内閣法制局
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
内閣法制局(ないかくほうせいきょく、英訳名: Cabinet Legislation Bureau, CLB)は、日本の行政機関の一つ。内閣に置かれ、行政府内における法令案の審査や法制に関する調査などを所掌する(内閣法制局設置法 第1条)[1]。
概要
内閣法制局は、内閣の下で法案や法制についての審査・調査等を行う機関であり、その長は、内閣が任命する内閣法制局長官である(内閣法制局設置法 第2条)[1]。また内閣法に言うところの主任の大臣は、内閣総理大臣である。内閣(政府)が国会に提出する新規法案を、閣議決定に先立って現行法の見地から問題がないかを審査することから、俗に「(行政府における)法の番人」といわれる(法的根拠はなく、慣習である)。第二次世界大戦後に司法省と統合されて法務庁(後に法務府)となるが、法制局設置法(昭和27年法律第252号)に基づき、1952年8月に内閣に法制局が設置され、ほぼ現在の姿となる。その後、総理府設置法等の一部を改正する法律(昭和37年法律第77号)により1962年7月に法制局設置法は内閣法制局設置法に改題され、法制局は内閣法制局と改称された。
沿革
- 1875年(明治8年)7月3日、太政官正院の法制課を法制局に改組。
- 正院の呼称は、1877年(明治10年)1月18日に廃止。
- 1880年(明治13年)3月3日、法制局を廃止し、太政官に法制部を設置。
- 1881年(明治14年)10月21日、太政官に参事院を置き、参事院に法制部を設置。
- 1885年(明治18年)12月22日、太政官を廃止し、内閣制度を創設。
- 1885年(明治18年)12月23日、内閣総理大臣の管理に属する法制局を設置。行政部、法制部、司法部の3部構成。
- 1890年(明治23年)6月12日、法制局の位置づけを改め、内閣に属するものとする。部制を廃止。
- 1891年(明治24年)4月10日、部制を復活させ2部制とする(第一部・第二部)。
- 1893年(明治26年)11月10日、法制局の位置づけを改め、内閣に隷するものとする。部制を廃止。
- 1918年(大正7年)5月29日、部制を復活させ2部制とする(第一部・第二部)。
- 1939年(昭和14年)4月28日、2部制を3部制に改める(第一部から第三部まで)。
- 1945年(昭和20年)5月24日、3部制を4部制に改める(第一部から第四部まで)。
- 1945年(昭和20年)9月6日、4部制を3部制に改める(第一部から第三部まで)。
- 1945年(昭和20年)11月24日、法制局に次長を置く。
- 1948年(昭和23年)2月15日、法制局を廃止して司法省と統合し、国務大臣たる法務総裁を長とする法務庁を設置。
- 法務庁では法務総裁のもとに5長官制を敷き、長官のうち、法制局の所管を引き継ぐものとして法制長官と法務調査意見長官とが置かれる。
- 法制長官の指揮監督のもとに長官総務室のほか3局(法制第一局から法制第三局まで)を置く。
- 法務調査意見長官の指揮監督のもとに長官総務室のほか3局(調査意見第一局、調査意見第二局、資料統計局)を置く。
- 1949年(昭和24年)6月1日、国家行政組織法施行に伴い、法務庁を法務府に改組。
- 法務総裁のもとの5長官制を3長官制に改め、法制長官と法務調査意見長官を統合して、法制意見長官を置く。
- 法制意見長官の指揮監督のもとに長官総務室のほか4局(法制意見第一局から法制意見第四局まで)を置く。
- 1952年(昭和27年)8月1日、法務府を解体し、法務省と法制局を設置。
- 法制局の長は法制局長官とし、法制局次長を設置。長官総務室のほか第一部から第三部までの構成とする。
- 1962年(昭和37年)7月1日、法制局を内閣法制局に改称。第四部を増設。
所管事務
内閣法制局の所管事務は次のとおりである。
- 閣議に附される法律案、政令案及び条約案を審査し、これに意見を附し、及び所要の修正を加えて、内閣に上申すること:審査事務
- これが内閣法制局の主たる事務であり、他の法律と抵触する部分はないか、文章の体裁が法令表記の慣例から逸脱していないか等々について審査する。実務上は、各部に所属する内閣法制局参事官が、審査を担当する省庁の課長補佐クラスと協議しつつ法案を起案・修正していく。
- 法律案および政令案を立案し内閣に上申すること:立案事務
- 内閣法制局自身が案を立案した例は極めて少ない。
- 法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること:意見事務
- 内閣および各府省庁からの意見照会に関する回答を行うことがあるほか、国会において関係大臣の間で意見に相違があるとき閣内統一見解を求められた際に内閣法制局長官が答弁する例が多い。また国会法第74条による質問主意書に対する回答で法制に関するものを含む場合は内閣法制局が関与する。
- 内外および国際法制ならびにその運用に関する調査研究を行うこと:調査事務
- その他法制一般に関すること
組織
幹部
内部部局
- 第一部(部長)
- 所管事務は以下のとおり。
- 意見事務
- 調査事務
- 内閣府設置法3条5号に掲げる事項(その他法制一般に関すること)のうち他の部の所掌に属しないものに関する事務
- 憲法資料調査室(室長)
- 所管事項は以下のとおり。
- 憲法調査会が憲法調査会法(昭和31年法律第140号)2条の規定によってした報告および同調査会の議事録その他の関係資料の内容の整理に関する事項
- 上記報告に関する補充調査に必要な資料の収集に関する事項
- 上記に掲げるものの外、特に命ぜられた事項
- 所管事項は以下のとおり。
- 参事官
- 法令調査官
- 所管事務は以下のとおり。
- 第二部(部長)
- 第三部(部長)
- 第四部(部長)
- 長官総務室(総務主幹)
- 総務課
- 会計課
- 調査官
人事
キャリア官僚は独自採用せず、各省庁から参事官以上を出向で受け入れ、局長級以上の幹部になるのは原則、法務省、財務省、総務省、経済産業省の4省の出身者だけというのが不文律とされ、さらに長官までには、第一部長→法制次長→長官という履歴が1952年以来崩されていないとされていたが[3]、2013年8月、法制局勤務経験のない外務省出身の小松一郎が長官に就任した[4]。
参考文献
- 「短報 内閣法制局による憲法解釈小論」間柴泰治 国会図書館レファレンス2008.2 テンプレート:PDFlink
- 「内閣法制局」、『朝日新聞グローブ』第41号(『朝日新聞』2010年6月14日号)G-1 - G-5面 [1]
脚注
- ↑ 1.0 1.1 内閣法制局設置法
- ↑ 内閣官房や復興庁はここに含まれる。
- ↑ 『朝日新聞グローブ』第41号、G-3面。
- ↑ 法制局長官に小松駐仏大使=集団的自衛権積極派 時事通信 2013年8月2日閲覧