北大東島
北大東島(きただいとうじま)は、大東諸島に属する島で、沖縄本島の東約360kmに位置する。
地理
面積11.94km²[1]、周囲18.3km[2]、標高74m[3]の島で、気候は亜熱帯の海洋性気候に属している。
サンゴ礁が隆起して出来た隆起環礁の島であり、おおむね外周部が小高く、中央が低くなっている[4]。
独自の生態系
他では見ることができない固有種などが多く分布・生息しているが、環境省のレッドリストに登録されているものもいくつかある。
島の外周部で防風林を形成している森林は長幕(ナガハグ)と呼ばれ、「長幕崖壁および崖錐の特殊植物群落」として国の天然記念物[5][6]にもなっている。植生は、風衝地にはダイトウワダン-ガジュマル群集などが、脚部には自然林であるビロウ-ダイトウセイシボク群集である、これらの林には、南北大東島の固有変種であるダイトウワダン(絶滅危惧IA類)[7][8]やダイトウセイシボク(絶滅危惧II類)[7][9]、他に母島(小笠原諸島)及び海南島(中国)にしか分布しないヒメタニワタリ(絶滅危惧IA類)[7][10]がある。
また、長幕以外の場所にはナガバアサガオ(絶滅危惧IA類)[7][11]が分布するが、隣の南大東島には類似した環境があるにもかかわらず分布せず、北大東島の固有種とされる。
一方で、南大東島では幕防風林にて比較的よくみられるダイトウビロウは、北大東島では決して多いとはいえず、島の中央部にて比較的まとまって生えている場所は、村指定の天然記念物となっている。この天然記念物の林と長幕を除けば、北大東島でみられる林は、他の低平な島々でよくみられるギンネム(外来種)やシマグワを主とした林相である。
動物では、ダイトウヒメハルゼミが環境省レッドリスト(絶滅危惧II類)[7]や沖縄県レッドデータブック(絶滅危惧I類)[12]に記載されている。南北大東島とも危機的状況にあるが、とりわけ北大東島産の状況は「風前の灯火」といわれる。この原因として、農薬散布により生息地が局限されたうえに、主生息地における開発行為(道路建設など)が甚だしくなされたことが挙げられている。
歴史
- 1630年代以前 - かなりの昔から沖縄の人達の間では大東諸島のことは「ウファガリジマ」と言われてその存在が知られていた。
- 1630年頃 - オランダ人の手による欧製地図にて、大東諸島が「Amsterdam」として登場し西洋人にも知られることとなった。
- 1820年 - ロシア人、ポナフィディンが大東諸島に到達、「ボロジノ諸島」と名付けられる(この頃から欧米の地図では「ボロジノ諸島」とされる)。
- 1885年 - 日本の領土に編入される。
- 1900年 - 玉置半右衛門を中心とした八丈島からの開拓団が大東諸島に入植し、1903年から北大東島の開拓に着手[13]。
- 戦前は、南大東島と同様、玉置商会~東洋製糖~大日本製糖(現在の大日本明治製糖の前身)が島全体を所有する「社有島」であった。但し北大東島では製糖業も営んではいたもののリン鉱業が主であり、農業を目的とした移住の他に本土・沖縄・台湾などから多数の鉱山労働者が出稼ぎに来ていたが、農業移住者とは異なり閉山後は島を離れた。当時の彼らの生活は、公衆浴場跡などにわずかな痕跡を留めるのみである。
- 燐鉱採掘は戦後も、米軍の管理下によって細々と行なわれたが、米国式の機械掘りとなった事から採掘量は増大したが品質の低下を招き(戦前は富鉱部のみを選んで手掘りしていた)、採掘可能な鉱床も尽きた事から1950年代に終了した。
- 1946年 - アメリカ軍政の開始により製糖会社の支配から脱する。村制が施行され、北大東村となる。
- 1972年 - 沖縄返還により、日本に復帰。
行政
全島が沖縄県島尻郡北大東村に属する。なお、同村には北大東島から約160km南方の無人島・沖大東島(ラサ島)も属しており「一島一村」ではない点が隣接する南大東村との相違点である。
脚注
参考文献
- 新納義馬 「長幕崖壁および崖錐の特殊植物群落」 『日本の天然記念物』 加藤睦奥雄ら監修、講談社、1995年、146頁、ISBN 4-06-180589-4。
- 林正美ら.1999年.ダイトウヒメハルゼミの生態調査報告.Cicada14:1-11
- 岡崎幹人.2006年.ダイトウヒメハルゼミについての観察記録.Cicada18:75-78
関連項目
外部リンク
- 島の紹介 - 北大東村
- 北大東島 沖縄39離島情報サイト
- ↑ 国土交通省 沖縄の島面積
- ↑ 北大東島のデータ(沖縄県企画部地域・離島課)
- ↑ 沖縄県市町村別最高点一覧
- ↑ ただし、東側はこの限りではない地形もある。
- ↑ 国指定文化財等データベース(文化庁)
- ↑ 新納義馬 「長幕崖壁および崖錐の特殊植物群落」 『日本の天然記念物』 加藤睦奥雄ら監修、講談社、1995年、146頁、ISBN 4-06-180589-4。
- ↑ 7.0 7.1 7.2 7.3 7.4 環境省報道発表資料 『哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物I及び植物IIのレッドリストの見直しについて』、2007年8月3日。
- ↑ 横田昌嗣・宮城康一・松村俊一 「ダイトウワダン」 『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-』、沖縄県文化環境部自然保護課編 、2006年、176頁。
- ↑ 横田昌嗣・伊波善勇 「ダイトウセイシボク」 『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-』、沖縄県文化環境部自然保護課編 、2006年、104頁。
- ↑ 横田昌嗣・比嘉清文 「ヒメタニワタリ」 『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-』、沖縄県文化環境部自然保護課編 、2006年、336-337頁。
- ↑ 横田昌嗣・新城和治・松村俊一 「ナガバアサガオ」 『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-』、沖縄県文化環境部自然保護課編 、2006年、336-337頁。
- ↑ 金城政勝・林正美 「ダイトウヒメハルゼミ」 『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-』、沖縄県文化環境部自然保護課編 、2006年、228-229頁。
- ↑ テンプレート:Cite news