早稲田大学社会科学部

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社会科学部(しゃかいかがくぶ、School of Social Sciences)は、政治学・法学・経済学・経営学・会計学、近現代史・言語文化・地域研究・国際関係・社会学など、「社会諸科学」の相関性を重視する立場から、学際的な学びを志向する社会科学の総合学部。― 社会科学総合学術院 《校舎全景》

現状

早稲田大学社会科学部は、「志願倍率」・「実質倍率」ともに、後期日程・医学部など定員枠が小規模の場合を除き、一般入試 (AO・推薦を含まない)において、国内で最も高く、実質倍率は9,8倍 (2012年度入試))と、競争率が国内で最も高い。

18歳人口の減少により約4割の志願者減があるものの、安定した受験生に恵まれ、この20年間の受験料収入は一般方式のみで、およそ100億円。 単純計算すると、新校舎の建設費を、建て替え工事以降の受験料収入が、既に上回っており、安定した受験料収入による大学財政への貢献も大きい。

センター利用方式では、英語:250点満点を125点満点へ圧縮、国語:200点満点を100点満点に圧縮、換算し、数学理科社会とあわせ、圧縮配点による換算後の625点満点で合否判定を行う。 合格の可能性が50%に達するためには、9割超の得点が必要で、センター3~4教科で受験が可能な大学(「英,国,数,理,社 の5教科」未満での受験が可能な大学)を除き、最難関となる学部(ボーダーラインが最も高い)のひとつ。 入試難易度(河合塾)

カリキュラム

現代は、急速な環境変化の波により、社会システムの各要素・諸制度が相互補完と連携を強めているため、社会が抱える「問題群」は複雑・多様なものとなっている。このため、既存のアプローチのみでは「問題解決」に至ることが保証されない場面が現れていることを踏まえ、複雑に絡み合った「課題群」を整理し、理解から解決に至るため、個別専門分野を超えた視野から、多様な専門知の知見を活用し、結び付ける専門横断的な能力を身につけることを目指している。

4年間の学修においては、伝統的な社会科学の各専門が築き上げてきた知的蓄積を尊重しながら、専門の枠組みに囚われない柔軟な学びを実現するため、各専門領域の間に履修上の障壁を設けず、社会科学部・社会科学科 (1学部・1学科)の柔軟な組織とし、シームレスな専門横断的学びを可能としている。このため、学生は、主体的に自身の「カリキュラム」をデザインすることが可能であり、同時に、学生各自にはそのことが求められる。

グローバル化時代への対応

語学の教員を除いて、早稲田大学で初めて外部から、外国人の研究者を専任教員として迎えた学部であり、「知のボーダーレス」時代へ向けた「学際化」と並び、「国際化」を学部のもうひとつの柱として重視してきた。中国人の教授が「中国研究」を講じ、ベトナム人の教授が「国際貿易論」を講ずるといった環境のもと、『グローバルな視野を持つ学生』の育成を理念に掲げる。最大の母集団を抱える全統模試の分類においても「社会・国際学系統」と、「国際学系統」の学部として分類される [1]

外国人留学生の受入の一方で、社会科学部の在学生が、協定を結んでいる「海外300大学」に留学する場合、留学先の大学で取得した単位を、帰国後、社会科学部の卒業必要単位として算入することが可能となっている。

Global 30 ― 現代日本学プログラム

文部科学省が、『留学生と切磋琢磨する環境の中で、国際的に活躍できる高度な人材の養成を図ること』を目的に実施している「国際化拠点整備事業(グローバル30)」の採択拠点の内のひとつであり、「秋入学(9月入学)」の実施と、「英語」により行われる授業のみで卒業に必要な124単位すべての取得が可能なカリキュラムとなっている。

社会科学部におけるこれまでの留学生受け入れでの経験と、「英語」による専門科目の授業実践等を踏まえ、日本学術振興会による「国際化拠点整備事業(グローバル30)」の採択により、英語による授業の設置が進む。これらのクラスは、日本人の学生(TOEFL70以上)にも開放され、海外からの外国人留学生と日本人学生の「共学環境」が整備されている。[2]


単一の学部内において、国際関係・政治・法律・経済・経営管理・技術発展、社会問題・都市計画・環境・比較文化・異文化間コミュニケーション・国際交流まで、「世界と日本」を取り巻く多様な課題群に対応する授業が、英語を通じて提供され、これまでは「日本語」という障壁ゆえに、日本語話者以外には困難であった領域の学びについて、その学修機会を創出する。

これまでの日本研究が、高名な「梅原日本学」に代表されるように、近代以前の日本を対象とし、人文知による日本理解がおもであったことを踏まえ、「Global30 ― 現代日本学プログラム」では、その対象をとりわけ「戦後日本」の歩みとし、人文学を含む、おもに「社会科学的側面」からのアプローチによる「日本理解」を目指す。とくに、諸外国との『比較研究』に重きが置かれるのが特徴で、「アジアの中の日本」、「世界の中の日本」という視座に立ち、「日本研究」を媒介に、アジア新興国家群や、西洋諸国家へのより深い理解をも目指している。

具体的には、経済・経営・政治・社会など、各分野で「日本モデル」とされてきたものの内実について、あらためて検証を行うことを通じて、日本の「成功」と、その「行き詰まり」を整理、「日本の近代化の過程」を手掛かりに、日本や他のアジアの国々の「近代化の過程」を、西洋のそれと比較・対照することによって、新興国をはじめとする海外からの留学生に魅力のある、世界にとって(とりわけ新興国)にとって有用な教訓・知的財産となりうる「日本研究」を築くことを目標とする。

特に、西洋近代に由来する社会科学の分析枠組や、「西洋モデルの近代化」が、日本を含むアジア、新興国において、どう受容され、どの様に変容していったのか、それらの過程の比較分析を通じて、「西洋モデル」、「日本モデル」、「新興国モデル」の異同について、幅広い分野において『比較研究:Comparative research』に取組む教員が数多く在籍する学部の利を活かした、知的共同空間の創造を目指している。 さらに、近代化を達成した各国社会にとって、「共通の課題」となっている「少子高齢化・次世代育成」、「都市再活性化」などについて、分析と課題解決を志向する「世界に貢献する日本学」、『開かれた日本研究』を掲げている。[3] [4]

グローバル30」にあわせ、中国で生まれ育ち、ハワイ大学シカゴ大学で修士課程を、ハーバード大学で博士課程を修め博士号を取得した、国際関係史の著名な若手研究者である楊大慶(Daqing Yang)ジョージ・ワシントン大学Elliott School of International Affairs 准教授 (Ph.D., Harvard University)を、アメリカから迎えている。このように国境を越え・ボーダレスに活躍する研究者を教授陣に加え、教育内容の更なる充実を図っている。

入学者選抜

入学者選抜は、Standardized testsの成績と、TOEFL・IELTS(アイエルツ)等の英語運用能力を証明するスコア、留学にかかる経費負担の計画書など、書類による審査を通過した者を対象に、「英語」での面接試験(必要に応じて、面接試験の会場において、英文エッセー作成等の筆記試験が併用される)によって行われるため、渡航前の日本語習得を一切前提としない(但し、入学後のカリキュラムにおいては日本語を、日本理解に不可欠な手立てと位置付け、その習得を目指す)。

面接試験は、東京のほか、シンガポール/タイ・バンコク/ベトナム・ハノイ北京/中国・上海/台湾・台北ソウル/アメリカ・オレゴン/ドイツ・ボンの「世界10都市」での受験が可能。これは、Videoconferencing(テレビ会議システム)を利用し、「世界10都市 ― 東京早稲田」をリアルタイムで接続して、試験が実施されることによる。

教育・研究の特徴

開設科目は、「社会科学総合学部」としての特徴を反映し、【政治・法律・経済・経営・会計 】 から、【国際,環境,都市,社会,近現代史,言語文化,情報,コミュニケーション 】 といったキーワードに沿った各科目に加え、地域研究、国際関係論・平和学環境政策マーケティングメディア・スタディーズ といった「学際複合領域」の科目まで多岐にわたり、学生の多様な興味関心と、社会環境の変化に対応するべく科目設置が行われている。


さらに、教職に必要な科目を履修することにより、高等学校教諭・一種免許状(地理歴史公民 (教科)商業 (教科)情報 (教科))、中学校教諭・一種免許状(社会 (教科))の資格取得が可能。

1994年度入学者以降のカリキュラムについては、「社会諸科学の幅広い総合」を目指すと同時に、社会科学の「専門性」と「相関性」への主体的な理解、とくに国際的な視野の涵養を目指したカリキュラムが編まれるよう、高い頻度でカリキュラム・設置科目の見直しが行われている。[5]

これは、1992年~1994年にかけて学部長職を担った岡澤憲芙学部長により、21世紀を見据えたビジョンの明確化、学際性追究のための国際性、すなわち「国際性と、学際性:Interdisciplinarity 」という二本の柱("International and Interdisciplinary")が学部理念として明確に掲げられたことによる。比較政治学者である岡澤学部長は『心に地球儀を持った学生』という、「学部が求める学生像」の再定義を行い、「グローバルな視野を具え、多様性に対応できる学生を育成する」という新たな学部理念のもと、1994年度の入学試験問題から学部カリキュラムに至るまで、大胆な刷新を行い、同時に、「国際化」と「情報化」という次世代の環境変化を見据え、教授陣の充実、校舎の建て替えという、大規模な投資が行われた。

「『グローバルな視野(Global Perspectives)』を具えた学際性」という学部理念のもと、1994年度の新カリキュラム実施に合わせたこの前後の時期、新たな学部理念を担う多様なバックグラウンドを有する教員たちが教授陣に加わった。 とくに「地域研究:Area studies」と、様々な領域において国境を越えた「比較研究:Comparative research」に取組む研究者が多く着任し、ダイバーシティーという観点からも、女性の研究者、外国人の研究者、とりわけ外部(早稲田大学以外)からの研究者の占める割合が高まったことにより、新たな学部理念を体現する多様性の高い体制がこの時期に築かれることとなった。

校舎・設備の特徴

キャンパス内で最初に、情報化時代に対応した新校舎への建て替えが行われ、最新鋭の設備に恵まれる。 校舎は中央図書館ほど近くに立地、校舎入口は、東西南北の門を結んだ線が交差する、キャンパス中心に向かって、設けられている。 【画像:キャンパスの内の案内図】

正面外観にガラス面を採用、高い天井と、中心に大きな「光庭(Light Court)」を設けた校舎は、耐震性と、各階・教室に自然光が注ぐ採光性との両立を図る、明るく開放性を重視した設計思想により、「グローバルな視野(Global Perspective)を具えた学際性」という学部理念を象徴する明るく特徴的なデザインとなっている。 校舎内の教室群には、最新の設備が備え付けられ、各種視聴覚資料を活用した講義や、ワークショップ形式の授業など多様な授業実践にも対応した。 【画像:教室の様子】 【画像:情報化に対応した教室】

社会科学総合学術院校舎前には、広い「憩いのスペース」が設けられ、昼休みなど多くの学生で賑わっている。校舎1階、生協には、お弁当類・デザート・文房具・雑貨のほか、毎日14時頃にかけて焼きたてのパンが並ぶ「やきたてパンコーナー」が置かれている。 【画像:校舎1階生協】 【画像:焼きたてパンコーナー】 【画像:校舎前の憩いのスペース】

広い校舎内での円滑な移動を可能にするため、エレベーター (図面右上と、左下)のほか、学内初となるエスカレーター (図面右下)の設置がおこなわれた校舎でもある【図面:フロア・マップ】。晴天時には上層階から、東京スカイツリーのほか、遠く富士山を望むことも出来る。 【画像:社会科学総学術院校舎 最上階からの眺望】

著名な来校者

設備に恵まれるため、教室が「国際シンポジウム」や講演会の会場となることも多く、29歳で文部大臣に就任、「世界一の学力」と評されたフィンランドの教育政策および情報化時代への政策転換を担ったオッリペッカ・ヘイノネン 運輸・通信大臣(当時)や、Albert Carnesale ハーバード大学ケネディスクール 元学院長/UCLA (University of California, Los Angeles) 総長(1997-2006年)などが来校時に教室で講演を行っている。 【画像:教室内1】 【画像:教室内2】

とくに、700席を超えるキャパシティーを有する201教室は、ジョージ・H・W・ブッシュ 第41代アメリカ合衆国大統領コリン・パウエル 第65代国務長官、第12代統合参謀本部議長ヨシュカ・フィッシャー 元 ドイツ副首相(兼外務大臣)・元 緑の党党首、中村修二 カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授など、海外の著名政治家、世界の第一線で活躍する知識人を招いた講演会、著名経済人が出席する「ビジネスフォーラム」の会場、さらに、早稲田大学で初めて実施された秋入学式の式場となったほか、キャリアガイダンス、留学ガイダンス、映画上映の会場など、200インチ大型スクリーンと、広い教壇(ステージ)を活用した、さまざまな機会を提供するモニュメンタルな空間となっている。 【画像:201教室 壇上】 【画像:700人超を収容できる201教室全景】

在籍する専任教員(抜粋)

文理融合時代に相応しく、所属する専任教授の15%は、理学工学農学の「自然科学」系出身者が占め、環境経済学金融工学経営工学情報システム科学社会工学まちづくり(都市工学)、バイオインフォマティクス(生命科学)などの研究を行っている。

諸科学のあいだの相関性を重視する学部の立場から、在籍する教員は以下の様に、各専門領域での研究に加え、学際複合領域で研究を行う教員も多く、人文・社会科学から自然科学まで広い領域にまたがる。


過去に在籍した専任教員

予備校の進学資料内での取り扱い

最大の母集団を抱える全国統一模擬試験を実施する河合塾の進学資料や偏差値表においても社会科学部は、「社会・国際学系」の学部として分類される。―全統模試での学部系統分類

脚注

テンプレート:Reflist

テンプレート:学校法人早稲田大学

  1. 全統模試による学部学科系統分類偏差値表
  2. 「English-based Degree Program (英語学位プログラム) 科目一覧」
  3. 『学部案内ビデオ (グローバル30 ― 英語学位プログラム)  【 flv 動画 33.2MB :10分24秒 】
  4. 教員による、学部カリキュラムの説明 《動画》 (2010年収録) Information for International Students(Duration : 9min 29sec)
  5. テンプレート:Cite web