閣議

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
閣議決定から転送)
移動先: 案内検索

閣議(かくぎ)とは、内閣の職権行使に際して、その意思を決定するため開く国務大臣会議のことである。

日本国憲法下

ファイル:歴代首相の花押一覧 (初代から44代まで).png
歴代内閣総理大臣の花押(初代から44代まで)。閣議で作成される文書には、署名の代わりに花押が用いられる。

閣議は内閣法で規定されているが、会議の手続きについては明文で規定されておらず、慣行によっている。内閣総理大臣が主宰し(議長となり)、内閣官房長官が進行係を務める。内閣官房副長官内閣法制局長官が陪席する(この二人は意思決定には参加できない)。

閣議には毎週2回、火曜日金曜日の午前中に開かれる定例閣議と、必要に応じて開く臨時閣議があり、原則として全閣僚が総理大臣官邸閣議室(通常国会会期中は国会議事堂内の院内閣議室)に集まって行われる。しかし早急な処理を要する案件の場合には、内閣総務官が閣議書(閣議内容の書かれている文書)を持ち回りそれぞれの閣僚の署名を集めるという回議によって意思決定する場合がある。これを持ち回り閣議という。閣議決定は閣議書に花押をもって署名することで行われる。閣議書は午後には皇居・御座所に送られて天皇に提出され決裁を受ける。定例閣議で意思決定された案件を決裁するために、天皇は閣議がある日の午後は皇居に滞在しているが、静養行幸のさいに臨時閣議が行われた場合は、クーリエの宮内庁職員が閣議書を滞在先まで運び決裁を仰ぐ。閣議は非公開が原則である[1]

なお、全閣僚による閣議(決定)書への署名は原則であり、法律や条約の公布、特命全権大使等に交付する信任状や全権委任状などの案件については、内閣総理大臣のみが署名する[2]

閣議案件には次のような区分がある。

  • 一般案件(国政に関する基本的事項で、内閣としての意思決定が必要であるもの)。高級官僚や陸海空自衛隊将官の人事を含む。
  • 国会提出案件(法律案および予算案、条約など、承認を求めて国会に発議すべきもの)。質問主意書に対する答弁書なども含む。
  • 法律・条約の公布
  • 政令の決定
  • 報告(国政に関する調査、審議会答申などを閣議に報告するもの)
  • 配布(閣議の席上に資料を配付する)

閣議の意思決定には、閣議決定閣議了解の2つがある。内閣としての意思決定を閣議決定と言う。本来は主務大臣の管轄事項だがその重要性にかんがみ閣議に付され閣議として意思決定をおこなったものを閣議了解と言う。閣議の意思決定は出席した閣僚の全員一致を原則とする。これは、内閣が、「行政権の行使について、全国民を代表する議員からなる国会に対し連帯して責任を負う」(内閣法第1条第2項)ことに基づく。

なお、慣例として、閣議に引き続き「閣僚懇談会」が開かれる。閣議で取り上げられなかった議題がこの席で了承されることがあり、閣僚が自由に意見を述べたり、情報交換を行ったりすることもできる。首相が入院したために、閣議を開催できない状態で首相臨時代理を指定しないまま定例閣議の時間を迎えた第1次安倍内閣末期の場合、定例閣議に代わる閣僚懇談会が閣議の議事進行役の内閣官房長官が主導する形で行われ、全閣僚が閣議書に署名した後で首相が入院先の病院で決裁する「持ち回り閣議」の手法をとっていた。

閣議及び閣僚懇談会には長らく公式的な議事録は作られてこなかった。記録を残すと、外に出た場合、閣内不一致を指摘される恐れがあるからである[3]。しかし、2014年4月より閣議や閣僚懇談会にて議事録を作成することが第2次安倍内閣において決定している[4]。非公式的なものとしては、例えば内閣官房長官など閣議に関わる複数の役職を務めた後藤田正晴が著書の中で、「閣議では事務担当の官房副長官が議事について、メモ(非公式議事録)を取る慣行になっていた」ことを明かしている。また自身が官房副長官時代は自身がメモを取ることを嫌いだったため、同じく陪席していた吉國一郎内閣法制局長官に、「君がメモを取ればいい」(なお後藤田は元内務官僚として吉國の先輩に当たる)と指示し、吉國がメモを取っていた。だがこの法制局長官がメモを取る慣行が後藤田・吉國以降も続いたかは不明である。

よく新聞やテレビなどで閣議の際に閣僚がソファーに座って懇談する様子が伝えられるが、これは閣議室の隣の閣僚応接室の模様であり、先述のように閣議自体は非公開。閣議室の内部については、かつてはその様子が知られることはほとんどなかったが、現在は首相官邸公式サイトに新・旧両首相官邸の閣議室の写真が掲載されている[5][6]。現在の首相官邸閣議室は広さ約110平方メートルで、直径5.2メートルの円形テーブルが置かれており、通常は閣僚がこのテーブルを取り囲むように着席。それぞれの前には花押を記すための墨汁入り硯と細筆が用意されている(陪席の内閣官房副長官・内閣法制局長官は別テーブル)[7]

大日本帝国憲法下

この場合の閣議とは、各国務大臣の合議体である内閣において、国務および行政に関する協議を行なうことである。

内閣は各国務大臣の合議機関でもあり、行政各部の長官である各省大臣の合議機関でもあるから、閣議は国務上の閣議と行政上の閣議とに分けられることがある。

その詳細な規定は、内閣官制(明治22年勅令135号)にあり、必要的閣議附議事項として以下のものがある。

  1. 法律案および予算決算案
  2. 外国条約および重要な国際事項
  3. 官制または規則および法律施行にかかる勅令
  4. 諸省間の主管権限争議
  5. 天皇から下附され、または帝国議会から送致する人民の請願
  6. 予算外の支出
  7. 勅任官および地方長官の任命および進退
  8. 各省主任の事務につき高等行政に関し事態やや重きもの(内閣官制第5条)
  9. その他個別法令により所管としたもの、たとえば都市計画の区域および事業の認可(都市計画法)、各種委員の任免など

その他任意附議事項として、各大臣が適当と信ずる事項を提出することができる。

閣議の議題については、内閣官制第7条に「事の軍機軍令に係り奏上するものは勅令により特に内閣に下附せらるるものを除く外閣議を経るの必要なく唯陸海軍大臣より内閣総理大臣に報告すべし」という規定がある。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

テンプレート:Wikisourcecat

テンプレート:日本の内閣
  1. 閣議が公開された例として、1985年の内閣制度創始100周年記念における公開、2002年5月7日の冒頭公開、2013年1月8日の冒頭公開がある。
  2. 平成11年(1999年)10月5日以降(同日付け閣議決定による)。ただし、財政法の規定による財政状況に関する国会および国民への報告(昭和23年(1948年)6月15日閣議決定)、質問主意書に対する答弁書(昭和51年(1976年)5月25日閣議決定)などについては、同日以前も内閣総理大臣のみが署名していた。
  3. テンプレート:Cite news
  4. テンプレート:Cite news
  5. 旧首相官邸バーチャルツアー -2階正面階段編-閣議室-
  6. 首相官邸バーチャルツアー -4階・5階編-閣議室-
  7. テンプレート:Cite news