プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメント(プロジェクト管理、テンプレート:Lang-en)とはプロジェクトを成功裏に完了させることを目指して行われる活動のことである。これにはプロジェクトを構成する各活動の計画立案、日程表の作成、および進捗管理が含まれる。
システム開発を成功させるためには、プロジェクトを適切に管理することが求められる。
目次
プロジェクトとは
- プロジェクトの定義
- NASAは「相互に関連するタスクから構成され、多くの組織が参画して実施される3年以下程度の期間の活動」と定義する。またプロジェクトマネジメント協会は「独自の成果物、またはサービスを創出するための期限のある活動」としている。ここでタスクとは「ひとつの組織、グループ、個人が実行する短期的な活動」を意味する。
- プロジェクトの特徴
- プロジェクト活動には以下の特徴がある
- 明確に定義された目標
- 必ず開始時点と終了時点がある
- 永続的でない一時的な組織が担当する
- 1人のリーダ(プロジェクトマネージャ)と複数のメンバーから構成される
- 目的達成のための予算が与えられる
- いくつかの工程から成り立つ
- ライフサイクルの各段階で必要資源が変化する
- 予期できない事態が発生することがある
- 後工程ほど変更・修正の困難度が増す
- プロジェクトマネジメント活動が成功する条件
- 期限内に
- 予算金額内で
- 期待レベルの技術成果の元
- 割り当て資源を有効活用して
- 顧客が満足する状態で完了する
プロジェクトマネジメントに含まれる活動
- 企画
- リスク測定
- 利用できる資源の見積り
- 作業の系統化 WBS(Work Breakdown Structure)の作成
- 必要な人的・物的資源の確保
- 費用の見積
- チームメンバーへの作業の割り振り
- 進捗管理
- 目的に沿った結果が出るように作業の方向性を維持する
- 達成した結果の分析
プロセス群
プロジェクトマネジメントでは計画(Plan)、実行(Do)、チェック(Check)、是正(Act)という管理サイクル(PDCAサイクル)が常に稼動している必要がある。また開始時には立ち上げプロセスが、終了時には報告書をまとめるプロセスが必要になる。
- 立上げプロセス
- プロジェクト存在の認識
- プロジェクトが達成すべき事柄の認識
- ゴールの設定
- 利害関係者の期待の明確化
- プロジェクトスコープの明確化
- プロジェクトメンバーの選定
- 計画プロセス
- バランスを考慮したプロジェクトスコープの詳細化
- 作業のリストアップ
- 作業の順序付け
- スケジューリングと予算
- 利害関係者からの承認の獲得
- 実行プロセス
- チームの統率
- メンバーとの面接
- 利害関係者とのコミュニケーション
- 問題を解決する闘争心
- 必要な資源(カネ、ヒト、モノ、時間等)の確保
- 監視・コントロール・プロセス
- チェックと是正をまとめて監視プロセスと言われる
- 計画のずれを把握
- 計画の修正活動
- 利害関係者からの変化項目の受理と評価
- 必要に応じたスケジュール変更
- 必要に応じた資源量の変更調整
- 終結プロセス
- プロジェクト実施結果と成果物の確認
- 作業の終了とチームの解散
- プロジェクト経験から得た教訓のまとめ
- プロジェクトプロセスの結果の反省
- 最終報告書の作成
プロジェクトマネジメントの目的
プロジェクトマネジメントの概念が確立する以前は、プロジェクトの運行はベテラン社員の独自の勘など属人的な要素に頼る部分が大きかった。体系だったプロジェクトマネジメントの手法を使用することで技術の伝達や標準化が可能になり、プロジェクトの成果が高まることが期待されている。ガントチャート等を含むプロジェクトマネジメント製品を利用する事で、効率的に業務を行う事が可能となる。
プロジェクトマネジメントの歴史
従来、プロジェクトマネジメントは品質・コスト・納期(QCD)の管理活動と考えられ特に独立した要素として捉えられていなかった。
現在のような形のプロジェクトマネジメント概念が確立したのは、冷戦期の米国防省だったと言われている。ソ連に有人ロケットの打ち上げで先を越されたことに危機感を覚えた国防省は軍事プロジェクトのプロセスをスピードアップさせるため、プロセスを体系化し整理した。1958年にはポラリスミサイルプロジェクトに際し、"Program Evaluation and Review Technique"(PERT)が開発されている。同時期にデュポン社でも、クリティカルパス法(CPM)と呼ばれる手法が開発されている。
現在は、アメリカの非営利団体であるPMI(Project Management Institute)が策定した"Project Management Body of Knowledge"(PMBOK)が世界中で受け入れられている。PMBOKは、最新の研究結果を元に4年毎に改定され続けている。
日本では経済産業省(当時の通商産業省)のバックアップを受けて日本発のプロジェクトマネジメント標準を確立する試みが進められ、その結果として現在、P2M(プロジェクト・プログラムマネジメント)という知識体系がある。現在は日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)がこれを管理し、この知識体系に基づいた資格がある。
学問としてのプロジェクトマネジメント
大学でプロジェクトマネジメントを専門に学ぶことができる日本で唯一の学科として、1997年に千葉工業大学工学部プロジェクトマネジメント学科(現在は社会システム科学部プロジェクトマネジメント学科)が誕生した。1999年3月26日にはプロジェクトマネジメント学会(略称:PM学会)が設立された。
プロジェクトマネジメントに関する資格
- プロジェクトマネージャ試験・・・独立行政法人情報処理推進機構が主催する経済産業省認定の国家試験
- P2M・・・日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)が主催するプロジェクトマネジメントの知識体系
- PMC・・・PMAJの認定資格の一つ(プロジェクトマネジメントコーディネーター)でエントリーレベル
- PMS・・・PMAJの認定資格の一つ(プロジェクトマネジメントスペシャリスト)で第2レベル
- PMP®・・・Project Management Professional:米国のPMIが主催するPMBOK®に準拠した単一プロジェクトマネジメントの認定試験
- PgMP®・・・Program Management Professional:米国のPMIが主催する「プログラム標準」に準拠したプログラムマネジメントの認定試験
- PMI-ACP SM・・・PMI Agile Certified Practitioner:米国のPMIが主催するアジャイル実務の認定試験
- PMI-RMP®・・・PMI Risk Management Professional:米国のPMIが主催するプロジェクト・リスクマネジメントの認定試験
- PMI-SP®・・・PMI Scheduling Professional:米国のPMIが主催するプロジェクト・スケジューリングの認定試験
(参考)PMBOKの観点
PMBOKはプロジェクトを以下の観点から分類して管理を行うものとしている。
- 統合
- スコープ
- タイム
- コスト
- 品質
- 人的資源
- コミュニケーション
- リスク
- 調達
マネジメントとオペレーションの分離
情報システムの開発プロジェクト等においてはその成否が重要な経営課題となっており今後その重要性はますます高まっていくことが予想されるため、プロジェクトマネージャにはより経営の視点に立った管理能力が求められている。
いっぽう、情報システムはますます大規模なものになっており、プロジェクトの遂行においては高度な技術知識を要求されることも多い。
このため、プロジェクトの管理をプロジェクトマネージャにプロジェクトの遂行をプロジェクト(オペレーション)リーダーに分担するケースが増えている。これは経営におけるCEO(最高経営責任者)とCOO(最高執行責任者)の業務分担に非常によく似ておりプロジェクトに関する意志決定をプロジェクトマネージャが、その執行をプロジェクトリーダーが行う。企業の情報戦略に関する責任者であるCIO(最高情報責任者)がプロジェクトマネージャを兼任するケースも多い。
プロジェクトサイクルマネジメント
事業者はプロジェクトをその規模にかかわらず、計画立案、実施、評価という一連のサイクルを治験するととらえ、それぞれの段階における実施管理を行うことを指す。「プロジュクトデザインマトリックス(PDM)」と呼ばれるプロジェクト概要表を用いて運営管理する手法がある。PDMはプロジェクト計画を構成する目標、行動、投入等を含み、それらの論理的な相関関係を示す。
関連項目
- かんばん方式
- ガントチャート
- プロジェクトマネージャ
- プロジェクトマネージャ試験 - 情報処理技術者試験の一区分
- プロジェクトマネジメント協会(Project Management Institute, PMI)
- プロジェクトマネジメントソフトウェア(英)
- PMBOK
- アーンド・バリュー・マネジメント
- クリティカルチェーン
- ISO 10006
- Vモデル
- PRINCE2
- RACI図、責任分担表
- プログラムマネジメント
- ロードマップ
- PDCAサイクル
- デスマーチ
- プロジェクトマネジメント学科
- ソフトウェアプロジェクト管理