アンティゴネー
アンティゴネー(テンプレート:Lang-grc-short)はギリシア神話に登場するテーバイの王女。長母音を省略してアンティゴネとも表記される。父はオイディプース、母はその妃で母親のイオカステー。
あらすじ
父オイディプースが自分の出生の秘密を知り、目を潰した後、イオカステーの兄弟クレオーンに追放されると、妹イスメーネーとともに父に付き添って諸国を放浪した(ソポクレース『コロノスのオイディプス』を参照のこと)。
父の死後、テーバイに戻ったが、兄の1人、ポリュネイケースは隣国の助けを借りてテーバイの王位を取り戻すべくテーバイに攻め寄せてくる(アイスキュロス『テーバイ攻めの七将』)。しかし、闘いむなしく、テーバイの七つの門に攻め寄せた軍は悉く打ち破られ、ポリュネイケースは兄弟エテオクレースと相討ちで戦死。
クレオーンは反逆者である彼の屍を葬ることを禁じるが、アンティゴネーは自ら城門を出て、市民たちの見ている前でその顔を見せて兄の死骸に砂をかけ、埋葬の代わりとした。そのため彼女は、クレオーンによって死刑を宣告された。アンティゴネーは牢で自害し、その婚約者であったクレオーンの息子ハイモーンもまた自刃した。
論説
アンティゴネーはギリシア悲劇の題材とされ、ソポクレース『アンティゴネー』が最も著名。
アンティゴネーの悲劇は、兄への弔意という肉親の情および人間を埋葬するという人倫的習俗と神への宗教的義務と、人工的な法律の対立から来るものである。哲学者ヘーゲルは『精神の現象学』の人倫(Sittlichkeit)の章にて、アンティゴネーを人間意識の客観的段階のひとつである人倫の象徴として分析している。
20世紀後半には、ジョージ・スタイナーが、大著『アンティゴネーの変貌』で、ヨーロッパ文化の基底をなす存在として論じている。
20世紀フランス文学でも、劇作家ジャン・アヌイは、クレオーンを主人公として、アンティゴネーの処刑の挿話『アンティゴーヌ』を扱っている。詩人ジャン・コクトーも、戯曲『アンティゴネ ソポクレースからの翻案』がある。
系図
日本語訳文献
- 中務哲郎訳 『ソポクレース アンティゴネー』 岩波文庫
- 呉茂一訳 『ギリシア悲劇.2 ソポクレス』 ちくま文庫
- 『ギリシア悲劇全集.3 ソポクレース』 柳沼重剛訳、岩波書店
- 『世界文学全集.2 アイスキュロス、ソポクレスほか』 松平千秋訳、講談社
- 福田恒存訳『オイディプス王・アンティゴネ』 新潮文庫-英訳版からの重訳。
- 『アンチゴーヌほか アヌイ名作集』 芥川比呂志訳、白水社
- 『ジャン・コクトー全集7 戯曲 アンティゴネ』 三好郁朗訳、東京創元社
- ジョージ・スタイナー 『アンティゴネーの変貌』 海老根宏・山本史郎訳、みすず書房
彼女を題材にした舞台作品
- 三つの悲劇・異人の唄 ~ アンティゴネ ~
- フェリックス・メンデルスゾーン 劇付随音楽「アンティゴネ」Op.55
関連項目
参考ホーム・ページ
- ギリシャ・テーバイ紀行 現代テーバイの七つの門を訪ねる旅。