チベット文字

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ファイル:Yonghe-gong Temple board.JPG
北京雍和宮の額に書かれた、満州文字漢字・チベット文字・モンゴル文字(右から)

テンプレート:音素文字 テンプレート:ブラーフミー系文字

チベット文字(チベットもじ)は、チベット語ゾンカ語の表記に用いる文字である。

概要

インド系表音文字であり、左から右へと綴る。わずかな変更を加えてチベット系諸言語(ゾンカ語バルティ語など)や、チベット仏教を受け入れた地域の言語(モンゴル語)の表記にも用いられる。起源は、古くはブラーフミー文字に遡ることは確かだが、ブラーフミー文字のどの変種が直接の起源となったかはナーガリー文字グプタ文字ネワール文字など諸説ある。伝承によると、7世紀中頃、吐蕃ソンツェン・ガンポ王がインドへ役人を数名派遣し、テンプレート:仮リンクが数名のインドの仏教僧とともに創り出したとされる。

長い歴史を経て、表記と発音の乖離が極めて激しいのも、チベット文字の特徴と言える。そのせいもあって、ラテン文字に転写する方式は、統一されておらず、複数の方式が併用されている。(参照:「蔵文ピン音」「ワイリー方式」「チベット語のカタカナ表記について」)

文字構成

チベット文字は、下図のように、基字の前後上下に補助的な字母を付加し、それぞれの音節の発音を表現する。ただし、前後上下に用いられる字母の種類は限られており、またその大部分は発音されないため、それほど複雑ではない。各音節は ' (活字では逆三角形 )によって区切る。

ファイル:Tibetan script structure ja.png

文字

基字

上から5段目まで(5段目4列目を除く)は、縦横ともに音声的特徴の意味をもった配列になっている。辞書の配列は、各段毎、左から右の方向である。

単音節の声調は、高平調と低平調(※わずかに上がるので、低昇調とも表現される)を、それぞれテンプレート:Bgcolorテンプレート:Bgcolorの背景で示した。以下の2点に注意。

  • 第4列(より正確には鼻音接近音)の低平調(低昇調)は、前置字・上接字といった先行子音が付くと、高平調になる。
    (※前置字・上接字・下接字との組み合わせによる、実際の発音のまとめは下述の「表記と発音の対応」を参照。)
  • 高平調と低平調(低昇調)は、-ག(g)、-གས(gs)、-ད(d)、-བ(b)、-བས(bs)、-ངས(ngs)、-མས(ms)、-ས(s) などの末子音が付くと、押し下げられ、それぞれ高降調と低昇降調に変化する
    (※詳しくは、下述の「表記と発音の対応」を参照。)

なお、母音だけの音を表現するには、一番後ろの無音価字母「」を使用する。

第1列
(無気 - 高)
第2列
(有気 - 高)
第3列
(有声[1] - 低)
第4列
(鼻 - 低)
軟口蓋音 ˉka テンプレート:IPA2 ˉkha テンプレート:IPA2 ˊkha テンプレート:IPA2 (ga テンプレート:IPA2) ˊnga テンプレート:IPA2
硬口蓋音 ˉca テンプレート:IPA2 ˉcha テンプレート:IPA2 ˊcha テンプレート:IPA2(ja テンプレート:IPA2) ˊnya テンプレート:IPA2
歯茎音 ˉta テンプレート:IPA2 ˉtha テンプレート:IPA2 ˊtha テンプレート:IPA2(da テンプレート:IPA2) ˊna テンプレート:IPA2
両唇音 ˉpa テンプレート:IPA2 ˉpha テンプレート:IPA2 ˊpha テンプレート:IPA2 (ba テンプレート:IPA2) ˊma テンプレート:IPA2
破擦音 ˉtsa テンプレート:IPA2 ˉtsha テンプレート:IPA2 ˊtsha テンプレート:IPA2 (dza テンプレート:IPA2) ˊwa テンプレート:IPA2
(低) ˊsha テンプレート:IPA2(zha テンプレート:IPA2) ˊsa テンプレート:IPA2(za テンプレート:IPA2) ˊ'a テンプレート:IPA2 (h テンプレート:IPA2) ˊya テンプレート:IPA2
(低/高) ˊra テンプレート:IPA2 ˊla テンプレート:IPA2 ˉsha テンプレート:IPA2 ˉsa テンプレート:IPA2
(高) ˉha テンプレート:IPA2 ˉa テンプレート:IPA2  

母音記号

基字のみで テンプレート:IPA2 を表すため、4つの母音記号がある。

なお、母音a テンプレート:IPA2, u テンプレート:IPA2, o テンプレート:IPA2 の3つは、末子音で-ད(d)、-ན(n)、-ལ(l)、-ས(s) のいずれかを後続すると、それぞれ ä テンプレート:IPA2, ü テンプレート:IPA2, ö テンプレート:IPA2に変化する。

(※詳しくは、下述の「表記と発音の対応」を参照。)

母音記号 発音 例(基字と母音記号)
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.png テンプレート:IPA2
(テンプレート:IPA2 -d, n, l, s)
ཀ༌ ཏ༌ ཨ༌
テンプレート:IPA2 ཀི༌ ཏི༌ ཨི༌
テンプレート:IPA2
(テンプレート:IPA2 -d, n, l, s)
ཀུ༌ ཏུ༌ ཨུ༌
テンプレート:IPA2 ཀེ༌ ཏེ༌ ཨེ༌
テンプレート:IPA2
(テンプレート:IPA2 -d, n, l, s)
ཀོ༌ ཏོ༌ ཨོ༌

前置字

前置字に用いられる文字は、(g)、(d)、(b)、(m)、(') の5つ。

基本的に、下述の上接字と同じ働き。(m)、(') の2つは、上接字の(l) と同じく、第3列の子音に付くと、直前に鼻音を挿入する働きをする(前鼻音化)。

(※上接字・基字・下接字との組み合わせによる、実際の発音のまとめは下述の「表記と発音の対応」を参照。)

上接字

上接字は、(r)、(l)、(s) の3つであり、一定の基字および有足字について有頭字を作る。

第1列の基字および有足字についた場合、発音が変わらない(※(h) に(l) の上接字が付く場合は例外)。第3列では無気音化 (※(l) の上接字が付く場合、多くはそれに加えて、直前に鼻音挿入)、第4列では声調が高平となる。以下の表は全ての例。

(※前置字・基字・下接字との組み合わせによる、実際の発音のまとめは下述の「表記と発音の対応」を参照。)

上接字 第1列(変化なし) 第3列(無気音化) 第4列(高平化)
(r) རྐ༌ རྐྱ༌ རྟ༌ རྩ༌ རྒ༌ རྒྱ་ རྗ༌ རྡ༌ རྦ༌ རྫ༌ རྔ༌ རྙ༌ རྣ༌ རྨ༌
(l) ལྐ༌ ལྕ༌ ལྟ༌ ལྤ༌ ལྒ༌ ལྗ༌ ལྡ༌ ལྦ༌
(直前に鼻音挿入)
ལྔ༌
(s) སྐ༌ སྐྱ༌ སྐྲ༌ སྟ༌ སྤ༌ སྤྱ༌ སྤྲ༌ སྩ༌ སྒ༌ སྒྱ༌ སྐྲ༌ སྟ༌ སྦ༌ སྦྱ༌ སྦྲ༌ སྔ༌ སྙ༌ སྣ༌ སྨ༌ སྨྱ༌ སྨྲ༌

下接字

下接字は、 [] (w)、 [] (')、 [] (y)、 [] (r)、 [] (l) の5つで、一定の基字につき有足字を作る。

(※前置字・上接字・基字との組み合わせによる、実際の発音のまとめは下述の「表記と発音の対応」を参照。)

  • [] (w) : 発音の変化はない。གྲྭ༌ ཉྭ༌ དྭ༌ རྩྭ༌ ཚྭ༌ ཞྭ༌ ཟྭ༌ རྭ༌ ལྭ༌ ཤྭ༌ ཧྭ༌
  • [] (') : 長母音化。
一例:ཀཱ༌ དཱ༌
  • [] (y) : テンプレート:IPA2の挿入。発音変化する例は以下(声調には変化なし)。
ཀྱ༌ : テンプレート:IPA2
ཁྱ༌, གྱ༌ : テンプレート:IPA2
པྱ༌ : テンプレート:IPA2
ཕྱ༌, བྱ༌ : テンプレート:IPA2
མྱ༌ : テンプレート:IPA2
  • [] (r) : 子音の変化。有気無気、声調には影響しない。
traテンプレート:IPA2ཀྲ་ པྲ་
trhaテンプレート:IPA2ཁྲ་ ཕྲ་ གྲ་ དྲ་ བྲ་
སྲ་:sa (もしくはtra)
ཧྲ་:hraテンプレート:IPA2
  • [] (l) : 基本的に、(k), (g), (b), (r), (s) などに付いて、高平調化されたテンプレート:IPA2 を表現。

後置字

後置字に用いられる文字は、(g)、(ng)、(d)、(n)、(b)、(m)、(')、(r)、(l)、(s) の10字。

(g)、(d)、(s) はテンプレート:IPA2(b) はテンプレート:IPA2。これら4つは、声調を押し下げ変化させる。

(r) はそのまま発音されるか、消失して母音長音化。(l) は基本的に音にならず、母音を口蓋化・長音化。

鼻音(ng)、(n)、(m) は、そのまま発音。((n) は、直前の母音を鼻母音化すると解釈される。)

(')は/ʔ/だが、(i)、(u) などの母音記号が付加され(འི('i)、འུ('u))、二重母音を形成する。(※ただし、འི('i) は発音されず、直前の母音を口蓋化・長音化。)

なお、(d)、(n)、(s)、(l) の4つ (※加えて、འི('i) )は、直前の母音を口蓋化するので、非口蓋母音 a テンプレート:IPA2、u テンプレート:IPA2、o テンプレート:IPA2 の3つを、それぞれ ä テンプレート:IPA2、ü テンプレート:IPA2、ö テンプレート:IPA2 に変化させる。

(※詳しくは、下述の「表記と発音の対応」を参照。)

再後置字

再後置字に用いられる文字は、(s) のみ。発音されず、声調を押し下げて変化させる。

(※詳しくは、下述の「表記と発音の対応」を参照。)

基字の判定のしかた

音節が複数の字からなる場合、正しくよむためにはまずどれが基字であるかを判断しなければならない。母音記号や上接字・下接字がついている字があれば、それが基字であるとすぐにわかるが、そうでない場合は次のようにして行われる。

  1. 文字数が2文字以内なら最初の文字が基字である。これは正書法上の規則で、2番目が母音記号や上接字・下接字のない基字で、その文字で終わる場合は後ろに をつけるという規則があるためである。
  2. 文字数が4文字ならば、2番目の文字が基字である。
  3. 文字数が3文字のときは判定が困難である。たとえば、དགས༌ が「dgas」なのか「dags」なのか、綴りから判断することができない。

表記と発音の対応

頭子音

前置字、上接字、基字、下接字の組み合わせと、発音(頭子音+声調)の対応関係一覧。

基本単字は赤、発音と乖離が激しい表記(の中心的・象徴的な字母)は緑で示す。

高平調と低平調(低昇調)は、それぞれ赤と青の背景で示す。

文字 発音 カタカナ
(k)、རྐ(rk)、ལྐ(lk)、སྐ(sk)、ཀྭ(kw)、དཀ(dk)、བཀ(bk)、བརྐ(brk)、བསྐ(bsk) テンプレート:IPA2
རྒ(rg)、སྒ(sg)、དག(dg)、བག(bg)、བརྒ(brg)、བསྒ(bsg) テンプレート:IPA2
ལྒ(lg)、མག(mg)、འག('g) テンプレート:IPA2 ンカ
(kh)、ཁྭ(khw)、མཁ(mkh)、འཁ('kh) テンプレート:IPA2
(g)、གྭ(gw) テンプレート:IPA2
རྔ(rng)、ལྔ(lng)、སྔ(sng)、དང(dng)、བརྔ(brng)、བསྔ(bsng)、མང(mng) テンプレート:IPA2 ンガ
(ng) テンプレート:IPA2 ンガ
ཀྱ(ky)、རྐྱ(rky)、ལྐྱ(lky)、སྐྱ(sky)、དཀྱ(dky)、ཀྱ(bky)、བརྐྱ(brky)、བསྐྱ(bsky) テンプレート:IPA2 チャ
དགྱ(dgy)、བགྱ(bgy)、བརྒྱ(brgy)、བསྒྱ(bsgy) テンプレート:IPA2 チャ
མགྱ(mgy)、འགྱ('gy) テンプレート:IPA2 ンチャ
ཁྱ(khy)、མཁྱ(mkhy)、འཁྱ('khy) テンプレート:IPA2 チャ
གྱ(gy) テンプレート:IPA2 チャ
(c)、ལྕ(lc)、ཅྭ(cw)、གཅ(gc)、བཅ(bc)、བྱ(py)、དབྱ(dpy) テンプレート:IPA2 チャ
རྗ(rj)、གཇ(gj)、བརྗ(brj)、དབྱ(dby) テンプレート:IPA2 チャ
ལྗ(lj)、མཇ(mj)、འཇ('j)、འབྱ('by) テンプレート:IPA2 ンチャ
(ch)、མཆ(mch)、འཆ('ch)、ཕྱ(phy)、འཕྱ('phy) テンプレート:IPA2 チャ
(j)、བྱ(by) テンプレート:IPA2 チャ
རྙ(rny)、སྙ(sny)、གཉ(gny)、བརྙ(brny)、བསྙ(bsny)、མཉ(mny)、ཉྭ(nyw) テンプレート:IPA2 ニャ
(ny)、མྱ(my) テンプレート:IPA2 ニャ
(t)、རྟ(rt)、ལྟ(lt)、སྟ(st)、ཏྭ(tw)、གཏ(gt)、བཏ(bt)、བརྟ(brt)、བལྟ(blt)、བསྟ(bst)、བལྡ(bld) テンプレート:IPA2
རྡ(rd)、སྡ(sd)、གད(gd)、བད(bd)、བརྡ(brd)、བསྡ(bsd) テンプレート:IPA2
ལྠ(lth) テンプレート:IPA2 ンタ
ལྡ(ld)、མད(md)、འད('d)、ཟླ(zl)、བཟླ(bzl) テンプレート:IPA2 ンタ
(th)、མཐ(mth)、འཐ('th) テンプレート:IPA2
(d)、དྭ(dw) テンプレート:IPA2
རྣ(rn)、སྣ(sn)、གན(gn)、བརྣ(brn)、བསྣ(bsn)、མན(mn) テンプレート:IPA2
(n) テンプレート:IPA2
(p)、ལྤ(lp)、སྤ(sp)、དཔ(dp) テンプレート:IPA2
རྦ(rb)、སྦ(sb)、སྦྲ(sbr)、དབ(db) テンプレート:IPA2
ལྦ(lb)、འབ('b) テンプレート:IPA2 ンパ
(ph)、འཕ('ph) テンプレート:IPA2
(b) テンプレート:IPA2
རྨ(rm)、སྨ(sm)、དམ(dm) テンプレート:IPA2
(m), མྲ(mr) テンプレート:IPA2
(ts)、རྩ(rts)、སྩ(sts)、ཙྭ(tsw)、གཙ(gts)、བཙ(bts)、བརྩ(brts)、བསྩ(bsts) テンプレート:IPA2 ツァ
རྫ(rdz)、གཛ(gdz)、བརྫ(brdz) テンプレート:IPA2 ツァ
མཛ(mdz)、འཛ('dz) テンプレート:IPA2 ンツァ
(tsh)、ཚྭ(tshw)、མཚ(mtsh)、འཚ('tsh) テンプレート:IPA2 ツァ
(dz) テンプレート:IPA2 ツァ
ཀྲ(kr)、ཏྲ(tr)、པྲ(pr)、དཀྲ(dkr)、དཔྲ(dpr)、བཀྲ(bkr)、བསྐྲ(bskr)、བསྲ(bsr) テンプレート:Nowrap beginテンプレート:IPA2 (〜テンプレート:IPA2)テンプレート:Nowrap end タ (〜ツァ) (そり舌)
དགྲ(dgr)、དབྲ(dbr)、བསྒྲ(bsgr)、སྦྲ(sbr) テンプレート:Nowrap beginテンプレート:IPA2 (〜テンプレート:IPA2)テンプレート:Nowrap end タ (〜ツァ) (そり舌)
མགྲ(mgr)、འགྲ('gr)、འདྲ('dr)、འབྲ('br) テンプレート:Nowrap beginテンプレート:IPA2 (〜テンプレート:IPA2)テンプレート:Nowrap end テンプレート:Nowrap beginンタ (〜ンツァ) (そり舌)テンプレート:Nowrap end
ཁྲ(khr)、ཐྲ(thr)、ཕྲ(phr)、མཁྲ(mkhr)、འཁྲ('khr)、འཕྲ('phr) テンプレート:Nowrap beginテンプレート:IPA2 (〜テンプレート:IPA2)テンプレート:Nowrap end タ (〜ツァ) (そり舌)
གྲ(gr)、དྲ(dr)、བྲ(br)、གརྭ(grw) テンプレート:Nowrap beginテンプレート:IPA2 (〜テンプレート:IPA2)テンプレート:Nowrap end タ (〜ツァ) (そり舌)
(w)、དབ(db) テンプレート:IPA2
ཧྲ(hr) テンプレート:IPA2 シャ(そり舌)
(s)、སྲ(sr)、སྭ(sw)、གས(gs)、བས(bs)、བསྲ(bsr) テンプレート:IPA2
(z)、ཟྭ(zw)、གཟ(gz)、བཟ(bz) テンプレート:IPA2
((-))、【དབ(db)】 テンプレート:IPA2
(') テンプレート:IPA2
གཡ(g.y) テンプレート:IPA2
(y) テンプレート:IPA2
(r)、རྭ(rw) テンプレート:IPA2
ཀླ(kl)、གླ(gl)、བླ(bl)、རླ(rl)、སླ(sl)、བརླ(brl)、བསླ(bsl) テンプレート:IPA2
(l)、ལྭ(lw) テンプレート:IPA2
ལྷ(lh) テンプレート:IPA2 シラ
(h)、ཧྭ(hw) テンプレート:IPA2

母音・末子音

母音・末子音の表記と発音の対応関係一覧。

声調を押し下げ、変化させる (高平調と低平調(低昇調)を、高降調と低昇降調へと変化させる) (g)、(d)、(b)、(s) の4字母は、紫で表示。

文字 発音 カタカナ
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.png(a) テンプレート:IPA2
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.pngའུ(a'u) テンプレート:IPA2 アウ
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.png(ag)
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.pngགས(ags)
テンプレート:IPA2
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.png(ang)
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.png(angs)
テンプレート:IPA2 アン
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.png(ab)
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.pngབས(abs)
テンプレート:IPA2 アプ
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.png(am)
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.png(ams)
テンプレート:IPA2 アム
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.png(ar) テンプレート:IPA2 アー(アル)
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.png(al)
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.pngའི(a'i)
テンプレート:IPA2 エ(ー)
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.png(ad)
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.png(as)
テンプレート:IPA2
ファイル:Tibetan script-vowels-hojo.png(an) テンプレート:IPA2 エン
(i)
(il)
འི(i'i)
テンプレート:IPA2 イ(ー)
ིའུ(i'u)
ེའུ(e'u)
テンプレート:IPA2 イウ
(ig)
གས(igs)
(id)
(is)
テンプレート:IPA2
(ing)
(ings)
テンプレート:IPA2 イン
(ib)
བས(ibs)
テンプレート:IPA2 イプ
(im)
(ims)
テンプレート:IPA2 イム
(ir) テンプレート:IPA2 イー(イル)
(in) テンプレート:IPA2 イン
(u) テンプレート:IPA2
(ug)
གས(ugs)
テンプレート:IPA2
(ung)
(ungs)
テンプレート:IPA2 ウン
(ub)
བས(ubs)
テンプレート:IPA2 ウプ
(um)
(ums)
テンプレート:IPA2 ウム
(ur) テンプレート:IPA2 ウー(ウル)
(ul)
འི(u'i)
テンプレート:IPA2 ユ(ー)
(ud)
(us)
テンプレート:IPA2
(un) テンプレート:IPA2 ユン
(e)
(el)
འི(e'i)
テンプレート:IPA2 エ(ー)
(eg)
གས(egs)
(ed)
(es)
テンプレート:IPA2
(eng)
(engs)
テンプレート:IPA2 エン
(eb)
བས(ebs)
テンプレート:IPA2 エプ
(em)
(ems)
テンプレート:IPA2 エム
(er) テンプレート:IPA2 エー(エル)
(en) テンプレート:IPA2 エン
(o) テンプレート:IPA2
(og)
གས(ogs)
テンプレート:IPA2
(ong)
(ongs)
テンプレート:IPA2 オン
(ob)
བས(obs)
テンプレート:IPA2 オプ
(om)
(oms)
テンプレート:IPA2 オム
(or) テンプレート:IPA2 オー(オル)
(ol)
འི(o'i)
テンプレート:IPA2 ウ(ー)
(od)
(os)
テンプレート:IPA2
(on) テンプレート:IPA2 ウン

二音節語の声調変化

テンプレート:節stub

サンスクリットとの対応

サンスクリット用の翻字における対応関係は、以下の通り。

(※ここで初出の字母は、背景をオレンジで表示。)

母音

既述の通り、母音を長音化するには、「テンプレート:IPA2 を用いる。

ai テンプレート:IPA2 や au テンプレート:IPA2 は、e テンプレート:IPA2 や o テンプレート:IPA2 の翻字に用いる「テンプレート:IPA2テンプレート:IPA2 を、重ねることで表現する。

文字(記号) 転写
(IAST)
発音
(IPA)
文字(記号) 転写
(IAST)
発音
(IPA)
チベット文字 デーヴァナーガリー チベット文字 デーヴァナーガリー
テンプレート:IAST テンプレート:IPA2 or テンプレート:IPA2 テンプレート:IAST テンプレート:IPA2
ि テンプレート:IAST テンプレート:IPA2 テンプレート:IAST テンプレート:IPA2
テンプレート:IAST テンプレート:IPA2 テンプレート:IAST テンプレート:IPA2
テンプレート:IAST テンプレート:IPA2 テンプレート:IAST テンプレート:IPA2
テンプレート:IAST テンプレート:IPA2 テンプレート:IAST テンプレート:IPA2
テンプレート:IAST テンプレート:IPA2 テンプレート:IAST テンプレート:IPA2
テンプレート:IAST テンプレート:IPA2 テンプレート:IAST テンプレート:IPA2

子音

有声有気音は、「テンプレート:IPA2 を下接することで表現する。

そり舌音には、歯音・歯擦音の字母を左右反転させた字母を用いる。

無声音 有声音 鼻音
無気音 有気音 無気音 有気音
軟口蓋音 // k(a) テンプレート:IPA2 // kh(a) テンプレート:IPA2 // g(a) テンプレート:IPA2 གྷ // gh(a) テンプレート:IPA2 // (a) テンプレート:IPA2
硬口蓋音 () // c(a) テンプレート:IPA2 () // ch(a) テンプレート:IPA2 () // j(a) テンプレート:IPA2 ཛྷ (ཇྷ) // jh(a) テンプレート:IPA2 // ñ(a) テンプレート:IPA2
そり舌音 // (a) テンプレート:IPA2 // ṭh(a) テンプレート:IPA2 // (a) テンプレート:IPA2 ཌྷ // ḍh(a) テンプレート:IPA2 // (a) テンプレート:IPA2
歯音 // t(a) テンプレート:IPA2 // th(a) テンプレート:IPA2 // d(a) テンプレート:IPA2 དྷ // dh(a) テンプレート:IPA2 // n(a) テンプレート:IPA2
唇音 // p(a) テンプレート:IPA2 // ph(a) テンプレート:IPA2 // b(a) テンプレート:IPA2 བྷ // bh(a) テンプレート:IPA2 // m(a) テンプレート:IPA2
接近音 // y(a) テンプレート:IPA2 // r(a) テンプレート:IPA2 // l(a) テンプレート:IPA2 // v(a) テンプレート:IPA2
歯擦音摩擦音 // ś(a) テンプレート:IPA2 // (a) テンプレート:IPA2 // s(a) テンプレート:IPA2 // h(a) テンプレート:IPA2

記号類

テンプレート:節stub

コンピュータ

チベット文字のUnicode

チベット文字に用いるUnicodeは、U+0F00 から U+0FFF である。文字、数字、句読点や宗教上の特殊な記号を含む。

U+ 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
0F00
0F10  ༘  ༙
0F20
0F30  ༵  ༷  ༼  ༽  ༾  ༿
0F40
0F50
0F60
0F70  ཱ  ི  ཱི  ུ  ཱུ  ྲྀ  ཷ  ླྀ  ཹ  ེ  ཻ  ོ  ཽ  ཾ ཿ
0F80  ྀ  ཱྀ  ྂ  ྃ  ྄  ྆  ྇  ྈ
0F90  ྐ  ྑ  ྒ  ྒྷ  ྔ  ྕ  ྖ  ྗ  ྙ  ྚ  ྛ  ྜ  ྜྷ  ྞ  ྟ
0FA0  ྠ  ྡ  ྡྷ  ྣ  ྤ  ྥ  ྦ  ྦྷ  ྨ  ྩ  ྪ  ྫ  ྫྷ  ྭ  ྮ  ྯ
0FB0  ྰ  ྱ  ྲ  ླ  ྴ  ྵ  ྶ  ྷ  ྸ  ྐྵ  ྺ  ྻ  ྼ ྿
0FC0  ࿆
0FD0
0FE0
0FF0

表示・入力環境

コンピュータ環境におけるチベット文字の取り扱いは、MacintoshではSystem 7(漢字Talk 7)以降、WindowsではWindows 98以降のバージョンにおいて、入力、表示、チベット文字・ラテン文字相互のテキスト変換の各機能が整った、実用可能な環境が提供されるようになった。

キーボード

Windowsのチベット語キーボード(中国/PRC)の配列は以下の通り。

ファイル:Tibetan keyboard win.png
赤字部分は「右Alt+Shift」で入力。緑字部分は★印で示したキーを押して入力。

Windowsのチベット文字入力に関しては、上記の中国策定のチベット語キーボードよりも、ブータンが策定した以下のゾンカ語キーボードの方が、合理的な配列・入力方式になっており、入力しやすい。Windows8時点でまだデフォルトで組み込まれていないので、政府系サイトからインストールする必要がある。

ファイル:Dzongkha keyboard win.png
赤字部分は「右Alt」で入力。詳細はこちら


その他

  • チベット文字からの派生文字として、モンゴル語など、の言語を記録するのに用いられたパスパ文字が作られた。
  • 吐蕃が統治した、8世紀から9世紀にかけての敦煌など中国西北部では、中国語を表記するのにも使用された。数千種が必要な漢字よりも学習は容易なため、かなり広く用いられたが、声調を表記しないという不完全さと、国の文字としての権威の問題から、漢民族の統治にもどると、徐々に使用されなくなった。
  • チベット文字には、ウチェン体ウメー体の二種類があり、ウチェン体は活字体のような書体で、印刷物はウチェン体で書かれていることが普通。手書きの時は、ウメー体という筆記体を使う。ウメーは何種類もある。

脚注・出典

テンプレート:Reflist

外部リンク

テンプレート:Sister

  • 有声音という分類は、あくまでもチベット文字成立当時の古典期での話であり、名目的なもの。子音字を区別する都合上、ワイリー方式などのラテン文字転写方式にも便宜的に採用されている。現代では、これらの子音は(低声調を帯びた)無声有気音である。つまり、現代チベット語(ラサ方言)には、(中国語(普通話)や朝鮮語などと同じく)形式的には有声音は存在しない。(ただし、これらの子音は、無気音(+低声調)で発音されると、往々にして有声音(濁音)的な音になるので、カタカナ音訳では、この第3列の子音が、前置字・上接字が付くなどして無気音になった場合などは、濁音で表記することも少なくない。これはちょうど、朝鮮語の語中の平音(無気音)をカタカナで濁音表記するのと類似している。)