デニーズ (日本)
デニーズ(英称:Denny's)は、セブン&アイ・ホールディングス傘下のセブン&アイ・フードシステムズが日本国内で運営するファミリーレストランチェーンである。名称は、かつての提携先であるアメリカ合衆国の大手レストランチェーン、デニーズに由来している。但し、現在は同社との契約関係は解消されており、ブランド名だけを譲り受けた日本独自のチェーンとなっている(詳細は#沿革、#年表欄参照)。
2014年現在関東地方及び中部地方を中心に展開しているが、北海道、福島県と宮城県[1]を除く東北地方、新潟県、北陸地方、大阪府と兵庫県を除く関西地方、中国地方、四国地方、九州地方、沖縄県には全く展開しておらず、イトーヨーカ堂と同様に展開地域に非常に偏りが見られる。
目次
沿革
1973年、株式会社イトーヨーカ堂がアメリカ合衆国のレストラン大手デニーズ社と技術援助契約を結び、株式会社デニーズジャパンを設立した。
1974年、デニーズジャパンは初の店舗を神奈川県横浜市のイトーヨーカドー上大岡店1階に、ビルイン型店舗としてオープンさせた。アメリカのデニーズ社から料理全般のレシピ、調理器具類をそのまま日本に持ち込み、クラブハウスサンドイッチ、オムレツ、チリ、フレンチトーストなどの洋風メニューや、ステーキ、ハンバーガーなどの本格的なアメリカンメニューも手軽に利用できる店をつくり上げた。その後は競合他社と同様、郊外型ロードサイド店舗を中心に出店を続け、1980年代のファミリーレストラン黄金期には年間20店舗前後の新店舗をオープンさせた。
創業から1980年代中頃にかけては、デニーズジャパン店舗のメニューも、アメリカのデニーズと似通ったものであった。これはアメリカのデニーズ社と結んでいた契約上、独自のアレンジを加えることが難しくなっていたためである。1984年、アメリカのデニーズ社から商標権を買い取ったことにより[2]、デニーズジャパンは日本国内においてデニーズの商標を自由に使えることとなった。以後、同社の店舗では独自開発したメニューが中心となってゆき、現在では本家アメリカと共通するメニューは一切残されていない。特に1994年のファミール吸収以降は麺類、丼物、和風膳などの和食部門が充実し、日本人向けにアレンジした洋風料理と共にメニューの中核を形成している。
バブル景気崩壊後の1994年、イトーヨーカ堂の完全子会社である株式会社ファミールから郊外型のレストラン店舗を譲受し、デニーズ店舗への改装を施した。イトーヨーカ堂グループにおいて、ロードサイド型レストランの運営はデニーズジャパンに集約され、ファミールはイトーヨーカドー店舗内のレストランや社員食堂などのコントラクトフード事業に特化した。
2005年9月1日、デニーズジャパンはイトーヨーカ堂、セブン-イレブン・ジャパンと共同で、株式移転により持株会社株式会社セブン&アイ・ホールディングスを設立し、その完全子会社となった。
2007年1月10日、セブン&アイ・ホールディングスが株式会社セブン&アイ・フードシステムズを設立し、同年3月1日には
- デニーズジャパン
- ファミール
- ヨーク物産株式会社(イトーヨーカドー店内でファストフード店「ポッポ」を運営)
の3社が、新会社の完全子会社となった。
2007年9月1日、セブン&アイ・フードシステムズがデニーズジャパンを吸収合併した。これにより、デニーズはセブン&アイ・フードシステムズの店舗ブランドの一つとなった。
なお、セブン&アイグループの3年間の中期経営計画により、2008年度以降3年間で不採算の130店舗程度(全店舗の約2割)を閉鎖することが明らかになった。一部の閉鎖店跡にはセブン-イレブンへの転換も検討する[3]としていたが、実際にはかなり少数に留まり、代わってユナイテッド&コレクティブやブロンコビリーなど新興勢がレストランを居抜き出店する形態が見られている。
2009年9月28日、逗子市内で28年間営業してきた「デニーズ逗子店」が地主との契約満了に伴い閉店。同店は1981年7月にオープン。海岸沿いに立つ立地条件を生かした景観の良さと広い駐車スペースが売りで、地元住民らからは「逗デニ」や「逗子デニ」の愛称で長年親しまれてきた。この逗子店の場合、赤字経営による閉店ではなく、別に理由があるとされている。跡地には同年12月、コロワイドが運営する軽食喫茶「なぎさ橋珈琲」がほぼ居抜き出店のかたちでオープンした。
特徴
調理器具
同社ではアメリカンメニューのステーキ、ハンバーグ料理に対応したチャーブロイラーを全店に導入している。 このチャーブロイラーは
- 肉との接触部分が少なく、
- グリッドの傾斜により余分な油が流れ、
- きれいな焼き目がつく
ガスグリドル調理器である。これを使って焼き上げられるハンバーグメニューは、2006年現在でも看板商品となっている。
サービス
同社店舗では、客の来店時に「いらっしゃいませ!デニーズへようこそ!」との挨拶を行なっているが、これはデニーズを選んだ客への感謝の気持ちを込めた言葉であると同時に、来店客があったことを他の従業員に連絡する手段である[4]と同社は説明している。
価格
低価格系のガスト、価格がやや高めのロイヤルのイメージがあるなか、デニーズはやや高め系や中間の価格設定と言われている。昨今の原材料高騰による一部メニューの値上げを実施したが、外食産業の環境が厳しくなり中間価格帯のデニーズは苦戦する。そのため、2008年から2009年にかけて急きょ20品を大幅値下げに踏み切った。競合他社が相次いで値上げをしていた中の異例の値下げであったため、メディアや他社から注目される。現在は、戦略的には中間価格から低価格へイメージへ転換しているとみてもよい。
メニュー
かつては通常店の通常メニューの他に、D's店によるここだけメニューや特殊店による個店別メニューがあったが、現在は、ここだけメニューは廃止され、佐野プレミアムアウトレット店、市ヶ谷店のみ個店別メニューを実施している。
メニューについては、ほぼ1ヶ月ごとに期間限定メニューの改定を行っており、2ヶ月ほどで季節メニューが切り替わる仕組みになっている(たまに提供方法、セット価格、ドリンクの改定など)。
ドリンク
競合他社の多くがセルフサービスのドリンクバーを導入しているが、同社では一部店舗を除きフルサービスを堅持している。フロアー従業員がコーヒーのデカンターを持って客席を回るボトムレスカップサービスを、1号店の頃から続けている。
2013年11月までは14種類のドリンク(ドリップ珈琲、深入りコーヒー、アイスコーヒー、アイスティ、アイスウーロン茶、宇治冷緑茶、コーラ、メロンソーダ、カルピスソーダ、ピンクレモネード、季節のソーダ、宇治緑茶、ダージリン紅茶、赤いハーブティ)を無料でお替わりできる「フリードリンクサービス」(320円。1杯のみの料金は220円)を設定していたが、2013年12月以降は、山梨県、長野県、静岡県、愛知県、三重県の一部店舗を除き廃止され、お替わりが有料化(1杯あたり100円)された。ただしドリップ珈琲(旧名称アメリカンコーヒー)のみ引き続き無料でお替りが可能。
茨城県、福島県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の一部店舗ではフルサービスを廃止し、ドリンクバーを導入している。また、一部店舗ではお替わり無料、割引の設定をしていない。
卵料理
創業当時から1980年代後期までの代表的なメニューに、モーニングメニューとして「たまご2個お好みで」という、その名の通り卵2個を用いた料理がある。アルミのソテーパンを使ってふんわり焼き上げられたオムレツは、当時各テーブルにびん入りで置かれていたハインツの濃厚ケチャップが良く合うと云われていた。当初はゆで卵、目玉焼き、オムレツ、ポーチドエッグなど最大21種類のレシピの中から客の好みに応じて調理され、火の通し加減なども細かく注文可能であったが、こうしたオーダー形式は日本人の文化には馴染まなかったために徐々に選択肢が縮小されていき、最終的にはメニューそのものから消滅してしまった。現在注文可能な卵料理には、半熟風味のオムライスやモーニングメニューにあるデニーズモーニングがある。モーニングに関しては現在も焼き方の指定が豊富である。
決済
同社は一部店舗に、セブン銀行の現金自動預け払い機 (ATM) を設置している。
レジでの支払いには、
- 現金
- nanaco(2007年12月中旬より)
- セブン&アイ共通商品券
- IYグループ商品券(2005年11月30日をもって発行が停止されたが、それ以降も使用可能)
- ジェフグルメカード
- QUOカード
- クレジットカード会社のギフトカード
- クレジットカード
- バークレーバウチャーズ食事券
- QUICPay(2008年より順次導入)
- Suica(一部店舗)
の利用が可能である。
デニーズカード
デニーズカードは各店で使用可能な1,000円から10,000円までのプリペイドカードである。繰り返し使用可能なチャージシステムを採用しており、2009年5月31日までは店内での飲食代が5%割引になるという特典もあった。個人情報などの記入を一切することなく、店内レジにて無料で発行が可能(初回のみ、あらかじめ1000円以上チャージしなければ発行することができない)。2010年3月31日をもって取扱を終了。
- カードの有効期限は、店舗での残高確認、チャージ、カードでの支払い後1年間。1年経過後は無効となる。
- カードへのチャージは1,000円単位で1回のチャージ最大1万円まで。回数を分けて最大3万円までチャージ可能。
- 通常の会計にはクレジットカードが使えるが、デニーズカードのチャージは現金でしか行えない。
- カードに1円以上の残高がなければ5%割引処理が出来ない為(足りない分は現金で支払うことが出来る)あらかじめチャージしておく必要がある。又、個別会計中にチャージすることはできない。
- 2009年3月31日をもって発行を終了し、また同年5月31日をもって5%割引の特典とチャージの取扱も終了した。
- 2009年6月1日から2010年3月31日まで、デニーズカードとの引き換えを条件にnanacoカードの発行手数料(通常300円)を無料または、ドリンクセット無料券進呈のいずれかの特典を受けられる。
- 残高の残っているデニーズカードは上記期間中、現金にて払い戻しが可能。
クレジットカード
ファミリーレストランチェーン最大手のすかいらーくグループが長年クレジットカード決済を導入していなかった一方で(現在は決済可能)、デニーズでは古くから各種クレジットカードが利用可能となっている。かつてイトーヨーカ堂と「IYグループカード(IYカードとは別)」発行で提携していたNICOSの国内専用カードは利用不可だが、コスモ石油のコスモ・ザ・カード<ハウス>(セディナCF発行のハウスカード)の利用が出来る。これは1990年代にコスモ石油がデニーズジャパンのフランチャイジーとなる業務提携を結んでおり、そのまま資本提携に繋がると期待された時代の名残である。なお、コスモ石油のデニーズ店舗はデニーズジャパン直営となった。さらにコスモ石油はイオングループと提携し、セルフガソリンスタンド内にミニストップ加盟店の出店や提携カードの発行をしている。
逸話
デザート
1990年5月、同社のデザートメニュー「ティラミス」が雑誌『Hanako』で紹介され流行した。これはマスカルポーネチーズと、エスプレッソをしみ込ませたスポンジケーキとを交互に重ね合わせ、上部にココアパウダーをかけたものである。1992年7月「ナタ・デ・ココ」が女子高校生たちの口コミから人気となり、マスコミにも取り上げられ再びブームとなった。
看板
セブン&アイ・ホールディングス設立に伴い、デニーズジャパンの店先に設置されている看板が「7 & i」のシンボルマークを強調したデザインに変更されたが、この看板はセブン-イレブンの看板と間違えられることがあり、デニーズ目当ての顧客を看板が逆に遠ざけてしまうというマイナス効果も一部に指摘された[5]。
こういったマイナス効果を踏まえ、翌2006年夏から「7 & i」を小さくし、その下に「Denny's」を強調した看板へと再度付け替えが行われた。さらに2006年後半からは「7 & i」の表記を下部に移し、旧看板の六角形型モチーフを上に大きくあしらったデザインに改められた。[6]
そして2009年秋ごろを境として、複数の店舗において看板下に掲示されていたカタカナ表記の懸垂幕が外され、さらには一部店舗で以前の六角看板が復活している。
来客数が落ちている中、セブン&アイ・ホールディングスのシナジー効果を目に見える形で示そうと決断した看板デザインの変更であったが、これがかえって集客力を落とす遠因の一つとなってしまったのみならず、度重なる看板デザインの変更に伴う一時的なコストの増加が、同社内の一部では問題視されたともいわれている。
その他
年表
- 1973年5月 - 株式会社イトーヨーカ堂と、アメリカのデニーズ社が技術援助契約を結ぶ
- 1973年11月16日 - イトーヨーカ堂によって株式会社デニーズジャパンが設立される。
- 1974年4月 - イトーヨーカドー上大岡店内にデニーズ1号店を出店する(上大岡店)。
- 1979年2月 - 50店舗達成(西国分寺店)。東海、北関東地区へ進出する。
- 1980年2月 - 100店舗達成(川崎菅生店)。
- 1981年8月 - 本社を千代田区から港区芝公園へ移転する。
- 1982年11月 - 東京証券取引所二部に上場する。
- 1984年11月 - 技術援助契約解消。アメリカのデニーズ社から日本国内におけるデニーズ商標権を買い取る。
- 1984年7月 - 200店舗達成(横浜星川店)。
- 1986年8月 - 東証一部に株式が指定変更される。
- 1988年7月 - 300店舗達成(今池店)。
- 1988年11月 - POS(販売時点情報管理システム)を稼動させる。
- 1993年3月 - 400店舗達成(水戸城南店)。
- 1998年3月 - 500店舗達成、三重県に進出する。
- 2005年8月 - 上場廃止となる。
- 2005年9月 - (株)デニーズジャパン、(株)イトーヨーカ堂、(株)セブン-イレブン・ジャパンが共同で、株式移転により持株会社株式会社セブン&アイ・ホールディングスを設立し、同社の完全子会社となる。
- 2007年1月 - セブン&アイホールディングスにより、グループの外食事業を統括する新会社株式会社セブン&アイ・フードシステムズが設立される。
- 2007年3月 - (株)デニーズジャパン、(株)ファミール、ヨーク物産(株)の3社がセブン&アイ・フードシステムズの完全子会社となる。
- 2007年6月 - メニューを大幅改定、一杯限りのドリンクコースとお替り自由のコースを設定。
- 2007年9月1日 - デニーズ、ファミール、ヨーク物産3社をセブン&アイ・フードシステムズが吸収合併。
- 2013年4月27日 - 「カフェデニーズ」ブランドでアリオ仙台泉内に出店、宮城県に進出。
セクハラ問題
2005年、デニーズ大井松田店で勤務していたアルバイト女性が同僚の男性らから侮辱発言を受けるなどとセクハラやいじめを受け、この女性は同年11月に病院で重度の鬱病と認定された。2007年2月にはデニーズジャパンと同僚の男性らに対し3,000万円の損害賠償の民事訴訟を起こした。2007年5月17日には、小田原労働基準監督署より労働災害が認定されている。セクハラによる労災認定は珍しい例である[11]。
関連項目
- ファミリーレストラン
- デニーズ - アメリカ合衆国に本拠をおくレストランチェーン
- 鈴木英人
- 江口寿史
- 平野綾- CM出演者
- 永代信用組合新宿支店 - 中央、デニーズ中野坂上店
- Denny'S PERFECT HIT CHART - 1990年代にTOKYO FMで放送されていたラジオ番組。リクエストはデニーズ店内から投票するシステムをとっていた。
脚注
- ↑ 2013年4月に「カフェデニーズ」ブランドでアリオ仙台泉に進出。
- ↑ テンプレート:PDFlink (「沿革」の節を参照のこと)
- ↑ 「デニーズ」130店閉鎖・セブン&アイ、3年内に採算改善狙う(NIKKEI NET、2008年4月10日 9:35=JST)
- ↑ 「よくあるご質問 サービスについて」 株式会社デニーズジャパン
- ↑ 石鍋仁美 「NET EYE プロの視点 マーケティング考現学 2006年10月6日」『NIKKEI NET』 日本経済新聞社
- ↑ それでも駐車場入り口の案内看板(in看板)はほとんどの店舗に置いて旧看板の六角形である。
- ↑ 「デニーズ、「けいおん!!」競演――「イラストそっくり」誤解が縁」『朝日新聞』2010年7月23日付朝刊、第13版、第12面。
- ↑ 「『けいおん!! 』がデニーズとコラボ! - フレッシュな桃を使ったデザート5品」 マイコミジャーナル、2010年7月14日。
- ↑ 「デニーズに「けいおん!!」キャラおすすめのデザートが登場、7月20日から発売へ」 GIGAZINE、2010年7月13日。
- ↑ HTT DDT安部行洋の逃げちゃダメだ 2010年7月22日
- ↑ 東京新聞:セクハラ被害を労災認定 「デニーズ」元女性店員に:社会(TOKYO Web)