ヒドリガモ

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ヒドリガモ (緋鳥鴨、学名:Anas penelope テンプレート:AU, 1758)は、カモ目カモ科マガモ属分類される鳥類の一[1][2]オナガガモマガモコガモなどと並んで、日本で最も普通に見られるカモ類である[3]淡水型カモの一種で、他の淡水型カモよりも上に出る傾向がある[3][4]

分布

ユーラシア大陸の北部[1]寒帯地域やアイスランド繁殖し、冬季はヨーロッパアフリカ北部インド北部中国南部、朝鮮半島日本などに渡り越冬する[5]

日本では冬鳥として全国に渡来する[3][6]北海道では厳冬期には少なく、春と秋によく見られる[5]

形態

全長はオスが約53 cm[注釈 1][7]メスが約43 cm、翼開長は68-84 cm[3]。オスの成鳥は額から頭頂がクリーム色で[注釈 2]、顔から頸が茶褐色、胸は薄い茶色である[5]。体の上面は灰色で黒い細かい斑が密にある。下尾筒は黒い。メスは全体に褐色、他のカモ類と比較して赤褐色みが強く、腹は白い[3][4]。オスのエクリプスはメスと似ているが、雨覆羽が白く全体に赤みが強い[4][8]くちばしはやや短めで[9]、雌雄とも青灰色で先端が黒い[3][4]。体の下面は白い。次列風切羽には白黒緑の模様がある[8]は灰黒色[8]。頭部の形状はアメリカヒドリと同様に、他のカモ類と異なり台形に近い形状であることが特徴[9]

生態

越冬時は、湖沼河川河口海岸干潟などに生息する[4]。数百羽の群れになることもある[3]。繁殖期はツンドラ地帯針葉樹林にある湿地などに生息する。

食性植物食であるが、水生昆虫軟体動物を食べることもある[9]。潜水して捕食はせず、水面に浮かぶ植物の種子等を採食する[4]。また、岸や中洲に上がって陸上の植物も食べる[3]海草海藻も好んで食べるので、他の淡水型カモ類と比べると、海岸付近で観察されることも多い[3]。昼間は群れで湖沼の中央や陸地に上がって休息し、夕方から明け方にかけて水田や河川などの餌場に向かい採餌することが多い[5]。海岸近くで生活する個体は、夜海上で海苔などの海藻類を採食する[5]

繁殖形態は卵生。水辺の草地などに営巣し、1腹7-11個の卵を産む。抱卵日数は23-25日である。

オスは口笛のような「ピュー、ピュー」という特徴ある甲高い声でよく鳴き(Hvizdak256.ogg オスの鳴き声[ヘルプ/ファイル]</span>)、メスは他のカモ同様低い声で「ガァー、ガァー」と鳴く[3][8]

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名前の由来

ファイル:Anas penelope male.JPG
ヒドリガモのオスの頭部は茶褐色で、和名はこの羽色を緋色にたとえたことに由来する

学名の名(Ans)は「カモ類」を意味し、種小名(penelope)は人名に由来する[10]

和名は頭部の羽色を緋色にたとえたことに由来する[4]。緋鳥(ひどり)と呼ばれ、その後ヒドリガモとなった[10]。異名として、赤頭、息長鳥、あかがし、そぞがも、みょうさく、ひとり、あかなどがある[10]テンプレート:-

分類

交雑個体

主に北アメリカに生息する近縁種のアメリカヒドリ(Anas americana)とは繁殖地が近接している(シベリア東部では両種が混在する繁殖地もある)ので、ヒドリガモとアメリカヒドリの交雑個体が観察されることがある[5]。稀な冬鳥としてヒドリガモの群れに混じって日本に飛来することがある[11]。アメリカヒドリのメスの頭部は白っぽいが、ヒドリガモのメスは褐色[12]

Sibley分類体系上の位置

テンプレート:Sibley

種の保全状況評価

ファイル:Ringing Pintail(Anas acuta).JPG
鳥類標識調査のためにヒドリガモに取り付けられた足環

個体数は減少傾向にあり、国際自然保護連合(IUCN)により2012年からレッドリスト軽度懸念(LC)の指定を受けている[13]

日本では全国の多数の調査地点で個体数の調査が実施されている。飛来し越冬する個体数は1996年から2009年までの間でほぼ安定傾向にあり[14]、17都道府県で減少傾向、11県で増加傾向であった[15]環境省都道府県によりレッドリストの指定を受けていない[16]

1979年多摩動物公園が日本国内での初めての人工繁殖に成功し、また1998年旭山動物園が日本国内での初めて繁殖に成功し、それぞれ繁殖賞を受賞した。

人間との関係

日本では鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律により、狩猟鳥として狩猟鳥獣対象の一種に指定されている[17]。肉が食用に賞味されるが臭みがあるのであまり好まれない。またマガモなどと比較して小さく、得られる肉量が少ないことも手伝って狩猟される機会は少ない。

養殖場の海苔[3][18]や、栽培している大麦を食害することがあるため[3][19]、害鳥として嫌われることがある。

脚注

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注釈

出典

参考文献

関連項目

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外部リンク


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  4. 以下の位置に戻る: 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 4.6 真木 (2012)、52頁
  5. 以下の位置に戻る: 5.0 5.1 5.2 5.3 5.4 5.5 叶内 (2006)、50-51頁
  6. 元の位置に戻る 神山 (2011)、2頁
  7. 元の位置に戻る 伊藤 (2011)、18頁
  8. 以下の位置に戻る: 8.0 8.1 8.2 8.3 高木 (2002)、30-31頁
  9. 以下の位置に戻る: 9.0 9.1 9.2 大橋(2008)、26-27頁
  10. 以下の位置に戻る: 10.0 10.1 10.2 国松 (1995)、18頁
  11. 元の位置に戻る 中川 (2010)、58頁
  12. 元の位置に戻る 叶内 (2006/3)、46頁
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  14. 元の位置に戻る 笠原 (2010)、1頁
  15. 元の位置に戻る 笠原 (2011)、41頁
  16. 元の位置に戻る テンプレート:Cite web
  17. 元の位置に戻る テンプレート:Cite web
  18. 元の位置に戻る 伊藤 (2011)、17頁
  19. 元の位置に戻る 藪 (2002)、41頁


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