広尾線
|} 広尾線(ひろおせん)は、日本国有鉄道(国鉄)が運営していた鉄道路線(地方交通線)。北海道帯広市の帯広駅で根室本線から分岐し、十勝平野を南下して広尾郡広尾町の広尾駅に至る。国鉄再建法の制定にともない第2次特定地方交通線に指定され、国鉄民営化直前の1987年に廃止された。
路線データ
- 管轄:日本国有鉄道
- 路線距離(営業キロ):帯広 - 広尾 84.0km
- 軌間:1067mm
- 駅数:17(起終点駅含む)
- 複線区間:全線単線
- 電化方式:全線非電化
- 閉塞方式:タブレット閉塞式
- 交換可能駅:5(大正、中札内、上更別、忠類、大樹)
運行形態
廃止直前時点では、全線通しの普通列車のみが6往復設定されていた。
鉄道による観光輸送が全盛期であった1962年7月1日に、夏季(9月2日まで)運行の臨時準急「ひろお」1往復が全線で設定され、1965年まで毎年運行された(途中停車は大樹駅)。1966年は士幌線の糠平駅と広尾駅の間を結ぶ形(広尾線内は「ひろお」、士幌線内は「しほろ」)で、8月の2週間運行された。1967年からは糠平・広尾間を臨時急行「大平原」として運行され、広尾ではこれに接続する国鉄バスも増発された。「大平原」はいずれも鉄道としては盲腸線であるローカル線を結んで走るという、珍しい運行形態であった。1975年の夏は広尾線内のみの運行となり、その年限りで廃止となっている。
- 臨時急行「大平原」停車駅(1969年9月時点)
- 広尾 - 大樹 - 帯広 - 士幌 - 上士幌 - 糠平
歴史
改正鉄道敷設法別表第133号に規定する「膽振國苫小牧ヨリ鵡川、日高國浦河、十勝國廣尾ヲ經テ帶廣ニ至ル鐵道」の一部であり、1929年から1932年にかけて帯広 - 広尾間が開業した。西側の区間は、2つの軽便鉄道を買収して延長した日高本線として1935年に様似まで開業したが、様似 - 広尾間は未開業に終わり、国鉄バス襟裳線(現在はジェイ・アール北海道バス・日勝線)がその間を結んでいた。1980年に国鉄再建法が成立すると、第2次特定地方交通線に指定され、国鉄分割民営化直前の1987年に廃止された。
国鉄広尾線時代に愛国駅 - 幸福駅間の切符が「愛の国から幸福へ」として人気となり、一連の縁起切符ブームの火付け役となった。廃線後は当線の代行バスを運行している十勝バス(詳細後述)が引き続き硬券乗車券を発売している。
- 1929年(昭和4年)11月2日帯広 - 中札内間 (28.1km) を広尾線として新規開業。愛国駅・幸震駅・中札内駅を新設。
- 1930年(昭和5年)10月10日 中札内 - 大樹間 (32.5km) を延伸開業。更別駅・上更別駅・忠類駅・大樹駅を新設。
- 1932年(昭和7年)11月5日 大樹 - 広尾間 (23.4km) を延伸開業し、全通。石坂駅・豊似駅・野塚駅・広尾駅を新設。
- 1944年(昭和19年)4月1日 幸震駅を大正駅に改称。
- 1953年(昭和28年)11月15日 北愛国駅を新設。
- 1955年(昭和30年)10月10日 帯広 - 中札内間で気動車運転開始。
- 1956年(昭和31年)8月26日? 幸福仮乗降場を新設。
- 1956年(昭和31年)11月1日 幸福仮乗降場を駅に改める。
- 1957年(昭和32年)12月25日 依田駅を新設。
- 1960年(昭和35年)4月15日 十勝東和駅、新生駅を新設。
- 1975年(昭和50年)5月3日 帯広 - 広尾間でSLお別れ列車を運転。19671+9654の9600形重連。
- 1982年(昭和57年)9月10日 全線の貨物営業を廃止。
- 1984年(昭和59年)6月22日 第2次特定地方交通線として廃止承認。
- 1987年(昭和62年)2月2日 全線を廃止。十勝バスに転換。
駅一覧及び接続路線
駅・事業者・所在地などの名称は廃止時点のもの。全駅北海道に所在。
駅名 | 駅間キロ | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 |
---|---|---|---|---|
帯広駅 | - | 0.0 | 日本国有鉄道:根室本線、士幌線 | 帯広市 |
依田駅 | 4.1 | 4.1 | 中川郡幕別町 | |
北愛国駅 | 2.6 | 6.7 | 帯広市 | |
愛国駅 | 4.3 | 11.0 | ||
大正駅 | 5.7 | 16.7 | ||
幸福駅 | 5.3 | 22.0 | ||
中札内駅 | 6.1 | 28.1 | 河西郡中札内村 | |
更別駅 | 7.3 | 35.4 | 河西郡更別村 | |
上更別駅 | 6.6 | 42.0 | ||
忠類駅 | 8.0 | 50.0 | 広尾郡忠類村(現・中川郡幕別町) | |
十勝東和駅 | 4.4 | 54.4 | 広尾郡大樹町 | |
大樹駅 | 6.2 | 60.6 | ||
石坂駅 | 4.3 | 64.9 | ||
豊似駅 | 6.3 | 71.2 | 広尾郡広尾町 | |
野塚駅 | 5.1 | 76.3 | ||
新生駅 | 2.8 | 79.1 | ||
広尾駅 | 4.9 | 84.0 |
廃線後
代行バス
広尾線廃止後は十勝バスが代替バスの運行を開始した。廃線前から十勝バスは並行する路線を運行していたが、拡充する形で早朝・深夜の増発、快速便や区間便、道路事情の関係でルートから外れる依田・北愛国経由などの系統も設定されたり、転換交付金による新車も投入された。現在は中型車の運行や系統の統合(依田・北愛国経由は廃止)や減便を実施しているが、近年のマイカー普及や沿線の過疎化の影響で乗車率は低迷しており、2006年に北海道運輸局が公表した「高額補助金交付路線」に名を連ねた。
2013年5月27日現在、帯広駅バスターミナル - 広尾間に平日14往復、休日10往復が運行されている。このほか、沿線の通学客用に下りは帯広市バスターミナル→大正小学校前間の区間便が1本、上りは更別南3線・中札内小学校前・大正→三条高校開西病院前・大谷高校前・緑陽高校前間の区間便がそれぞれ1本運行されている(区間便は、学校登校日のみ運行)[1]。
遺構
2013年現在、廃線から四半世紀以上経過するが、待合室のみの駅をふくむ旧駅舎が5駅(愛国、幸福、忠類、大樹、広尾)残存しており、記念公園(愛国、幸福、忠類)やバス待合所(広尾)になっているものや、他目的に転用されたもの(大樹)などがあるが、営業当時の面影を残している。
脚注
- ↑ テンプレート:PDFlink - 十勝バス