役所
役所(やくしょ)とは、行政事務を行っている場所のことをいい、国(中央官庁、地方支分部局)や地方公共団体などの事務所があてはまる。役場(やくば)、官公署(かんこうしょ)ということもある。
概要
役所は、主に、住民と直接向かい合う場所・建物を指すことが多いが、組織を指す場合もある。俗に「お役所」ともいうが、この場合には組織を意味することが多い。特に建物自体を指す時には、庁舎と呼ぶ。英語では組織がgovernment、庁舎がhallと区別される。
日本では、国の場合には官庁(かんちょう)ということが多く、地方公共団体の場合にはその種別によって、
- 都道府県 - 都庁(とちょう)・道庁(どうちょう)・府庁(ふちょう)・県庁(けんちょう)
- 市や区 - 市役所(しやくしょ)・区役所(くやくしょ)
- 町や村 - 町役場(まちやくば、ちょうやくば)・村役場(むらやくば、そんやくば)
ということが多い。自治体によっては「役所」の名称を用いず「市庁」などと称する場合もある(例:八戸市。また文京区に至っては庁舎を「シビックセンター」と称している)。過去には沖縄県豊見城村(現在の豊見城市)のみ村役所(そんやくしょ)を名乗っていた。また、1878年から1926年までは郡に郡役所(ぐんやくしょ)が存在した。
また、単に「役所」と表記する場合には、いわゆる三権のうち上記のような行政権に属する主体を指す行政庁の意味に限定して用いられる場合もあるが、「官公署」と表記する場合には司法権や立法権に属する機関や建物も含む総称として用いられる。広義には上記の「官公署」とされる裁判所や警察署、その他首相官邸なども役所に分類されることがある。
日本の役所(地方公共団体事務所)
地方公共団体の役所の場合は、その所在地を地方自治法(昭和22年法律第67号)第4条第1項の規定により条例(名称の例:「○○県庁(市役所・町役場・村役場)の位置を定める条例」等)で定めなければならないため、役所の引っ越しには、議会の議決が必要となる。かつて山口県に存在した旭村では合併時の経緯から、定期的に役場本所と支所を入れ替えるというユニークなシステムを取っていた。
地方公共団体の庁舎は、通常その地方公共団体の地域内に置かれるが、町村内の移動よりも隣接自治体の市街地への移動のほうが便利である場合には、他の公共団体内に庁舎を置くことがある。2011年4月現在、以下の3町村がこれにあてはまる。
島嶼を除く地方公共団体では、青森県下北郡東通村が村の成立から100年間、1988年までむつ市に庁舎を置いていた。
市町村の役所の部署の例
市町村の役所は、法律によって市町村が行うこととされている事務のほか、市町村独自に定めた住民サービスなどあらゆる行政事務をこなすため部署が設けられている。
よって、町村では最も下位のグループに属する部署における事務の一部として行われているものであっても、市の規模によっては町村の数段階上のグループに属する部署を設けて対応している場合がある。
都道府県庁については、市町村との類似はあるものの、広域行政を担う立場から、住民により近い市町村とは様々な違いがある。
次に市町村の役所の部署について例を掲げる。これらの各部署は、地方自治体によって名称や業務分掌が大きく異なるので留意のこと。各部署は議会の委員会により監督されている。
- 住民課
- 婚姻届・離婚届など戸籍や住民票など各種証明書の発行。
- 国民健康保険及び国民年金なども扱うことが多いが大規模な市区などになると当該部門が独立している場合がある。
- 税務課(市民税課)
- 地方税(地方公共団体の場合)の賦課(課税)、徴収(集金)を行う。
- 福祉課
- 住民の福祉に関する事務を扱う。生活保護の受付及び審査、公立保育所の運営など。
- 町村においては医療に関わることも扱うが、市においては保健所の所轄である。
- 管財課
- 市区町村が管理保有している土地及び庁舎の管理をおこなう。用地取得売却など建築物を管理する。公民地境界線確定。
- 都市計画課
- 土地区画整理、市街化調整区域、市街化区域、開発許可。
- 環境整備課
- ごみなど不法投棄の監視も扱う。廃棄物処理、リサイクル、汚染物質の除去、監督、指導を行う。
- 清掃工場などの運営も行うが、一部事務組合や外部団体が運営するケースもある。
- 建設・土木課
- 公園や歩道などの管理から自治体の保有する建築物の補修、道路・河川等の管理、業者の入札まで指導・監督する。
- 法定外公共物(赤線・青線)の管理も行う。
- 水道課
- 一般的に外局(地方公営企業)とされていることが多いが土木部門の中に組み込まれている自治体もある。
- 上水道・下水道の管理や水道料金の収受を行う。
- 病院事業部
- 公立病院の運営などを行う。近年はPFIなどにより運営を外部に委託するケースも増加している。
- また会計などを銀行からの職員が行う公立病院も存在する。また公立病院を設置しなくてはいけない法律は存在しない。
- 農業委員会
- 農地転用など地目変更用途変更等。
- 教育委員会
- 幼稚園・小学校・中学校(市立高・市立大がある場合は高等学校・大学)の施設管理、学齢簿の管理など学校関係の事務、公立図書館及び博物館などの管理を扱う。事務局は「教育センター」に置かれることもある。
- 図書館に関してはPFIなどにより外部に管理委託するケースも増加している。
- 消防本部
- 消防署の運用管理。効率化を背景に、他の自治体と一部事務組合を組織し共同運用する事例も増加傾向にある。
日本国外の役所
日本国外の地方公共団体やその事務所については「地方政府」(local government)の呼称で呼ばれることがある。
アメリカ合衆国のlocal governmentについては「〜政府」「〜庁」と表記されることが多く、州レベルのものはもっぱら「州政府」「州庁」と呼ばれる(「カリフォルニア州政府」「ハワイ州庁」など)。市以下の地方公共団体では日本の役所になぞらえ「役所」が用いられることもある(「サンフランシスコ市政府」「サンフランシスコ市庁」のほかに「サンフランシスコ市役所」など)。これは、庁舎を示すテンプレート:Llang(市庁(舎)、市役所)等でも同様である。
漢字圏の国の地方公共団体については、現地で使用されている用語表記が日本語でもそのまま用いられることが多い。
- 大韓民国では「〜庁」が使われる(ソウル市庁、京畿道庁、務安郡庁など)。
- 中華人民共和国では「〜人民政府」が正式名称である(河北省人民政府、上海市人民政府、内蒙古自治区人民政府など)。日本語で表記する際には単に「〜政府」(河北省政府など)とすることもある。
- 台湾では「〜政府」が使われる(台北市政府、台湾省政府、桃園県政府など。なお、省政府は機能を凍結している)。