激突!
テンプレート:Infobox Film 『激突!』(げきとつ、原題:Duel)は、リチャード・マシスンの短編小説を映像化した、1971年製作のアメリカ合衆国のテレビ映画。ユニバーサル社提供。スティーブン・スピルバーグ監督。日本での公開は1973年1月。
運転中に追い抜いたトレーラーから執拗に追跡されるセールスマンの恐怖を描く。1973年に第1回アボリアッツ・ファンタスティック映画祭グランプリを受賞した。
あらすじ
平凡なセールスマンであるデイヴィッド・マン(デニス・ウィーバー)は、借金取り立てのため車でカリフォルニアへ向かう途中、ハイウェイにて道を阻んだ大型トレーラータンクローリーに腹を立て、強引に追い抜く。するとその直後から、大型トレーラーはマンの命を執拗につけ狙ってきた。
日本語版吹き替え
- テレビ朝日版制作スタッフ
- 演出:左近允洋
- 翻訳:進藤光太
- 調整:栗林秀年
- 製作:グロービジョン
※ユニバーサル思い出の復刻版DVDには新録版とテレビ版の両方の吹替を収録。
- 徳光和夫版
- 徳光和夫版製作スタッフ
- 演出:左近允洋
- 翻訳:進藤光太
- 調整:飯塚秀保
- 効果:PAG
- 担当:吉田啓介(グロービジョン)
- 制作進行:古川典子
- 制作補:垂水保貴(日本テレビ)
- 制作:奥田誠治(日本テレビ)
- 日本語版制作:日本テレビ/グロービジョン
作品解説
無名時代のスティーブン・スピルバーグが演出し、その名前はこの作品の成功によって業界内に知れ渡った。劇中で、主人公の車や、電話ボックスのガラスにスピルバーグの姿が映っていたことでも知られる。
劇中に登場するトレーラーの運転手は、各州で同じ手口でドライバーを狙う殺人トラック運転手という設定がある。トラックのフロントバンパーに付けてある各州数枚のナンバープレートは犯行時に自分が付けていた州ごとのナンバーであり、犯行の証である[1]。
もともとテレビ放映用に製作された作品だが、日本やヨーロッパでは劇場公開された。上映時間はテレビ版が74分、ヨーロッパで劇場公開された版は90分。劇場版ではデニス・ウィーバーのナレーションが無い。発売されているビデオは劇場版+ナレーション付きのものである。
演出
作品中では一貫して大型トレーラーの運転手(スタントマンのキャリー・ロフティン)の姿を映さず、これによりまるで大型トレーラー自体が追ってくるような効果を演出している。運転手が顔を見せず執拗に主人公を追いかけるタンクローリーを、監督は「怪獣のように考えた」と語る。その描写は『ジョーズ』のホホジロザメに引き継がれていく。ラストで車が崖から墜落するシーンとジョーズが死ぬシーンでは、効果音として同じ恐竜の鳴き声が使用されている。
劇中、立ち寄った飲食店にて主人公がトレーラーの運転手を「誰だ? 誰だ?」と探しまわるシーンには、黒澤明監督の『野良犬』のラストシーンがそのまま引用されている。
撮影
撮影期間が16日、編集作業から放送まで3週間程度しか確保出来なかったため、絵コンテを用いず、大きな地図に撮影ポイントなどを書き込んだものを使って撮影が進められた。早撮りで知られるスピルバーグであるが、自身「最も慌しい映画作りだった」と語っている。撮影現場はカリフォルニア州の砂漠で、Canyon Country、Agua Dulce、Actonのシエラ ハイウェーやエンジェルス フォレスト ハイウェーで行われた。トンネル、踏切、カフェは実在する。
車
撮影に使用された赤色の乗用車は、米クライスラー製の「プリムス・ヴァリアント」(1967-76年生産、劇中のモデルはグリル形状、エンジン音から70-71年式の直列6気筒3.2もしくは3.7リッターエンジン搭載車で出力140馬力、最高速度150km/h程度)というごく普通のコンパクトカー。ベース車両はこげ茶色だったが、撮影のため新車設定にはない赤色に再塗装されている。(本来、メッキパーツであるエンブレムも赤い事から、マスキングせずに赤色に塗装した事が伺える。)
トレーラーは「ピータービルト281」。タイヤはブリヂストン製。映画の本編ではエンブレムが取り外されていた。トラブル時のバックアップ用として複数台が用意されていた模様で、2013年現在、現存している車両もある。テレビで公開された後の劇場用追加撮影でバックアップ用の車両が使われた。
原作との相違点
原作ではトレーラー運転手の苗字が「ケラー」となっており、運転台のドアに書かれたその苗字を、主人公マンがキラー(人殺し)と一瞬誤読して動揺する描写がある[2]。また、マンがトレーラー運転手の顔をはっきり見ているのも映画との相違点である。「角ばった顔、黒い目、黒い髪の毛」と、描写されている[3]。
その他、飲食店でマンが間違った相手につかみかかるくだりや、スクールバスのくだり、踏切で押し出されて走行中の列車に殺されそうになるくだり、老夫婦に助けを求めるくだりなども映画のオリジナルである。
ソフト
DVDが発売される以前の本作のソフトは、1990年代にニューマスター版レーザーディスク(ナレーション無しの90分版。日本では発売されず)の登場まで画面と音が合っていないなどの問題点があった。DVD版では効果音が一新・修正され、サウンドもドルビーとDTSの5.1chで収録された。なお、劇場公開時は画面サイズがシネマスコープのワイドにトリミングされていたが、現在発売されているソフトはTVサイズで収録されている。
影響
本作のカーチェイスシーンは、ビル・ビクスビー主演のTVシリーズ『超人ハルク』の1エピソードに丸々流用されている。更に、本作品のパターンは後に、『ブレーキ・ダウン』や『ノーウェイ・アップ』等に引き継がれていく。
その他
- 主人公が警察に通報しようと、途中で立ち寄るガソリンスタンドの女店主役の女性は、スピルバーグの「1941」でも同じ役で出演している。
- 主人公が通りすがりの老夫婦が乗った車に助けを求めるシーンで、老夫婦役で出演している二人の役者はスピルバーグの「未知との遭遇」でも夫婦役で出演している。