南海フェリー
南海フェリー株式会社(なんかいフェリー、Nankai Ferry Co., Ltd.)は、日本の海運会社。紀伊水道に和歌山市と徳島市を結ぶフェリーを運航している。
本社所在地は和歌山県和歌山市湊2835番地の1。南海グループに属している。
目次
概要
和歌山港側のみ南海電気鉄道(南海)和歌山港線と連絡しているが、かつては徳島側の発着港であった小松島港でも国鉄小松島線と連絡しており、本州側の南海線と四国側の国鉄線をつなぐ鉄道連絡船として機能していた。また、明石海峡大橋開通までの長年にわたり、南海フェリーと南海による徳島 - 和歌山 - 大阪難波間の連絡は徳島と大阪、さらには本州の各都市間の主要なルートの一つだったが、本州側の鉄道連絡が私鉄であった事や、航路自体も私鉄系列会社による運営であった事などから、国からはあまり重要視されていなかった他、四国側の連絡路線である小松島線が1985年3月に廃止された。
周辺の交通環境が大幅に変わった現在でも、和歌山港駅には駅とフェリー乗り場を結ぶ連絡通路が以前と同様に活用されている他、南海との連絡運輸が実施されており、南海各駅及び徳島港では相互間を通しで乗車船できる切符が発売されている。また、和歌山港線の列車がフェリーの接続を考慮したダイヤになっているなど、相変わらず鉄道との結びつきが強い[1]。1995年1月に発生した阪神・淡路大震災で山陽本線や山陽新幹線が長期不通となった時は、四国内の交通と併せて、四国の他地域と関西以東を結ぶ迂回ルートの一つにもなった。
明石海峡大橋の開通以降、徒歩利用客の多くが同橋経由の高速バスに移ったため、神戸淡路鳴門自動車道経由では高額な通行料金が必要となる大型トラックや自家用車の他、四国から関西国際空港へ向かう利用者に焦点をあてた利用客の増加に努めている。他にも各種割引制度の導入やスピードアップの他、南海本線と和歌山港線の直通列車を運転するなど、グループを挙げて可能な限りの対策がとられているものの、高速バスには便数や所要時間の面で対抗しきれていないのが現状である。なお、同じ南海グループのバス会社(南海バス・徳島バス・四国交通)も徳島県内各地と大阪市内や関西空港を結ぶ高速バスを運行している。
2007年2月に南海淡路ライン(泉佐野港 - 津名港間)が廃止された事に伴い、南海グループでは唯一の航路となった。
歴史
南海フェリーの前身である南海汽船時代も含めて歴史をまとめる。
- 5月6日 - 南海観光汽船により和歌山 - 小松島航路が開通する。
- 11月 - 南海汽船に社名を変更する。
- 1958年(昭和33年)1月26日 - 南海丸遭難事故が発生。旅客139名・乗組員28名全員が死亡もしくは行方不明となる。
- 1964年(昭和39年)12月 - 和歌山と小松島の間にフェリーが就航する。
- 1975年(昭和50年)
- 8月20日 - 南海フェリー株式会社を設立する。
- 12月 - 和歌山 - 小松島航路の運営が南海観光汽船から南海フェリーに譲渡される。
- 1989年(平成元年)3月 - 新造船「くまの」が就航する。
- 1992年(平成4年)12月 - 新造高速船「あるご」が就航する。
- 1997年(平成9年)7月 - 新造船「つるぎ」が就航する。
- 1998年(平成10年)4月5日 - 明石海峡大橋の開通の影響で、利用客が大幅に減少する。
- 1999年(平成11年)
- 4月 - フェリー航路を和歌山 - 徳島間に変更する。同時にりんくうフェリー(泉佐野 - 徳島)の運航開始に伴い減便。
- 10月 - 新造船「かつらぎ」が就航。りんくうフェリーが航路休止(後に廃止)となったため、便数が12往復に戻る。
- 2002年(平成14年)2月 - 利用客の減少に伴い、高速船事業を廃止する。
- 2006年(平成18年)10月 - 燃料高騰に伴い減便し、一日12往復のうち夜間2往復は繁忙期のみ運航となる。
- 2007年(平成19年)4月 - 燃料高騰及び利用者の減少に伴い減便し、平日9往復・休日8往復(多客期は9往復)の運航となる。同時に「くまの」が運用から離脱し、「かつらぎ」「つるぎ」による2隻での運航となる。
- 2008年(平成20年)12月1日 - さらなる燃料高騰に伴い、上下第1便を通年運休[2]とする。また、年末年始の一部便を休航とする事が発表される[3]。なお、年末年始の運航についてはその後、各年ごとに需要を考慮しての判断に変更されている。[4]
航路
就航中の航路
- 早朝深夜の2往復を除く全便が和歌山港で南海電車に連絡している(同港では入出港時に指定のメロディと案内放送が流れる)。
- フェリー(貨客船)にて運航している。
過去に就航していた航路
- 南海徳島シャトルライン
- 区間:和歌山港 - 徳島港(沖洲マリンターミナル)
- 所要時間:約1時間
- 便数:最盛期は1日9便
- 高速船(旅客船)にて運航。1983年8月に運航開始したが、1985年3月の国鉄小松島線廃止を受け、同年11月に徳島港発着に変更された。以降はスピードアップと増便を重ね、一時期にはテンプレート:要出典範囲していた。しかし、1998年4月5日に明石海峡大橋が開通すると同時に徳島 - 大阪間の高速バスが開業した事から利用客が減少し、減便や運賃割引などの対策を実施したが状況は改善できず、2002年1月31日をもって廃止された。
船舶
就航中の船舶
いずれも貨客船(フェリー)。船内には普通船室の他にグリーン席(リクライニングシート)が設けられている。また、ドライバー室も設置されている。
- フェリーつるぎ
- 1996年11月竣工、1997年7月就航、2005年改造。2,604総トン、全長108.00m、幅17.50m、出力5,400ps×2基、航海速力18.7ノット(最大21.6ノット)。
- 旅客定員450名。車両積載数:大型トラック26台(乗用車換算156台)。臼杵造船所(臼杵)建造。鉄道建設・運輸施設整備支援機構と共有。
- フェリーかつらぎ
- 1998年6月竣工、1999年10月就航、2005年改造。2,571総トン、全長108.00m、幅17.50m、出力5,400ps×2基、航海速力18.7ノット(最大21.6ノット)。
- 旅客定員450名。車両積載数:大型トラック26台(乗用車換算156台)。臼杵造船所(臼杵)建造。鉄道建設・運輸施設整備支援機構と共有。
過去に就航していた船舶
- フェリーくまの
- 貨客船(フェリー)。1988年8月竣工、1989年3月就航、2007年4月引退。2,137総トン、全長93.0m、幅16.0m、出力9,000ps、航海速力18.5ノット(最大20.5ノット)。
- 旅客定員430名。車両積載数:トラック12台・乗用車24台・バス4台。新浜造船所(阿南)建造。
- テンプレート:要出典範囲。
- あるご
- 旅客船(高速船)。1992年12月就航。
運賃
2006年4月1日現在。詳細は公式サイトを参照。
- 旅客
- 大人:片道2,000円(小児半額)
- 往復の場合、復路運賃が1割引(期限は往路乗船日より14日間、但し南海電鉄との連絡券は4日間)。
- グリーン券:500円(小児半額)
- 特殊手荷物
- なお、特殊手荷物と共に乗船しようとする場合、旅客部分の往復割引を除き一切の特典・割引制度(後述の社会実験を含む)が利用できない。また、予約を行っていない他、テンプレート:要出典範囲。
- 自動車
長さ (m) を基準とした体系となっており、運転者1名の旅客運賃を含む。
- 5,600円(3m未満)から1m単位で増額。
- 往路の乗船券控えを提示した場合、同乗者を含め復路運賃が1割引(期限は往路乗船日より14日間)。
主な特典・割引制度
- 特典制度
- フェリーポイントカード
- 徒歩で利用する旅客向けに発行。1回の乗船ごとにスタンプが1個押印され、1枚の台紙にスタンプ6個を集めると片道無料乗船券1枚と交換できる。但し、各種割引乗船券(往復割引を除く)や徒歩以外での乗船(特殊手荷物や自動車を一緒に載せる場合)は対象外となる。
- NASL(ナッスル)カード
- 自動車で利用する旅客向けに発行。利用金額に応じたポイントを貯める事により運賃に充当できる他、関西や四国各地の施設入場料が割引になる特典もある。
- 回数券・企画乗車券など
- 乗用車ミニ回数券
- 自動車で利用する旅客向けに発行。4回分の料金で5回利用できる。購入日を含めて4ヶ月間有効。
- 浪花なみなみきっぷ(旧・浪花なみなみサービック)/徳島とくとくきっぷ(旧・徳島とくとくサービック)
- 南海フェリー及び南海電鉄が発行する、徳島港と南海主要駅(和歌山市駅を除く)相互間の往復乗船券と乗車券のセット券。徳島港発南海主要駅までの往復乗車船券が「浪花なみなみきっぷ」、その逆が「徳島とくとくきっぷ」と名称は異なるが、同区間であれば発売額は同じである。
- 和歌山港からのタクシー又はバス利用券がセットになっている。
- 割引制度
- 割引を指定している学校の学生・生徒向けに適用。学校学生生徒旅客運賃割引証を提示する事で旅客運賃が2割引になる。また、南海線と組み合わせた乗車券を購入する場合、もしくはフェリーと鉄道の営業キロの合計が101km以上の場合は、鉄道旅客運賃も2割引になる。
- 他の航路と提携した割引
- スルッとKANSAIと提携した割引
- 徒歩で利用する旅客向けに適用。「スルッとKANSAI 3dayチケット」を提示し、付属の優待券を提出する事で乗船料金が2割引になる[7]。
- JAFと提携した割引
- 自動車で利用する旅客向けに適用。会員証の提示で1割引(対象外の期間あり)。
- 一部のコンビニエンスストアでは、旅客のみ・自動車それぞれの割引乗船券を販売している。
乗車船券の販売状況
南海電鉄主要駅の自動券売機では、鉄道(発駅 - 和歌山港駅)とフェリーを組み合わせた乗車船券を発売している(スルッとKANSAI対応駅ではカードでの購入も可能)。また、徳島港の窓口ではフェリーと鉄道(和歌山港駅 - 南海線各駅)を組み合わせた乗車船券が販売されている。但し、自動券売機では南海本線・高野線(汐見橋線区間を除く)・空港線の乗車券のみ購入できる(各支線及び泉北高速鉄道線・水間鉄道線への連絡乗車券は窓口での販売)[8]。
社会実験
2009年7月18日から8月31日まで、和歌山県と徳島県及び南海フェリーがそれぞれ1億円ずつを負担し、高速道路におけるいわゆる「1,000円高速」などの料金割引に対抗した運賃割引の社会実験を行った。この実験では、条件を満たした乗用車について自動車航送運賃(運転者1名の旅客運賃を含む)を1,000円としていた[9]。その後、この結果を踏まえた割引を同年9月1日から翌2010年3月31日までの土曜・日曜・祝日及び年末年始にも行った[10]。
割引にあたっての主な条件としては、6m未満の軽自動車又は普通車である事や、和歌山・徳島いずれかのナンバーである事、又は他の都道府県ナンバー装着車で和歌山か徳島のいずれかの県内にて宿泊した事を証明するものを持参する事としていた[11]。
港への交通
和歌山港
- 自動車
- 阪和自動車道 和歌山インターチェンジから7.5km(県道16号・三年坂通り・宮街道を直進)
- 公共交通機関
徳島港
- 自動車
- 公共交通機関
オリジナルグッズ
- テーマソングCD『海のむこうに -小さな旅立ち-』 - 同社の取締役営業部長が作詞し、宝子(シンガーソングライター、和歌山出身)が作曲と歌を担当。
- キーホルダー
- マグネット
- ペーパークラフト
- ジグソーパズル
キャラクター
2011年1月、「和歌山徳島航路活性化協議会」が企画し、和歌山市在住のもえぎ若菜がデザインした、和歌山県生まれで和歌山県育ちの女子高生という設定のキャラクター「高野 きらら」(たかのきらら)[13]が、翌2月には和歌山県生まれで徳島県育ちの女子高生という設定のキャラクター「阿波野 まい」(あわのまい)[14][15]が、それぞれ発表された。この2人は幼馴染で、現在も文通などで交流を続けているという設定となっている。
なお、それぞれの名称は発表後に行われた公募で決定された[16]。
脚注
関連項目
- 鉄道連絡船
- 涼宮ハルヒの憂鬱 (アニメ) - 「孤島症候群前編」において、廃船となった「くまの」と徳島港が登場する。
外部リンク
- 南海フェリー(公式サイト)
- ↑ 2012年4月1日のダイヤ改正で同路線の全列車がフェリーとの接続に特化したダイヤに見直された。
- ↑ フェリーが、ドック入りしている時期のみ徳島行のみ1便を運航。また主にゴールデンウィークやお盆などの繁忙期には上下1便とも臨時運航。
- ↑ 年末年始は、12月31日の上下第9便及び正月三が日の上下第2便が休航となった。 ※参考:テンプレート:PDFlink(ニュースリリース) - 南海フェリー(2008年9月19日)テンプレート:リンク切れ
- ↑ 2011年正月は上下1便の他に臨時休航便があったが、2012年正月は通常運航(通年休航の上下1便のみ休航)とされた。
- ↑ ダイヤ上は9往復設定されているが、1往復は通年休航となっているため。
- ↑ 日本船舶明細書I 2008年版 - 社団法人 日本海運集会所(2007年12月30日発行)
- ↑ 以前は南海の他に近鉄・名鉄グループの鉄道・バス・船などを乗り放題(一部例外あり)にした企画乗車券「ワイド3・3・SUNフリーきっぷ」を使えば徳島市から愛知県豊橋市まで乗り継ぐ事が可能であったが、2006年3月末で発売終了となった。
- ↑ ただし、現在は「好きっぷ2000」が発売されているため、和歌山港までの乗船券のみ購入できる形となっている。
- ↑ [1]テンプレート:リンク切れ
- ↑ [2]テンプレート:リンク切れ
- ↑ 2009年7月18日 - 同年8月31日テンプレート:PDFlinkテンプレート:リンク切れ、2009年9月1日 - 2010年1月3日テンプレート:PDFlinkテンプレート:リンク切れ
- ↑ 和歌山バス(公式サイト)の「時刻表検索」などを参照
- ↑ テンプレート:Cite newsテンプレート:リンク切れ
- ↑ テンプレート:Cite news
- ↑ キャラクター名前募集(第2弾ヒロイン)
- ↑ 南海フェリー オリジナルキャラクター 名前発表!(ニュースリリース) - 南海フェリー(2011年4月21日)、同月23日閲覧。