マルキ・ド・サド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:ActorActress テンプレート:Portal マルキ・ド・サドMarquis de Sade1740年6月2日 - 1814年12月2日)は、フランス革命期の貴族小説家。マルキは侯爵の音訳であり、正式な名は、ドナスィヤン・アルフォーンス・フランスワ・ド・サドDonatien Alphonse François de Sade [dɔnaˈsjɛ̃ alˈfɔ̃ːs fʀɑ̃ˈswa dəˈsad])。

サドの作品は暴力的なポルノグラフィーを含み、道徳的に、宗教的に、そして法律的に制約を受けず、哲学者の究極の自由(あるいは放逸)と、個人の肉体的快楽を最も高く追求することを原則としている。サドは虐待と放蕩の廉で、パリ刑務所精神病院に入れられた。バスティーユ牢獄に11年、コンシェルジュリーに1ヶ月、ビセートル病院(刑務所でもあった)に3年、要塞に2年、サン・ラザール監獄に1年、そしてシャラントン精神病院に13年入れられた。サドの作品のほとんどは獄中で書かれたものであり、しばらくは正当に評価されることがなかったが、現在その書籍は高い評価を受けている。サディズムという言葉は、彼の名に由来する。

生涯

生い立ちと教育

マルキ・ド・サドは、パリのオテル・ド・コンデ(かつてのコンデ公の邸宅。現在のパリ6区リュ・ド・コンデ、ヴォージリアール付近)にて、伯爵ジャン・バティスト・フランソワ・ジョセフ・ド・サドと、マリー・エレオノール・ド・マイエ・ド・カルマン(コンデ公爵夫人の女官。宰相リシュリューの親族)の間に生まれた。彼は伯父のジャック・ド・サド修道士による教育を受けた。サドは後にイエズス会のリセに学んだが、軍人を志して七年戦争に従軍し、騎兵連隊の大佐となって闘った。

1763年に戦争から帰還すると同時に、サドは金持ちの治安判事の娘に求婚する。しかし、彼女の父はサドの請願を拒絶した。その代わりとして、彼女の姉ルネ・ペラジー・コルディエ・ド・ローネー・ド・モントルイユとの結婚を取り決めた。結婚後、サドは息子2人と娘を1人もうけた[1]

1766年、サドはプロヴァンス州ラコストの自分の城に、私用の劇場を建設した。サドの父は1767年1月に亡くなった。

牢獄と病院

サド家は伯爵から侯爵となった。祖父ギャスパー・フランスワ・ド・サドは最初の侯爵であった[2]。時折、資料では「マルキ・ド・マザン」と表記される。

サドは「復活祭の日に、物乞いをしていた未亡人を騙し暴行(アルクイユ事件)」、「マルセイユの娼館で乱交し、娼婦に危険な媚薬を飲ます」等の犯罪行為を犯し、マルセイユの娼館の件では「毒殺未遂と肛門性交の罪」で死刑判決が出ている。1778年にシャトー·ド·ヴァンセンヌに収監され、1784年にはバスティーユ牢獄にうつされた。

獄中にて精力的に長大な小説をいくつか執筆した。それらは、リベラル思想に裏打ちされた背徳的な思弁小説であり、エロティシズム、徹底した無神論キリスト教の権威を超越した思想を描いた小説でもある。だが、『ソドム百二十日あるいは淫蕩学校』をはじめ、淫猥にして残酷な描写が描かれた作品が多いため、19世紀には禁書扱いされており、ごく限られた人しか読むことはなかった。

サドは革命直前の1789年7月2日、バスティーユから「彼らはここで囚人を殺している!」と叫び、革命のきっかけの一つを作ったと言われる。間もなくシャラントン精神病院にうつされたが、1790年に解放された。当初共和政を支持したが、彼の財産への侵害が行われると次第に反共和政的になった。1793年12月5日から1年間は投獄されている。1801年、ナポレオン・ボナパルトは、匿名で出版されていた『美徳の不幸』と『ジュリエット物語あるいは悪徳の栄え』を書いた人物を投獄するよう命じた。サドは裁判無しに投獄され、1803年にシャラントン精神病院に入れられ、1814年に没するまでそこで暮らした。

評価

サドの作品は、作者の精神状態を反映してか特に暴力的な描写において文法的に破綻を来してしまっているようなところが数多いが、20世紀に入ってから、そういった点がシュルレアリストたちによって再評価され、全集の出版が行われることになる。日本には木々高太郎式場隆三郎田辺貞之助、「丸木砂土」こと秦豊吉遠藤周作澁澤龍彦片山正樹たちによって紹介された。澁澤による『悪徳の栄え』の翻訳出版を巡って引き起こされた悪徳の栄え事件は、澁澤側の有罪(罰金刑)を以て終わった。

河出文庫などから出版されている澁澤の翻訳は、全訳ではなく抄訳のものが多い。水声社からサド全集が刊行中であるほか、全訳をうたった抄訳も出版されている[3]異常心理学の研究者である佐藤晴夫が全訳を試みたものが未知谷青土社から出版されている。

影響

オーストリア精神医学リヒャルト・フォン・クラフト=エビングは、「異常性欲」について、「フェティシズム」、「同性愛」、「サディズム」、「マゾヒズム」の4つに分類している。このうちの「サディズム」は、相手に対して、精神的で身体的な屈辱と苦痛を与えることによって性的な快楽や満足を得ることを意味し、サドの名前に因んで名付けられた。

主な作品

映像

  • ソドムの市/ピエル・パオロ・パゾリーニ監督(Salo o le 120 Giornate di Sodoma/Pier Paolo Pasolini)
  • 銀河/ルイス・ブニュエル監督(la Voie Lactee/Luis Bunuel)
  • マルキド・サドの演出のもとに シャラントン精神病院患者によって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺/ピーター・ブルック監督(The Persecution and Assassination of Jean-Paul Marat as Performed by the Inmates of the Asylum of Charenton Under the Direction of the Marquis de Sade/Peter Brook)
  • 悪徳の栄え/ロジェ・ヴァディム監督(La Vice et la Vertu/Roger Vadim)
  • マルキ/アンリ・グゾヌー監督(MARQUIS)
  • 悪徳の栄え/実相寺昭雄監督
  • 悦楽禁書(Marquis de Sade/Gwyneth Gibby)
  • ジュスティーヌあるいは美徳の不幸/ヘス・フランコ監督(Justine/Jess Franco)
  • ワックス・ワーク/アンソニー・ヒコックス監督(WAXWORK)

文書

  • サド侯爵夫人/三島由紀夫著(la Madame de Sade/Yukio Mishima)
  • 人獣裁判/友成純一著
  • サド侯爵の幻の手紙/SADE CONTRE L'ETRE SUPREME precede de SADE DANS LE TEMPS(フィリップ・ソレルス著/Philippe Sollers)
  • 侯爵サド/藤本ひとみ著
  • 侯爵サド夫人/藤本ひとみ著
  • サド裁判/石井恭二、澁澤龍彦、他
  • サド侯爵の生涯/澁澤龍彦著
  • サド復活/澁澤龍彦著
  • サドは有罪か/FAUT-IL BRULER SADE(ボーヴォワール著/Beauvoir)
  • サド、フーリエ、ロヨラ/Sade, Fourier, Loyola(ロラン・バルト著/Roland Barthes)
  • サド侯爵~その生涯と作品の研究~/ジルベール・レリー著(Sade:Etude sur sa vie et son oeuvre/Gilbert Lely)
  • 我が隣人サド/クロソウスキー(Sade Mon Prochain/Pierre Klossowski)
  • Donatien Alphonse Francois, marquis de Sade/モーリス・ルヴェ(Maurice Lever)
  • サド侯爵とその時代/イワン・ブロッホ著
  • マルキ・ド・サド-その生涯と思想/ジェフリー・ゴーラ著(The Life and Ideas of the MARUQUIS DE SADE/Geoffrey Gorer)
  • サド・ゴヤ・モーツァルト/ギィ・スカルペッタ著(Sade Goya Mozart- le quatorze juillet/Guy Scarpetta)
  • 文学と悪/ジョルジュ・バタイユ著
  • エロスの彼方の世界─サド侯爵/オクタビオ・パス著(UN MAS EROTICO : SADE/Octavio Paz)
  • マゾッホとサド/Gilles Deleuze著
  • クロノス・エロス・タナトス/マリー・ボナパルト著
  • サドと政治/林学著
  • Marquis de Sade -Anthologie Illustree- / various authors
  • サド/ジャン・ジャック・ブロシェ著
  • サド侯爵/ヴァルター・レニッヒ著
  • サド(知的常識シリーズvol.20)/スチュアート・フッド、グラハム・クロウリー著(Marquis de SADE-introduction & explanation-/Stuart Hood, Graham Crowley)
  • サド侯爵夫人/式場隆三郎著
  • フランス革命と家族ロマンス/リン・ハント著

関連項目

脚注

  1. テンプレート:Cite book
  2. Vie du Marquis de Sade by Gilbert Lêly, 1961
  3. 秋吉良人 『哲学の現代を読む6 サド - 切断と衝突の哲学』白水社、2007年、272頁。

外部リンク

テンプレート:Sister テンプレート:Wikisourcelang


テンプレート:France-stub