オリジナルビデオ
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オリジナルビデオとは、劇場公開を前提としないパッケージ専用の映画をいう。中には、劇場公開を前提としながらも諸事情によりパッケージ専用となった映画もあるが、こちらはビデオスルーと呼んで区別している。
略称はOV。その他の通称として、ビデオ映画やVシネマ、Vシネがある。ここでは主に実写作品について述べる。アニメ作品に関してはOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)を参照。
概要
1985年、バンダイのエモーションレーベルが30分の短編ながら早川光監督の『うばわれた心臓』を製作し発売。同年にはオレンジビデオハウスから『ギニーピッグ』シリーズが出されており、これらオリジナルビデオ製作の背景にはスプラッター映画のブームがあった[1][2]。その他にもアダルトアニメを発売していたワンダーキッズが井筒和幸監督で『コンバってんねん』を出すなど、黎明期のビデオ市場において散発的にオリジナルビデオは発表されていた。
1989年、東映が発売した東映Vシネマがオリジナルビデオを市場として確立する。東映は低迷する日本映画の現状打開のため、劇場公開にかかるコストを作品制作費に充填する事で、低予算ながら劇場公開作品に劣らぬ品質を生み出そうとしたのである。いわゆる大作ではなくプログラムピクチャーをビデオ供給したものであり[3]、東映のこの試みは功を奏し、1990年までに発売した20本の平均売り上げ数2万7千本と1万本でヒットと言われるビデオ業界で大成功を収め[4]、1990年4月からは月に1本、10月からは月2本と量産体制を整え[5]、Vシネマ=オリジナルビデオという意味合いで、事実上の代名詞として使用される事も多い。
東映の成功を追って[6]、日活が1990年3月15日に制作開始発表するなど、1990年代初頭に松竹[7]、東宝など次々と他の映画会社も参入していった。当時、映画会社は自社での劇場用映画の制作を減らしており、これら映画会社がオリジナルビデオをこぞって制作を始めたのは、それまでレンタルビデオのソフト供給源だった映画の旧作が底を突き始めていたためという事情もあった[8]。 また、映画会社のみならず、ビデオ会社のジャパンホームビデオ、アダルトビデオを制作していたダイヤモンド映像の村西とおるが「日本ビデオ映像」を設立してオリジナルビデオの制作を開始するなどした[9]。
さらには、バブル経済末期ということもあいまって、それまで映画製作に縁のなかった人々までが映画のプロデューサーに近いことをやれるということも魅力と3000万円から4000万という映画としては低予算な理由から殺到し[10]、当時全盛を迎えていたレンタルビデオ市場にオリジナルビデオが投入されていくことになった[11]。
1995年には、日本で年間150本の新作オリジナルビデオがリリースされる活況を見せた[12]。
しかし、濫作は育ちかけた市場を早期に供給過多に陥りさせ、個々の商品の売り上げを落とし、その結果、粗製濫造された商品が出回り、さらに売り上げは落ちていった。製作当初、東映のVシネマは6000万円から7000万円の予算で製作されていたが、2000年頃にはオリジナルビデオの制作費は2000万円から3000万円とも言われる[13]。ピンク映画、アダルトビデオとの関わりが多いエロス系の作品においては予算はさらに切り詰められており、50万~100万円台の作品まで登場している(参考:ピンク映画の一般的な予算は250万~300万円と言われており、最近では200万円台の予算の作品も登場している)。
低予算のオリジナルビデオでは、撮影もフィルム撮影からビデオ撮影へと変わり、近年ではシリーズ物の製作において、同じスタッフ・出演者で一度のスケジュール拘束で2話・3話とまとめて撮影するという手法が目立っている。
レンタルビデオ市場も縮小傾向にあり、2008年現在では市場に投入してきたDVDにより、オンラインDVDレンタルやDVDセルの市場に移行しつつある。DVDの場合、1本あたりの小売価格がVHSの10分の1に近いため、制作コストもそれに応じて安くなりつつあるのが現状である。
オリジナルビデオは、プロモーションのため短期間、単館で劇場公開されることも多く[14]、そうした作品はレンタルビデオ店で劇場公開作品として扱われる。
なお、アニメ作品に関してはOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)と呼ぶのが通例であり、こちらは上記の実写作品に先立つ1983年にはすでに最初の作品が発売されており、内容的にも上記のエロス作品等に該当しないものも多く存在する。
オリジナルビデオの主なメーカーおよびレーベル
すでに撤退しているものも含める。
- 東映ビデオ:東映Vシネマ
- にっかつビデオフィルムズ:にっかつビデオフィーチャー
- ジャパンホームビデオ:Vムーヴィー
- 松竹:SHVシネマ
- 大映:新映画天国
- 東宝:東宝シネパック
- GPミュージアムソフト:ミュージアム
- レジェンドピクチャーズ:ネクスタシー、シネポップ、リップスほか
- TMC:MIDNIGHT、TABOO7、JUNKFILM、STAR★DUST、ENGELほか
- ソフトガレージ
- マクザム
オリジナルビデオ作品の例
- ネオ・チンピラ 鉄砲玉ぴゅ~(1990年)
- 静かなるドンシリーズ
- スーパー戦隊Vシネマ
- 真・仮面ライダー 序章(1992年)
- 仮面ライダーW RETURNS(2011年)
- ビーロボカブタック クリスマス大決戦!!(1997年)
- テツワン探偵ロボタック&カブタック 不思議の国の大冒険(1998年)
- 燃えろ!!ロボコンVSがんばれ!!ロボコン(1999年)
- ウルトラシリーズ
- ウルトラマンG(1990~1991年、一部編集され劇場公開され、テレビ放送あり)
- ウルトラマンパワード(1993~1994年、後にテレビ放送された。)
- ウルトラマンネオス(2000~2001年、後にテレビ放送された。)
- ウルトラマンティガ外伝 古代に蘇る巨人(2001年)
- ウルトラマンダイナ 帰ってきたハネジロー(2001年)
- ウルトラマンガイア ガイアよ再び(2001年)
- ウルトラマン怪獣伝説 40年目の真実(2005年)
- ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス(2008年)
- ウルトラマンメビウス外伝 ゴーストリバース(2009年)
- ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ(2010年)
- ウルトラマンゼロ外伝 キラー ザ ビートスター(2011年)
- ウルトラセブン(1998-2002年)
- ブラック・ジャックシリーズ
- 難波金融伝・ミナミの帝王シリーズ
- XX(ダブルエックス)シリーズ
- 借王シリーズ
- Zero WOMAN(ゼロ・ウーマン・0課の女)シリーズ
- 首都高速トライアルシリーズ
- 修羅がゆくシリーズ
- 首領への道シリーズ
- 白竜シリーズ
- 極道の紋章シリーズ
- 喧嘩の極意シリーズ
- オールナイトロングシリーズ(オールナイトロング2から)
- けっこう仮面シリーズ
- 喧嘩の花道シリーズ
- 勝手にしやがれ!!シリーズ
- 岸和田少年愚連隊・「カオルちゃん」シリーズ - 他の「岸和田少年愚連隊」シリーズは同項参照
- DEAD OR ALIVEシリーズ - 劇場公開作品でもある。
- 恐怖新聞
- 東京フレンズ
- RAY
- 龍が如く
- ギニーピッグ
- こっくりさん 日本版
- 心霊2002
- 怪異伝承 鬼殻村
- 普通の人々
- 地球防衛少女イコちゃん
- 竹中直人の放送禁止テレビ - バラエティーがビデオ作品化するという珍しい例
- エコエコアザラク
- ぱちんこバトルロワイヤル
- 痴漢日記シリーズ
- 黒い下着の女教師 - フランス書院文庫の映像化作品。
- 青春Hシリーズ
- 恐怖の訪問者
- 大脳分裂
- スピーシーズ3禁断の種 - 米本国ではオリジナルビデオだったが、日本では劇場にて特別上映。
- ミミックIII - 2作目はTVムービー
- ザ・マークスマン - ウェズリー・スナイプス主演。2006年に劇場公開。
- アート・オブ・ウォー2 - ウェズリー・スナイプス主演。2009年に劇場公開。
- インビジブル2 - クリスチャン・スレーター主演。2006年に劇場公開。
- ラストサマー3
- ナポレオン・ダイナマイト
- テディです! TEDDY DEATH
- 北斗の拳 韓国版 - 韓国にて無許可で制作したため日本では未発売
オリジナルビデオを中心に活躍している俳優
- 哀川翔
- 竹内力
- 清水健太郎
- 隆大介
- 中条きよし
- 渡辺裕之
- 白竜
- 萩原流行
- 清水宏次朗
- 小沢仁志
- 小沢和義
- 志賀勝
- 片桐竜次
- 寺島進
- 力也
- 中野英雄
- 松田優
- 松方弘樹
- 工藤俊作
- Koji
- みぶ真也
- 高木淳也
- 遠藤憲一
- 武田久美子
- 森山祐子
- 嶋村かおり
- 夏目玲
- 夏樹陽子
- 濱田のり子
- 原田龍二
- 栗林知美
- 中原翔子
- 嘉門洋子
- 遠野舞子
- 松田純
- 佐伯日菜子
- 今村理恵
脚注
- ↑ 早川光極私的映画史 うばわれた心臓 早川光公式サイト
- ↑ 尾崎一男「狂い咲き美少女ホラー その解体と検証」『別冊映画秘宝 アイドル映画30年史』洋泉社、2003年、p186
- ↑ 『ニッポン映画戦後50年 1945~1995』朝日ソノラマ、1995年、p221
- ↑ 佐野眞一『日本映画は、いま スクリーンの裏側からの証言』TBSブリタニカ、1996年、p108
- ↑ 尾形英夫『あの旗を撃て』オークラ出版、2004年、p297
- ↑ 三池崇史『監督中毒』ぴあ、2003年、p202
- ↑ SHVシネマの第1回作品は向井寛監督『女刑事サシバ』で1990年12月28日発売
- ↑ 佐野眞一『日本映画は、いま スクリーンの裏側からの証言』TBSブリタニカ、1996年、p113
- ↑ 足立倫行『アダルトな人びと』講談社文庫、1995年、p51
- ↑ 『三池崇拝の仕事』太田出版、2003年、p29、p137.
- ↑ 轟夕起夫編『映画監督になる15の方法』洋泉社、2001年、p37
- ↑ 『キネマ旬報』1995年10月上旬号、p.204。
- ↑ 福田卓郎『脚本家になる方法』青弓社、2000年、p13
- ↑ 三池崇史『監督中毒』ぴあ、2003年、p208