トイレの花子さん
トイレの花子さん(トイレのはなこさん)は、都市伝説・学校の怪談の一種で、学校のトイレに現れるとされるお化けにまつわる怪奇譚[1]。
目次
概要
「誰もいないはずの学校のトイレで、ある方法で呼びかけると『花子さん』から返事が返ってくる」というもの。赤いスカートをはいた、おかっぱ頭の女の子の姿が最も有名である。白いワイシャツを着ているともいう[2]。それ以外の噂の詳細は、地方により異なる。
最もポピュラーな噂は
- 「学校の校舎3階のトイレで、扉を3回ノックし、『花子さんいらっしゃいますか?』と尋ねる行為を一番手前の個室から奥まで3回ずつやると3番目の個室からかすかな声で「はい」と返事が返ってくる。そしてその扉を開けると、赤いスカートのおかっぱ頭の女の子がいてトイレに引きずりこまれる」というもの。
古くは1950年頃から流布されていた「三番目の花子さん」と呼ばれる都市伝説が原型であるとされる。1980年代頃から全国の子供たちの間で噂になり、1990年代には映画、漫画など、様々な作品に登場した。
テレビ番組の収録中に花子さんとされる声が録音されたこともあるという[3]。
噂に見る「人物像」
「花子さん」のルーツとして
- 「休日の学校に遊びに来ていた少女が変質者に追われ、トイレの3番目の個室に隠れたが見つかって殺害された[4]」
- 「生前、父親から虐待を受けていた少女の霊で、おかっぱ頭はその時の傷を隠すため[5]」
- 「福島県の図書館の窓から落ちて死んだ少女の霊[5]」
などが語られる。埼玉県のある学校のゴミ捨て場、または東京都のある学校の体育館の裏に花子さんの墓があるとの説もある[5]。
また「柿の木から柿をもいで老人ホームに届けていた少女が、交通事故で死んだ後に霊となってその木の上に住み着いた」、という「柿の木の上の花子さん」という話も伝わる[5]。
霊となる前の生前の人物像については、本名は長谷川花子で1879年生まれ、牛乳が嫌いで白系の色も嫌い、赤系と青系の色が好き、学校では卓球部に所属、花粉症などの情報がある[5]。
バリエーションとしては、
- 花子さんに「遊びましょ」と呼びかけると「はーい。何して遊ぶ?」と聞かれる。この時、「首絞めごっこ」と答えると本当に首を絞められて殺されると続く場合も[6]。
- 山形県では、トイレを出る際「花子さん」と呼ぶと返事があり、嫌な声で返事をされたときには何か起こる、と伝わる[6]。
- 山形県の別説では、「花子さんの正体は3つの頭を持つ体長3メートルの大トカゲで、女の子の声で油断した相手を食べる」、というものもある[7]。
- 岩手県和賀郡黒沢尻町では、3番目の個室に入ると「3番目の花子さん」と声がして、床穴から白い大きな手が現れる[8]。
- 島根県では、花子さんと遊ばないと追いかけられる、と伝わる[6]。
- 神奈川県横浜市では、「女子トイレにハナコさん、さらに男子トイレにはヨースケさんがいて、呼びかけて3秒以内に逃げないと殺される」、「男子トイレで便器の周りを3回回って「ハナコさん」と呼ぶと、便器から血だらけの手が現れる」、と伝わる[6]。
- 兵庫県では、1番目のトイレには花子さんの父、2番目には母、4番目は妹、5番目に弟、男子トイレの2番目に祖父がおり、これらを呼ぶと「うちの花子に何か用か?」と聞かれる。ほかにも花男、小花子という名の親戚もおり、これら親戚筋のお化けの一族が毎年群馬県で集会を開き、その年の方針を決めている、ボーイフレンドに太郎というお化けがいて、深夜の学校の体育館でバスケットボールをしている[3]。
- 女子トイレのマークの消えかかった箇所を花子さんがペンで直していたので、「ご苦労さま」と声をかけると「日頃みんなを脅かしているお礼です」と言って消えた[5][9]。
- 大阪府では花子さんを呼ぼうとトイレのドアをノックすると、標準語で「危ないわね、やめなさいよ」と声が返った[5]。
- 少年が学校のグラウンドで転んで膝に小さな傷を負ったが、この傷に「花子菌」が感染し、傷口のかさぶたの下に小さなキノコが群生した[5]。
- ある学校に花菜子(かなこ)と花世子(かよこ)という名の双子の姉妹がおり、花菜子が事故死した後、花世子が花菜子の幽霊と間違われることを苦に自殺し、その幽霊が「双子の花子」として現れるようになった[5]。
- 東京都のある小学校では、3階の女子トイレの奥で「花子さーん」と呼ぶと「なーに?」と声が返り、16時過ぎにトイレで「花子さん、ごめんなさい」と言うと「いいのよ」と声が返る[10]。
- 岐阜県のある小学校では、校内に旧式の汲み取り式便器があり、そこで3回回って「花子さーん」と呼ぶと「はーい」と返事が返る[10]。
- 埼玉県のある小学校では、トイレの4番目のドアを15回ノックして「花子さん、遊びましょ」と呼ぶと「はーい」と返事が返る[10]。
- 3番目のトイレに入るときには5回ノックして「花子さん」と3回呼ばなければドアが開かない。無理に開けようとすると金縛りや神隠しに遭う[11]。
などの話が伝わる。「花子さん」の噂は日本各地に広まっているが、これらの花子さんはすべて従姉妹同士との説もある[5]。
また、名前が「花子さん」以外の噂もあり
- 長野県では、女子トイレの3番目の個室をノックして「ゆきこさーん」と呼ぶと「はーい」と返事が返る[10]。
- 千葉県では、2階のトイレの2番目の個室で3回回って「みーちゃん」と呼んで水を流すと「はーい」と返事が返る[10]。
といったバリエーションがある。
花子さんの撃退方法として、遭ったときは100点の答案を見せると悲鳴を上げて消え去るという説もある[5]。
民間信仰との関連
日本では江戸時代から昭和初期にかけて厠神(トイレの神)の信仰が盛んで、赤や白の女子の人形や、美しい花飾りを便所に供えることで厠神が祀られていた。戦後において厠神の信仰が廃れた後も、トイレに造花が飾られていることが多いのは、こうした風習の名残とみられている。トイレの花子さんの服が赤や白であること、名前が「花子」であるのは、こういった風習に由来するとの説もある[2]。
「花子さん」が登場する作品
「トイレの花子さん」を扱った作品は非常に多く、マスコットキャラ的な登場も多い。ここでは、「花子さん」がメインの作品を挙げる。
映画
トイレの花子さん
1995年7月1日、松竹系公開。花子さんは悪霊ではなく、子供の守護霊的存在。終盤、変質者から子供たちを救うものの、直接登場はしない。日本国内においてビデオ化・LD化はされているが、DVD化はされていない(台湾では鬼娃娃花子2のタイトルでDVD化されている)。
スタッフ
キャスト
- 水野冴子:河野由佳
- 坂本拓也:井上孝幸
- 坂本なつみ:前田愛
- 鈴木百合子:大塚寧々
- 坂本雄二:豊川悦司
- 坂本翼:梅津栄
- 加藤ヒロシ:三東康太郎
- 太田加奈子:鈴木夕佳
- 宮崎由紀:伊牟田麻矢
- 久保田先生:土屋久美子
- 校長先生:小沢象
- 変質者:緋田康人
- ヒロシの父:竹中直人
- ヒロシの母:深浦加奈子
- 女子児童:栗山千明
挿入歌
- モダンチョキチョキズ「I Wish…」
主題歌
- 前田愛「見上げてごらん夜の星を」
- 濱田マリ「ひとひと」(イメージソング)
新生 トイレの花子さん
1998年7月4日、東映系公開。舞台は中学校で、花子さんの伝説は出るものの、その実体は和人形の悪霊であった。タイトルは「新生」だが、前述の松竹版との関連は無く、子供向けを意識した松竹版より本格的なホラー映画。キャッチコピーは「この学校の怪談が一番怖い。」。日本国内ではビデオ化・DVD化はされている(台湾では鬼娃娃花子のタイトルでDVD化されている)。
スタッフ
- 監督:堤幸彦
- 脚本:高橋洋
- 音楽:見岳章
- 選曲:志田博英
- 助監督:麻生学
- スタントコーディネーター:辻井啓伺
- 音響効果:東洋音響、OCBプロ
- 現像:東京現像所
- MA:東宝サウンドスタジオ
- 技術協力:池田屋
- 製作協力:タイムズイン
- 製作:東映、ポニーキャニオン、アルカディア・ピクチャーズ
キャスト
- 倉橋里美:前田愛
- 鹿島玲子:高島礼子
- 沢口香苗:浜丘麻矢
- 間宮悦子:大村彩子
- 柏木浩輔:笠原秀幸
- 矢部:長野博(V6)
- 浅岡:荻島真一
- 安城みゆき:野村佑香
- 北村真理:水谷妃里
- 倉橋武雄:小倉一郎
- 倉橋暎子:山口美也子
- 倉橋かおり:須山彩
- 僧侶:麿赤児
- 養護教諭:ふせえり
- 教師:有吉弘行、森脇和成、飯島大介
主題歌
トイレの花子さん 新劇場版
スタッフ
- 監督:山田雅史
- 脚本:ここやあんず
- 製作:重村博文、酒匂暢彦
- プロデューサー:田中勇、浅沼正人、山口幸彦、木俣誠、岡良亮、上野境介、平野貴之
- 撮影:松井宏樹
- 音楽:弥栄裕樹
- 配給:チャンス・イン、キャンター
- 製作:キングレコード、チャンス・イン
キャスト
- 長沢さよ:上野優華
- 小山貴子:水崎綾女
- 佐伯達也:馬場良馬
- 佐伯真帆:安田聖愛
- 木下恵子:田中瞳佳
- 恵子の取り巻き:山川りな(青SHUN学園)、石條遥梨(AeLL.)
- 花子:赤羽菜々
- さよの母:種村江津子
- さよの祖母:一條眞紀子
- 校長先生:橋倉靖彦
- 佐伯達也(幼少期):斗磨
- 小山貴子(幼少期):白鳥瑞季
- クラスメイト:桜衣かれん(青SHUN学園)、春乃美月(青SHUN学園)、石井晶子(青SHUN学園)、原田真帆(青SHUN学園)、佐藤彩(青SHUN学園)、濱崎愛華(青SHUN学園)
主題歌
- 上野優華「君といた空」
オリジナルビデオ
トイレの花子さん
1997年、製作・発売:ポニーキャニオン。「消えた少女の秘密」と「恐怖校舎」の2巻からなる
スタッフ
- 監督:佐々木正人
- 脚本:村井さだゆき
- 音楽:斉藤修
キャスト
学校の都市伝説 トイレの花子さん
2007年、いじめを受けて自殺した「池谷花子」の亡霊という設定になっている。静岡県小山町と奥多摩でロケが行われた。[13]
スタッフ
- 監督:吉田浩太
- 脚本:田中智章、吉田浩太
- 製作:小林洋一、仲尾雅互
- プロデューサー:宇田川和恵、小野直樹、上野慎介
- 製作:エースデュースエンタテインメント、TCエンタテインメント、トルネード・フィルム
キャスト
など。
劇場アニメ
トイレの花子さん
スタッフ
- 原作:KKベストセラーズ
- 監督:大地丙太郎
- 作画監督:楠本祐子
- 脚本:平見瞠
- 音楽:馬飼野康二
- キャラクターデザイン:宮崎なぎさ
- 演出:高柳哲司
- 美術監督:中村隆
- 撮影監督:やまぐちとしあき
- 音響監督:たなかかずや
- 効果:神保大介
- 録音:阿部幸男
- 音楽ミキサー:室克巳
- 録音スタジオ:アバコクリエイティブスタジオ 松本登
- タイトル:石田功
- 編集:中溝哲生
- 制作協力:ノーサイド
- 制作:マルチボックス
- プロデューサー:辻本幸七
- 製作:映画「忍たま乱太郎」製作委員会
キャスト
- 花子さん:齋藤彩夏
- 宮野かおり:矢島晶子
- 小林なおや:渕崎ゆり子
- 野原ゆり:こおろぎさとみ
- 猪俣実香:麻生かほ里
- 石渡タクミ:柏倉つとむ
- 上岡山大介:水田わさび
- 岩山岩男先生:玄田哲章
- 石川よしこ先生:高橋美紀
- 骨皮教頭先生:はせさん治
- オバケ大王:緒方賢一
- ウーパー:岩坪理江
- ルーパー:水原リン
- 冒頭の声:小桜エツ子、南央美
関連イベントなど
- 3Dサウンドホラーハウス「新生トイレの花子さん」
- 富士急ハイランドのアトラクション。1998年の東映版映画をもとにしている。
- 気仙沼二郎(みちのくプロレス)の過去のリングネームとして「トイレの花子さん」がある。
脚注
参考文献
外部リンク
テンプレート:堤幸彦監督作品- ↑ 宇佐和通 『THE都市伝説』 新紀元社、2004年、9頁。
- ↑ 2.0 2.1 並木・多田他2008年34頁。
- ↑ 3.0 3.1 テンプレート:Cite web
- ↑ 並木・多田他2008年13頁。
- ↑ 5.00 5.01 5.02 5.03 5.04 5.05 5.06 5.07 5.08 5.09 5.10 山口2007年142-145頁。
- ↑ 6.0 6.1 6.2 6.3 並木2007年124-126頁。
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ 10.0 10.1 10.2 10.3 10.4 常光1990年63-66頁。
- ↑ 日本民話の会・学校の怪談編集委員会編 『放課後のトイレはおばけがいっぱい』 ポプラ社〈学校の怪談〉、1991年、37-38頁。ISBN 978-4-591-03902-1。
- ↑ 上野優華 : 15歳新人が映画主演で女優デビュー 主題歌にも挑戦 毎日新聞デジタル 2013年5月4日
- ↑ 2011年に生田絵梨花主演のビギニングオブ トイレの花子さんが公開されたが内容が酷似。