アマチュア無線技士
アマチュア無線技士(アマチュアむせんぎし)とは、無線従事者の一種。日本の国家資格・業務独占資格・必置資格であり、総務省がこの資格の所管官庁である。
目次
概要
電波は「人類共通の財産」であり、何人もこれを独占することは許されない。電波は利用できる部分の限られた貴重な「資源」であり、皆が自分勝手にこの資源を利用することは直ちにその枯渇を招くことになる。このため全世界的に、ある程度(電界強度によって規定される。)以上の電波の利用については「正当に許可された者」だけに許される「許可制」となっており、それぞれの業務目的に必要な周波数の「割当制」となっている。これはアマチュア無線についても例外ではない。国際電気通信連合(ITU)に加盟している電波利用の許可やその割当を行うのは各々の国(行政府)であり、このためアマチュア無線技士については国家資格となっている。
電波の利用は公共の福祉増進のために行われるものであるとされており、営利目的の電波利用については相応のさまざまな制限が課される。これに対して営利を目的としないアマチュア無線は、むしろ電波利用の本来の姿のひとつであり、多くの電波を「帯域」として利用することが許されている(詳しくはアマチュア無線の周波数帯を参照の事)。運用は常時、加えて無線技術の点では、全ての無線設備の設計製作、無線通信の点では、国内・国際・宇宙(人工衛星・月面反射通信など)などが許され、移動する局の範囲は、陸上・海上・上空と制限はない。 但し、アマチュア局の操作は無線従事者に限られる [1] のでアマチュア局を開設するには、アマチュア無線技士(または相当資格)を取得するのが必須となる。
アマチュア無線技士は電波法第40条第1項第5号において第一級から第四級まで4種別が規定され、同条第2項に基づく政令電波法施行令第3条第3項において、その種別に応じた無線設備の操作の範囲(電波の型式、周波数、空中線電力など)が具体的に定められている。なお、入門クラスとされる第四級アマチュア無線技士の資格でも、無線局(無線設備)の設計、製作、開局、通信・電波の質の管理などを含めた広範な運用まで全て個人(一人)で行うことができる。これら一連の流れは他の業務局のものと基本的な部分において差はない。すなわちアマチュア無線技士の資格を取得し、アマチュア無線局を開局して運用することなどにより、個人のそれぞれの能力に応じて、いわゆる無線に関するほぼすべての知識や技術・技能をひと通り修得、さらにその中で個人の得意な分野について深く探求することができる。
アマチュア無線は、「趣味」でありながら『国家資格』が必要で、かつ人類共通の資源である電波を利用するというスケールの大きい、また非常に奥の深い趣味であることから、かつてはKing of Hobby(趣味の王様)と言われたこともある。
時折り「アマチュア無線技師」と誤記される。
種別
- 第一級アマチュア無線技士(略称:1アマ)Amateur First-Class Radio Operator
- 日本国内におけるすべてのアマチュア無線局の無線設備の操作
- 第二級アマチュア無線技士(略称:2アマ) Amateur Second-Class Radio Operator
- アマチュア無線局の空中線電力200W以下の無線設備の操作
- 第三級アマチュア無線技士(略称:3アマ) Amateur Third-Class Radio Operator
- アマチュア無線局の空中線電力50W以下の無線設備で18MHz以上または8MHz以下の周波数の電波を使用するものの操作
- 従って、10MHz帯、14MHz帯の運用はできない。
- 第四級アマチュア無線技士(略称:4アマ) Amateur Fourth-Class Radio Operator
- アマチュア無線局の無線設備で空中線電力10W以下の無線設備で21MHzから30MHzまで又は8MHz以下の周波数を使用するもの、空中線電力20W以下の無線設備で30MHzを超える周波数の電波を使用するものの操作(モールス符号による通信操作を除く。)
- 従って、10MHz帯、14MHz帯、18MHz帯および4630kHzを含む全周波数帯のモールス符号による電信の運用はできない。
過去の種別には、電波法制定当初に規定された第二級アマチュア無線技士(略称:旧2アマ、現行の2アマとは異なる。)および政令無線従事者操作範囲令制定時に規定された電信級アマチュア無線技士(略称:電信アマ)、電話級アマチュア無線技士(略称:電話アマ)があった。 これらは、電話アマ(現4アマ)、3アマ、4アマとみなされる。 沿革およびその他の経過措置を参照。
相当資格
左記の無線従事者は、右記のアマチュア無線技士に相当する操作を行うことができる。
第一級・第二級総合無線通信士 | 1アマ |
第三級総合無線通信士 | 2アマ |
第一級・第二級・第四級海上無線通信士 |
4アマ |
第三級海上無線通信士、海上特殊無線技士、航空特殊無線技士、陸上特殊無線技士は、アマチュア局の操作を行うことができない。
取得
日本無線協会が実施する国家試験により取得する。3・4アマは、総合通信局長の認定を受けた団体が実施する養成課程を修了することでも取得できる。
免許証は1・2アマは総務大臣が、3・4アマは国家試験の受験地または養成課程の実施場所を管轄する総合通信局長が交付する。
欠格事由の適用除外
原則として精神病者、耳の聞こえない者、口の利けない者又は目の見えない者には無線従事者の免許を与えないとされているが、 この例外としてアマチュア無線技士は次の者には免許を与えるとしている。
精神病者以外の | |
耳の聞こえる者で、口の利けるもの 目の見える者 |
1アマ、2アマ、3アマ、4アマ |
上記以外の者 | 1アマ、2アマ、3アマ |
また、総務大臣又は総合通信局長が無線設備の操作に支障がないと認める場合にも適用されないこととなっており、他の種別と比較してよりゆるやかに適用されている。
国家試験
国(地方電気通信監理局(1985年(昭和60年)までは地方電波監理局)、沖縄郵政管理事務所も含む。以下同じ。)が実施していた時期は、年2回(4・10月、一次試験または予備試験については3・9月)平日の実施であったが、実施団体が日本無線協会に移行後は、実施回数が増加し、4アマについて東京の本部では毎週実施していた時期もあった。 また、実施日を平日から土曜・日曜を主に、更にほとんどを日曜のみと休日の実施を積極的に行っている。
定期試験
- 1・2アマは、1997年(平成9年)より年3回(4・8・12月)本支部所在地で実施。
- 3・4アマは、2000年代以降は、次のように実施されている。
- 本支部で年4回から14回実施。但し、試験地は本支部所在地とは限らない。
- 本部では上記に加えて月1回、同日中に受験受付・実施・結果発表・合格者の免許申請受付まで行う当日受付試験を行う。(1999年(平成11年)10月より実施)
- 8月はアマチュア無線フェスティバルの行事として、会場内または近傍で実施する。
- 関西アマチュア無線フェスティバル等でも、当日受付試験を行うことがある。
臨時試験が上記以外に学校等からの依頼により実施されることがある。
注 日本無線協会は3・4アマの試験を統一日程としていないので、試験日程・試験地は前年度と同じとは限らない。また、試験問題および合格速報をウェブサイトで公開しているが、3・4アマに限り実施していない。
試験科目
総務省令無線従事者規則(従前は無線従事者国家試験及び免許規則)第5条に規定されている。
1アマ
- 無線工学
- 1.無線設備の理論、構造及び機能の概要
- 2.空中線系等の理論、構造及び機能の概要
- 3.無線設備及び空中線系等のための測定機器の理論、構造及び機能の概要
- 4.無線設備及び空中線系並びに無線設備及び空中線系等のための測定機器の保守及び運用の概要
- 法規
2アマ
- 無線工学
- 1.無線設備の理論、構造及び機能の基礎
- 2.空中線系等の理論、構造及び機能の基礎
- 3.無線設備及び空中線系等のための測定機器の理論、構造及び機能の基礎
- 4.無線設備及び空中線系並びに無線設備及び空中線系等のための測定機器の保守及び運用の基礎
- 法規
- 1アマと同様。
3アマ
- 無線工学
- 1.無線設備の理論、構造及び機能の初歩
- 2.空中線系等の理論、構造及び機能の初歩
- 3.無線設備及び空中線系等のための測定機器の理論、構造及び機能の初歩
- 4.無線設備及び空中線系並びに無線設備及び空中線系等のための測定機器の保守及び運用の初歩
- 法規
- 1.電波法及びこれに基づく命令の簡略な概要
- 注 モールス符号の理解が含まれる。
- 2.国際電気通信連合憲章、国際電気通信連合条約及び国際電気通信連合憲章に規定する無線通信規則の簡略な概要
- 1.電波法及びこれに基づく命令の簡略な概要
4アマ
- 無線工学
- 1.無線設備の理論、構造及び機能の初歩
- 2.空中線系等の理論、構造及び機能の初歩
- 3.無線設備及び空中線系の保守及び運用の初歩
- 法規
- 電波法及びこれに基づく命令の簡略な概要
科目免除
試験の形式及び時間
多肢選択(マークシート)式で2011年10月より、
- 1アマは無線工学150分、法規150分
- 2アマは無線工学120分、法規150分
- 3アマは無線工学・法規70分
- 4アマは無線工学・法規60分
ただし、盲人は
- 1・2アマは点字による記述式
- 3・4アマは記述式による口述試験(口頭試問)
受験料
平成16年(2004年)4月実施分[3] より、1アマ8,900円、2アマ7,400円、3アマ5,200円、4アマ4,950円
- 受験票が郵送による場合は、受験票送付用郵送料(平成26年(2014年)4月実施分以降は52円))を合算して納付する。
年度 | 平成21年度 | 平成22年度 | 平成23年度 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
資格 | 1アマ | 2アマ | 3アマ | 4アマ | 1アマ | 2アマ | 3アマ | 4アマ | 1アマ | 2アマ | 3アマ | 4アマ |
申請者数(人) | 2,118 | 1,461 | 2,332 | 4,377 | 2,166 | 1,257 | 2,383 | 3,920 | 2,274 | 1,566 | 2,757 | 4,481 |
受験者数(人) | 1,496 | 1,003 | 2,146 | 4,048 | 1,518 | 865 | 2,204 | 3,617 | 1,674 | 1,151 | 2,532 | 4,138 |
合格者数(人) | 655 | 404 | 1,646 | 2,765 | 707 | 364 | 1,697 | 2,529 | 738 | 585 | 2,035 | 3,008 |
合格率(%) | 43.8 | 40.3 | 76.7 | 68.3 | 46.6 | 42.1 | 77.0 | 69.9 | 44.1 | 50.8 | 80.4 | 72.7 |
年度 | 平成24年度 | 平成25年度 | ||||||||||
資格 | 1アマ | 2アマ | 3アマ | 4アマ | 1アマ | 2アマ | 3アマ | 4アマ | 1アマ | 2アマ | 3アマ | 4アマ |
申請者数(人) | 2,849 | 2,092 | 2,603 | 4,111 | 2,618 | 1,811 | 2,466 | 3,430 | ||||
受験者数(人) | 2,162 | 1,577 | 2,399 | 3,803 | 1,968 | 1,345 | 2,241 | 3,178 | ||||
合格者数(人) | 1,031 | 779 | 1,860 | 2,734 | 913 | 695 | 1,779 | 2,319 | ||||
合格率(%) | 47.7 | 49.4 | 77.5 | 71.9 | 46.4 | 51.7 | 79.4 | 73.0 |
試験の難易度
- 無線工学においては、確実な解答を得るために必要となる自然科学系の基礎知識の水準は、3アマ・4アマは中学校卒業程度、2アマは高等学校卒業程度、1アマは大学1年から短期大学卒業程度と言われる。しかし実際には中学校、高等学校で習う範囲のものとはかなりかけ離れた専門的なもの(各級ともにオームの法則など工科系大学の教養課程修了程度以上のものが含まれる。)である。試験の問題に出てくる学術用語・専門用語もしっかり理解出来る様にならなければならない。
- 法規においては、電波法、電波法施行規則、無線従事者規則など電波法及び関連政省令、3アマ以上は電波に関する国際条約やモールス符号の概要も理解しなければならない。すなわち各法、特に各法律用語の意味を正確に理解し、実際に各法を遵守した無線局の運用・管理(監理)等ができるか否かが問われる。これは各級ともに大学教養課程にある基礎法学などの修了程度と言われ、かなり難解な文章を読みこなすだけの十分な国語力・読解力が要求される。
- またこの資格は、金銭上の利益を目的としないだけで、いわゆる私設無線局の総合責任者資格でもあることから、「初歩」「基礎」「概要」の差こそあれ、いずれの級も無線に関する幅広い知識を問うものとなっている。このため、中学校、高等学校、大学の卒業者であっても、受験勉強は必須である[4]。但し、年齢制限もなく筆記試験は多肢選択式のため、各々の学校卒業相当の年齢以下でも合格が可能である。3歳で3アマ、小学校1年生で1アマに合格した例がある。
養成課程
1966年(昭和41年)の制度開始当初は、日本アマチュア無線連盟(JARL)が実施者に認定され、電信アマと電話アマに対し、次の計6コースが設定された。
コース | 電話アマ | 電信アマ |
---|---|---|
標準 | 受講制限無し | 受講制限無し |
短縮 | 選抜試験合格者及び同等以上の学歴の者 | 選抜試験合格者及び同等以上の学歴の者 |
移行 | 電信アマ現有者 | 電話アマ現有者で電気通信術選抜試験合格者 |
実際には電話級標準、電話級短縮、電信級移行の3コースが主で、稀に電信級短縮が実施されていた。 以後、時間数の削減、実施者の日本アマチュア無線振興協会(JARD)への移行、第4級補習コース(過去6か月以内の修了試験の未受験者及び不合格者が対象)の設定、営利事業者を含む新規参入などの変遷があった。
授業時間数について、無線従事者規則の規定および各団体が実施しているものを示す。
|
|
JARDには4アマの過去1年以内の修了試験の未受験者及び不合格者に対する再受講制度がある。
- 直近の認定状況(実施状況ではない。)については養成課程一覧[5]を参照。
修了試験は国家試験と同等である。なお、盲人に対する実施を考慮し、筆記以外の方法をとれるとしている。[6]
- 盲人を対象とした事例は極めて少ない。実施例[7]を参照。
受講料は実施団体ごとに異なる。
年度 | 平成21年度 | 平成22年度 | 平成23年度 | 平成24年度 | 平成25年度 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
資格 | 3アマ | 4アマ | 3アマ | 4アマ | 3アマ | 4アマ | 3アマ | 4アマ | 3アマ | 4アマ |
実施件数 | 112 | 305 | 129 | 245 | 141 | 267 | 141 | 295 | 148 | 333 |
受講者数(人) | 3,772 | 11,365 | 4,350 | 9,391 | 4,947 | 10,137 | 4,491 | 10,893 | 4,388 | 12,724 |
修了者数(人) | 3,729 | 11,209 | 4,316 | 9,232 | 4,896 | 9,972 | 4,451 | 10,675 | 4,347 | 12,401 |
修了率(%) | 98.9 | 98.6 | 99.2 | 98.3 | 99.0 | 98.4 | 99.1 | 98.0 | 99.1 | 97.5 |
取得者数
1アマ | 2アマ | 3アマ | 4アマ | |
---|---|---|---|---|
平成12年度末 | 22,115 | 72,383 | 146,455 | 2,863,163 |
平成13年度末 | 22,353 | 72,621 | 147,169 | 2,879,314 |
平成14年度末 | 22,594 | 72,854 | 147,923 | 2,894,522 |
平成15年度末 | 22,817 | 73,088 | 148,722 | 2,909,162 |
平成16年度末 | 23,050 | 73,281 | 149,404 | 2,924,065 |
平成17年度末 | 23,697 | 73,705 | 156,415 | 2,938,927 |
平成18年度末 | 24,685 | 74,147 | 169,149 | 2,956,732 |
平成19年度末 | 25,427 | 74,462 | 180,033 | 2,974,569 |
平成20年度末 | 26,065 | 74,846 | 188,545 | 2,989,532 |
平成21年度末 | 26,683 | 75,229 | 195,122 | 3,002,920 |
平成22年度末 | 27,418 | 75,600 | 201,371 | 3,015,320 |
平成23年度末 | 28,147 | 76,167 | 208,322 | 3,027,802 |
平成24年度末 | 29,169 | 76,941 | 214,642 | 3,041,152 |
平成25年度末 | 30,079 | 77,628 | 220,785 | 3,055,638 |
この節の統計は、総務省総合通信基盤局電波部電波政策課の資料による。
外国での運用
総務省告示 [8] [9] [10] にある国々とは、相互運用協定が締結されアマチュア無線技士の資格によりその国で運用できる。
2013年(平成25年)10月21日現在 [11] 締結されているのは、次の通り。
- アメリカ、フランス、オーストラリア、ニュージーランド以外の国は、事前に運用許可を申請して許可証を取得しなければならない。
- アメリカ
- 運用できる範囲は、自局に指定されている電波の型式、周波数、空中線電力の範囲内でかつAmateur Extra Class(最上級)の操作範囲内である。日本でアマチュア局を開局していなければ運用できない。
- アメリカですでにアマチュア局を開局している場合は、相互運用協定に基づく運用はできない。アメリカでアマチュア局を開局すると相互運用協定による許可は無効になる。
- 4アマは30MHz以下の周波数での運用は認められない。
- オーストラリア
- 3・4アマは30MHz以上、出力10W以下の運用に限られる。
- ニュージーランド
- 3・4アマは運用できない。
- 操作にあたっては無線従事者免許証を所持することが必要である。また、英文の無線従事者免許証記載事項証明または英語が付記された無線従事者免許証を所持することを要求される国もある。英文証明が要求されない国でもあっても証明できる文書を所持することが望ましい。
相互運用協定が締結されていない国でも許可される場合がある。アマチュア無線#日本から見た相互運用を参照。
沿革
前史
1915年(大正4年)に施行された無線電信法には、アマチュア無線に限定した資格制度は存在しなかった [14]。 当時のアマチュア局は法令上は「私設無線電信無線電話施設」[15]であり、従事には(プロの)無線通信士の資格を要するのが基本だった。 資格を有しない者が今日的意味でのアマチュア局を開設したい場合は個々に能力試験 [16] を行い、合格者に従事することが許可された。
1940年(昭和15年)12月以降は、開設や継続には無線通信士第二級以上又は新設された電気通信技術者第三級(無線)以上の所有が絶対的条件となり、純然たるアマチュア局にもプロの資格が求められることになった。 1941年(昭和16年)12月8日に運用停止を命じられるが、戦後の再開時に施設の従事許可は無効とされた。
年 | 変遷 |
---|---|
1950年 (昭和25年) |
6月に電波法、電波法施行規則、無線従事者国家試験及び免許規則[17]が制定された。 1アマ:アマチユア無線局の無線設備の通信操作及び技術操作
11月に無線従事者国家試験及び免許規則は全面改正[19]された。
|
1952年 (昭和27年) |
電波監理委員会廃止、通信行政が郵政省に移管した。
|
1958年 (昭和33年) |
無線従事者操作範囲令が制定され、電信アマと電話アマが新設された。無線従事者国家試験及び免許規則は全面改正[20]された。 1アマ:アマチユア無線局の無線設備の操作
従前の2アマは電話アマとみなされ、1963年(昭和38年)までに電気通信術試験に合格すれば2アマになれた。
各級無線通信士、無線技術士の操作範囲にアマチュア無線技士の操作範囲が加わった。
試験の種別は、1・2アマは予備試験と本試験、電信・電話アマは本試験のみとされた。
11月5日現在有効な免許証は終身有効となった。
目の見えない者が電話アマになれることとなった。 |
1961年 (昭和36年) |
2アマに14Mc帯と21Mc帯が、電信・電話アマに21Mc帯と28Mc帯が開放された。 1アマ:アマチユア無線局の無線設備の操作 |
1964年 (昭和39年) |
1・2アマの試験が、本試験のみとなった。 電気通信術の能力は、
|
1965年 (昭和40年) |
養成課程によっても無線従事者の免許が取得できるようになった。 目の見えない者が電信アマになれることとなった。 |
1966年 (昭和41年) |
JARLによる養成課程が開始された。 |
1972年 (昭和47年) |
沖縄返還に伴い、沖縄の第一級、第二級、電信級、電話級アマチュア無線技士は、各々本土の1アマ、2アマ、電信アマ、電話アマとみなされた。
また、旧第三級無線技術士は国家試験の無線工学が免除されることとなった。 計量法が改正され、周波数の単位がサイクル(c)からヘルツ(Hz)となった。 |
1975年 (昭和50年) |
電信・電話アマの無線従事者免許証の交付者は、地方電波監理局長または沖縄郵政管理事務所長となった。 |
1978年 (昭和53年) |
目の見えない者が1・2アマになれることとなった。 |
1981年 (昭和56年) |
無線従事者国家試験センター(現 日本無線協会)が電話アマ試験の指定試験機関に指定された。 |
1982年 (昭和57年) |
電信・電話アマの操作できる電波型式が拡大した。 1アマ:アマチユア無線局の無線設備の操作 |
1983年 (昭和58年) |
無線従事者国家試験及び免許規則は無線従事者規則と改称された。
欠格事由の適用除外の範囲が拡大され、次の者に免許が与えられるようになった。
|
1984年 (昭和59年) |
無線従事者国家試験センターが電信アマ試験の指定試験機関に指定された。 |
1985年 (昭和60年) |
地方電波監理局が、地方電気通信監理局と改称された。
電信アマの電気通信術試験から送信が削除され受信のみとなった。
|
1988年 (昭和63年) |
1・2アマの電気通信術試験から送信が削除され受信のみとなった。また筆記試験が記述式から多肢選択式となった。 |
1989年 (平成元年) |
無線従事者操作範囲令が廃止、無線従事者の操作の範囲等を定める政令が制定され、翌年から施行された。 1アマ:アマチュア無線局の無線設備の操作
|
1990年 (平成2年) |
無線従事者規則が全面改正[21]された。
日本無線協会が2、1アマ試験の指定試験機関に指定された。 |
1991年 (平成3年) |
養成課程はJARDの事業に移行した。 |
1992年 (平成4年) |
耳が聞こえ、口の利ける者がなれる者に4アマも加わった。 |
1995年 (平成7年) |
2・3・4アマの操作できる空中線電力が拡大された。
|
1996年 (平成8年) |
1アマの電気通信術試験から和文受信が削除され、欧文受信のみとなった。 |
1997年 (平成9年) |
無線局認定点検事業規則(現登録検査等事業者等規則)が制定された。
|
2000年 (平成12年) |
無線従事者の欠格事由にある、耳の聞こえない者、口の利けない者または目の見えない者に対する適用除外の範囲が拡大された。
|
2001年 (平成13年) |
郵政省廃止、通信行政が総務省に移管した。
無線従事者の操作の範囲等を定める政令が廃止、電波法施行令が制定された。 |
2005年 (平成17年) |
10月より
となった。 |
2009年 (平成21年) |
4月より営利団体でも養成課程を実施できることとなった。
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2010年 (平成22年) |
4月より無線従事者免許証がラミネート処理からプラスチックカードにかわり、英語で免許の内容が付記されるようになった。
10月に株式会社QCQ企画が関東総合通信局より養成課程の認定を受けた。 |
2011年 (平成23年) |
10月より1・2アマの電気通信術が廃止され、法規にモールス符号の理解度に関する問題が出題される事となった。
|
2013年 (平成25年) |
1月にNPO法人クリスタルテックが近畿総合通信局より養成課程の認定を受けた。
4月より養成課程はeラーニングによる講義ができることとなった。 |
2014年 (平成26年) |
総務省は2アマを養成課程の対象とすることについてパブリックコメントを実施した。[22] |
注 引用部の拗音の表記は原文ママ。 |
国家試験の科目免除
かつての国家試験には、他種別の無線従事者のアマチュア無線技士に、およびアマチュア無線技士の他種別の無線従事者に対する科目免除があった。無線従事者国家試験及び免許規則または無線従事者規則の主要な制改定の施行時のものを示す。
制定当初の科目免除は現有資格の国家試験合格月の月初から1年間であった。
第一級無線通信士がアマチュア無線技士を受験することは想定されていなかった。 |
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これ以後の科目免除は終身有効とされた。 |
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資格再編後は、他種別の無線従事者のアマチュア無線技士に、およびアマチュア無線技士の他種別の無線従事者に対する科目免除は規定されていない。[21] 但し、琉球政府の旧第三級無線技術士に対する無線工学の科目免除は、なお有効[25]である。
電気通信術の能力
電気通信術の能力について、無線従事者国家試験及び免許規則または無線従事者規則に規定していたものを制改定の施行時毎に再掲する。
施行日 | 1アマ | 2アマ | 電信アマまたは3アマ | |||||
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和文 | 欧文 | 欧文 | 欧文 | |||||
送信 | 受信 | 送信 | 受信 | 送信 | 受信 | 送信 | 受信 | |
1950年(昭和25年)6月30日[17] | 50字/分で5分 | 50字/分で5分 | 60字/分で5分 | 60字/分で5分 | - | - | ||
1958年(昭和33年)11月5日[20] | 45字/分で5分 | 45字/分で5分 | 25字/分で5分 | 25字/分で5分 | ||||
1964年(昭和39年)12月28日[26] | 50字/分で3分 | 50字/分で3分 | 60字/分で3分 | 60字/分で3分 | 45字/分で2分 | 45字/分で2分 | 25字/分で1分 | 25字/分で1分 |
1985年(昭和60年)1月1日[27] | - | |||||||
1988年(昭和63年)1月18日[28] | - | - | - | |||||
1990年(平成2年)5月1日[21] | 25字/分で2分 | |||||||
1996年(平成8年)4月1日[29] | - | |||||||
2005年(平成17年)10月1日[30] | 25字/分で2分 | 25字/分で2分 | - | |||||
2011年(平成23年)10月1日[31] | - | - |
授業時間数
養成課程の授業時間数について、無線従事者国家試験及び免許規則または無線従事者規則に規定していたものを制改定の施行時毎に示す。
年 | 資格 | 無線工学 | 法規 | 電気通信術 | 資格 | 無線工学 | 法規 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1965年(昭和40年)9月1日[32] | 電信アマ | 20時間以上 | 20時間以上 | 25時間以上 | 電話アマ | 20時間以上 | 20時間以上 | ||
1983年(昭和58年)4月1日[33] | 18時間以上 | 18時間以上 | 25時間以上 | 18時間以上 | 18時間以上 | ||||
1986年(昭和61年)7月1日[34] | 10時間以上 | 12時間以上 | 25時間以上 | 10時間以上 | 12時間以上 | ||||
1990年(平成2年)5月1日[21] | 3アマ | 12時間以上 | 14時間以上 | 25時間以上 | 4アマ | 10時間以上 | 12時間以上 | ||
1993年(平成5年)10月29日[35] | 8時間以上 | 10時間以上 | 25時間以上 | 6時間以上 | 8時間以上 | ||||
1998年(平成10年)8月13日[36] | 6時間以上 | 8時間以上 | 25時間以上 | 4時間以上 | 6時間以上 | ||||
2005年(平成17年)10月1日[30] | 6時間以上 | 10時間以上 | - | 4時間以上 | 6時間以上 | ||||
注 総合通信局長(従前は電波監理局長、沖縄郵政管理事務所長、電気通信監理局長)が認めた方法による場合は変更できる。 短縮、移行コースはこの規定による。 |
その他
経過措置
旧2アマ、電信アマ、電話アマは、電波法改正附則により電話アマ、3アマ、4アマとみなされ免許証の書換えを要しない。
資格 | 新資格 | 根拠条項 | 施行日 |
---|---|---|---|
旧2アマ | 電話アマ | 昭和33年法律第140号による電波法改正附則第2項 | 昭和33年11月5日 注1 |
電信アマ | 3アマ | 平成元年法律第67号による電波法改正附則第2条第1項 | 平成2年5月1日 注2 |
電話アマ | 4アマ | ||
注1 免許申請については昭和33年郵政省令第28号による無線従事者国家試験及び免許規則改正附則第1項により昭和34年5月1日より施行された。 注2 施行日以降でも、国家試験合格の日又は養成課程修了の日から3ヶ月以内に免許申請したものであれば附則第2条第2項により電信アマ・電話アマとして免許された。 |
- 旧2アマは、無線従事者操作範囲令施行日から5年間は従前の操作範囲の操作もできた。
任用の基準または受験資格
- 1アマは、電波法第24条の2に規定する登録点検事業者[37] [38]の点検員となることができる。
- 3・4アマ養成課程の講師の知識及び技能を有する者として
- 1アマが従事者規則第21条に規定されている。
- 2アマはアマチュア業務の経歴3年により同等以上と認められると電波法関係審査基準にある。
- 1アマはアマチュア業務の経歴1年、2アマは同3年によりJARDのアマチュア無線技士養成課程講師になれる。
- 1・2アマは、職業訓練指導員 (電子科)を受験できる。[39]
免許証の番号
- 1字目は発給した総合通信局(従前は地方電気通信監理局)、2 - 3字目(昭和50年度までは2字目)は免許の年度を表す。
- 4字目(同上3字目)は1アマがH、2アマがI、3アマ(旧電信アマを含む。)がL、4アマ(旧電話アマを含む。)がN。
脚注
関連項目
外部リンク
- 日本無線協会 国家試験実施団体
- 日本アマチュア無線振興協会 養成課程実施団体
- ラジオ少年 養成課程実施団体
- QCQ企画 養成課程実施団体
- クリスタルテック 養成課程実施団体
- 日本アマチュア無線連盟
- 1アマ・2アマ国家試験問題 JH3KCW
- アマチュア無線試験問題 JL3SRZ(3アマ・4アマの模擬試験問題)
- ↑ 電波法第39条第1項
- ↑ 沖縄の復帰に伴う郵政省関係法令の適用の特別措置法に関する省令第30条第2項
- ↑ 平成16年政令第12号による電波法関係手数料令改正
- ↑ 無論、試験難易度の具体的詳細については無回答であるが、過去、各級の試験が電波監理局により直接実施されていた頃、電波監理局に「初歩」「基礎」「概要」あるいは「簡略な概要」といった「言葉」について問い合わせをすると、「法文明記されている言葉解釈の範囲」として、数学はこのぐらい、物理学はこのぐらい、また法学はこのぐらいのレベルまでが要求されると回答されていた。今日でも総合通信局に同じ問い合わせをすると、同じく「法文明記されている言葉解釈の範囲」として、概ね上述の回答がされる。
- ↑ テンプレート:PDFlink(総務省電波利用ホームページ 無線従事者関係の認定学校等一覧)
- ↑ 平成2年郵政省告示第250号 無線従事者規則第21条第1項第9号の規定に基づく無線従事者の養成課程の終了の際に行う試験の実施第3項第1号(二)(総務省電波利用ホームページ 総務省電波関係法令集)
- ↑ 視覚障害者のためのアマチュア無線講習会開催 東京ヘレン・ケラー協会
- ↑ 平成5年郵政省告示第326号 電波法施行規則第34条の8及び第34条の9の規定に基づく外国において電波法第40条第1項第5号に掲げる資格に相当する資格、当該資格を有する者が行うことのできる無線設備の操作の範囲及び当該資格によりアマチュア局の無線設備の操作を行おうとする場合の条件(総務省電波利用ホームページ 総務省電波関係法令集)
- ↑ テンプレート:PDFlink 総務省報道資料 平成25年9月27日
- ↑ テンプレート:PDFlink 総務省報道資料 平成25年10月21日
- ↑ 平成25年総務省告示第397号による平成5年郵政省告示第326号改正
- ↑ 海外での運用 ワールド・コーナー(JARL)
- ↑ アメリカでの運用・注意点 同上
- ↑ 実際には後述の能力試験に一度合格すれば、再開局(含継続)時や他管轄区域へ移動の際は試験が省略された。 丹羽一夫編 「CQ誌でつづるアマチュア無線外史」 CQ出版社 1982年 (関連文書の写真あり)
- ↑ 無線局、実験局等の用語は定義されておらず「私設無線電信無線電話実験局」というのは通称である。
- ↑ 岡本次雄(JA1CA)によれば、電気通信術は国家試験での廃止時までの1アマ程度。 学科の無線工学は記述式の頃の2アマ程度だったという。 学歴や職歴によっては無試験の場合もあった。日本アマチュア無線連盟 「アマチュア無線のあゆみ」 CQ出版社 1976年
- ↑ 17.0 17.1 17.2 昭和25年電波監理委員会第6号制定
- ↑ 庄野久男(JA1AA、旧J2IB)は無線通信士第一級を有するものの、戦後の再開時には1アマを受験した。 (「私のりれき書」CQ ham radio1959年12月号) 国家試験の科目免除参照。
- ↑ 19.0 19.1 昭和25年電波監理委員会規則第16号による全面改正
- ↑ 20.0 20.1 20.2 昭和34年郵政省令第28号による全面改正(電波法施行令制定)
- ↑ 21.0 21.1 21.2 21.3 平成2年郵政省令第18号による無線従事者規則全面改正
- ↑ 無線従事者養成課程の対象資格の拡大に関する意見募集の結果 総務省報道資料 平成26年6月25日
- ↑ 昭和27年郵政省第38号による改正(航空級無線通信士制定)
- ↑ 昭和59年郵政省令第2号による改正(資格再編前の最後の種別(特殊無線技士(無線電話丁))制定)
- ↑ 平成2年郵政省令第24号による沖縄の復帰に伴う郵政省関係法令の適用の特別措置等に関する省令改正
- ↑ 昭和39年郵政省令27号による無線従事者国家試験及び免許規則改正
- ↑ 昭和59年郵政省令50号による無線従事者規則改正
- ↑ 昭和63年郵政省令70号による無線従事者規則改正
- ↑ 平成7年郵政省令75号による無線従事者規則改正
- ↑ 30.0 30.1 平成17年総務省令第95号による無線従事者規則改正
- ↑ 平成23年総務省令48号による無線従事者規則改正
- ↑ 昭和40年郵政省令第31号による無線従事者国家試験及び免許規則改正
- ↑ 昭和57年郵政省令第40号による無線従事者国家試験及び免許規則改正
- ↑ 昭和61年郵政省令第30号による無線従事者規則改正
- ↑ 平成5年郵政省令第59号による無線従事者規則改正
- ↑ 平成8年郵政省令第71号による無線従事者規則改正
- ↑ 登録検査等事業者制度(総務省電波利用ホームページ 無線局開局の手続き・検査)
- ↑ 登録点検事業者制度の概要(関東総合通信局 その他)
- ↑ 職業能力開発促進法施行規則第46条及び別表第11号の3