所沢駅の上り券売機には練馬の口座が入っている。
- ↑ 方向転換のための停車なので運転停車扱い。
- ↑ テンプレート:PDFlink - 西武鉄道ニュースリリース 2011年11月27日
- ↑ テンプレート:PDFlink - 西武鉄道ニュースリリース 2010年11月4日
- ↑ メイドトレイン運行のご案内 - メイドトレイン公式サイト 2011年12月15日(2011年12月19日閲覧)
- ↑ 1976年 - 1993年までは、休日のみ西武新宿 - 西武秩父間で運転されていた列車。停車駅は高田馬場・所沢・飯能・芦ヶ久保。
- ↑ 通常ならば大人4,070円となる。
- ↑ 10108編成は3月20日付けで更新工事を終了し武蔵丘車両検修場を出場した。同編成はそのまま田無 - 小平 - 小川 - 東村山間のデルタ線で方向転換を行い南入曽車両基地に回送。訓練運転を行った上で当日のお召し運用に充当された。編成の方向転換の理由については不明。なお同編成はお召し運用翌日の同月29日に再度方向転換が行われ正規の向きに戻され、小手指車両基地に回送。翌30日から池袋線・西武秩父線での運用に復帰している。