ホンダ・アクティ
アクティ(Acty)は、本田技研工業が販売する商用バンおよびトラックの軽自動車である。生産は八千代工業に委託されている。
目次
概要
1963年に誕生した日本メーカーの量産車初のDOHCエンジンを搭載したT360、後継のTN360の後を継ぐかたちで1977年に登場し、現在に続いているホンダの軽トラックである。アクティ登場の際には、ライトバンもラインナップに新たに登場した。
ボディー形状からキャブオーバーもしくはセミキャブオーバーと分類されることがあるが、構造的にはアンダーフロアエンジンのミッドシップ(MR)である。そのため(スバルのサンバーがRRで「農道のポルシェ」とされるのに対し)「農道のフェラーリ」、あるいは同じホンダ車で「農道のNSX」と言われることもある。
空車時のトラクション確保および走行能力を得るため、アンダーフロアエンジン搭載やド・ディオンアクスル式リアサスペンションの採用、荷台までフレーム一体式のモノコック構造、高回転特性のエンジン、各メーカーの軽トラック搭載自然吸気エンジンの中でもっともハイギアードな変速比設定など、ホンダならではの独自設計を施してある。
2014年3月現在、新車で購入可能な軽トラック、および軽キャブオーバーバンとしては唯一、エンジンの動弁機構にSOHCが採用されており(アクティ以外の軽トラック、および軽キャブオーバーバンは全て、エンジンの動弁機構にDOHCが採用(OEM含む))、新車で購入可能な軽トラック、および軽キャブオーバーバンとしても唯一、OEMが存在しない(そもそもホンダ車にはOEM車やOEM供給自体がない)。
初代 TA/TB/TC/JB/VD/VH型(1977-1988年)
- 1977年7月27日に、T360、TN360、TN-V、TN7と続いてきたホンダの軽トラックの後継として、TNアクティが発売された(TNの名はトラックのみ)。発売時の東京地区標準現金価格は「スタンダード」で53万3,000円。
- 1975年9月1日の道路運送車両法施行規則改正(省令第34号)を受け、エンジンは先代と比べスケールアップされ、EH型 550cc 直列2気筒 SOHC 水冷エンジンとなる。エンジンは同社の大型オートバイであるゴールドウイングの水平対向4気筒の片バンクを元に設計された。このエンジンは、1985年に発売された乗用車型軽自動車であるトゥデイにも使用された。
- 他社の同様のモデルは、キャブオーバーのアンダーフロアエンジンもしくはキャブオーバータイプのリアエンジン後輪駆動(RR)レイアウトを採用するが、アクティはMRレイアウトを採用した。元来、TN360は前輪駆動(FF)のN360からパワートレーンを流用し後輪駆動化されたモデルであり、変速機と差動装置が一体のトランスアクスル構造であったため、このようなエンジン配置となった。アクティの全体的レイアウトはTN360のそれを踏襲しており、同様な理由から、リアサスペンションにもTN360以来のド・ディオン式を採用している。
- 1979年11月に、アクティバンが追加される。テールランプはトラックと共通である。
- 1980年6月に、最初のマイナーチェンジが行なわれる。全車にカチオン電着塗装が採用されたほか、グリルデザインおよびシート地が変更される。
- 1981年2月1日に、乗用車的な使い方を想定したバン、アクティストリートが追加される。
- 1982年6月に、2度目のマイナーチェンジが行なわれる。大規模なマイナーチェンジが実施され、AT車(ホンダマチック)が追加される。トラックに室内が広い「ビッグキャブ」が追加され、そのビッグキャブにはクラス初の5速MTが設定された。
- 1983年3月14日に、4WD車が追加される。発売当初は世界でも珍しいミッドシップ4WDとして話題を呼んだ。エンジンの搭載方式は2WDとは異なり、縦置き[1]であった。軽トラック、軽キャブバンクラス初の、フロントディスクブレーキ(4WD車のみ)が標準装備される。
- 1984年3月に、当時クラス唯一の4WDのAT車が追加される。キャッチフレーズは「四駆マチック」。
- 1985年8月に、3度目のマイナーチェンジが行なわれる。フロントバンパーが大型化されエアコンがオプション設定される。2WD車も全車フロントディスクブレーキが標準装備される(ただしホイールは10インチのまま)。
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トラック(前期型)
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バン
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バン(リア)
2代目 HA1/2/3/4/5/HH1/2/3/4型(1988-1999年)
- 1988年5月11日に、11年ぶりのフルモデルチェンジが行なわれる(アクティ・バンのプロタイプのみ6月10日)。このモデルより車名がホンダ アクティとなる。テールランプは初代と同じく、トラック・バンとも共通である。このテールランプは、トラックのみ現行モデルまで採用される。
- エンジンは2気筒から3気筒に変更される。搭載されたE05A型 550cc SOHC エンジンは、1気筒あたりの吸排気バルブを2本ずつとした12バルブとなった。出力は34PS。
- 当時唯一の4WDのAT車が廃止され、この世代のアクティには4WDのAT車が存在しない。4WDシステムはトランスファーを用いたパートタイム4WDから、構造が簡単なリアルタイム4WDとなった(スタンバイ4WD)。
- 発売時の東京地区標準現金価格は「スタンダード 一方開 2WD」で59万8,000円。
- リアルタイム4WDには、大きな駆動力を発揮するウルトラロー(UL)とウルトラローリバース(UR)の超低速ギア[2]を持つ専用の4速MTと、リアデフロックが標準装備となった、営農用の「アタック」が追加された。
- 1990年3月に、マイナーチェンジが行なわれる。軽新規格へ移行し、全長が100mm延長され、排気量が660ccになり、出力が38PSに向上した。ヘッドランプは、規格型の丸2灯からストリートと同様の異形に変更された。本モデル以降、バンのテールランプがトゥデイ(初代後期モデル)からの流用となる。このテールランプは3代目バンにも採用される。
- 1991年8月に、オーナードライバー向けに、カラードバンパー、フルホイールキャップ、AM/FMラジオカセット、タコメーターなどを標準装備とした、トラック専用グレード「タウン」が追加される。「SDX-II」が廃止になり、「SDX」にも5速MTが追加される。
- 1994年1月に、マイナーチェンジが行なわれる。ラジオのチューナーが電子式となる。アタックをベースに後輪に代わり、ゴム製のクローラを装備した、「アクティ・クローラ」[3]が追加される。6輪トラックの様な見た目である。
- 1994年10月に、一部改良でエアコンの冷媒を代替フロンタイプに変更した。
- 1996年1月に、マイナーチェンジが行なわれる。バンにパワーステアリングを採用、フロントターンシグナルのレンズを、アンバーからクリアーへ変更される。バンに44PSのPGM-FIを搭載した「SDX-Hi」(2WD・5速MTのみ)を追加した。
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トラック(前期型)
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トラック(中期型)
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トラック(後期型)
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バン(後期最終型)
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バン(中期型・リア)
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バン(後期型・航空自衛隊の基地内用業務車)
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トラック(後期最終型・クローラ)
3代目 HA6/7/HH5/6型(トラック:1999-2009年、バン:1999年- )
- このモデルは先代とスタイルが大きく異なり、1996年9月30日の道路運送車両法施行規則改正(省令第53号)を受け、エンジン搭載位置はアンダーフロア式MRを継承しながら、短いながらもボンネットを設けて乗員の安全性を確保する寸法的余裕とし、ホンダの安全ボディ「Gコントロール」技術を採用したセミキャブオーバータイプのボディースタイルをとっている。しかし、クラッシャブルゾーンに寸法を割きすぎたせいか、ライバルと比べ荷台長(荷台の奥行)が短くなった事や、ホイールベースが伸びた事による旋回半径の増大,室内足元にタイヤハウスが露出しアクセルペダルが右寄りにオフセットするため操作性が悪いなど[4]などにより不評となった。ほかにも、他社より高めの価格設定、バッテリーの搭載位置がボンネット内のウォッシャー液のタンク下にあるために整備・交換時に不便(他社の軽トラック・バンはシート下などに搭載)、バンでリアシートを格納するとフロントシートのスライドが出来なくなる、トラックは「室内が狭くて荷台長が短い」などの理由により、バモスとは裏腹に販売面では伸び悩んだ。
- エンジンはすべてPGM-FI化され、38PSから46PSに向上した。
- 2000年12月20日に、バンパーとフロントグリル、キャビンの寸法を削り、その分を荷台長に割り当てる変更を行ったが、トラックの車内はさらに狭くなった。
- 2000年2月24日に、バンのみ4WDのAT車を復活させているが、同時期に追加された乗用ワゴン仕様バモスのターボモデルやホンダ・Zと駆動系の設計を共有するため、通常のアクティと異なりエンジンを縦置きに搭載し、シビック用の4速ATを採用する。出力は52PS。トラック「TOWN」を除き、ボディ同色バンパーが全グレードに標準装備される。バン・トラック共通でパワーステアリング非装備の「SDX-N」、トラック専用「ATTACK-N」を追加した。
- 2001年9月に、バンの一部改良でエアコンが全グレードに標準装備された。4WDのAT車の出力を53PSに向上した。
- 2003年4月に、一部改良が行なわれ、バン・トラックともに超-低排出ガス(U-LEV)化される。トラック「TOWN」のドアミラーとドアハンドルがカラード化される。バンに運転席・助手席SRSエアバッグを全グレードに標準装備、バンの「TOWN」グレードが廃止される(後継グレードはホンダ・バモスホビオ・4ナンバー仕様「プロ」ただし、最大積載量は350kgから200kgとなる)。
- 2005年12月に、一部改良が行なわれる。
- 2007年2月に、一部改良が行なわれる、バン「SDX」に電波式キーレスエントリーがオプション設定され、トラック「TOWN」にエアコンが標準装備される。
- 2009年12月16日に、トラックのフルモデルチェンジに伴い、3代目トラックが生産終了する。バンは、その後もこのモデルを継続生産する。
- 2010年8月26日に、バンのマイナーチェンジが行なわれる。電波式キーレスエントリーシステム、AM/FMチューナーを標準装備すると共に、助手席をスライド機構およびリクライニング機構付シートに変更した。グレード体系を見直し、「PRO-A」と「SDX」の2グレードとなった。
- 2012年6月14日に、バンの一部改良が行なわれる(発売は、翌6月15日)。「SDX」に高熱線吸収/UVカット機能付プライバシーガラス(リアドア/リアクォーター/テールゲート)が標準装備される。
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無塗装バンパーのロアグレード
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無塗装バンパーのロアグレード(トラック)
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バン・リア(がんばろう、日本!国民協議会街宣車)
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シトロエン・Hトラック風のバン
4代目 HA8/9型(2009年- )
- 2009年の第41回東京モーターショーにて、4代目となるアクティトラックが発表された。3代目のセミキャブオーバータイプから2代目に通じるスクエアなフルキャブオーバータイプに「先祖返り」した。
- 2009年11月26日に、発売に向けティザーサイトをオープンした。
- 2009年12月17日に、トラックが10年ぶりにフルモデルチェンジ。ホイールベースが先代に比べ520mm短縮され、フロントタイヤの切れ角を大きくしたことと相まって、最小回転半径を3.6mに縮小し、小回り性を向上した。キャビンスペースもフロントピラーを前方へ大きく移動することで拡大され、前述したホイールベースの短縮により、ホイールハウスもシート下に移動し、足元の空間が拡大された。搭載されるエンジンは先代のものを踏襲しているが、各部の改良と車体の軽量化により燃費を向上し、全車が「平成22年度燃費基準+5%」を達成した。なお、駆動系も先代モデルからの踏襲のため、引き続き4WDにはATが用意されない。
- 2010年1月21日 - 特装車(パワフルシリーズ〈ダンプ・リフター〉、フレッシュデリバリーシリーズ〈冷凍・保冷・ドライ〉など)が発売された[5]。
- 2010年12月9日に、一部改良が行なわれる。バッテリーカバー開閉時の操作性を向上するとともに、「SDX」と「TOWN」はEBD付ABSをオプション設定(尚、本オプションには助手席側SRSエアバッグとのセットオプションも設定されている)し、ボディカラーにアラバスターシルバー・メタリック(有料色)を追加した。
- 2012年3月に、RRのスバル・サンバーが製造終了しFRのダイハツ・ハイゼットのOEMとなったため、FRではない軽トラックはアクティのみとなった[6]。
- 2012年6月14日に、一部改良が行なわれる(発売は6月22日)2013年1月施行の新灯火器類保安基準に合わせてリア左右のマットガードに後部反射板を追加設定した。
車名の由来
英語の「ACTIVE(活動的な)」からの造語。仕事やレジャーなどで、いつもキビキビ働くクルマという思いより命名された[7]。
派生車種
脚注
関連項目
外部リンク
テンプレート:ホンダ車種年表 (初期) テンプレート:ホンダ車種年表 テンプレート:Honda
テンプレート:自動車- ↑ 横置きのエンジンとトランスミッションから差動装置を省いて90°向きを変えて搭載し、ドライブシャフトの替わりにプロペラシャフトを取付け、前後車軸のデフへ駆動力を伝えている。
- ↑ 傾斜地 等で車を移動させながら農作物の搭載作業する際に適した速度になるギア比となっている。
- ↑ かつてのT360や、TN360のクローラー仕様とは異なり、クローラー自体がそのまま通常のホイールとタイヤを装備可能な、クリスティ式の亜種である。履帯を外せばそのまま非積雪の舗装道路(高速道路を含む)を走行可能だが、改造を伴わずに通常の4輪仕様に換装することはできない。
- ↑ 軽トラックの主要ユーザーである農林業従事者にとって旋回半径の増大は狭隘な場所での作業に制約がでる事から問題となる。
- ↑ ホンダ、アクティトラックを10年ぶりにフルチェン asahi.com(朝日新聞) 2009年12月18日テンプレート:リンク切れ。テンプレート:Cite web
- ↑ フルキャブへの回帰は前出の農林業従事者からの要望の他、終売が決まっていたRR方式サンバーのユーザーの代替需要を狙ったと言われている。
- ↑ ネーミングの由来(クルマ) - ホンダ公式サイト「同社お客様相談センター」