ヒヨドリ
ヒヨドリ(鵯、Hypsipetes amaurotis)は、スズメ目ヒヨドリ科ヒヨドリ属に分類される鳥類。
目次
分布
日本、サハリン、朝鮮半島南部、台湾[1]、中国南部、フィリピンの北部[1](ルソン島[2])に分布する。日本国内では留鳥または漂鳥としてごく普通に見られるが、他の地域での生息数は少ない[3]。
形態
全長は約27.5 cm[4][5] (27-29 cm[6])。翼開長は約40 cm[5]。尾は長めで(尾長10.9-12.5cm[7])、ムクドリやツグミより体型はほっそりしている[8]。くちばしは黒くて先がとがる。雌雄同色。頭部から胴体は灰色の羽毛に覆われるが、頬に褐色の部分があり、よく目立つ。また、頭頂部の羽毛は周囲よりやや長く、冠羽となっている。翼や尾羽は灰褐色をしている。南に生息するものは、北に生息するものより体色が濃い(グロージャーの法則)。
日本の亜種
- Hypsipetes amaurotis amaurotis (Temminck, 1830) ヒヨドリ(基亜種)
- 北海道、南千島(国後島ではまれな旅鳥)、本州、粟島、佐渡、隠岐、見島、四国、九州、対馬、壱岐、五島列島、屋久島、種子島、伊豆諸島に生息する。舳倉島では旅鳥として認められ、奄美大島、琉球諸島には冬鳥として渡来する。[9]
- Hypsipetes amaurotis squameiceps (Kittlitz, 1830) オガサワラヒヨドリ
- Hypsipetes amaurotis magnirostris (Hartert, 1905) ハシブトヒヨドリ
- Hypsipetes amaurotis borodinonis (Kuroda, 1923) ダイトウヒヨドリ
- Hypsipetes amaurotis ogawae (Hartert, 1907) アマミヒヨドリ
- Hypsipetes amaurotis pryeri (Stejneger, 1887) リュウキュウヒヨドリ
- Hypsipetes amaurotis stejnegeri (Hartert, 1907) イシガキヒヨドリ
- Hypsipetes amaurotis nagamichii (Deignan, 1960) タイワンヒヨドリ
イソヒヨドリはヒヨドリの名が付くが、ヒヨドリ科ではなくツグミ科の鳥であって類縁関係は遠い。
生態
里山や公園などある程度木のある環境に多く生息し、都市部でも見られる。ツグミやムクドリよりも体を直立させてとまり[8]、おもに樹上で活動するが、地上に降りることもある。飛ぶときは数回羽ばたくと翼をたたんで滑空するパターンを繰り返して飛ぶため、飛ぶ軌道は波型になる。鳴き声は「ヒーヨ! ヒーヨ!」などと甲高く聞こえ、和名はこの鳴き声に由来するという説がある。
日本では周年見られるが、春および秋には渡りが各地で確認される[1]。秋には暖地へ移動する個体も多く、10-11月には渡りが日本各地で観察され[4]、房総半島南端、伊良湖岬のほか、関門海峡では1,000羽を越えて渡る群れも観察される。
果実や花の蜜を食べる。繁殖期は果実に加え昆虫類も多く捕食する。非繁殖期は果実(センダンやイイギリ、カキ、ヘクソカズラなど)がほとんどである。ツバキなどの花の蜜を好む[3]。
5-9月にかけて繁殖する。繁殖期間が比較的長いことについては、捕食されるなど繁殖の失敗による再繁殖が多いことが一つとして考えられる[1]。木の枝上に外径 12-20cm の体の大きさに比べると小型の巣を作る[7]。高さ1-5mに営巣し[1]、巣は椀形で[10]、小枝、枯れつる、イネ科の茎、細根[7]、市街地ではビニールの紐などを使って作られ[1]、産座には松葉やシュロの繊維、ササの葉などが粗雑に敷かれる[10]。1回の繁殖で4個(3-5個[2])の卵を産み[1]、卵の大きさは約2.95cm × 2.05cm[2] (2.75-3.3cm × 2.0-2.1cm) で、淡いバラ色に赤褐色の斑がある[7]。おもに雌のみによって12-14日間抱卵され、孵化した雛は雌雄により育てられる[1]。雛は10-11日で巣立つが[2]、多くは巣立って数日のうちはあまり飛べないため巣の近くにおり、またその後1-2か月のあいだ親鳥とともに行動する[1]。
人間との関係
日本では里山や公園でよく見られる身近な野鳥の一つである。富山県砺波市の市の鳥に指定されている。
糖分を好むためか、ツバキやサクラなどの花にやってきて蜜を吸ったり、庭先にミカンやリンゴなど果物の半切れを置いておくとすぐにやって来たりする[11]。 しかし、ときに集団で畑に現れキャベツやブロッコリー、イチゴ、ミカンなどの農作物を食い荒らすこともあり、農家には嫌われる。狩猟鳥の指定も果樹を食害する農業害鳥である本種を、煩瑣な手続きを経ないで駆除できるよう配慮したためである。
仔飼いにすると非常によく慣れ、飼い主を見分けることから平安時代は貴族の間で盛んに飼われた。古今著聞集などにその記述があり、現在の競走馬のように個体名が付けられたりして愛玩されたようである。
前述のように、日本国内では都市部を含めごく普通に観察されるが、分布がほぼ日本国内に限られているため、日本を訪れる海外のバードウォッチャーにとっては日本で観察したい野鳥のひとつとなっている[11]。
Sibley分類体系上の位置
学名の変遷
ヒヨドリ属の学名はヒヨドリ科の鳥類に関する分類学の進歩とともに変遷している。
- 1882年 Hypsipetes amaurotis
- 1943年 Microscelis amaurotis
- 1960年 Hypsipetes amaurotis
- 1990年 Ixos amaurotis[12]
- 2002年 Microscelis amaurotis
日本では Hypsipetes amaurotis [9]や Ixos amaurotis が一般的であり、国際的な分類や保全に関するサイトでは Ixos amaurotis [13]や Microscelis amaurotis [6]が一般的である。
文化
俳句
秋の季語
脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
テンプレート:Sister- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 テンプレート:Cite journal
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 三省堂編修所・吉井正 『三省堂 世界鳥名事典』、三省堂、2005年、428頁。ISBN 4-385-15378-7。
- ↑ 3.0 3.1 ひと目でわかる野鳥 (2010)、170頁
- ↑ 4.0 4.1 高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版』、日本野鳥の会、2007年、228頁。ISBN 978-4-931150-41-6。
- ↑ 5.0 5.1 『鳥630図鑑』、増補改訂版、日本鳥類保護連盟、2002年、226頁。
- ↑ 6.0 6.1 テンプレート:Cite book
- ↑ 7.0 7.1 7.2 7.3 高野伸二 『カラー写真による 日本産鳥類図鑑』、東海大学出版会、1981年、334-335頁。
- ↑ 8.0 8.1 。高野伸二 『野鳥識別ハンドブック』改訂版、日本野鳥の会、1983年、231頁。
- ↑ 9.0 9.1 9.2 9.3 9.4 9.5 9.6 9.7 9.8 テンプレート:Cite book
- ↑ 10.0 10.1 小海途銀治郎、和田岳 『日本 鳥の巣図鑑 - 小海途銀次郎コレクション』、東海大学出版会、2011年、170-171頁。ISBN 978-4-486-01911-4。
- ↑ 11.0 11.1 庭で楽しむ野鳥の本 (2007)、18-19頁
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite book