ギブソン・SG
テンプレート:Infobox Guitar model SG(エスジー)は、アメリカ合衆国のギブソンが1961年のニューモデルとして発表したエレクトリックギター。名称の「SG」はSolid Guitar、ソリッド・ギターの意。
目次
歴史
「レスポール・スペシャル」の登場
フェンダー社からテレキャスターが発売された後の1952年、 ギブソン社から発売されたLes Paul は、 フェンダー社からストラトキャスターが発売された1954年にレスポール・カスタム、 レスポール・ジュニア、1955年にはレスポール・スペシャルとバリエーションが増やされた。これらのうち「レスポール・スペシャル」が後にSGへと発展するモデルである。
1958年[1] にはスペシャルとジュニアのボディ形状が、それまでのシングルカッタウェイからダブルカッタウェイに変更される。
ボディ形状の変更後しばらくしてフロントピックアップの取り付け位置はブリッジ寄りに変更され、ピックガードも形状が変わる。
「レスポール・スペシャル」から「SG」へ
1959年後半には、モデル名が「レスポール・スペシャル」から「SGスペシャル」となる。 [2]
ボディーはマホガニーの一枚板となり、厚さも薄くなった。またボディの表裏両面のエッジ部分は斜めに削られる加工が施された(べベルド・エッジ)。 SGスタンダードおよびSGカスタムにはES-355などで採用されていたスウィング・アウェイ・プル・サイドウェイ・トレモロが装備された。
ボディとネックのジョイント方式は60年代後半まで試行錯誤が続けられ、複数の仕様が存在している。またボディ・エッジの落し方、ネックグリップの幅や厚さなども年代によって変わっている。1966年半ばからはピックガードが大型化され、ピックアップはピックガードから吊り下げられる形になった。
レス・ポールによる評価
当初はレスポールとして発売されたギターであり、レス・ポール&メリー・フォードのレコードジャケットには、レス・ポールがSGを抱えた写真も存在する。しかしレス・ポール本人はこのギターを自身のシグネイチャー・モデルとしては認めなかった。 [3]。
バリエーション
従来のレスポール・モデルから設計を全面的に刷新した1961年より、「レスポール・カスタム」、「レスポール・スタンダード」、「レスポール・ジュニア」、SG-TV、SGスペシャルというラインナップが用意された。スペシャル、ジュニア、スタンダードは同じボディが使われた。メロディーメイカー、EB(ベース)も、SGスタイルに移行した。
- SGスタンダード (SG Standard、Les Paul Standard)
- ボディ・カラーはチェリー・レッドが基本色[4]。他にカスタムカラーとしてポラリスホワイト、ペルハムブルーなどが存在する。スタンダードには当初、Les Paul の文字が入ったトラスロッドカバーが使われていたが、レス・ポールとの契約終了の後、無地のものに変更される。
- 発表時には「Patent Applied For(特許出願中)」の頭文字を取った「PAF」ハムバッカーを2基搭載し、ブラジリアン・ローズウッドのフィンガーボード、New Gibson Vibrato(スウィング・アウェイ・プル・サイドウェイ・トレモロ)が装備されたが、バー・テールピースのみのモデルやビグズビー装備のモデルもカスタム仕様として存在する。
- SGカスタム (SG Custom、Les Paul Custom)
- レス・ポール・カスタムが確立した上位機種の血統をそのまま受け継いだモデルとして発表、ボディカラーは、それまでのエボニーからホワイトに変更された。
- 「Patent Applied For(特許出願中)」の頭文字を取った「PAF」ハムバッカーを3基搭載し、New Gibson Vibrato(スウィング・アウェイ・プル・サイドウェイ・トレモロ)が装備されたが、バー・テールピースのみ、ビグズビー装備のモデルもカスタム仕様として存在する。ゴールド・ハードウェア、マルチ・バインディング、エボニーのフィンガーボードなど、装飾も豪華なのが特徴。Fretless Wonder も採用されていた。
- カスタムには指板エンドとフロント・ピックアップとの間のプレートに'62年の途中までは"LesPaul CUSTOM"、その後は"LesPaul"が外れて"CUSTOM"のみ刻印される。
- SGジュニア (SG Junior、Les Paul Junior、SG-TV)
- P-90をブリッジ寄りに1基、バー・ブリッジ、チェリーレッドが発表当時の基本。他にカスタムカラーとしてペルハムブルーなどが存在する。
- 発表時はバー・ブリッジがそれまでのジュニア同様、スタッド位置が急角度であり、これが1961年モデルの特徴である。それ以降のモデルはビブラートユニット搭載を前提にリブあり(Compensated)となり、スタッドと接する下面はアールがつけられているため、アーム使用時には可動する設計がなされている[5]。ヘッドロゴは印刷である。
- ヘッドにシルクスクリーン印刷による Les Paul JUNIOR の文字が入っていたが1963年後期にはヘッドロゴのみのモデルが出荷されるようになる。Kluson社製のいわゆる「3連ペグ」チューナーを搭載し、その影響も感じるサウンドを持つ。レスポール・ジュニア同様、TV model も用意され、'61年初期のごく一部にLes Paul の文字が入ったトラスロッドカバーのTVイエローが存在するが、Cream Finish(ポラリスホワイト)がSG-TVであり、こちらは当初より Les Paul JUNIOR の文字は入っていない。近年、似た雰囲気のモデルが発売された[6]。
- SGスペシャル (SG-Special)
- ギブソン・ギターにおいて、SGという名を最初に与えられたモデルであり[7]、現在も様さまざまなバリエーションを持つモデル。現行モデルはハムバッカーにチューン-O-マチックブリッジ、バー・テールピースという仕様がメインであるが、かつてはレスポール・スペシャル同様、P-90を2基、バー・ブリッジ(オプションでマエストロ・バイブローラ)というのがSGスペシャルの本来の仕様であった。
- Cerry Red Finish(チェリーレッド)、Cream Finish(ポラリスホワイト)が発表当時の基本色、カスタムカラーとして、ペルハムブルー、TVイエローなどが存在する。SGジュニア同様、バー・ブリッジの取り付け角度が急なのは、1961年モデルの特徴の一つでもある。それ以降は同様にビブラートユニット搭載を前提とした上部にリブの立っているブリッジとなる。クルーソン社製のいわゆる「3連ペグ」チューナーを搭載し、その影響も感じるサウンドを持つ。1959年後期(レスポール・スペシャル時代)より既にSGスペシャルにモデル名の変更がなされていたため、当初よりLes Paulの文字は入っていない。ヘッド・ロゴはインレイである。
- 現行のハムバッカー搭載モデルはコスト及びP-90のサウンドを意識しての判断かピックアップ・カバーは付けられておらず、サウンド面は若干トレブリーな傾向にある。フェイデド (SG Special Faded)はオールドSGの質感を再現したモデルで、表面の仕上げはクリアラッカーのような光沢のあるものではなく、マットな薄い塗膜である。ポジションマークは基本的にドットだが、一部のモデルでは右写真のようにポジションマークが三日月形となっている。
- 1961年のデビュー当初と同じ仕様のモデルは現在カスタムショップにて製作されている。
レスポールモデル・リイシューが販売される1960年代末期からはモデルも増え、材や形状も大きく変わり独自の展開が図られたが、コスト削減がゆき過ぎたこの時期のモデルは短命に終わる。しかしながら、その後も様々なスペシャル・モデルが作られ、SGというギター自体は発売以来一度も生産終了していない。以下に1970年代以降作られた、その他のSGのモデルを挙げる。
- SG-Pro
- 1971年に一旦SG Special の製造が打ち切られ、SG-Pro が販売されるも翌年には販売終了、SG Special が復活。チューン-O-マチックブリッジ、ビグズビーを標準装備。
- The SG
- 一時期に作られたモデル。"The Paul"と同様に、ウォルナットボディ/ネックにエボニー指板を採用したモデル。
- SG-1、2、3
- 一時期に作られたモデル。メロディーメイカーの後継機種。数字はピックアップの数を示していた。
- SG ロボット・ギター (SG Robot Guitar)
- テンプレート:Main
- EDS-1275
- テンプレート:Main
- SG Zoot Suit
- マルチピース素材を起用したモデル。予め染色されたバーチ材を幾重にも張り合わせたブロック材を削り出すことで綺麗なカラーラインが出た縞模様、トップ、及びバックとも緩やかなアーチが描かれたボディーシェイプとなっており、一枚のバーチ材の厚さが約0.075インチ(=約1.91mm)という薄さのため、ボディーでも20枚以上、ネック&ヘッドにいたっては、数十枚もの重ね合わせが確認できる。5パターンのカラーが発表され、全体の平均重量が約5.7ポンド(=約2.5Kg)。ネックシェイプは伝統のラウンデッド・プロファイル、ヘッドストックピッチは17度、チューン-O-マチック、バー・テールピース、ピックアップはフロントに496R、リアに500T。塗装は2種類のサテン・ニトロセルロース・ラッカーが施されている[8]。
SGを使用しているミュージシャン
- アンガス・ヤング(AC/DC)
- デビュー当時からSGを使っている。
- トニー・アイオミ(ブラック・サバス)
- デビュー当時からSGを使っている。
- カルロス・サンタナ
- 1969年のウッドストック出演時からしばらくマエストロバイブローラの付いた SG Special を使っていた。
- フランク・ザッパ
- スモールガード・ラージヘッドのスペシャルをメインギターとして使用。スイッチ類が増設されている。
- エリック・クラプトン(クリーム)
トッド・ラングレンが所有)。
- ジョージ・ハリスン(ビートルズ)
- エリック・クラプトンと同時期の1966年から1968年頃まで使用した。ジョージがSGを抱えている写真や映像はさほど多くは無いが、レコーディングではビートルズ中期によく使用していた。プロモーション・フィルムの「ペーパーバック・ライター」「レイン」、また「レディ・マドンナ」(実際には「ヘイ・ブルドッグ」のレコーディング風景)などでその姿が確認出来る。66年の日本公演にも、バックアップとして用意されていた。写真では『Beatles gear 日本語翻訳版』(ISBN 4845607980)などに掲載されている。ジョージは、これをバッドフィンガーのピート・ハムに譲り、近年オークションに出品された[2]。
- ジミー・マッカロク(ウイングス)
- ディッキー・ベッツ (オールマン・ブラザーズ・バンド)
- デビュー以前より、1961年製スタンダードを使用。ビブラート・ユニットは取り外され、ストップテールピースが取り付けられていた。57年のレスポールを購入する際、資金の足しにするためにデュアン・オールマンに売却。近年、シグネイチャー・モデルも発売。
- デレク・トラックス
- シグネイチャー・モデルも近年発売された[3]。
- ピート・タウンゼント(ザ・フー)
- ロビー・クリーガー (ドアーズ)
- 近年、シグネイチャー・モデルも発売された。
- ポール・ウェラー
- 1968年 - 1971年製ラージガードのスタンダードを使用。近年は、エピフォン・カジノとSGが彼のトレード・マークとなっている。
- グレン・ティプトン (ジューダス・プリースト)
- ドン・ウィルソン(ザ・ベンチャーズ)
- 1970年代に一時使用していた。ラージピックガード、板バネ式ヴィブローラを搭載したモデルを使用。しかし1〜2年程でフェンダー・ジャズマスターに持ち替え、短期間の使用に終わっている。
- ジ・エッジ(U2)
- マニュエル・ゲッチング(アシュ・ラ・テンペル)
- バーナード・サムナー(ニュー・オーダー)
- リヴァース・クオモ(ウィーザー)
- ケリー・ジョーンズ (ステレオフォニックス)
- トム・リントン(ジミー・イート・ワールド)
- パトリック・スタンプ(フォール・アウト・ボーイ)
- ダロン・マラキアン(システム・オブ・ア・ダウン、スカーズ・オン・ブロードウェイ)
- イアン・マッケイ(フガジ)
- 安部俊幸(チューリップ)ES-335と併用
- 中山加奈子(プリンセス プリンセス)
- 福山雅治
- 岡野昭仁(ポルノグラフィティ)
- AKIHIDE(BREAKERZ)
- 和田唱(TRICERATOPS)
- 坂本慎太郎(ゆらゆら帝国)
- 土屋公平
- 和嶋慎治(人間椅子)
- 岸田繁(くるり)
- 桑原彰(RADWIMPS)
- 布谷吉崇(hare-brained unity)
- 一色徳保(つばき)
- 松本俊(AJISAI)
- 藤井敬之(音速ライン)
- 西川進
- カトウタロウ(BEAT CRUSADERS)
- 越川和磨 (毛皮のマリーズ)
- ホリエアツシ(ストレイテナー)
- Nakajin (SEKAI NO OWARI)
- 田中和将(GRAPEVINE)
- 山内総一郎(フジファブリック)
- セイジ(ギターウルフ)
- 竹安堅一(フラワーカンパニーズ)
- ハヤシヒロユキ(POLYSICS)
- 岩寺基晴(サカナクション)
- 招鬼(陰陽座)
- 椎名林檎
- 氏原ワタル(DOES)
- Keita The Newest
- YUJI OTA(GREAT ADVENTURE)
- SUGA(dustbox)
- 健一(メリー)
- 五十嵐隆(Syrup 16g)
- 猪狩翔一(tacica)
- 暴動(グループ魂)
- 八木さやか(Super Girl' juice)
- ediee(jealkb)
- 岡本玲
- 平山照継[Novela,Teru's Symphonia]
- 中川隆雄[Starless]
- 高見沢俊彦(THE ALFEE) - ピート・タウンゼントモデル、"レスポールSG"の他、タータンチェック柄のESP製など複数所有。
- JOJO広重(非常階段)
- 水谷孝(裸のラリーズ)
- 秀三(石鹸屋)
など
脚注
- ↑ この年には Flying V、Futura も発売されている。
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- ↑ レスポールモデル同様、当初は非常に退色しやすい染料が使われていたが、後に変更される。
- ↑ この構造により、ビブラート・ユニットなしのモデルはスタッドに異常なテンションがかかり、ネック側に傾いてしまっている個体も多い。
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文献
ロブ・ローレンス『レスポール大名鑑1915〜1963 写真でたどるギブソン・ギター開発全史』(ブルース・インターアクションズ、2011年)ISBN 978-4-86020-390-0