アメリカ統合参謀本部議長
アメリカ統合参謀本部議長 (アメリカとうごうさんぼうほんぶぎちょう、Chairman of the Joint Chiefs of Staff)は、アメリカ統合参謀本部の長。アメリカ軍を統率する軍人(制服組)のトップであり[1]、大統領および国防長官の主たる軍事顧問である[2]。
概要
大統領および国防長官の主たる軍事顧問であり、アメリカ国家安全保障会議や国土安全保障会議にも助言を行う[2]。助言に際しては、統合参謀本部の他メンバーより大きな権限を有している[2]。なお、作戦指揮権は有していない[1]。また、戦略計画の策定や、予算・機材の取得に関する助言、国防における脅威度評価、軍種間統合の推進も議長の責任範囲となっている[3]。
議長は、大統領が指名し、上院の助言と承認(advice and consent)により就任する[1]。任期は奇数年の10月1日よりの2年であり、副議長であった場合の任期と合わせ3期6年まで在職でき、特に大統領の指名があった場合は8年まで在職できる[1]。ただし、戦時にはこの制限は撤廃される[1]。1985年代以降は2期4年務めるケースが多い。階級は大将(general又はadmiral)に補され、アメリカ軍における最高位とされる[1]。
統合参謀本部は1947年に法的な裏付けを得たが、議長職は1949年に設置されている。
就任資格
1986年のゴールドウォーター=ニコルズ国防総省再編法 (Goldwater-Nichols Department of Defense Reorganization Act of 1986) によれば、議長の就任資格があるのは、現議長の再任を除くと、統合参謀本部(以下JCS)の議長以外のメンバーおよび地域別・機能別統合軍 (Unified Combatant Command)や特定軍 (Specified Combatant Command,一軍種からなる戦闘軍) 司令官とされる[1]。ただし、大統領が国益に考慮して必要と判断した場合には、特例としてこれ以外のポストから議長を選ぶこともできる[1]。なお、副議長とは別軍種であることが原則とされる[4]。
- 統合参謀本部議長(JCSメンバー、再任の場合)
- 統合参謀本部副議長(JCSメンバー)
- 陸軍参謀総長(JCSメンバー)
- 海軍作戦部長(JCSメンバー)
- 空軍参謀総長(JCSメンバー)
- 海兵隊総司令官(JCSメンバー)
- 各統合軍司令官
また本来であれば、JCSメンバーでもある海兵隊総司令官など海兵隊出身者が議長に選ばれる可能性もあるが、初代議長のオマー・ブラッドレー陸軍大将以来、長年にわたって陸軍・海軍・空軍の3軍出身者のみが選ばれるという状態が続いていた。2006年に、ピーター・ペース海兵隊大将が海兵隊出身者では初めて議長に選ばれたことで打破された。
権限
ゴールドウォーター=ニコルズ国防総省再編法の施行以前は、統合参謀本部議長は統合参謀本部の意見のまとめ役に過ぎなかった。大統領及び国防長官に提出する軍事的助言は各軍参謀長たちの合意に基づくものでなければならず、実質的権限はあまりなかった。しかし、同法では議長を「主たる軍事顧問」と認めており、従って議長は参謀長たちの合意にかかわらず大統領、国防長官に直接自分自身の意見を助言することができるようになった。統合参謀本部は実働部隊の指揮権限は持っておらず、指令は国防長官から各統合軍司令官に下される。同法の施行後に初めて統合参謀本部議長に就任したのがコリン・L・パウエルである。