かまいたちの夜

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テンプレート:出典の明記 テンプレート:Infoboxかまいたちの夜』(かまいたちのよる)は、チュンソフト(現スパイク・チュンソフト)から発売されたゲームソフト。『弟切草』に続く同社のサウンドノベルシリーズ第2弾である。

1994年11月25日スーパーファミコン用ゲームソフトとして発売され、その後数多くの機種に移植された。脚本は我孫子武丸、監督は麻野一哉。 背景の上に文章が表示され、時折現れる選択肢を選んでいくことで様々な物語が展開するサウンドノベル作品。真冬の雪山のペンションを舞台に、そこで起こる不可思議な殺人事件の謎を解くことが目的。

概要

スキー旅行に出かけた主人公・透と彼のガールフレンド・真理が、滞在先のペンション「シュプール」で起こる殺人事件に巻き込まれる内容。山荘で外部と隔離され電話が通じなくなり、自衛のために自分たちで事件の解決を余儀なくされる(クローズド・サークル)。前半はミステリーとして展開し、プレイヤーが事件を解決できなかった場合は次々と殺人が進行していき、ホラーサスペンスタッチのエンディングへと進む。

それぞれ毛色の異なる複数のシナリオが用意されており、登場人物は一緒でも設定が異なる場合がある。前作の『弟切草』と似た手法であるが、本作ではシナリオは完全に分岐するため、物語の前後で整合が取れないことはなくなった。

本作では文章単体でも読めるミステリーに加え、ゲームならではの複雑なシナリオ分岐とフラグ管理によって、サウンドノベルを一つの形として昇華させた。商業的にも成功を収めたことにより、後の作品にも大きな影響を与えている。

ゲーム内容

分岐システム

文章を読み進めて途中にある分岐を選んでいくシステムで、ゲームブックに近い。一見すると簡単に思えるが、すべてのエンディングを見るにはかなりの労力を要する。特にスーパーファミコン版はオートセーブ機能と、リトライは章の始めからのみという制約が付いたシステムとなっている。

推理システム

「ミステリー編」で事件推理において犯人を名指しする場面では、限定された選択肢から選ぶのではなく、犯人名を文字入力する仕組みになっている。ミスリードが配置されており、完全にトリックを把握していないと解決するのは難しい。また犯人やトリックだけが解っていても、それだけで解決することはできず、文章内での透の突拍子も無い発言や考えを読み解いて筋道を理解している必要がある。

その他

「ミステリー編」を解決させた後にも様々なストーリーが登場するが、一通りのストーリーをクリアした状態から、さらに特定のシナリオを出現させるためには、特殊な行動を取らなければならない。特にスーパーファミコン版では、性質上その特異さが際だっている。以降の作品では、若干の変更が加えられた。
後ほど出たPS版にはフローチャート機能が搭載され、プレイ環境が改善されている。

演出

シルエット

人物は青いシルエットで表現されている。この表現により、当時のスーパーファミコンの描画スペックでも多様の人物表現が可能となったばかりではなく、ユーザーの想像力を壊すことなく感情移入度を高める効果が得られた(例外として一部の死体は、実写で表現されている)。この表現方法は、以後のノベルゲームなどにおけるフォーマットとして定着し、ROM容量の増加によって人物のリアルな描写が可能になった現在においても、演出効果としてたびたび使われる。なお、人物をシルエットで表現するアイデアは、脚本を担当した我孫子によるもの。

アニメーション

いくつかの場面では、シルエットの一部をアニメーションさせて臨場感を出している。たとえば、猫が走りだしたり、ヒロインが胸に飛び込んできたり、ドアノブや階段から血が垂れてくるなどのシーンである。

BGM

中嶋康二郎加藤恒太によるBGMは人気を集め、報道番組ワイドショーなどでもしばしば使用されている。この事に関し我孫子は後に「画面下にテロップで『音楽「かまいたちの夜」より』って入れてくれないかと、何度思ったことか」と語っている[1]。効果音の数も多く、要所で効果的に使われて雰囲気を盛り上げている。

あらすじ

大学生である主人公の透は、ガールフレンドの真理にスキー旅行に誘われ、彼女の叔父である小林夫妻が経営しているペンション「シュプール」に滞在する。吹雪が止まぬ中、シュプールにはアルバイトの他、OL3人組や、関西人の社長夫妻など様々な人物が宿泊しており、中にはその場に似つかわしくないサングラスをかけたヤクザ風の男・田中一郎もいた。

夕食の後、OL3人組の部屋で「こんや、12じ、だれかがしぬ」という一文の書かれた手紙が発見されるが、その場では誰かのイタズラだと一蹴される。しかし夜9時を過ぎた頃、2階からガラスの割れる音がしたため、一同は2階の部屋を調べると、田中の部屋でバラバラになった田中の惨殺死体を発見する。部屋の窓は割れたまま開け放たれており、犯人の姿はなかった。

時間が経過するにつれ、次々と何者かにより殺害されていく宿泊者たち。はたして真犯人「かまいたち」とは何者なのか。吹雪に見舞われたかまいたちの夜、透たちは生存することが出来るのか?

登場人物

以下は「ミステリー編」を軸とした基本設定だが、分岐によって設定が多少変化することがある。

透(とおる)
本編の主人公(名前変更可)。続編『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄』およびCDドラマで「矢島」姓が付けられたが、この時点では名前のみ。大学生。同じ大学の真理に果敢にアタックするも、手ごたえに乏しく一人相撲かと思っていたところ、彼女のほうからスキーに誘われ信州にやってきた。3つのシナリオで唯一大幅に設定が変わらない。
真理(まり)
本編のヒロイン(名前変更可)。透と同じ大学に通っており、叔父が信州で経営するペンションに誘う。護身用に合気道を習っているらしい。透のことを憎からず思っているものの、はっきりとした胸の内はまだ不明。
小林二郎(こばやし じろう)
ペンション「シュプール」のオーナー。真理の叔父。脱サラしてペンションを開業する。料理が大の得意。
小林今日子(こばやし きょうこ)
小林二郎の妻。柔和な性格で、人を疑ったり喧嘩や争いをすることを嫌う。料理の腕は絶望的。
香山誠一(かやま せいいち)
大阪で会社を興している。中年小太りで豪放な関西弁と、まさに関西人のステレオタイプ。意外に気の弱い一面も見せる。
香山春子(かやま はるこ)
香山誠一の妻。物静かで線が細く、薄幸そうな美人。
久保田俊夫(くぼた としお)
「シュプール」で住み込みのアルバイトをしている自称大学六年生。単位そっちのけでスキーに熱中しているスポーツ青年。
篠崎みどり(しのざき みどり)
同じく「シュプール」で住み込みのバイトをしている。ポニーテールで見た目では年齢不詳だが20代のよう。久保田俊夫とは浅からぬ関係にあるらしい。
渡瀬可奈子(わたせ かなこ)
OL3人組の1人。ロングヘアーで若干軽そうなイメージがある。勝気な性格。
河村亜希(かわむら あき)
OL3人組の1人。ソバージュのかかったショートヘアに眼鏡をかけている。
北野啓子(きたの けいこ)
OL3人組の1人。やや太目の体格をしており、食べ物が美味しいからとシュプールを選んだ食いしん坊。
美樹本洋介(みきもと ようすけ)
長身で髭をはやしたフリーカメラマン。人当たりが良い。
田中一郎(たなか いちろう)
スキー場に来てロングコートに帽子にサングラスをつけている不審人物。
ジェニー
「シュプール」で飼われている猫。透たちが訪れた当初は行方不明になっていた。

シナリオ一覧

複数のエンディングが用意されており、ミステリー編で「完」1回または「終」3回エンディングを見ると、アナザーストーリーとしてオカルトタッチな「悪霊編」、サスペンスタッチの「スパイ編」が楽しめ、それらのエンディングをトゥルーエンディング、バッドエンディング含め全て読み終わるとセーブデータ(栞という形になっている)がピンク色に変わり、さらにセルフパロディである「Oの喜劇編」、「暗号編」が追加される。あるシナリオに隠された「チュンソフ党の陰謀編」をクリアするとセーブデータの色が変わり、同社の『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』のパロディである「不思議のペンション編」が加わる。その他、移植機種によりおまけシナリオが用意されていることがある。

※モバイルアプリの場合は、各シナリオごとに購入する必要がある。

ミステリー編
ペンション・シュプールでの夕食後、殺人予告とも受け取れる手紙が見つかる。その場は趣味の悪い冗談と受け取られ騒ぎは収まったが、ガラスが割れる音で客室に集まった人々の目の前で本当に死体が発見される。
本作のメインシナリオ。途中で事件を解決できないまま話が進むと、徐々に惨劇ホラーの様相を呈してくる。
スパイ編
ふとしたきっかけで、透は伝説のスパイ「かまいたち」を巡る熾烈な争いに巻き込まれる。
盗聴・暗殺・銃撃戦などアクション&サスペンス色の強いシナリオ。
悪霊編
ペンション宿泊客が体験する不気味な現象の数々。原因がはっきりしない中、何かを知っているというルポライター・美樹本が現れる。彼と小林が言い争う中、遂に殺人事件が起きてしまう。
ある人物の凄惨な過去に主観を置いたオカルトホラー。
釜井達の夜編
シュプールで「かまいたちの夜」というゲームを始めた透と真理。ゲーム開始時に「透」と「真理」と名付けたキャラクターも、奇妙なことにゲーム内でその日の2人と同じ行動を取り始める。
シナリオ自体は短いが、全体を締めるメタフィクション
雪の迷路編
スキーからペンションへの帰路で事故を起こし、自らの足で帰らざるを得ない状況に置かれた透と真理。吹雪の中、果たして無事にペンションへとたどり着けるのか?
実は、2人が迷っている間にミステリー編が進んでいたという構成。
O(オー)の喜劇編
食事の席についた2人は、見るからに奇妙な出で立ちをした人物を目にする。食後に皆でくつろいでいる中、またまた奇妙な叫び声が響き渡る。
ピンクのしおり出現後のギャグ・セルフパロディシナリオ。
暗号編
ガラスが割れる音で田中一郎の客室に駆けつけた一同。しかしその中には誰もおらず、代わりに「シュプール内に宝が隠されている」という内容の手紙が置かれていた。
チュンソフ党の陰謀編
特定のシナリオである行為をすると現れるシナリオ(と言うよりは隠しメッセージ)。
不思議のペンション編
入るたびにマップが変わると言われる伝説の「不思議のペンション」にたどり着いた透と真理。地下奥深くに眠ると伝わる宝を求めて、2人は地下室へ潜入する。ゲームオーバー(バッドエンド)も非常に多いため、最多数のエンディングが搭載されている。
真理の探偵物語編
PlayStation版移植以降追加されたミニシナリオ。事件解決後、探偵事務所を開いた真理に、某ゲーム会社の殺人事件の話が持ち込まれる。容疑者として挙がった4人の証言を閲覧した真理は「もう犯人が分かった」と断言する。
ちょっとエッチなかまいたちの夜
元々はスーパーファミコン版のキャンペーンプレゼントだったものの内容を、PlayStation版移植の際に追加したもの。音声のみで、キャストはCDドラマと同じ。
A Novel
シュプールで楽しい夜を過ごした翌日、宿泊客の1人が死体で発見された。外部からの侵入の痕跡はなく、犯行は内部犯によるものと推測され、客と従業員はお互い疑心暗鬼に陥る。
モバイルアプリ限定のシナリオ。『かまいたちの夜 公式ファンブック』に収録された我孫子武丸の短編小説をサウンドノベル化したもので、途中の選択肢はなく一本道。

移植機種と変更点

後に様々な形でリメイクされ、PlayStationで『サウンドノベルエボリューション2 かまいたちの夜 特別篇』が1998年12月3日に、ベスト版が1999年12月2日に発売されている。PlayStation版ではミニシナリオが追加されている。

その他、J-PHONEで『かまいたちの夜 mini』が2002年4月1日から、ゲームボーイアドバンスで『かまいたちの夜 ADVANCE』が2002年6月28日に、パソコンFlashで『かまいたちの夜 internet』が2002年7月1日から、携帯アプリで『かまいたちの夜』が2004年1月30日からそれぞれ発売されている。

また、PlayStation 2の『かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相』にも、メインストーリー部分のみ「ペンション"シュプール"編」として収録されている。なおその際、時勢の違いやハード仕様の違いを受け、一部のシーンで台詞回しが変更された。

2007年2月からはWiiバーチャルコンソールでも配信されている。要Wiiポイント800で、操作形式はクラシックコントローラーおよびゲームキューブコントローラ。こちらはスーパーファミコン版そのまま。また、2013年8月からはWii Uのバーチャルコンソールでも800円で配信されている。

2011年8月からは、PlayStation 3PlayStation Portableゲームアーカイブスでも配信されている。価格は800円。内容はPlayStation版そのまま。

2014年1月24日より、『かまいたちの夜 Smart Sound Novel』の文章を英語訳した『Banshee's Last Cry』がiOSAndroid対応アプリとして発売され、初の日本国外での発売となった。

No. 発売日 対応機種 タイトル 開発元 発売元 メディア 型式 価格 売上本数 備考
1 1998年12月3日 PlayStation サウンドノベル・エボリューション2
かまいたちの夜 特別篇
アストロール チュンソフト CD-ROM SLPS 01794 4,800円(税別) - リメイク版
2 1999年12月2日 PlayStation PlayStation the Best
かまいたちの夜 特別篇
アストロール チュンソフト CD-ROM SLPS 91187 2,800円(税別) - 廉価版
3 2002年4月1日 携帯アプリ かまいたちの夜 mini チュンソフト チュンソフト J-PHONE - 月額300円(税別) -
4 2002年6月28日 ゲームボーイアドバンス かまいたちの夜 ADVANCE チュンソフト チュンソフト ロムカセット AGB-P-AKZJ(JPN) 4,800円(税別) - PlayStation版の移植
5 2002年7月1日 PC各種 (FLASH) かまいたちの夜 Internet チュンソフト チュンソフト ダウンロード - 1,800円(税別、半年間有効) - 2005年6月30日販売終了
6 2004年1月30日配信開始 携帯アプリ かまいたちの夜 チュンソフト チュンソフト iモード
EZweb
Yahoo!ケータイ
- 月額300円(税別) -
7 2006年7月27日 PlayStation 2 かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相 チュンソフト セガ DVD-ROM SLPM 66452 6,090円(税込) - ミステリー編のみ収録
8 2007年2月13日 Wiiバーチャルコンソール かまいたちの夜 チュンソフト
アクアマリン
チュンソフト ダウンロード - 800Wiiポイント - スーパーファミコン版の移植
9 2010年11月1日 Androidアプリ かまいたちの夜 チュンソフト チュンソフト ダウンロード - 350円(税込) -
10 2011年8月24日 ゲームアーカイブス かまいたちの夜 特別篇 チュンソフト チュンソフト ダウンロード - 800円(税込) -
11 2013年7月10日 Androidアプリ かまいたちの夜 Smart Sound Novel スパイク・チュンソフト スパイク・チュンソフト ダウンロード - 800円(税込) - 画像、音楽を一新したリメイク版
12 2013年8月7日 Wii U(バーチャルコンソール) かまいたちの夜 チュンソフト
アクアマリン
チュンソフト ダウンロード - 800円(税込) - スーパーファミコン版の移植
13 2014年1月24日 Androidアプリ
iOS
Banshee's Last Cry スパイク・チュンソフト Aksys Games ダウンロード - - 『かまいたちの夜 Smart Sound Novel』の英訳版

PlayStation版

  • フローチャート機能の追加。
    • 一度見たシーン(選択肢含む)が記録され、自由にシーンを行き来することが出来るようになった。また、選んでいない選択肢も色分けされ、一目瞭然となった。これに伴い、SFC版の章選択は廃止された。
  • 振動機能の追加。
  • グラフィックをよりリアルに、よりクリアにした。
  • 登場人物紹介の項目が増えた。
  • 新たな隠しシナリオとして、書き下ろしの番外シナリオ「真理の探偵物語」と、音声のみのシナリオ「ちょっとエッチなかまいたちの夜」を収録。
  • 不思議のペンション編を見るために解かねばならない暗号の答えが変更。同時に、チュンソフ党の陰謀編の文章も追加・改稿された。
  • 金のしおり出現条件が変更。
  • 時節に合わせて、真理に似ている人物・啓子の見たい番組などメッセージの細部が変更。
  • 犠牲者が2人の時点で事件を解決する本編のエンディングが、バッドエンド扱いになっている。
    • 監督の麻野によると、犠牲者が2人の時点で事件を解決するのがベストだと勘違いしたスーパーファミコン版のユーザーが多かったための変更。本編にはそれよりも早い段階で事件を解決するエンディングが存在するが、初プレイ時にこの結末に到達したプレイヤーに2周目以降のプレイを促すため、犯人の動機など解明されないまま終わる。一方、犠牲者が1人の時点で事件を解決するエンディングでは犯人の動機が解明される。

ゲームボーイアドバンス版

※PlayStation版との比較とする。

  • 『かまいたちの夜2』に準じて、透の名前が「矢島透」に、恋人も「小林真理」とフルネームが付いた。
  • 「我孫子氏からの挑戦状」(『2』の宣伝)が追加された。条件を満たすとタイトル画面に追加される。
  • 振動機能の削除。
  • 容量の関係上、「真理の探偵物語」と「ちょっとエッチなかまいたちの夜」は未収録。
  • 時節に合わせてメッセージの細部を変更。
  • フローチャートの番号ズレが一部修正。

Internet版

基本的にスーパーファミコン版をベースとしている。このため、前述の犠牲者2人のエンディングもグッドエンド扱いになっている。

  • オンラインでIDとパスワードを入力してログインする形式になり、セーブデータがサーバーに保存される。利用券は6ヶ月間有効。
  • 時節に合わせてメッセージの細部を変更。
  • 不思議のペンション編を見るために解かねばならない暗号の答えが再変更。

2003年5月23日からは、ミステリー編の序盤のみプレイ可能な無料体験版も配信されていた。

2005年6月30日をもって販売終了となり、2005年9月30日にオンラインサービスが終了した[2]

携帯アプリ版

※PlayStation版との比較とする。

  • 各シナリオが課金によるポイントでの購入になったため、金のしおりがなくなり、ポイントさえ支払えばどのシナリオからでも開始出来るようになった。
  • 一部エンディングのカット、それに伴うシナリオ、メッセージの細部変更。
  • 新シナリオとして、公式ファンブック掲載の小説「かまいたちの夜 A Novel」が追加。

Android版

※携帯アプリ版との比較とする。

2010年11月1日よりau one MarketにてシャープのAndroid端末IS01向けに配信開始後、2011年2月1日よりAndroid Marketにて他の機種へも配信開始。携帯アプリ版同様、シナリオごとに分けて販売されている。価格はミステリー編が350円、その他は230円または115円(いずれも税込)。

  • シリーズ初の「タッチパネル操作」に対応。映像はVGA画質になり、解像度が向上した。
  • 携帯アプリ版にはなかった、PlayStation版の「人物紹介」機能が実装。

開発

開発の経緯は、チュンソフトが何人かのミステリー作家にサウンドノベル第一弾である『弟切草』を送り、アンケートを取った事から始まる[3]。 『弟切草』を送られた作家の一人である我孫子武丸は、「僕はもうやってます。ドアドアのころから知ってます」と感想を送り、中村光一はそれに感激し、京都の我孫子の自宅に会いに行く事になる。その際に我孫子がゲームに関して詳しく知っている事が分かり、共同で作品を創る事となった[3]

我孫子は『弟切草』をプレイした感想として、「自分の仕事に近いジャンルが初めて出てきたって感じがしましたね。それまでのアドベンチャーゲームよりも文章量が多い分、『僕だったらこうやる』というアイデアもすでにありましたから」と語っている[3]。しかし、我孫子はアドバイス程度やシナリオの一部を書く、もしくはシナリオを上げればあとは完成を待つだけであると思っていたが、チュンソフトの要望により丸2年間ゲーム製作に携わる事となった[4]。我孫子はチュンソフトから5分くらいの場所にあるホテルに泊まり、チュンソフトに出勤する日々が続いたが、その事に関し我孫子は「デバッグの時期に、分岐などで辻褄が合わない所を修正するためには、どうしても書いた本人が、そばにいないとだめなんですよ」と語っている[4]

開発に当たって中村からは特に要望がなく、我孫子が原稿を少しずつ渡していく中でチュンソフト側の考えもまとまっていき、『弟切草』は同じ長さの話が並行する形になっていたが、本作ではじっくり読ませるというコンセプトが固まった[4]

本編であるミステリー編をまず製作し、その後に様々なジャンルの話が盛り込まれた。特にスパイ編に関しては007シリーズの中にスキーでの追走劇があった事に起因し、我孫子の意向によってスノーモービルの追撃戦が盛り込まれる事となった[4]

結末として入れられなかったアイデアとして、犯人が映画『13日の金曜日』(1980年)のジェイソンのような殺人鬼だったというものがあったが、本編が展開によっては血みどろの状態になるため、必要ないとの判断で取りやめとなった[5]

『かまいたちの夜』というタイトルに関しては、特撮テレビドラマ怪奇大作戦』(1968年 - 1969年TBS系列)の「かまいたち」というタイトルの回があり、人間が一瞬でバラバラになる事に恐怖を覚えたため印象に残っていた。この事に関し我孫子は「人間がバラバラになるのはホラーっぽくて良いかなと。『弟切草』でも感じた事なのですが、メディアの雰囲気自体が微妙にホラー志向ですからね。同じミステリーでもパズルではなくホラー、オカルトっぽいほうが、演出の効果も期待できるだろうと、論理的に積み重ねていっ出てきた結果ですね」と語っている[5]

また、我孫子は小説家としてのデビュー前に『かまいたちの夜』というタイトルの作品を執筆しているが、内容は本作との関連はない[5]

雪山を舞台にした事に関しては、ミステリーをあまり読まない人たちもプレイする事を考慮し、オーソドックスに登場人物を限定して、閉鎖された空間に閉じ込められるという設定となった。感情移入しやすい話で、『弟切草』と同じく主人公が若い男女である事から雪山のペンションという舞台が出来上がった[5]

登場人物をシルエットで描くというアイデアを出した我孫子は、「『弟切草』のときは、人物の顔を意図的に出さなかったそうなんですよ。でも、今回は人物が多いんで、そういう訳にはいかない。談話室でたくさんの人が話をしているときに空っぽの椅子が写っていたんでは、間が抜けているでしょ。それで、『影でも描いたらどうですか』と、言ったんです。でもそのときは、動かしてくれと言ったつもりはなかったんですよ」と語っている[5]

スタッフ

オリジナル版

  • 脚本:我孫子武丸
  • 絵:小泉冬彦、落合信也、佐々木真治、佐藤圭子、長谷川薫、原田久美子
  • 音楽開発:三俣千代子
  • 曲:加藤恒太中嶋康二郎
  • 開発監督:株式会社アクアマリン、斉藤昌快
  • 開発:二位真裕、山田信洋、小川一美、中島康雄、大森田不可止
  • 助手:斉藤ひとみ、黒田剛志、塩野勝彦
  • 写真:山浦昇一郎
  • 撮影協力:ペンションクヌルプ(長野県白馬村)
  • 効果音:有限会社マジカル
  • 造形:株式会社ラッキーワイド
  • 協力:株式会社ピンポイント
  • 製作補佐:中西一彦
  • 製作:中村光一
  • 監督:麻野一哉

PlayStation版

  • 脚本:我孫子武丸
  • 監督・監修:麻野一哉
  • 音楽:加藤恒太 、中嶋康二郎
  • 作画:佐々木真治、小泉冬彦、青柳利実
  • 音楽制作:佐藤天平
  • 開発監督:水足淳一(株式会社アストロール)
  • 開発:新井田直人、寺林潤、板野英史
  • 助手:新井田涼子、氷皇茜
  • 撮影:山浦昇一郎
  • 撮影協力:ペンションクヌルプ(長野県白馬村)
  • 効果音:有限会社マジカル
  • 造形:株式会社ラッキーワイド
  • 動画:滝口寿彦、姫田蘭 (SFX STUDIO LOOP HOLL)、中山雅子(有限会社クオーレ)
  • 検査:曽根康征、石神宏紀
  • 制作補佐:中西一彦、西畑幸雄
  • 宣伝・広報:山本啓介(有限会社ピース)、清水妙子(有限会社ピース)
  • 構成:落合信也
  • 製作:大森田不可止
  • 製作総指揮:中村光一

評価

ファミリーコンピュータMagazineの読者投票による「ゲーム通信簿」での評価は以下の通りとなっており、30点満点中24.4点となっている[6]

項目 キャラクタ 音楽 お買い得度 操作性 熱中度 オリジナリティ 総合
得点 3.7 4.3 3.7 4.0 4.4 4.3 24.4

関連作品

公式ファンブック

  • 『かまいたちの夜 公式ファンブック』 ISBN 4-924978-01-9 / チュンソフト 編、我孫子武丸 著、1995年1月25日
  • 『かまいたちの夜 特別篇 公式ファンブック【改訂版】』 ISBN 4-924978-09-4 / チュンソフト 編、我孫子武丸 著、1998年12月20日

「イラストレーテッド・メモリアル」と銘打たれた公式ファンブック。メイキング写真や、舞台となったペンション「クヌルプ」の詳細、ゲームに関するクイズ、我孫子武丸描き下ろしの小説『かまいたちの夜 A Novel』などが収録されている。『A Novel』はノベライズにあたるがゲーム本編とはトリックや犯人が異なり、後に携帯電話アプリ版に移植された。シナリオ公募企画なども行われ、後の『あなただけのかまいたちの夜』の発売に繋がった。

後にPlayStation版の発売に合わせて改訂版が出され、こちらは掲載内容が一部増補、変更されている。

あなただけのかまいたちの夜

  • 『サウンドノベル・アンソロジー あなただけのかまいたちの夜』 ISBN 4-924978-02-7 / チュンソフト・我孫子武丸 選、1995年8月25日

スーパーファミコン版の発売直後にチュンソフトより発売された『公式ファンブック かまいたちの夜』の中で、我孫子武丸の小説を元にした新たなシナリオを一般から公募する企画があった。応募期間が短かったにも関わらず、かなりレベルの高い作品が多数送られてきたので、急遽それら応募作品の中より10作品(小説形式だけでなく、ゲーム形式、選択肢のみも含む)を選考して、一冊の本にした。それが『あなただけのかまいたちの夜』である。

発売された本は「ゲームをプレイして、さらに公式ファンブックを読んだ者」を対象とした、間口のやや狭い本であるにもかかわらず好評を博した。選考された10作品の作者には、それぞれ入選順位・ページ数に応じた印税が支払われた。

『あなただけのかまいたちの夜』は、ゲーム発売から時間が経過して話題性が薄れた時点で絶版になったが、後にPlayStation版や『かまいたちの夜2』が発売された時に、それぞれ再版された。

  • 「かまいたちの夜 A Novel」 / 我孫子武丸 - 『公式ファンブック』に収録された短編小説の再録だが、本書では他の10作品に繋がる選択肢が挿入されており、そこからそれぞれの作品のページへ分岐するようになっている(ただし、選択肢のみでその後のストーリーがない分岐もある)。
  • 最優秀賞 「吹雪の晩餐」 / 宮下悠一
  • かまいたち大賞 「かまいたちの誘惑」 / M・Mヨスル もそざわ - ゲームブック形式の作品。バッドエンディングを含めた多くのエンディングに分岐する。
  • 準優秀賞 「分岐点」 / R・未留羅 - エンディング分岐あり。
  • 準優秀賞 「雪猫」 / 根岸篤宏 - エンディング分岐あり。
  • 我孫子武丸賞 「香山のかまいたちの夜」 / 持麾道治 - エンディング分岐あり。
  • 一発笑(賞) 「小林さんの賭け」 / 下川優也
  • 入賞 「冬の日の闇」 / ユウキ
  • 入賞 「吹雪に埋もれた贖罪」 / 山代健暁
  • 入賞 「まぼろしの一日」 / 劉らい太
  • 分岐賞 「発覚!! 透君の正体」 / 新上辻隆行 - 選択肢のみの作品。続きのストーリーはない。

攻略本

  • 『かまいたちの夜 完全攻略本』 ISBN 4-924978-25-6 / チュンソフト、2002年6月28日

スーパーファミコン版から8年の年月を経て初めて出版された攻略本。ペンション「クヌルプ」のオーナーと我孫子武丸による対談も掲載されている。

CD

CDドラマ
生物兵器を使用したことによるバイオハザードを題材としたオリジナルストーリーになっている。出演声優は以下の通り。

なお、本編の終了後に「不思議のペンション編」のBGMが収録されている。これには、当時まだ遊びつくしていなかったユーザーへ、まだ隠されたシナリオがあることを示唆するヒントの意味合いがある。また、劇中でそれをほのめかす台詞もあり、公式ガイドでは「CDドラマに鍵が隠されている」旨の叙述がある。

ちょっとエッチなかまいたちの夜
スーパーファミコン版のピンクのしおりを出した画面を写真に撮って送ると先着順3,000名にプレゼントされた、その名の通り「ちょっとエッチな」物語が楽しめる8cmCD。PlayStation版移植の際は、金のしおりを出すと聞けるようになっている。
かまいたちの夜 サウンドトラック
スーパーファミコン版のサウンドトラック
かまいたちの夜 特別篇 スペシャルアレンジパック
PlayStation版の音源を基にしたアレンジサウンドトラック。

その他

舞台演劇
1996年2月29日3月10日まで『月の氷柱〜もうひとつのかまいたちの夜』としてシアターアプルにて上演。
テレビドラマ
2002年7月3日に『かまいたちの夜』として放送された。
インターネット動画『ちょっとおかしな かまいたちの夜』
公式サイトやYoutubeニコニコ動画などで2011年9月22日より毎週公開された短編の動画。全13回。グラフィックやサウンドは初代に準じている。『真かまいたちの夜 11人目の訪問者』の宣伝のために製作された。真かまいたちの夜の予約特典であるDVD「かまいたちの夜 プレミアムファンディスク」にはこの動画が収録されている。
  • 第1回「透と真理」編
  • 第2回「香山」編
  • 第3回「小さな紙切れ」編
  • 第4回「隠された謎」編
  • 第5回「シャワー」編
  • 第6回「美樹本」編
  • 第7回「マッサージ」編
  • 第8回「おたより」編
  • 第9回「大阪へ行くさかいに」編
  • 第10回「諦めるのはまだ早い」編
  • 第11回「俊夫」編
  • 第12回「旅行ガイド」編
  • 第13回「真かまいたちの夜」編

エピソード

  • タイトルの「かまいたち」は、特撮ドラマ『怪奇大作戦』の第16話「かまいたち」からきている。それに触発された我孫子はデビュー前に「かまいたちの夜」というタイトルの作品を執筆、後に本作のタイトルとして使われた。内容は、雪山にある建物で殺人事件が起きるというものだが、それ以外の部分はゲームとはまったく異なるという[7]
  • 「シュプール」のモデルとなったのは、長野県北安曇郡白馬村のペンション「クヌルプ」。ゲーム内で使用されている背景写真は原則「クヌルプ」で撮影されたものだが、各部屋のユニットバス(「クヌルプ」には部屋に浴室は無く、共同の風呂が別にある)とワイン貯蔵庫については、別途製作されたミニチュアを小型カメラで撮影したものである。ユニットバスは、「クヌルプ」に併設されているコテージのものである。ドラマ版ではワンシーンでのみクヌルプが登場する。
  • スーパーファミコン版の発売当初、ピンクのしおりと金のしおりを出した画面を写真に撮って送ると、先着で前者には3,000名に「ちょっとエッチなかまいたちの夜」、後者には50名にペンションクヌルプへの招待券が送られた。
  • スーパーファミコン版のCMおよび広告は、刑事ドラマ『太陽にほえろ!』のゴリさん(竜雷太)が本作をプレイするというもの。難易度の高さを表す五里霧中と、ゴリ夢中をかけた内容となっている。この縁で竜は後にチュンソフトより発売された『街 〜運命の交差点〜』に出演している。もともと中村光一は竜雷太の大ファンであった。
  • ゲームマニアとしても知られるタレントの伊集院光が、同社の『風来のシレン』とあわせてよく絶賛している。
  • また、よゐこの有野晋哉もこのシリーズ(特に本作品)のファンであることを雑誌、『ファミ通』やTV番組などで公言している。
  • この作品では、スパイ編においてフランスのスパイ組織としてSDECE(作中では「フランス情報部」と紹介)が出てくるが、SDECEは1982年にDGSE(フランス対外治安総局)に改称されている。ストーリー中には1991年に起きたソ連崩壊の話も出てくる。

脚注

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外部リンク

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  1. テンプレート:Cite book
  2. 1click コンテンツショップの販売サービス終了について - チュンソフト、2005年7月1日
  3. 3.0 3.1 3.2 テンプレート:Cite book
  4. 4.0 4.1 4.2 4.3 テンプレート:Cite book
  5. 5.0 5.1 5.2 5.3 5.4 テンプレート:Cite book 引用エラー: 無効な <ref> タグ; name "fanbook31"が異なる内容で複数回定義されています
  6. テンプレート:Cite journal
  7. テンプレート:Cite news