クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望
テンプレート:Infobox Film 『クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望』(クレヨンしんちゃん うんこくさいのやぼう)は、1995年4月15日に公開された『クレヨンしんちゃん』の劇場映画シリーズ第3作目。キャッチコピーは『しんちゃん、3回だいへんしん!』。
上映時間は94分。興行収入は約14億円。
概要
『クレヨンしんちゃん』の映画シリーズ第3弾。タイトルは原作者の臼井儀人が直々に命名した。また、臼井が映画の原作漫画を描いた最後の作品。
劇場版で時代劇モノは第10弾の『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』と本作のみである。前者が恋愛劇が主軸なのに対して、本作品はアクション主体のチャンバラ映画となっているため、同じ時代劇ではあるものの、毛色の全く異なる作品となっている。また、作品には作り手が時代劇に精通している描写も見られ、子供向け映画ながらセリフ回しも時代劇として本格的なものであり、物語の終盤では吹雪丸の刀が激闘の末に刃こぼれしているなどこだわりのある描写がみられる。
本作品は時代劇モノに止まらずSF的要素も多分に盛り込まれている。物語前半~中盤では戦国時代による剣や弓などでのアクションが中心だが、後半はSFロボット同士の戦いとなる。
本作の冒頭及びクライマックス(コントローラーのみ)では当時SEGAから発売されていたメガドライブが登場している(しんのすけによると「マサオ君から借りている」と証言しており、しんのすけはメガドライブその物は持っていない)。
本作で使用された和風のBGMの数々は後に、地上波で放送された時代劇風の外伝、スペシャルの作品でも多用された。
あらすじ
30世紀の未来のタイムパトロール隊員であるリング・スノーストームが、タイムマシンに乗って時空間をパトロールしていたところ、戦国時代に何らかの異変が生じていることを感知。調査に向かう彼女だったが突然、謎の時空魚雷の強襲に遭ってしまう。なんとか攻撃を振り払うも不時着した場所は、作中で「現代」に当たる野原家の地中深くであった。
タイムマシンの故障により身動きも取れず、タイムパトロールと連絡も取れないリングは、地中から緊急非常用のマイクロマシンを使い、野原家のペット・シロの体を借りて、野原家の3人とコンタクトをとり、戦国時代に何らかの異常が発生している事を伝え、共にその原因と解明に向かうことに。野原一家3人は万能ジャージ(タイムスーツ)に着替え、緊急用の3人乗り球体型タイムマシン(使い捨て)に乗り込み、16世紀の戦国時代へとタイムスリップする。
一家が降り立ったのは、春日部城の跡地。そこへ雲黒斎の手下の忍者軍団が襲いかかるが、謎の少年剣士がこれを蹴散らす。その剣士・吹雪丸は春日部城の跡取りであり、城は雲黒斎の手により攻め滅ぼされてしまったのだという。吹雪丸は一族に古くから伝わる「城が危機に陥ったとき、3人と1匹の勇士が現れ、危機を救う。」との言い伝えから、野原一家に協力を求める。自身の身にも危険が迫ったことで最初は拒絶の意を示そうとした一家も、忍者にみさえのバッグ(預金通帳・実印入り)を奪い去られてしまった事から協力せざるを得なくなってしまう。
その後、目的地である雲黒城を目指す野原一家と吹雪丸の前に、雲黒斎の刺客・またたび猫ノ進が現れる。猫ノ進が母の仇であることを知り、逆上した吹雪丸は我を失い危機に陥るも、しんのすけの着用していた万能ジャージに搭載されていた「たすけてケスタ」と叫ぶことで使用できる「お助け機能」により、猫ノ進を退けることに成功。しかしその直後、今度は同じく雲黒斎の部下であるダイアナお銀が現れ、みさえとひろしは彼女の不思議な力によってビー玉に姿を変えられてしまうのだった。
登場人物
- 春日吹雪丸(かすが ふぶきまる)
- 野原一家が戦国時代で出会った15歳の剣士。雲黒斎によって滅ぼされた春日城の忘れ形見である。雲黒斎に囚われたという妹を助けるために雲黒斎の城へ向かって旅をしている。
- 剣の腕はかなりのものであり、国一番の駿馬である愛馬の「エンジ」に搭乗し雲黒城では多くの兵を打ち倒した。
- 当初、本人は男性を名乗っていたが、実際には女性であったことが物語中盤で判明する。彼女の「自身は男たらざるを得ない」という葛藤の描写などは物語の要所で窺える。
- しんのすけが雲黒斎を倒したことで、雲黒斎による春日城の侵攻は歴史上なかったことになったため、春日城の城主となった。劇中での出来事を母には「長い夢を見ているようだった」と語っている。
- なお、アニメ・漫画本編においては、よしいうすとの原作本『少年忍者 吹雪丸』の主人公として登場している。
- リング・スノーストーム
- 30世紀の時間管理局亜細亜支部タイムパトロール隊員。パトロール艇P23-27Xのパイロット。歴史改変などの時間犯罪の取り締まりにあたっている。パワーと防御力を倍増させるタイム・パトロールスーツと、通常の20倍の速度で動ける「ニャオンスーツ」という2種類のパワードスーツを持っている。
- れっきとした女性だがしんのすけに胸に飛びつかれても全く嫌がらなかった。
- 戦国時代に異常が発生したことに気付き、現場である戦国時代の春日部へ向かっていたが、その際に襲撃を受け野原家の地下に不時着。身動きが取れなくなってしまったため、シロの体を介して野原一家とコンタクトを取り、彼らにタイムスーツを託して戦国時代の異変を解決して欲しいと頼む。
- 戦国時代での決着後、現代世界でのヒエール・ジョコマンの侵略により絶体絶命の状況に瀕していた野原一家の前に姿を現し、彼らを助けた後に一家と共にジョコマンの下へ乗り込む。野原一家と協力してジョコマンを倒した後は、野原一家に深い感謝の意を述べ、一家を元の時間帯に戻して未来へと帰っていった。この際本来の時間より早めの時間に戻してしまった為、野原一家は過去へ向かう際の自分達と危うくニアミスしている。
- 余談だが「リング・スノーストーム」は日本語に当てはめると「吹雪丸」となり、吹雪丸と顔を合わせた際にも彼女はリングに対して「他人とは思えない」と言っている[1]。
- 最終決戦後の姿は色っぽいハイレグだったがギャグ性からパイナップルに変更された。
- 雲黒斎(うんこくさい)
- 戦国時代で春日城を滅ぼし、新たな支配者として君臨する怪人物。
- ヒエール・ジョコマン
- 雲黒斎の正体で歴史マニアの未来人(本人の出した名刺によると、肩書きは「歴史(ヒストリー)トレンドクリエーター&文化人、世界四次元アートディレクター協会会員」)。
- 雲黒斎と違い細目でかなり背が高く、手足も長い。ひょうひょうとしたつかみ所のない性格。自分では「暴力は嫌い」と言っているものの、犬と子供をいじめるのは好きなようで、しんのすけ達との戦いでは終始楽しんで戦っている。
- 戦国時代の春日部を乗っ取った後、猫ノ進、珠死朗、お銀の三人の部下を次々に放って野原一家と吹雪丸を襲撃し、物語後半で城に乗り込んできたしんのすけと対決。ロボット「血祭り君1号」を使ってしんのすけと戦うが、タイムスーツの力で大人に変身したしんのすけに敗れ、春日城を奪還される。
- しかし、しんのすけに負けた後は現代の世界に逃走しており、今度は「日本大統領」となって現代を乗っ取り、日本を戦国・江戸時代風の文化が蔓延した異様な世界に作り変えた。最終決戦では雲黒城のロボットに乗り込みしんのすけと再戦するも、リングの力を借りてカンタムロボに乗り込んだ野原一家との戦いの末に野原一家の家族愛の前で、カンタムロボが発射したアクションビームガンに撃墜され、「GAME…OVER…、TIMEUP…」という捨て台詞を残して倒された。劇場版の敵キャラクターの中で野原家を追い詰めた敵の一人。「クレヨンウォーズ」ではバーの客として登場している。
- 又旅猫ノ進(またたびねこのしん)
- 雲黒斎の部下。酒を嗜み、愛妄を従えている。居合いの達人で吹雪丸以上の腕を披露した。実は吹雪丸の母親の仇であり、その事を吹雪丸に知らせ逆上を誘ったが、ゴキブリに変身したしんのすけの手を借りた吹雪丸により斬られ、菜の花畑の中に倒れた。未来人かどうかは不明。
- フリードキン・珠死朗(たましろう)
- 雲黒斎の部下。怪力の持ち主で、かなりの巨漢を誇る武人。お銀と又旅猫ノ進が吹雪丸達の刺客の座をかけて一触即発しそうになった時は宥めるなど幹部の仲介人的存在。温泉に居た吹雪丸達を銃武器「千人殺し」で夜襲し、水蜘蛛を履かせた黒子忍者達を部下として従え襲わせたが、カエルに変身したしんのすけの協力もあり全て倒されてしまう。その後自ら吹雪丸と交戦し、刀を通さない屈強な鎧と怪力で優位に立つが、しんのすけに珠死朗が兵士に残した千人殺しをいじられその弾が背中に直撃し、川に没してしまった。
- ダイアナお銀
- 雲黒斎の部下で紅一点。長身で色白の美しい女性。相手を特殊な珠に封じ込める特殊能力を持つ。実は人間ではなく、30世紀の技術で製作されたカラクリ人形である。雲黒斎に心酔しており、臭いで女だと見破った吹雪丸に強烈な嫉妬心を見せた。着物が刃物のようになっていて、素早く振る事で何でも切り裂く事が出来る。最後は吹雪丸に腹を刺され正体を見せた後に背負い投げにより壊れたが、直前に彼女にガスを浴びせ一時的に麻痺状態にした。媒体によっては「ダイアンお銀」と紹介されている場合もある。
- 黒子忍者
- 一目の頭巾をかぶり、紫のカスタネット型の手裏剣を打つ。動きが素早く、現代の時代にしんのすけの家に現われリングのニャンオンスーツに破れるも手裏剣を当てて、スーツを破壊した。「クレヨンウォーズ」にも登場している。
- 春日雪乃(かすが ゆきの)
- 雲黒斎に囚われた吹雪丸の妹。吹雪丸は攫われたと言っていたが、実はみさえとひろしと同様でお銀の力によりビー玉に姿を変えられていた。
- 実は男性(つまり弟)であり、生まれつき自分を女性だと思っている。それが原因で吹雪丸は男として養育された。恋愛対象も男性のようで、しんのすけが吹雪丸に振られた後に自分なら構わないと言っている。
漫画版の登場人物
- 春日吹雪丸(かすが ふぶきまる)
- 漫画版では映画版と設定が全く異なっており、言動は女性的だがニューハーフの男性。しんのすけとひろしは女性だと思い込んでいた。
- 雲黒斎(うんこくさい)
- かつて吹雪丸の祖先が封印した邪悪なる者とされている。雪乃の髪結びをつけたハリセン・魔殺扇の直撃を食らい倒されたかに思われたが、魔殺扇が痛んでおり威力が弱まっていたため生き残っていた。
- その後、裂け目を通って現代に渡り、野原家より早く現代の世界に到着し、野原家周囲の人間をうんこに変え、帰還した野原家を抹殺しようとする。追ってきた吹雪丸を圧倒するが、しんのすけが持ってきたみさえのハリセンを魔殺扇だと勘違いして動揺した隙を突かれ、吹雪丸に裂け目に放り込まれる。放り込まれた先で恐竜に遭遇し術を使うが、実は人間しかうんこに変えることが出来ず、そのまま恐竜に食われてしまった。
- 自身の名前を3文字目で切って呼ばれることを非常に嫌う。当たった人間をうんこにしてしまう光線を放つ術を持つ。
- 又楽斎(またがくさい)
- 漫画版での雲黒斎の部下。逆立てた髪にサングラスという風貌。剣術で吹雪丸を追い詰めるが、吹雪丸から渡された剣で落雷により感電して敗北。
- 羽鬼楽斎(わきがくさい)
- 漫画版での雲黒斎の部下。レディースのような格好をしている。みさえのウエストポーチを奪っている。棒術でしんのすけ・ひろしと対決するが、棒にしがみついたしんのすけにスキをとられている際に吹雪丸に得物の棒を三分割されてしまい退却。後に雲黒城でも登場するが、雲黒斎がひろしにめがけて撃った術をひろしが鏡で跳ね返し、光線にあたってビチグソになってしまった。
- 春日雪乃(かすが ゆきの)
- 漫画版では本物の女性。髪結びを専用のハリセンにセットすることにより魔力を殺す扇「魔殺扇」となる。
登場する地名・兵器等
キャスト
- 野原しんのすけ - 矢島晶子
- 野原みさえ - ならはしみき
- 野原ひろし - 藤原啓治
- シロ、風間くん - 真柴摩利
- ネネちゃん - 林玉緒
- マサオくん - 鈴木みえ(現・一龍斎貞友)
- ボーちゃん - 佐藤智恵
- よしなが先生 - 高田由美
- まつざか先生 - 富沢美智恵
- 園長先生 - 納谷六朗
- 団羅左ヱ門 - 茶風林
- かすかべ書店店長 - 京田尚子
- 中村 - 稀代桜子
- ジョン青年 - 山口勝平
- 髭の浪人 、悪役ロボット- 大塚芳忠
- リング・スノーストーム - 佐久間レイ
- 春日吹雪丸 - 浦和めぐみ
- エンジ - 茶風林 ※ED表記なし。
- 雪乃 - 水谷優子
- フリードキン珠死朗 - 玄田哲章
- またたび猫ノ進、カンタムJr. - 戸谷公次
- ダイアナお銀 - 萩森侚子
- 雲黒斎 - 加藤精三
- ヒエール・ジョコマン - 富山敬
その他
- ゲームソフト『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ シネマランドの大冒険!』において雲黒斎の野望ステージとしてゲーム化した際に、ヒエール・ジョコマンはボスとして登場したが、声の担当である富山敬が既に亡くなっているため、変更されている。ただし、移植作である『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ シネマランド カチンコガチンコ大活劇!』では本作の音声を流用している。
- 本作の7年後に発表された『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』は、ストーリーはまったく無関係でありながら、「タイムスリップ時代劇」という設定が共通しているという点において本作の流れを汲む続篇にあたると指摘されることがあるようだが、作者や監督、スタッフなどから公式にそのような説明があったことはない(むしろ雲黒斎の春日城と戦国大合戦の春日城はそれぞれパラレルワールドにあると考えるのが自然である)。同様にタイムスリップを扱うものとして、2010年に公開された『クレヨンしんちゃん 超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁』が挙げられるが、こちらは近未来が舞台となっているためか、同系譜のものとして考えられることはあまりない。
- 本作に登場した吹雪丸は人気があった故か、以後アニメ・漫画本編においてよしいうすとの漫画「少年忍者吹雪丸」の主人公として度々登場する。(他媒体にまで影響を与えた映画登場キャラクターは極僅かである)
- 劇場公開時に存在した、作り変えられた未来世界におけるTV映像のサブリミナル効果を多用したギャグ(雲国斎の目玉マークのカットが、TVの映像に断続的に一瞬表示される)が、公開年のオウム真理教事件の影響で翌年のテレビ放送及びビデオ版からは削除された。現在、この映像は本作がフィルムで再上映される際にのみ確認することができる(2012年10月に新文芸坐で本作が上映された際にもサブリミナルシーンの入ったフィルムが使用された)。
- 演出を担当した原恵一は、吹雪丸にかなり入れ込んでおり劇中では殺陣の描写などでその様子が窺える。
脚注
スタッフ
- 原作 - 臼井儀人
- 演出 - 原恵一
- 作画監督 - 原勝徳、堤規至
- 美術監督 - 中村隆、野村可南子
- 撮影監督 - 高橋秀子
- ねんどアニメ - 石田卓也
- 音楽 - 荒川敏行
- 録音監督 - 大熊昭
- 編集 - 岡安肇
- プロデューサー - 茂木仁史、堀内孝、太田賢司
- 監督 - 本郷みつる
- 脚本・絵コンテ - 本郷みつる、原恵一
- 設定デザイン - 湯浅政明
- キャラクターデザイン - 原勝徳
- 色彩設計 - 野中幸子
- 特殊効果 - 土井通明
- 動画チェック - 小原健二
- 演出助手 - 水島努
- 動画 - 京都アニメーション、じゃんぐるじむ
- 仕上検査 - 松谷早苗、堀越智子
- 仕上 - 京都アニメーション、ライトフット、シマスタジオ
- 背景 - スタジオユニ、アトリエローク
- 撮影 - 旭プロダクション
- エリ合成 - 渡辺由利夫、末弘孝史
- 効果 - 松田昭彦(フィズサウンドクリエイション)
- 整音スタジオ - APUスタジオ
- 整音 - 柴田信弘、内山敬章
- 録音制作 - オーディオプランニングユー
- 制作デスク - 小澤恵
- 録音演出アシスタント - 飯草良花
- 編集 - 小島俊彦、中葉由美子、村井秀明、川崎晃洋、三宅圭貴
- タイトル - 道川昭
- 現像 - 東京現像所
- 制作デスク - 柏原健二、山川順一
- 制作進行 - 魁生聡、和田泰、斉藤敦、別紙直樹
- 技術協力 - 森幹生
- 制作 - シンエイ動画、ASATSU、テレビ朝日
- 原画
主題歌
- オープニング「オラはにんきもの」
- エンディング「たすけてケスタ」
VHS・DVD
外部リンク
テンプレート:本郷みつる監督作品- ↑ 顔立ちのデザインやリング自身の言動から察するに彼女は吹雪丸の子孫であると思われる。