呉茂一
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呉 茂一(くれ しげいち、1897年12月20日 - 1977年12月28日)は、西洋古典学者で古代ギリシア・ラテン文学者。
来歴・人物
東京帝国大学医科大学教授(精神病学講座)・呉秀三・みな夫妻の長男として東京に生まれる。箕作阮甫の曾孫にあたる。第一高等学校医科をへて、1919年東京帝国大学医学部に入学したが、22年文学部英文科に転じた。有島武郎を崇敬し、生前しばしば訪ねた、父と同じく精神科医で、歌人斎藤茂吉とも終生交流があった。
1925年大学卒業後、言語学科副手。26年にヨーロッパ留学して古代ギリシア文学・ラテン文学を修めた。29年帰国して帝大講師、法政大学予科教授、32年病気のため教職を辞し翻訳に当たるが、39年日本大学予科教授、47年第一高等学校教授、49年東京大学教養学部教授、50~56年には初代の日本西洋古典学会委員長に就いた。53年東大大学院西洋古典学主任教授、58年定年退官し名古屋大学教授、62年名大を定年退官、63年在ローマ日本文化会館館長、66年上野学園大学教授、68年勲三等旭日中綬章。
岩波文庫等の『イーリアス』、『オデュッセイア』の翻訳は、長く名訳として読み継がれ、1959年にはホメロス『イーリアス』の完訳により、読売文学賞受賞。ギリシア・ラテン抒情詩の訳詩集『花冠』も名高く、1973年度日本翻訳文化賞を受賞した。ギリシア悲劇の翻訳やギリシア神話の体系的研究・著述も改訂重版されている。
妻の暁子は有島生馬の娘であるテンプレート:要出典。
著書
- 『ラテン文法概要』鉄塔書院 1933
- 『オリュンポスの雪 随筆・評論集』弘文堂書房 1943
- 『ぎりしあの小説』生活社:日本叢書 1945
- 『ホーマー物語』中央公論社 1947
- 『随筆評論集 花とふくろう』要書房 1947
- 『ホメーロスの世界』思索社 1948
- 『ラテン文法綱要 演習篇/文法篇』要書房 1948
- 『ギリシア・ローマ文学襍攷』思索社 1949
- 『新修ラテン語教程』要書房 1950
- 『世界古代中世文学史概説』角川書店 1950
- 『ギリシア神話』中央公論社 1950
- 『ラテン語入門』岩波書店 1951
- 『ギリシア神話』新潮社(上下) 1956、改訂全1巻1969、新版1994/新潮文庫(上下) 1979、改版2007
- 『ぎりしあの詩人たち 鑑賞世界名詩選』筑摩書房 1956
- 『入門・世界の神話』講談社現代新書 1965
- 『西洋文化の源をたずねる』講談社現代新書 1966
- 『ギリシア悲劇-物語とその世界』社会思想社:現代教養文庫 1968
- 『アクロポリスの丘に立って-ギリシア文学閑話』新潮社 1976
編著
- 『ギリシア・ラテンの文学 文学案内Ⅰ』 新潮社 1962。中村光夫と共編著
- 『世界の文化史蹟4 ローマとポンペイ』 講談社 1968
- 『ギリシア神話 美術と伝説にみる世界』 社会思想社 1972
- 『呉茂一先生の手紙 野間祐輔宛書簡集』 小沢書店 1996。田中隆尚編
訳書
- ギリシア抒情詩選 岩波文庫 1938、増補版 1952 復刊1987・2013
- タウリケのイピゲネイア エウリピデス 岩波文庫 1939
- 愛とこゝろ-アモールとプシケー アプレイウス 岩波文庫 1940。「黄金のろば」の一部
- 友情について キケロ、水谷九郎共訳 岩波文庫 1941、復刊1995
- ギリシア・ローマ古詩鈔 岩波書店 1942
- ラオコオン G・レッシング、高橋義孝共訳 筑摩書房 1942
- ルキアノス短編集、山田潤二共訳 筑摩書房、1943。「本当の話 ルキアノス短篇集」ちくま文庫 1987
- 鳥 アリストパネス 岩波文庫 1944
- 花冠 ギリシヤ・ラテン譯詩集 みすず書房 1947
- ダフニスとクロエー 牧人の恋がたり ロンゴス 養徳社 1948/ 角川文庫 1951
- イソップの物語 猫のお医者さん、中央公論社 1950
- アガメムノン アイスキュロス 岩波文庫 1951/ 筑摩書房(改訳版) 1975。様々な版で刊
- 黄金の驢馬 アプレイウス 国原吉之助共訳 世界文学全集、筑摩書房、1951/「黄金のろば」 岩波文庫(上下)1956、「黄金の驢馬」改版全1巻 2013
- つながれたプロメーテウス アイスキュロス、世界文学全集:河出書房、1952/「縛られたプロメーテウス」 岩波文庫 1974
- ギリシア・ラテン抒情詩集、世界抒情詩選:河出書房 1952。他者による訳詩も収録
- 神々の対話 他六篇 ルキアノス 山田潤二共訳、岩波文庫、1953、復刊1985ほか
- イーリアス ホメロス 岩波文庫(上中下) 1953-58、改版1964(上のみ)/ 平凡社ライブラリー(上下) 2003。韻文体
- アンティゴネー ソポクレス/ アルケースティス エウリピデス 世界文学全集:河出書房、1956(前者は山田潤二共訳)
- ソポクレス 岩波文庫(単独改訳)、1961+ちくま文庫「ギリシア悲劇」全4巻 1985-86。様々な版で刊
- 老年について キケロー 重田綾子共訳、世界大思想全集 河出書房新社、1959
- 供養する女たち、慈しみの女神たち アイスキュロス、世界文学大系 筑摩書房、1959
- キリストにならいて トマス・ア・ケンピス 大沢章共訳 岩波文庫、1960
- ギリシア悲劇全集(全4巻) 人文書院 1960。編集委員
- 「縛られたプロメーテウス」「オレスティア三部作 アガメムノーン 供養する女たち 慈みの女神たち」
「救いを求める女たち」「アルケスティス」「アウリスのイーピゲネィア」(井上一彦共訳)
- アナクレオンティア テオクリトス、ギリシア詞華集、カトゥルス、ホラティウス、プロペルティウス、世界名詩集大成1 古代編、平凡社、1960
- イーリアス ホメーロス 世界文学大系1、1961/ 世界古典文学全集1、1964/ 筑摩世界文学大系2、1971、各筑摩書房。散文体での訳本
- ギリシア喜劇全集(全2巻) 人文書院、1962。編集委員
- 女だけの祭 アリストパネース(のち岩波文庫 1975)、気むずかし屋 メナンドロス
- デュスコロス メナンドロス ギリシア劇集 新潮社、1963
- 人生の幸福について キケロ 世界人生論全集2 筑摩書房、1963
- エジプト詩集 ももんが書房、1965、私家判(34頁)
- オデュッセイアー ホメロス、岩波文庫(上下)、1971-72、韻文体
- オデュッセイア ホメロス 世界文学全集 第1巻 集英社 1974 普及版1979 愛蔵版1986、散文体
- 花冠-呉茂一譯詩集 紀伊国屋書店 1973。ギリシア・ローマ抒情詩選 花冠 岩波文庫、1991
評伝
- 「饗宴 臨時増刊 呉茂一先生追悼号」 書肆林檎屋、1978
- 沓掛良彦による訳詩紹介がある。
関連項目
- 箕作家
- 西洋古典学
- 神話学
- 吉田敦彦 弟子
- 野上弥生子 友人
- 三島由紀夫 尊敬しており、東大教授時代に聴講に行ったほどである。
- 中村光夫 友人で弟子
- 多田智満子
- 高橋睦郎
- 鷲巣繁男
- カール・ケレーニイ
- 田中美知太郎 西洋古典学者
外部リンク
- 歴史が眠る多磨霊園 呉茂一
- 箕作阮甫とその子孫
- 呉茂一先生の生涯 - 泰田伊知朗(台湾、義守大學)