オルセー美術館
テンプレート:博物館 オルセー美術館 (Musée d'Orsay) は、フランスのパリにある、19世紀美術専門の美術館である。印象派の画家の作品が数多く収蔵されていることで有名。
目次
概要
テンプレート:Location map オルセー美術館の建物はもともと1900年のパリ万国博覧会開催に合わせて、オルレアン鉄道によって建設されたオルセー駅の鉄道駅舎兼ホテルであった。設計者はヴィクトール・ラルー(1850年 - 1937年)である。もともとオルセー駅はオルレアンやフランス南西部へ向かう長距離列車のターミナルであり、かまぼこ状の大屋根(トレイン・シェッド)の下の地下に10線以上のホームを備えていた。狭くて不便だったことから、1939年に近距離列車専用駅となり、駅施設を大幅に縮小した。その後、この建物はさまざまな用途に用いられ、一時は取り壊しの話もあったが、1970年代からフランス政府によって保存活用策が検討されはじめ、イタリアの女性建築家ガエ・アウレンティの改修により19世紀美術を展示する美術館として生まれ変わることとなった。こうして1986年、オルセー美術館が開館した。美術館の中央ホールは、地下ホームのトレイン・シェッドによる吹き抜け構造をそのまま活用している。建物内部には鉄道駅であった面影が随所に残る。現在ではパリの観光名所としてすっかり定着した感がある。なお、旧印象派美術館(ジュ・ド・ポーム)の収蔵品はすべてオルセーに引き継がれている。
館の方針としては、原則として2月革命のあった1848年から、第一次世界大戦が勃発した1914年までの作品を展示することになっており、それ以前の作品はルーヴル美術館、以降の作品はポンピドゥー・センターという役割分担がなされている(むろん、多少の例外はある)。絵画、彫刻だけでなく、写真、グラフィック・アート、家具、工芸品など19世紀の幅広い視覚芸術作品も収集・展示の対象になっている。
オルセーでは、印象派やポスト印象派など19世紀末パリの前衛芸術のコレクションが世界的に有名だが、19世紀の主流派美術で後に忘却されたアカデミズム絵画(アール・ポンピエ)を多数収蔵・展覧し、その再評価につなげていることもこの美術館の重要な活動の側面である。
主な収蔵品
新古典主義からアカデミズムへ
- アングル『泉』(1820年-1856年)
- アングル『パフォスのヴィーナス』(1852年頃)
- ドラクロワ『ライオン狩り』(1854年)
- ジャン=レオン・ジェローム 『闘鶏』(1847年)
- トマ・クチュール『退廃期のローマ人たち』(1847年)
- テオドール・シャセリオー『テピダリウム』(1853年)
- イポリット・フランドラン『ナポレオン・ジョゼフ・シャルル・ポール・ボナパルトの肖像』(1860年)
- アレクサンドル・カバネル『ヴィーナスの誕生』(1863年)
- ウジェーヌ・フロマンタン『アルジェリアの鷹狩り』(1863年)
- ジャン=ルイ=エルネスト・メッソニエ『フランス戦役』(1864年)
- フランツ・ヴィンターハルター『バーブ・ドゥ・リムスキー=コルサコフ夫人の肖像』(1864年)
- ジェームズ・ティソ『赤いベストの若い女性の肖像』(1864年)
- ポール・ボードリー『シャルル・ガルニエの肖像』(1868年)
- ジュール=エリー・ドローネー『ローマのペスト』(1869年)
- ジュール・ジョゼフ・ルフェーブル『真実』(1870年)
- アンリ・ルニョー『ムーア王支配下のグラナダでの裁判抜きの処刑』(1870年)
- ジョルジュ・クレラン『チュイルリー宮殿の炎上』(1871年)
- ジュール=ウジェーヌ・ルヌヴー『ムーサたち(パリ・オペラ座の天井画の複製)』(1872年)
- レオン・ボナ『パスカ夫人の肖像』(1874年)
- ジャン=ポール・ローランス『ロベール敬虔王の破門』(1875年)
- アンリ・ジェルベクス『ローラ』(1878年)
- ウィリアム・アドルフ・ブグロー『ヴィーナスの誕生』(1879年)
- ジョン・シンガー・サージェント『エドゥアール・パイユロンの肖像』(1879年)
- フェルナン・コルモン『カイン』(1880年)
- アルベルト・エーデルフェルト『ルイ・パストゥールの肖像』(1885年)
- アルベール・ベナール『ロジェ・ジュールダン夫人の肖像』(1886年)
- ジャック=エミール・ブランシュ『画家トーロゥと彼の子供たち』(1895年)
- ジョヴァンニ・ボルディーニ『ロベール・ド・モンテスキュー伯爵の肖像』(1897年)
- アンドレ・ドゥヴァンベーズ『突撃』(1901年)
アカデミズムの彫刻
- テンプレート:仮リンク『永遠に目覚めるナポレオン』(1845年)
- イッポリト・ムーラン『ポンペイの掘り出し物』(1863年)
- ジャン=バティスト・カルポー『ダンス』(1863年-1869年)
- ジャン=バティスト・カルポー『地球を支える四つの世界』(1872年)
- アントナン・メルシエ『ダヴィデ』(1869年−1872年)
- アンリ・アルフレッド・ジャックマール『犀』(1878年)
- エマニュエル・フレミエ『聖ミカエル』(1897年)
- ルイ=エルネスト・バリアス『科学の前にヴェールを剥ぐ自然』(1899年)
写実主義と自然主義
- コロー『朝、ニンフの踊り』(1850年頃)
- テオドール・ルソー『アプルモンの樫、フォンテーヌブローの森』(1852年)
- ミレー『晩鐘』(1858年-1859年)
- ミレー『落穂拾い』(1857年)
- ミレー『春』(1863-1873年)
- ローザ・ボヌール『耕作、ニヴェルネ地方にて』(1849年)
- ジュール・ブルトン『落穂拾いの招集』(1859年)
- アントワーヌ・シャントルイユ『空』(1868年)
- ドーミエ『共和国』(1848年)
- ドーミエ『クリスパンとスカパン』(1864年頃)
- クールベ『オルナンの埋葬』(1849年-1850年)
- クールベ『画家のアトリエ』(1855年)
- クールベ『世界の起源』(1866年)
- ポール・ギグー『洗濯女』(1860年)
- アドルフ・モンティセリ『白い水差しのある静物画』(1879年-1880年頃)
- ジュール・バスティアン・ルパージュ『干し草』(1877年)
- レオン=オーギュスタン・レルミット『収穫者たちへの俸給』(1882年)
- ウィンスロー・ホーマー『夏の夜』(1890年)
- コンスタンタン・ムーニエ『黒い大地』(1893年頃)
- シャルル・コッテ『海の国にて、悲嘆あるいは海の犠牲者』(1908年-1909年)
印象主義
- ブーダン『トゥルーヴィルの海岸』(1864年)
- マネ『草上の昼食』(1863年)
- マネ『オランピア』(1865年)
- マネ『笛を吹く少年』(1866年)
- マネ『すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ』(1872年)
- ファンタン=ラトゥール『バティニョールのアトリエ』(1870年)
- ベルト・モリゾ『ゆりかご』(1872年)
- ピサロ『赤い屋根、冬の効果』(1877年)
- ドガ『バビロンを建設するセミラミス』(1861年)
- ドガ『ダンス教室』(1873年-1875年)
- ドガ『ベレッリー一家』(1858年-1867年)
- ドガ『踊りの花形』(1878年)
- メアリー・カサット『母と子(指をしゃぶるアン)』(1897年)
- フレデリック・バジール『メリクの別荘のテラスにおける家族の集い』(1867年)
- モネ『庭の女たち』(1866年-1867年)
- モネ『サンラザール駅』(1877年)
- モネ『モントルグイユ通り、1878年6月30日の祭典』(1878年)
- ルノワール『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』(1876年)
- ルノワール『都会のダンス』『田舎のダンス』(1883年)
- シスレー『洪水と小舟』(1876年)
- アルマン・ギヨマン『イブリーの落陽』(1873年)
- カイユボット『床を削る人々』(1875年)
- ホイッスラー『灰色と黒のアレンジメント-母の肖像』(1871年)
ポスト印象主義
- セザンヌ『オーヴェール=シュル=オワーズの首吊りの家』(1873年)
- セザンヌ『サント=ヴィクトワール山』(1887年-1890年)
- セザンヌ『台所のテーブル』(1889年頃)
- セザンヌ『カード遊びをする人たち』(1893年-1896年)
- セザンヌ『リンゴとオレンジ』(1895年-1900年)
- ゴッホ『ローヌ川の星月夜』(1888年)
- ゴッホ『自画像』(1889年)
- ゴッホ『オーヴェールの教会』(1890年)
- ゴッホ『ガシェ博士の肖像』(1890年)
- (1990年に日本人実業家齊藤了英が約125億円で購入したものとは同名別作品)
- ゴーギャン『タヒチの女(浜辺にて)』(1891年)
- ゴーギャン『アレアレア』(1892年)
- ゴーギャン『白い馬』(1898年)
- スーラ『ポール・アン・ベッサンの外港』(1888年)
- スーラ『サーカス』(1891年)
- シニャック『井戸端の女たち(井戸端のプロヴァンス嬢)』(1892年)
- アンリ・エドモン・クロス『夕風』(1893年-1894年)
- ロートレック『赤毛の女(化粧)』(1889年)
- ロートレック『女道化師シャ=ユ=カオ』(1895年)
象徴主義と世紀末芸術
- モロー『オルフェウスの首を持つトラキアの娘』(1865年)
- シャヴァンヌ『夏』(1873年)
- カリエール『病気の子供』(1885年)
- ルドン『目を閉じて』(1890年)
- バーン=ジョーンズ『運命の車輪』(1877年-1883年)
- クノップフ『マリー・モンノンの肖像』(1887年)
- トーロップ『欲望と充足』(1893年)
- レヴィ・デュルメール『メダルを持つ女』(1896年)
- ジャン・デルヴィル『プラトンの学園』(1898年)
- ムンク『アースガールシュトランドの夏の夜』(1904年)
- ハンマースホイ『休息』(1905年)
- クリムト『樹下の薔薇』(1905年頃)
- ホドラー『木を伐る人』(1910年)
- スピリアールト『月光と灯火』(1909年)
アール・ヌーヴォーの工芸
- エミール・ガレ 『色絵付装飾皿』 (1878年頃)
- ルネ・ラリック 『罌粟のピン』 (1897年)
- ドーム兄弟 『テーブル・ランプ‘睡蓮’』(1902年-1904年頃)
- ルイ・マジョレル『書斎机‘蘭’』 (1903年-1905年頃)
- エクトル・ギマール『天井灯』(1909年-1911年)
20世紀芸術の萌芽
- セリュジエ『タリスマン(護符)』(1888年)
- エミール・ベルナール『愛の森のマドレーヌ』(1888年)
- ボナール『男と女』(1900年)
- ヴィヤール『寝台で』(1891年)
- ドニ『セザンヌ礼賛』(1900年)
- フェリックス・ヴァロットン『ボール』(1899年)
- アンリ・ルソー『戦争』(1894年頃)
- マティス『豪奢、静寂、逸楽』(1904年-1905年)
- ドラン『チャリング・クロス橋』(1905年-1906年)
ロダン以後の彫刻
- ロダン『青銅時代』(1877年)
- メダルド・ロッソ『黄金時代』(1886年)
- カミーユ・クローデル『分別盛り』(1898年)
- ブールデル『弓を射るヘラクレス』(1924年)
- マイヨール『地中海』(1902年-1905年)
- フランソワ・ポンポン『白熊』(1922年)
収蔵品のギャラリー
関連文献
- 『オルセ美術館 絵画 みすず美術館シリーズ.1』
ミシェル・ラクロット解説、田辺徹訳、みすず書房、1989年 - 『パリ・オルセ美術館と印象派の旅』 丹尾安典ほか、とんぼの本:新潮社、1990年
- 『活字でみるオルセー美術館 近代美の回廊をゆく』 小島英煕、丸善ライブラリー 2001年
- 『オルセー美術館<世界美術館紀行6>』
関連項目
- 吉岡徳仁作 ガラスのベンチ『Water Block』(2002) が、 2011年より印象派ギャラリー常設展示。
参照
外部リンク
- フランス観光開発機構 オルセー美術館
- Musée d'Orsay(フランス語、スペイン語、英語。公式サイト)